
サッカー漫画『エリアの騎士』とは?
『エリアの騎士』(THE KNIGHT in THE AREA)は、原作・伊賀大晃、作画・月山可也によるサッカー漫画です。
2006年から2017年まで「週刊少年マガジン」で約11年間にわたり連載され、単行本は全57巻にも及びました。
また、2012年1月から9月にかけてテレビアニメも放送されましたが、アニメ版は漫画版の結末(最終回)までは描かれておらず、アニメオリジナルの結末が描かれています。
この作品は、主人公・逢沢駆が中学校時代から高校卒業までの約5年間を描いていますが、その緻密な描写から「11年連載、57巻」という長期連載となりました。
本記事では、この長期連載を経て描かれた『エリアの騎士』の最終回に焦点を当て、その内容と読者の感想、そして考察をご紹介します。
『エリアの騎士』最終回前のあらすじを振り返る
最終回の内容を理解するためには、これまでの物語のあらすじを簡単に振り返っておくことが重要です。
物語の核心に迫る「憑依現象」や、駆と奈々の関係性、そして九頭高サッカー部の軌跡を見ていきましょう。
再会、そして兄との別離
物語は、U-15日本代表であり鎌倉学館サッカー部主将の兄、逢沢傑(ミッドフィールダー)に憧れるサッカー部員の逢沢駆(フォワード)から始まります。
駆は精神的に弱く、「ミスターノーゴール」というあだ名がついていました。
ある日、逢沢兄弟と小学校時代に同じクラブでプレイしていた幼馴染の「セブン」こと美島奈々(ミッドフィールダー)がアメリカから帰国し、鎌倉学館に転校してきます。
奈々はアメリカでサッカー選手としてプロデビューしていましたが、その事実を伏せてサッカー部マネージャーとして入部し、陰に日向に駆を励まし、協力してストライカーとしての自信を取り戻させようとします。
サッカー部では失った自信からマネージャーに甘んじていた駆ですが、大会前にレギュラー選手が怪我をしたため、その穴を埋めるための選考選手として指名され紅白戦に出場することになります。
結局、紅白戦では決定的な結果は出せなかったものの、チームメイトからは「傑の出す本気のパスについていけているのは駆だけだ」と評価を受けます。
しかし、傑からは「決定的にハートが足りない」と評価され、その試合内容に納得していない駆は「これが実力だ」と諦め、けじめとして退部を決意します。
そんな朝、駆は通学中に退部の件を伝えようと傑に話しかけますが、傑は「自分は試合をコントロールする王様だが、勝つためにはゴールマウスをこじ開ける騎士(エリアの騎士)が必要だ」と告げます。
日本代表のプレッシャーから普段は悪夢しか見なかった傑は、「昨夜、お前(駆)とワールドカップのピッチでゴールを決める夢を見た」と伝え、駆に「エリアの騎士」を目指せと伝えようとします。
しかし、不幸にも居眠り運転のトラックに突っ込まれ、兄弟は重体となってしまいます。
皆の願いも虚しく、傑は脳死状態に陥り、駆は心臓に深刻なダメージを受け自力での心肺機能を失ってしまいます。
この絶望的な状況の中、脳死した傑をドナーとして、その心臓を駆へ生体間移植することとなり、駆は一命を取り止めます。
兄の心臓と共に「エリアの騎士」としての決意
兄・傑の心臓を移植された事実を奈々から聞かされた駆は錯乱してしまいます。
しかし、昏睡中に見たサッカーの夢で、傑から受けた「ラストパス」の意味を理解します。
そして、一人生き残った駆は、傑が抱いていた「世界を目指す」という強い意志を知り、「3人でワールドカップを一緒につかむ」という兄弟と奈々の夢を思い出し、再びストライカー「エリアの騎士」への道を歩き出す決意を固めます。
『エリアの騎士』中盤から最終回までの展開とリアリティ
『エリアの騎士』は、サッカーのプレイシーンにおいて、無駄にアクロバティックな(有り得ない)演出や、魔球的な必殺技がほぼなく、比較的リアル志向の作品として始まりました。
しかし、物語が進むにつれて、兄・傑の心臓から受ける影響が強く演出されるようになります。
