
漫画家タイザン5先生が描く『タコピーの原罪』をご存じでしょうか?
作中では、読者にトラウマ級の衝撃を与えるほどの鬱シーンが多く描かれている一方で、ネット上では「ダークな世界観とタコピーとのギャップが面白い」といった声が多数あがっています。
なぜ、これほどまでに「心がえぐられる」と評される作品が、多くの読者を惹きつけ、「面白い」と感じさせるのでしょうか。
この記事では、『タコピーの原罪』のあらすじを交えながら、その魅力の核心に迫り、特に衝撃的な鬱シーンを深掘りしてご紹介します。
『タコピーの原罪』とは? 純粋なタコ型宇宙人と少女の物語
『タコピーの原罪』は、漫画家タイザン5先生によるサイエンスファンタジー漫画です。
2021年12月10日から2022年3月25日にかけて、Web漫画サイト『少年ジャンプ+』で連載され、多くの読者に衝撃を与えました。
物語は、複雑な家庭環境や学校でのいじめに苦しむ少女と、地球に「ハッピー」を広めるためにやってきたタコ型地球外生命体タコピーとの交流を描いています。
純粋無垢なタコピーが、人間の抱える闇や感情の機微を理解しようと奮闘する姿が、この作品の大きな特徴です。
ハッピー星から来たタコピーと、地球の少女しずかの出会い
物語の主人公は、地球にハッピーを広めるために来訪したタコ型地球外生命体のタコピーです。
ハッピー星では「んうえいぬkf」という本名がありますが、地球に来てからは久世しずかによって「タコピー」と名付けられました。
語尾に「っピ」と付くのが特徴で、自らの窮地を救ってくれたしずかに恩を返すため、ハッピー星に伝わる「ハッピー道具」を使って、彼女の失われた笑顔を取り戻そうとします。
しかし、タコピーが最初に出会った久世しずかは、小学4年生にして複雑な家庭事情と学校でのいじめに苛まれる女子児童でした。
外に女性を作って家に帰ってこない父と、心を壊してしまった母、そして水商売を営む母と二人きりで暮らすしずかの日常は、常に絶望に満ちています。
タコピーの純粋な思いとは裏腹に、地球の厳しい現実が立ちはだかります。
鬱漫画なのに「面白い」と評される理由
『タコピーの原罪』は、その重苦しいテーマや描写から「鬱漫画」と称されることが多いです。
しかし、多くの読者からは「面白い」「引き込まれる」といったポジティブな感想が寄せられています。
なぜこの作品は、読者の心を「えぐり」ながらも、強い魅力を放つのでしょうか。
ここでは、その理由を3つの視点から考察します。
理由1:純粋すぎるタコピーの存在
『タコピーの原罪』が面白いと言われる大きな理由の一つは、「タコピーが純粋すぎる」という点にあります。
ハッピー星から来たタコピーは、地球の常識や人間の複雑な感情を理解できません。
そのため、どんなにひどい状況であっても、それを悪意なく良い方向に捉えようとします。
不仲な人がいれば仲を取り持とうとし、いじめの現場を目撃すればいじめられている人を助けようと奔走します。
しかし、次第に地球の現状を理解し始めるタコピーは、どうすれば現状を回避できるのか、自分に何ができるのかを考え続けます。
そして、ついに彼自身が「罪」を犯してしまうのです。
皮肉なことに、しずかはタコピーが罪を犯したことに今までで一番の喜びを見せます。
純粋なタコピーは、しずかが喜んでくれたことを純粋に「良かった」と解釈し、共に喜びます。
このタコピーの「純粋さ」が、人間のエゴや残酷さを際立たせ、物語に独特の「エグみ」を与えていると考える読者が多く、それが作品の面白さに繋がっているという見方もあります。
理由2:救いようのない子供たちの家庭環境
登場人物である子供たちの「救いようのない家庭環境」も、この作品の「鬱」の要素でありながら、物語の深みを増す要因となっています。
主人公の久世しずか、そしていじめの加害者である雲母坂まりな、さらにクラスメイトの東直樹。
彼ら3人の家庭環境は、どれも目を覆いたくなるような問題を抱えています。
しずかの場合は、家庭を捨てて東京に拠点を移した父親と、心を壊して水商売を営む母親の存在です。
まりなは、しずかの母親と不倫関係にあった父親が家庭を顧みなくなり、家庭が崩壊したことで、しずかに尋常ではない憎悪を抱いています。
東もまた、成績を上げるために虐待まがいの勉強方法を強いる「教育ママ」である母親からの束縛や、自分よりも優秀な兄に対する劣等感を抱え、多大なストレスに苦しんでいます。
