『転生したらスライムだった件』（転スラ）の物語序盤から、暗躍を続けていたキャラクターがいます。
それが、七つの大罪における「憤怒」の魔王を冠する、魔王クレイマンです。
リムルがジュラの大森林で勢力を拡大する裏で、彼は様々な謀略を仕掛け、リムルたちの前に立ちはだかるボス的な存在として描かれました。
この記事では、読者の間で議論を呼んだクレイマンの強さやその真の目的、そして壮絶な最期に至るまでの経緯を深掘りします。
さらに、彼と深く関わるカザリームとの関係性、そして物語の真相に迫る黒幕の存在についても考察していきましょう。
クレイマンとは？ そのプロフィールと『転スラ』の世界観
まずは、魔王クレイマンがどのような人物だったのか、その基本的な情報から見ていきましょう。
物語の重要人物であるクレイマンのプロフィールと、『転スラ』の作品概要、そしてあらすじを振り返ります。
クレイマンのプロフィール
| 名前 | クレイマン |
| 二つ名 | 人形傀儡師（マリオネットマスター）、喜狂の道化（クレイジーピエロ） |
| 種族 | 妖死族（デスマン） |
| 所属 | 元十大魔王（現在はリムルが加入し八星魔王）、中庸道化連 |
| 領地 | 傀儡国ジスターヴ |
| 特徴 | 約300～400年前に十大魔王の一員となる。他者を操る能力に長け、裏では「中庸道化連」の一員として暗躍を続けていた。 |
『転生したらスライムだった件』の概要
『転スラ』の愛称で親しまれる『転生したらスライムだった件』は、小説投稿サイト『小説家になろう』で2013年から投稿され、その人気から2014年には書籍化されました。
さらに2015年からは川上泰樹によるコミカライズ版が『月刊少年シリウス』で連載を開始し、テレビアニメ化、劇場アニメ化、ゲーム化など、様々なメディアミックスが展開されている大ヒット作です。
異世界転生ものの先駆け的な作品として、その独特の世界観と魅力的なキャラクターが多くのファンを惹きつけています。
『転生したらスライムだった件』のあらすじ
物語の主人公、三上悟は、ある日通り魔に襲われて命を落とし、気がつけば異世界で一匹のスライムに転生していました。
そこは魔物やスキルが存在する不思議な世界で、彼は偶然にも封印されていた暴風竜ヴェルドラと出会い、友人となります。
ヴェルドラから「リムル＝テンペスト」という名を与えられたスライムは、ヴェルドラの封印を解きながら、様々な魔物たちを配下にし、ジュラの大森林に一大勢力を築き上げていきます。
いくつもの困難や戦いを経て、リムルは最終的に魔王の一人となり、世界の情勢にも大きな影響を与えていく、壮大な異世界ファンタジーです。
魔王クレイマンの強さ、目的、そして悲劇的な最期
『転スラ』の物語序盤から中盤にかけて、リムルの前に立ちはだかる最大の敵として存在した魔王クレイマン。
彼の正体、真の目的、そして他のキャラクターとの関係性には、『転スラ』の物語の展開を大きく左右する重要な要素が隠されています。
まさに『転スラ』において特に重要なキャラクターの一人と言えるクレイマンの強さ、目的、そして彼の最期について深く掘り下げていきましょう。
クレイマンの強さと能力：謀略の天才
クレイマンは、その二つ名である「人形傀儡師（マリオネットマスター）」が示す通り、直接的な戦闘能力よりも謀略や暗躍に長けている魔王でした。
彼の能力は、他者を操ることに特化しています。
ユニークスキル〈操演者（アヤツルモノ）〉は、他者の心臓に呪印を刻むことで支配し、さらにその配下の目や耳を通じて情報を集めることができるという、情報戦と支配に優れたスキルです。
また、秘奥義の〈操魔王支配（デモン・マリオネット）〉は、呪印がなくとも対象を支配できる強力な呪法ですが、ミリムがクレイマンの能力を無効化していたことからもわかるように、格上の相手には通用しないという弱点も持っていました。
読者の間では、クレイマンの真の強さは、個人の戦闘力ではなく、その周到な準備と人を動かす力にあったという見方が強いです。