この演出は、端から見ると「憑依」にも見え(物語中では「レッスン」と呼ばれる)、その内容は断面だけで見るとリアリティさを欠き、読者には何が起こっているのか全然わからないといった感想を持たれてしまうこともありました。
身も蓋もない言い方をすると、「ピンチの時に憑依して弟を助ける死んだはずの兄」という構図が通底しており、主人公(駆)単体では実力が無いようにも見えてしまうという意見もありました。
この関係性を保ったままどんな内容で結末まで持って行くのか、という感想を抱く読者も多く、それらが『エリアの騎士』の「ネタ切れ」から「打ち切り説」に拍車をかける原因の一つにもなっていました。
物語後半においては、傑の意思が駆の外見にまで影響し、顔つきまで変わってしまうという描写も登場します。
兄に乗っ取られた体と、内面に押し込められた駆が、会話しながらプレイするというかなりアンビリバボーな内容となり、「また兄貴か?」「兄貴は何をしに出て来た?」という感想も多く、この辺も「ネタ切れ」から「打ち切り」と噂される一要因になっていました。
フィジカルの弱さと「なでしこ」美島奈々
駆よりも先に日本代表としてなでしこジャパンに召集されるセブンこと奈々も、天才と称されるサッカーセンスと華麗なテクニックを持ちます。
しかし、フィジカルが唯一の弱点とされていますが、その外見も相まって「この線の細さでフィジカルが弱いとされる選手が、センスとテクニックだけで日本代表というのは無理がある」という感想を抱いてしまう読者もいました。
「エリアの騎士」という言葉の真意
そもそも「エリアの騎士」はサッカーを題材にした作品ですが、サッカーにおいて「エリアの騎士」に相当する用語や呼び名は存在しないようで、経験者ですらサッカーを連想できないという声が多いようです。
また、心臓移植を受けた者がプロレベルのサッカーをプレイできるのか、という感想も多く、『エリアの騎士』の結末(最終回)を迎えるまで、そういった意見が散見されました。
しかし、これらの「アンビリバボー」な要素は、兄・傑の「ラストパス」を受け継いだ駆が、兄の夢と共に世界の頂点を目指すという、この作品ならではの「ファンタジー」として描かれているとも言えます。
『エリアの騎士』最終回直前のあらすじ:高校3年間の軌跡
最終回の話に入る前に、高校3年間の軌跡をざっと振り返ります。
最終回の飛びっぷりに、事前知識がないとついていけないためです。
最終回直前の話は、高校の卒業式を迎える場面。
その3年間で、駆は「高校総体、神奈川県予選:決勝敗退(憑依現象あり)」から、「選手権、神奈川県予選:優勝(憑依現象あり)」、そして「同、全国大会:優勝(憑依現象あり)」と、目覚ましい経歴を重ねていきます。
2年ほど前まで「ミスターノーゴール」と呼ばれた少年の活躍とは思えない見事な経歴です。
その後も高校生ながら「Uー22五輪代表候補合宿召集」から「五輪代表選出」、そして「親善試合:vs韓国、vsブラジル」、「特別指定選手としてプロ契約(J2)」から「五輪代表召集」へ「五輪2次予選、vsクウェート(アウェー)」から「vsクウェート(ホーム)」と続き、日本代表として常に召集されるようになります。
ここで一旦高校に戻り「高校総体、神奈川県予選:準決勝敗退」からJ2に戻り「2部リーグ優勝」、そして「五輪代表、親善試合vsフランクフルト(憑依現象あり、というか終始憑依されたまま)」という、見事な経歴にお腹いっぱいの感想だと話題になりました。
最終回直前の「告白」
物語の最終盤では、駆は中学時代にコソ練を行なっていた公園に奈々を呼び出します。
この公園では奈々にコソ練の相手をしてもらっていたので、お互いにとって思い出の場所でもあります。
うまく話(告白)を切り出せない駆は「サッカーをやろう」と提案をします。
女子リーグのMVPである奈々は駆からボールを奪うものの、ブーツのためあわや転倒しかけますが、駆に抱きかかえられます。
そのまま駆は「セブン、キミが好きです」と告白し、奈々も「私の片思いじゃなかったんだ」と喜び泣き出す、感動的なシーンが描かれました。
『エリアの騎士』の最終回:ワールドカップ決勝へ!