これらのリアルで救いのない家庭環境が、子供たちの行動や心理に大きな影響を与え、読者に深く考えさせるきっかけを与えています。
理由3:絶望の中に見え隠れする僅かな「幸せ」
純粋ゆえに罪を犯してしまうタコピーや、救いのない家庭環境に苦しむメインキャラクターたちを取り上げると、確かに『タコピーの原罪』は「鬱漫画」にしか見えないかもしれません。
しかし、本作には「少しだけある幸せのシーン」が描かれていることも、読者を惹きつける理由の一つと言われています。
例えば、子供たちが束の間、幸せそうに遊んでいるシーンなどです。
これらの短い「幸せ」の描写があるからこそ、その後の絶望への「転落」がより際立ち、読者の感情を強く揺さぶる効果を生み出していると考えることができます。
読者にトラウマを与えた衝撃的な鬱シーン
『タコピーの原罪』が「鬱漫画」と呼ばれるにふさわしい、読者の心に深く刻み込まれた衝撃的なシーンは数多く存在します。
純粋なタコピーが、地球人の憎悪やエゴに直面し、そのたびに状況が悪化していく様子は、まさにこの作品の「見どころ」と言えるでしょう。
ここでは、特に読者に強いインパクトを与えた鬱シーンを3つご紹介します。
鬱シーン1:「仲直りリボン」がもたらした悲劇
一つ目に紹介するトラウマ級の衝撃的な鬱シーンは、「仲直りリボンを使うシーン」です。
タコピーは、しずかから窮地を救ってもらった恩を返すため、空を飛べたり、時間を元に戻せたりする「ハッピー道具」を使って、しずかの失われた笑顔を取り戻そうとします。
しかし、複雑な家庭事情が原因でいじめに遭い、絶望的な状況にあるしずかの反応は常に薄いままでした。
そんなある日、タコピーはしずかの家で、彼女が飼い犬・チャッピーに対して今まで見せたこともないような笑顔を浮かべているのを目撃します。
改めて彼女を笑顔にしたいと心に誓ったタコピーでしたが、その願いは翌日の出来事によってもろくも崩れ去ります。
翌日、公園で待っていたタコピーのもとに現れたのは、全身傷だらけで、手にはチャッピーの首輪だけを持ったしずかでした。
おそらく、しずかをいじめる同級生たちに暴力を振るわれた挙句、何らかの理由でチャッピーがいなくなってしまったものと思われます。
この状況を何も理解できず、推測もできないタコピーは、またも無邪気にハッピー道具を使ってしずかを励まそうとします。
そして、しずかが興味を示したのが「仲直りリボン」でした。
この道具は、喧嘩してしまった相手の小指とリボンをつなぐことで、すぐに仲直りできるという平和的な道具であり、無限に伸ばすこともできます。
しかし、タコピーからこの道具を貸してもらったしずかは、なんと仲直りリボンを使って首をくくり、自ら命を絶つという衝撃的な行動に出たのです。
このシーンは、タコピーの純粋な思いと、しずかの抱える絶望の深さの対比が際立ち、多くの読者に大きな衝撃を与えました。
鬱シーン2:タコピーが知った地球人の「憎悪」
二つ目に紹介するトラウマ級の衝撃的な鬱シーンは、「タコピーが地球人の憎悪で絶望するシーン」です。
しずかが仲直りリボンを使って自ら命を絶ったものの、タコピーがハッピー道具「ハッピーカメラ」を使って時間を巻き戻したことで、彼女は生き返ります。
タコピーは、しずかがなぜ自殺を図ったのか、その原因を探るべく、しずかに学校に連れて行ってもらうことにします。
そこで待ち受けていたのは、同級生の雲母坂まりなによる過酷ないじめでした。
まりなは、しずかの母親と自分の父親が不倫関係にあったことが原因で家庭が崩壊してしまったことで、しずかに対して尋常ではない憎しみを抱いていたのです。
ところが、まりながしずかをいじめるのは「好きの裏返し」だと勘違いしたタコピーは、しずかに扮した状態でまりなとの会話を試みます。
しかし、まりなは冷徹な表情でしずかに暴力を振るいました。
タコピーは、今まで見たことのない地球人の冷徹な表情と、暴力から感じる激しい憎悪に触れて恐怖を感じます。
それでもタコピーは諦めずにまりなと会話を続けようとしますが、いよいよまりなから凶器が振り下ろされそうになったことで、ついに「無理だ」と心の中で呟きます。
純粋かつ無邪気なタコピーが初めて地球人の憎悪に触れて絶望してしまうこのシーンは、まさに「鬱漫画」と呼ばれるに相応しい場面として、読者の記憶に強く残っています。