クレイマンとカザリームの関係：親子のような絆と宿命
妖死族であるクレイマンは、元魔王カザリームによって死体から造られた存在です。
カザリームは〈呪術王（カースロード）〉と呼ばれた魔王で、かつて故郷を滅ぼされた屈辱をきっかけに妖死族を作り出す禁忌の呪術を編み出し、ラプラスたち中庸道化連のメンバーを生み出しました。
クレイマンはカザリームの右腕として仕え、カザリームのことを実の親のように慕っていたとされています。
そもそもクレイマンが魔王になれたのもカザリームの助けが大きかったとされており、二人の間には強い絆があったことが伺えます。
しかし、その後カザリームは魔王レオンに敗れて死亡し、この出来事がクレイマンのその後の行動の大きな動機となっていきます。
クレイマンの目的：復讐と覚醒への渇望
クレイマンの目的は大きく分けて二つありました。
一つ目は、魔王レオンに敗れ死亡したカザリームの復活です。
カザリームの魂は星幽体として生存しており、その復活のためにクレイマンは中庸道化連として様々な暗躍を開始しました。
そして二つ目の目的は、彼自身の覚醒魔王への進化です。
クレイマンは既に魔王種には到達していましたが、さらなる進化のためには大量の魂が必要でした。
そのため、彼はファルムス王国とテンペストの戦争を引き起こし、多くの魂を回収しようと目論みます。
しかし、その目論見はリムルによって完全に妨害されてしまい、彼の計画は大きく狂っていくことになります。
クレイマンの死亡までの経緯：ワルプルギスでの決着
クレイマンは、ファルムス王国とテンペストの戦争で魂の回収に失敗した後、最終手段として〈魔王達の宴（ワルプルギス）〉でリムルを罠にハメることにしました。
しかし、他の魔王たちは彼の思惑通りには応じず、結果としてリムル陣営とクレイマン陣営が直接戦闘することになってしまいます。
頼みの綱であったミリムにも洗脳が効いておらず、クレイマンはあっという間に追い詰められました。
追い込まれた彼は強引な覚醒進化に成功したものの、それでもリムルには全く及ばず、最後はリムルの究極能力「暴食之王（ベルゼビュート）」によって魂ごと捕食され、完全に死亡し、『転スラ』の舞台から退場しました。
彼の最期は、個の力で圧倒するリムルと、謀略に長けるクレイマンという対比が際立った象徴的なシーンとして、多くの読者の記憶に残っています。
クレイマンの死亡で判明した「黒幕」の存在
Web版『転スラ』では、クレイマンが死亡する際にカザリームの復活が目的だったと白状しました。
一方、書籍版では最後まで口を割りませんでしたが、アニメ版ではカザリームの名が出ています。
このことから、カザリームが黒幕だと判明したかのように思えましたが、実は物語の真相はより複雑でした。
真の黒幕はユウキ・カグラザカであり、彼の手でカザリームは既にカガリという名で復活しています。
さらに、クレイマンは東の帝国の異世界人であるタツヤ・コンドウによって長年思考誘導を受けていたという事実も後に判明します。
ラプラスたち中庸道化連の助言を聞かずにクレイマンが暴走していたのは、この思考誘導が原因だったという見方もできます。
彼の行動が単なる悪役のそれではなく、より深い背景があったことが、物語の奥行きを広げていると考える読者も多いようです。
クレイマンを支えた配下たち：「五本指」の幹部たち
『転スラ』の世界には、配下を持たない魔王もいますが、クレイマンは多くの配下を従えていました。
その中でも特にトップクラスの強さを持つのが、「五本指」と呼ばれる5人の幹部たちです。
ここでは、クレイマンの暗躍を支えた五本指のメンバーについて、それぞれの特徴と運命を解説します。
クレイマンの配下1：ヤムザ（中指）
五本指の〈中指〉を担っていたのがヤムザです。
彼は五本指の筆頭であり、氷結魔剣を使いこなす実力者でした。
しかし、テンペスト陣営との戦争において、ユーラザニア三獣士のアルビスに敗北します。
さらにその後、クレイマンの仕込みによって捨て駒としてカリュブディスを憑依させられ暴走。
