『鋼の錬金術師』の物語を語る上で欠かせない存在、それが「お父様」です。しかし、彼の原点には、さらに謎めいた存在「フラスコの中の小人」がいました。
このフラスコの中の小人と、物語のラスボスであるお父様は、一体どのような関係にあったのでしょうか? 彼らの目的、恐るべき強さ、そして迎えた悲劇的な最期まで、独自の視点と読者の考察を交えながら、その深淵に迫ります!
『鋼の錬金術師』を動かす根源「フラスコの中の小人」とは?
物語の核心に深く関わる「フラスコの中の小人」。彼の登場によって、お父様やホムンクルスたちの関係性が明らかになり、『鋼の錬金術師』の壮大なストーリーが動き出しました。
「フラスコの中の小人」の正体と、その呼び名の由来
「フラスコの中の小人」は、作中に登場するお父様が、最初に誕生した時の姿、あるいは「第一形態」とも言える存在です。
その名の通り、フラスコの中に収まるほど小さな姿をしていたことから、ホーエンハイムによってそう呼ばれるようになりました。彼は、ヴァン・ホーエンハイムの血と情報(知識)を元に偶然誕生した生命体であり、“ホムンクルス”の別称として使われることもあります。
『鋼の錬金術師』ってどんな物語? あらすじをおさらい!
「ハガレン」の愛称で知られる『鋼の錬金術師』は、荒川弘によって月刊少年ガンガンで2001年から2010年まで連載された、日本を代表するダークファンタジー漫画です。
錬金術とスチームパンクが融合した独特の世界観で、死生観や人間の本質、そして倫理といった奥深いテーマが描かれ、多くの読者から絶大な支持を得ました。2021年7月時点で累計発行部数8,000万部を突破し、アニメ化や実写映画化など、多岐にわたるメディアミックスが展開されています。
物語の始まりは、錬金術師であるエドワード・エルリックと弟のアルフォンス・エルリックが、流行り病で亡くなった母親を生き返らせるために、禁忌とされる人体錬成を行ったことでした。
しかし、錬成は失敗し、エドワードは左脚を、アルフォンスは全身を失ってしまうという悲劇に見舞われます。
エドワードは自身の右腕を犠牲にしてアルフォンスの魂を鎧に錬金することで、弟の命を繋ぎ留めました。そして二人は、失った肉体を取り戻すための唯一の希望とされる「賢者の石」を探す旅に出ることを決意するのです。
「フラスコの中の小人」と「お父様」は同一存在! 誕生から自由を得るまでの経緯
フラスコの中の小人は、『鋼の錬金術師』のストーリーに深く関わる存在であり、物語のラスボスである「お父様」と密接な関係を持っています。実は、フラスコの中の小人こそがお父様が誕生したばかりの姿であり、彼らは同一の存在なのです。
世界最古のホムンクルス! お父様が生まれた経緯
物語の時間軸から約500年前、繁栄を極めていたクセルクセス王国では、時の国王が老化と寿命に焦りを感じ、錬金術師たちに不老不死の研究を命じていました。
その錬金術師の一人に、後にヴァン・ホーエンハイムと呼ばれることになる奴隷の男性がいました。彼が錬金術を繰り返す中で、偶然にもフラスコの中に小さな生命体が誕生します。これが、フラスコの中の小人でした。フラスコの中にいたことから、ホーエンハイムは彼に「ホムンクルス」という名称を与えました。
フラスコの中の小人は、単なるフラスコの中の生命体に留まりませんでした。彼は意思を持ち、ホーエンハイムと会話することができました。この時、ホーエンハイムはまだ奴隷であり、社会的な地位もありませんでした。そんな彼に対し、フラスコの中の小人は「自由と権利が欲しくはないか」と問いかけます。
クセルクセスを滅ぼし、自由を手に入れた小人
フラスコの中の小人の言葉に唆されたホーエンハイムは、彼の指示に従って計画を進めます。その計画とは、クセルクセス王国とその国民約100万人を賢者の石に変えるという、恐るべきものでした。
この壮大な錬金術によって、クセルクセス王国は一夜にして滅亡し、その魂は賢者の石へと変換されました。この計画の真の目的は、フラスコの中の小人が自由な肉体を手に入れることだったのです。
賢者の石の膨大なエネルギーを得たフラスコの中の小人は、フラスコから解放され、人型の肉体を手に入れました。この時から、彼は自らが生み出したホムンクルスたちから「お父様」と呼ばれるようになります。彼が創造したホムンクルスたちには、それぞれ聖書に記されている「七つの大罪」の名が与えられました。