鬱シーン3:東くんの「罪」と共犯関係
三つ目に紹介するトラウマ級の衝撃的な鬱シーンは、「東くんが罪を犯すシーン」です。
タコピーがハッピーカメラの誤作動でまりなを撲殺してしまった後、しずかとまりなは激しい口論に入ります。
タコピーは仲裁に入ろうとしますが、その際に誤ってハッピー道具「ハッピーカメラ」でまりなを撲殺してしまいます。
その一連の様子を見ていたのは、しずかとまりなのクラスメイトである東直樹でした。
彼は、好意を寄せているしずかの後をつけていたため、タコピーの犯行現場を目撃してしまったのです。
一方、しずかはタコピーがまりなを撲殺したことで、今まで見せたこともないような笑顔を浮かべました。
東はそんなしずかに対し、自首すべきだと冷静にアドバイスしますが、しずかは捕まりたくないため、東にどうすればまりなの死を隠蔽できるのかと質問します。
親から見放されているというコンプレックスを抱えていた東は、しずかの「東くんしかいないの、助けて」という、彼が最も欲していた言葉をかけられたことで、まりなの死体隠蔽に手を貸すことを決意します。
このシーンは、子供たちの純粋さと、追い詰められた状況で犯してしまう罪の重さを生々しく描き出し、読者に深い心の痛みを与えました。
『タコピーの原罪』登場キャラクター一覧
ここまで『タコピーの原罪』が鬱漫画だけど面白いと言われる理由や、衝撃的な鬱シーンを紹介してきましたが、物語を彩る主要キャラクターたちも欠かせません。
ここでは、『タコピーの原罪』に登場する主要キャラクターを一覧形式でご紹介します。
タコピー
本作の主人公で、しずかによって名付けられたタコ型地球外生命体です。
ハッピー星から地球にやってきました。
自らを救ってくれたしずかに恩を返すため、ハッピー道具を用いて彼女の問題を解決しようと奔走します。
久世しずか(くぜ しずか)
本作のヒロインで、小学4年生の少女です。
地球のことを何も知らず、空腹になってしまったタコピーを助けたことで、彼に懐かれるようになります。
父親が家庭を捨てて東京に拠点を移し、水商売を営む母親と共に生活しており、家庭環境に問題を抱えています。
雲母坂まりな(きららざか まりな)
もう一人のヒロイン的存在で、しずかの同級生の女子児童です。
物語のトラウマ級の衝撃的な鬱シーンが描かれる原因となる人物です。
しずかに対して強い憎悪を抱き、いじめを行っています。
その憎悪は、父親がしずかの母親と不倫関係にあり、それがきっかけで父親が家庭を顧みなくなったことに起因しています。
東直樹(あずま なおき)
しずかの同級生の男子児童です。
成績優秀で学級委員長も務める秀才ですが、教育ママである母親から受ける束縛や、自分よりも優秀な兄に対する劣等感により、多大なストレスを抱えています。
まりなにいじめを受けているしずかを密かに気にかけており、最終的にはまりなの死体隠蔽に手を貸す共犯者となってしまいます。
『タコピーの原罪』が問いかけるもの
『タコピーの原罪』について寄せられたネット上の感想や評価を見ると、「面白い」「ダークな世界観とタコピーとのギャップがたまらない」といった声が多数あがっています。
「闇、闇だよ…」という感想があるように、トラウマ級の鬱シーンが多いにも関わらず、読者が「面白い」と評するのは、その「闇」があるからこそ、作品の魅力が引き上げられているという見方もできます。
「ポップな見た目してエグい内容だった…」「読んでてつらい…」といった声と共に、「とても精巧に作られた作品」「すごく面白い!」といった高評価が寄せられることも少なくありません。
特に、人の感情が分からない純粋なタコピーの存在が、物語の「エグみ」をより一層強くしているという意見も多く見られます。
多くの読者が本作の設定に惹かれて読み始めたと語っていることから、その独創的な世界観とキャラクター設定が、作品の大きな魅力となっていることは間違いありません。
『タコピーの原罪』は、純粋な存在と人間の暗部が織りなす物語を通じて、私たちに「罪」とは何か、そして「ハッピー」とは何かを深く問いかけます。
ぜひ、あなた自身でこの衝撃的な物語を体験し、作品が投げかける問いと向き合ってみてはいかがでしょうか。



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