『エリアの騎士』の最終回は、唐突に日本代表とブラジルのワールドカップ準決勝戦から始まります。
日本代表の中には駆の学生時代のチームメイトやライバルが次々と、その肩書きをアナウンサーに解説されながらパスをつないで行きます。
(このような同窓会のような代表メンバーは有り得ないという声も多いようです。)
そして最後のパスは「日本が誇るエースストライカー」とアナウンスされた駆へ繋がり、放ったシュートはネットを揺らし、スコアは3-2。
日本は土壇場(とアナウンサーが解説しないと土壇場かどうか分からない状況)でリードを奪います。
夜景を望む一室で、不意に「駆?こんなところにいたの」と声がかかります。
声の主はセブンこと奈々。
駆はJAPANの文字も眩しい代表のユニフォームを着て「奈々…」と返事を返します。
「何見ているの?」奈々の質問に、対ブラジル準決勝の動画をタブレットで振り返ってイメージを作っていると伝える駆。
「ここまで来たねとうとう」「なんか夢みたい」そう語りかける奈々の指にはリングが光り、二人の関係が進展したことが示唆されます。
「ホラもう行かないと」「みんながロッカールームで待ってるよ」奈々に促された駆は、ロッカールームで「行くぞ!」「日本代表!」と叫ぶ選手たちのもとへ向かいます。
そして決勝戦のホイッスルを待つ人々の顔が並び、「俺たちでぜってーワールドカップとるんだぜ」という子どもの頃の懐かしい兄との思い出が駆の脳裏によぎります。
心臓に手を当て「うんっ!」と駆は誰にともなく返事を返し、決勝戦のホイッスルが鳴り響くところで物語は幕を閉じます。
『エリアの騎士』最終回は「打ち切り」だったのか?
リアルなサッカー漫画として始まった『エリアの騎士』ですが、その内容は次第にファンタジー要素が強くなり、唐突な展開に「打ち切り臭さ」を感じてしまう読者もいたようです。
しかし、奈々との関係も一応の決着をつけ、最後の頂点を目の前に終わる演出は、打ち切りにありがちな無理やりな内容ではないという感想を持った方も多いでしょう。
「あと1〜2話あればもう少しきれいに終えられたか」と言えば、それも難しい結末になったと思われているようです。
何と言っても11年も続いた作品です。
「打ち切り」ではなく、どちらかというと単行本化に合わせてページ調整をした印象が強い最終回だと言えるでしょう。
どん底まで追い込まれるような作風は合わないという声も多かったようですが、若干駆け足気味な感想をご紹介したものの、最終回としてはほぼ作者が想定した結末にさせられたのではないでしょうか。
「打ち切り」ではなく「ページ合わせ」だろうという声もあり、作者の意図が反映された結末であったと考えられます。
壮大な夢の始まりで幕を閉じた『エリアの騎士』を、ぜひ一度ご覧になってみてはいかがでしょうか?
今回の記事で、『エリアの騎士』の最終回について、より深くご理解いただけたでしょうか?
もし、他にも気になる漫画作品の最終回や考察があれば、ぜひ教えてくださいね。



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