お父様は、世界最古のホムンクルスであり、他のホムンクルスたちとは異なる特別な存在と言えるでしょう。彼は、自身の誕生経緯からも、通常のホムンクルスとは一線を画す存在であることがわかります。
「お父様」となったフラスコの中の小人の“目的”と“悲しき最期”
賢者の石によってフラスコから解放され、人型の肉体を得たお父様は、ある壮大な目的のために行動を開始します。彼は、世界やエドワードたちにとって、最終的に最大の脅威となっていきました。
「神」を理解し、完全な存在になるという目的
お父様となったフラスコの中の小人の最終的な目的は、「神を理解し、この世の全てを知りたい」というものでした。
彼は、宇宙の膨大な情報を手に入れ、それを完全に抑え込むためのエネルギーを補給しようと計画を進めていました。この目的を達成するため、お父様は文字通り「神を引きずり下ろし」、自らが完全な存在になろうと目論んでいたのです。
『鋼の錬金術師』のストーリーは、まさにこのお父様の目的達成のために、国土錬成陣を完成させ、人柱を出現させるまでの物語だったと言えるでしょう。
フラスコの中の小人(お父様)の性格の変化
フラスコの中にいた頃の小人は、表情豊かで、生みの親であるホーエンハイムに気さくに話しかけるような、どこかコミカルで陽気な性格をしていました。彼の天真爛漫な言動に、親しみを感じた読者も少なくないでしょう。
しかし、賢者の石によって人型に変化してからは、その性格は一変します。彼は次第に冷徹な一面を露わにし、自らホムンクルスを創造する際に感情を切り離してからは、ほとんど無口がちな、感情のない存在へと変貌していきました。
圧倒的な強さ! お父様の能力と“完全体”
お父様の強さは、その類稀なる知性、知略、そして人心掌握術に秀でている点にあります。彼はホーエンハイムを意のままに操り、クセルクセス王国を一夜にして壊滅させるという、歴史に残る大惨事を引き起こしました。
さらに、彼は高度な錬金術を有しており、戦闘においても隙がありません。錬金術に必要な地脈エネルギーを阻害することで相手の錬金術を封じるという、錬金術師にとって絶望的な技も使用できます。
そして、物語のクライマックスでは、世界の真理の扉の力を得て「完全体」となります。完全体となったお父様は、等価交換の原則を完全に無視した錬金術を使用し、天候を自在に変化させたり、擬似太陽を生み出したりするなど、まさに無敵の強さを誇りました。
神と一体化! 若きエドワードの姿になった完全体お父様
世界の真理の扉に到達したお父様は、ついに神と一体化し、完全な存在となります。
この時、彼の見た目は若かりし頃のエドワード・エルリックの姿へと変化しました。性格も傲慢で、人間を取るに足らない存在と見下すようになります。
手に入れた強さはまさに最強でした。等価交換の原則を無視した錬金術により、地盤ごと破壊するレーザーや、自我を持たない人間の体を錬成するなど、作中で圧倒的な力を見せつけました。
「お前が己を信じないから」お父様が敗北した“悲しき最期”
完全体となり別次元の強さを手に入れたお父様でしたが、エドワードたちとの最終決戦の最中、神の力が制御できなくなり、賢者の石を失ってしまいます。
その直後、彼は再び真理の扉に戻され、真理から「思い上がった者に絶望を与えるのが真理」と告げられます。
そして、生まれた頃と同じフラスコの中へ引きずり込まれ、不自由な場所に囚われることとなりました。これが、お父様の悲劇的な最期です。
最期の場面で、お父様は「私はどうすればよかったのだ!」と訴えるシーンが描かれています。絶対の強さを手に入れてもなお敗北した理由について、真理は「お前が己を信じないから」「七つの欲を切り離せば人を超えられると思ったか?」と語っています。
真理が伝えたかったのは、「人として生きること」の尊さだったと受け取れるでしょう。お父様は常に人間を見下し続け、自分にない強さばかりを求めていました。自分の強さや、他者の存在を認められなかった傲慢さが、彼の敗因であったと考える読者も多いようです。
「お父様」の声優は、あの“伝説的ベテラン”!