最後はベニマルの手によって瞬殺されてしまうという、悲劇的な最期を迎えました。
彼の運命は、クレイマンの冷酷な一面を際立たせるものとなりました。
クレイマンの配下2：アダルマン（示指）
五本指の〈示指〉だったのがアダルマンです。
現在の彼はワイトキングですが、元は人間で高位の神聖魔法使いでした。
かつてドラゴンゾンビやアンデッドとの戦いで死亡し、その際にカザリームによって死霊化され、配下になりました。
アダルマンは呪いで縛られ、ただ命令に従うだけの存在となっていたとされています。
しかしその後、クレイマンの領地ジスターヴに侵攻してきたテンペスト軍との戦いにおいて、シュナの魔法によって呪いが解かれ、アダルマンはリムルの新たな配下として加わることになります。
彼の転身は、リムルのカリスマ性を象徴するエピソードの一つと言えるでしょう。
クレイマンの配下3：ピローネ（小指）
五本指の〈小指〉はピローネです。
ピローネは、クレイマン配下の五本指の中で唯一、作中でほぼ活躍する姿を見せることなく死亡してしまいます。
彼女は偵察・情報収集を任務としていましたが、その任務中にディアブロによって始末されました。
具体的には、ファルムス帝国との戦争時、リムルによって召喚されたディアブロがラーゼンと戦っている中で、熱収束砲（ニュークリアカノン）を容易く上空にそらしましたが、それは監視していたピローネを狙ったものだったのです。
このエピソードは、ディアブロの恐ろしさと、クレイマンの配下の命が彼にとってどれほど軽いものだったかを物語っています。
クレイマンの配下4：九頭獣（母指）
五本指の〈母指〉は九頭獣（ナインヘッド）です。
九頭獣は9つの尻尾を持つ妖狐ですが、ワルプルギス時点では尻尾は3つでした。
ワルプルギスにおいてクレイマンの陣営として戦いましたが、実はこの九頭獣もクレイマンの呪いによって強引に従わされているだけでした。
そのことを知ったリムルは、クレイマンによる呪いを解き、さらにクマラという名付けまでして保護しました。
このクマラは後に迷宮十傑の一人となり、テンペストにおける最高戦力の一角を担う存在へと成長していきます。
彼女の救済と成長は、リムルの慈悲深さと、彼が築く国の未来を示唆していると考えることができます。
クレイマンの配下5：ミュウラン（薬指）
五本指の〈薬指〉はミュウランです。
ミュウランはもともと優秀な魔導士でしたが、クレイマンによって心臓を奪われ服従させられました。
そしてクレイマンの命令でテンペストに潜入し、そこでヨウムに心を惹かれることになります。
するとクレイマンはヨウムも脅しの材料に加え、その結果ミュウランはテンペストを裏切り、ファルメス王国による侵略の被害が拡大してしまいました。
そんなミュウランの立場を把握したリムルは、クレイマンの呪縛から彼女を解き放つことを選びました。
彼女の物語は、クレイマンの冷酷さと、リムルの「慈悲の心」を対比させる重要なエピソードとして描かれています。
クレイマンの声優は子安武人！その魅力と演技力
アニメ版『転スラ』で魔王クレイマンの声を演じているのは、ベテラン声優の子安武人です。
彼の演技は、クレイマンというキャラクターに大きなインパクトを与え、その存在感を際立たせています。
子安武人の声優としての活動やプロフィール、主な出演作品について解説します。
クレイマンの声優：子安武人
| 名前 | 子安武人（こやす たけひと） |
| 生年月日 | 1967年5月5日 |
| 出身地 | 神奈川県 |
| 所属 | ティーズファクトリー（代表取締役） |
| デビュー | 1988年 |
子安武人の活動と幅広い演技力
子安武人は1988年に声優としてデビューし、現在は自身が代表取締役を務める声優事務所ティーズファクトリーに所属しています。
彼の演じる役は非常に幅広く、国民的アニメから深夜アニメまで、数多くの作品で個性的なキャラクターに命を吹き込んできました。
頼りになる味方の兄貴分から、小物感満載の敵役、クールな二枚目からコミカルな三枚目まで、あらゆるタイプのキャラクターを演じ分け、その存在感を発揮しています。