『鋼の錬金術師』は、その圧倒的な人気によりアニメ化され、多くの話題を呼びました。原作のキャラクターたちが映像化されるだけでなく、実力派声優陣の演技が加わることで、作品の魅力はさらに増幅されたと言えるでしょう。
ここでは、アニメ版『鋼の錬金術師』で、フラスコの中の小人、そしてお父様を演じた声優についてご紹介します。
お父様の声優は、名優「家弓家正」
性別 | 男性 |
出身地 | 東京府 |
生年月日 | 1933年10月31日 |
没年月日 | 2014年9月30日(享年80歳) |
血液型 | O型 |
身長 | 172cm |
事務所 | 81プロデュース(最終所属) |
活動時期 | 1956年~2014年 |
お父様を演じたのは、声優の家弓家正です。1956年にNHKのラジオドラマでデビューを果たし、長きにわたり声優界を牽引してきました。低く渋いバスバリトンの声質が特徴的で、業界内からは「渋いのに優しさが秘められている」と評されていました。
アニメ作品以外にも、洋画の吹き替えで数多くの作品に出演し、その存在感を示しましたが、2014年9月30日に惜しまれつつも亡くなりました。
家弓家正の主な出演作品
家弓家正は、その唯一無二の声で数多くの人気キャラクターを演じてきました。
代表作としては、『未来少年コナン』のレプカ、『ONEPIECE』のネフェルタリ・コブラ、『ガンダムビルドファイターズ』のヨセフ・カンカーンシュルヤ、『映画ドラえもん のび太と夢幻三剣士』の妖霊大帝オドローム、『ギルティギア』のスレイヤーなどが挙げられます。
「お父様」が生み出した“七つの大罪”ホムンクルスたちを徹底解説!
『鋼の錬金術師』に登場するお父様以外のホムンクルスたちは、全員がお父様によって生み出された存在です。
彼らにはそれぞれキリスト教の「七つの大罪」に由来する名が与えられており、その名にまつわる能力、強さ、そして個性的な性格を有しています。ここでは、お父様が創造したホムンクルスたちを一人ずつ詳しく見ていきましょう。
ホムンクルス1:ラスト(色欲)
色欲の名を冠するラストは、ホムンクルスの中で唯一女性の身体を持つ存在です。
豊満な胸元にウロボロスの刻印が刻まれています。基本的には人間を見下していますが、非常に誇り高い性格で、ホムンクルスたちの司令塔として仲間をまとめる役割も担っていました。
戦闘時には、伸縮自在で硬軟が自在な爪を武器とし、あらゆる物体を切断できるその攻撃力は「最強の矛」と称されるほどの強さを誇ります。
しかし、最後はロイ・マスタングの奇策に敗れ、運命を憐れむような言葉を遺して消滅しました。
ホムンクルス2:グラトニー(暴食)
食欲、すなわち暴食の名を冠するグラトニーは、禿げた頭とずんぐりとした胴体が特徴的なホムンクルスです。
舌にウロボロスの刻印があります。大柄な体躯と、壁ですら噛み砕くことができる凶悪な強さを持っていますが、その反面、知性に欠けており、言動は幼児のように拙いです。
作中では、ラストやエンヴィーと行動を共にすることが多く、主に戦闘員として活躍していました。しかし、最後は同じホムンクルスであるプライドに吸収され、その存在を消しました。
ホムンクルス3:エンヴィー(嫉妬)
嫉妬の名を冠するエンヴィーは、中性的な容姿と饒舌な話し方が特徴的です。
飄々とした立ち振る舞いの裏には、どこまでも人間を見下す醜い本性が隠されています。しかし、一方で自分が人間から見下されると冷静さを失うほど怒り狂う一面もあります。
変身能力を持っており、エンヴィーが情報を持っていれば人間以外の動物にも姿を変えることができます。
人間を嫌う行動の裏には、人間への羨みや嫉妬が隠されているとエドワードに理解されそうになったことに苛立ち、最後は自害しました。
ホムンクルス4:グリード(強欲)
強欲の名を冠するグリードは、チンピラのような言動と、己の欲望に忠実な性格をしています。
お父様の命令にも従わず、各地を転々としていました。欲深く、他人を見下す傲慢さがありますが、一方で、求めるものは自力で手に入れようとし、嘘をつかないという義理堅い一面も持ち合わせています。
皮膚を硬化させる能力を持ち、その硬度はダイヤモンド並みとされ「最強の盾」とも称されています。作中では、エドワードたちと協力してお父様と戦い、リン・ヤオを庇うようにして消滅しました。
ホムンクルス5:プライド(傲慢)
傲慢の名を冠するプライドは、普段はセリム・ブラッドレイという少年の姿で、ブラッドレイ夫婦の子どもとして生活しています。
自身が一番最初に造られたホムンクルスであることに誇りを感じており、人間だけでなく、お父様以外のホムンクルスをも見下しています。
彼の能力は、従えている影を自在に操ることであり、強靭な攻撃と頑強な防御を兼ね備えています。
プライドは、記憶を失ったものの、ホムンクルスの中で唯一生き残った存在として、物語に大きな足跡を残しました。
ホムンクルス6:ラース(憤怒)
憤怒の名を冠するラースは、アメストリス国軍の最高指導者であるキング・ブラッドレイとして振る舞っています。
ホムンクルスの中で唯一老化するという特徴を持っています。「最強の眼」と称される能力を持ち、戦闘時は弾道を見切れるほどの瞬発力と、長年培った戦闘術を駆使して戦います。その強さは、単独で軍の本拠地を暴れ回れるほど強力です。
しかし、最後は人生に満足したという遺言を残し、ランファンに討ち取られました。
ホムンクルス7:スロウス(怠惰)
怠惰の名を冠するスロウスは、人間の倍以上の背丈を持つ巨漢です。
「めんどくせぇ」が口癖であるように、極度の面倒くさがりな性格をしています。ただし、国家錬成陣を作るために地下でトンネルを掘るという、途方もない作業を任された際には、面倒くさがりながらもその任務を全うし続けるという、意外な勤勉さを見せました。
また、巨大な体躯に反して、ホムンクルスの中で最速のスピード能力を有しており、超高速の突進は凄まじい破壊力を持ちます。最後は、アームストロング少将とその妹、そしてイシュヴァール殲滅戦の生き残りであるメイ・チャンたちとの戦いに敗れ、消滅しました。
「フラスコの中の小人」はファンにどう思われている? 世間の評判と人気
『鋼の錬金術師』の物語の根幹をなすフラスコの中の小人とお父様。彼らの関係性や目的は、ハガレンファンの間でどのように受け止められているのでしょうか? SNSに投稿されたコメントから、世間の評判や人気を探ってみましょう。
フラスコの中の小人に関するコメントを調べてみると、ホーエンハイムとの関係性、特にクセルクセスでの回想エピソードが感動的で好きだという意見が多く寄せられています。
物語の序盤でフラスコの中にいた頃の小人は、ホーエンハイムに気さくに話しかける陽気な存在でした。ホーエンハイムが奴隷だったという背景も相まって、そのエピソードに心を掴まれたハガレンファンが多かったようです。
彼らの出会いが、その後の壮大な物語の始まりであることを考えると、非常に感慨深いエピソードと言えるでしょう。
エピソードや関係性の評価以外には、考察系のコメントも多く見られます。特に、フラスコの中の小人とホムンクルスたちの関係性に関する考察が多く、「ホムンクルスたちの言動には、当時のお父様の記憶や感情が元になっているのではないか」といった興味深い見解が展開されています。
中には、「フラスコの中の小人」という名前自体を気に入っているハガレンファンもいました。一般的にホムンクルスは錬金術によって生まれた人造人間を指しますが、錬金術に用いられる「フラスコ」と「小人」を組み合わせたネーミングには、作品の世界観を凝縮したセンスを感じられると評価されています。
まとめ:「フラスコの中の小人」こそ、『鋼の錬金術師』の“原点”だった!
『鋼の錬金術師』に登場する「フラスコの中の小人」は、まさにラスボス「お父様」と同一人物であり、物語のすべての始まりとなった存在でした。
ホーエンハイムの錬金術によって偶然生まれ、その野望のためにクセルクセス王国を一夜にして滅亡させ、圧倒的な強さを手に入れて世界を掌握しようとした彼の姿に、興奮や感動を覚えたハガレンファンは少なくないでしょう。
フラスコの中の小人について深く知らなかったという方も、ぜひ『鋼の錬金術師』本編を改めてチェックし、その存在と、物語の根幹をなす彼の「活躍」を再確認してみてはいかがでしょうか。
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