特にインパクトの強いキャラクターを演じることが多いためか、子安が演じるだけでそのキャラクターが話題になることも珍しくありません。
クレイマンのキャラクター性も、子安の演技によってより一層引き立てられたと考えるファンは多いでしょう。
子安武人の主な出演作品
子安武人の代表的な出演作品は多岐にわたります。
『機動戦士ガンダムSEED』のムウ・ラ・フラガ、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』のネオ・ロアノーク、『ボボボーボ・ボーボボ』のボーボボ、『ONE PIECE』の青雉（クザン）、『銀魂』の高杉晋助、『ソードアート・オンライン』の須郷信之（オベイロン）、『食戟のソーマ』の堂島銀、『ジョジョの奇妙な冒険』のディオ・ブランドー、『Re:ゼロから始める異世界生活』のロズワール・L・メイザース、『進撃の巨人』のジーク・イェーガー、『異世界おじさん』のおじさんなど、挙げればきりがありません。
これらの作品からも、子安の幅広い演技力と、個性的なキャラクターを演じきる表現力が伺えます。
クレイマンに対する世間の評判と意外な人気
『転スラ』という作品、そしてファンの間でのクレイマンの扱いは、非常に特徴的です。
クレイマンが死亡し物語から退場した後も、彼の名前が作中で度々使われているのには、ある理由があります。
それは、クレイマンの強さが、他の『転スラ』キャラクターの強さを測るための「物差し」として頻繁に持ち出されているからです。
『転スラ』序盤のボス的存在であり、リムルに圧倒されたとはいえ、魔王という強者の立場だったことが、強さの基準として使いやすい理由になっていると推測できます。
小物感と人気：愛される「噛ませ犬」キャラ
『転スラ』に登場する多くのキャラクターの中でも、クレイマンは特にわかりやすい「敵キャラ」として描かれました。
そしてリムルと直接戦う段階になると、その謀略家の顔とは裏腹に、一気に「小物感満載」のキャラクターへと変貌しました。
そのため、ファンの間では、クレイマンが早くリムルに倒されることが望まれ続け、実際にその通りになると大いに盛り上がりました。
こうした意味で、クレイマンは『転スラ』で屈指の人気キャラと言えるかもしれません。
「噛ませ犬」的なポジションでありながら、その存在感が物語にスパイスを加える、憎めないキャラクターとして愛されたという見方もできます。
子安武人の演技が与えた絶大なインパクト
『転スラ』におけるクレイマンのインパクトに大きく寄与しているのが、アニメ版『転スラ』で声優を担当した子安武人の演技だという声が多く見つかりました。
実際、クレイマンの「噛ませ犬感」や「小物臭」をより助長しているのが子安の演技だと、ファンの間では話題になっています。
彼が演じることで、クレイマンのキャラクターがより一層際立ち、視聴者の記憶に残る存在になったと言えるでしょう。
クレイマンは「強かった」のか？ その総括
『転スラ』物語序盤におけるボスである魔王クレイマンは、その謀略と暗躍によってリムルたちテンペスト勢力を苦しめてきました。
様々な勢力や国を巻き込む集団的な戦いにおいては、紛れもなく強力な敵キャラクターであったと言えます。
しかし、その悉くを退けたリムルと直接戦うことになった結果、個としての強さに欠けたクレイマンはあっけなく敗北し、死亡してしまいます。
そして、クレイマンを倒したことでリムルは新たな魔王となり、『転スラ』の物語は新たな段階へと突入していくことになります。
クレイマンの存在は、リムルの成長と、彼の支配するテンペストの勢力拡大を促す重要なターニングポイントだったと考える読者も多いでしょう。
彼は「最強の敵」ではなかったかもしれませんが、「物語を動かす存在」としては非常に強烈なインパクトを残したキャラクターと言えるでしょう。
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