『ケンガンアシュラ』の物語を彩る個性的な闘技者の中でも、ひときわ異彩を放つ存在、それが死刑囚闘技者・坂東洋平です。
その不気味なほどの冷酷さと、常識を逸脱した強さは、多くの読者に忘れられないインパクトを残しました。
通称「血染めの象牙」。
彼はなぜ、死刑執行を何度も耐え抜くことができたのか。
そして、格闘技経験がないにもかかわらず、なぜトーナメントで勝利を収めることができたのでしょうか。
本稿では、坂東洋平の謎に満ちた正体から、その特殊な体質、そしてトーナメントで見せた戦いの軌跡、さらに作中屈指のトリッキーな強さの秘密を深掘りして解説します。
また、物語の裏で暗躍する「蟲」との関係性や、その後の動向にも触れ、この特異なキャラクターの魅力を徹底的に解き明かしていきます。
坂東洋平のプロフィール：元エリートが歩んだ残酷な道
「血染めの象牙」の素顔
| 通称 | 血染めの象牙 |
| 身長 | 201cm |
| 体重 | 147kg |
| 年齢 | 51歳 |
| 拳願仕合戦績 | 初参戦 |
坂東洋平は、元・帝都大学医学部という輝かしい経歴を持つエリートでした。
しかし、その知性は残酷な狂気と結びついていました。
彼は在学中、暴力団事務所を襲撃し、素手で組員や警官合わせて19人を殺害するという前代未聞の凶行に及び、死刑囚となります。
この設定は、トマス・ハリスの小説『レッド・ドラゴン』や、その映画化作品『羊たちの沈黙』に登場する、知性を持つサイコパス殺人鬼ハンニバル・レクター博士がモデルになっていると考える読者が多く、その不気味な存在感はレクター博士を彷彿とさせます。
また、死刑囚であることや、身体能力が常識を逸しているという設定は、同じく格闘漫画の金字塔『バキ』シリーズに登場する、地下闘技場最凶死刑囚ドリアンとの共通点も指摘されており、その背景設定だけでも彼の異質さが際立っていると言えるでしょう。
刑務所に収監されてからも、十王通信社長・高田清助の依頼により、同じ死刑囚である「狂信鬼」永島銀司と殺し合いをさせられ、勝利を収めたことで拳願絶命トーナメントへの出場が決まります。
この試合に臨んだ理由は、彼自身が口にした「人を壊す権利」と「研究」のため。
彼の目的は、単なる勝利ではなく、自らの手で人間を破壊し、その過程を観察することにあると推測されます。
坂東洋平の強さ：超軟体体質と一撃必殺の技
坂東洋平の強さは、格闘技の技術ではなく、その特異な肉体と、そこから生み出される一撃必殺の攻撃にあります。
常識を覆す「超軟体体質」
彼の最大の強みは、生まれつきの「超軟体体質」です。
人間の関節の可動域を遥かに超えるこの体質は、なんと絞首刑による死刑執行を25年間で45回も耐え抜くことを可能にしました。
これは、絞首刑で首が折れる直前に首の関節を外すことで、衝撃を軽減していると推測されます。
この特殊な体質は、彼を柔道やブラジリアン柔術のような関節技の達人たちからほとんど無傷で守ることができ、彼の防御力を非常に高いものにしています。
英はじめとの試合でも、英の指を逆にへし折るという、常人にはあり得ない反応を見せ、この体質が戦闘においていかに有効であるかを証明しました。
「軟体」と聞くと弱そうに聞こえますが、坂東洋平の場合は、それが鋼鉄の象牙のような強靭な武器になっているのです。
目で追えない一撃必殺の「鞭」
坂東洋平は格闘技経験がないものの、その特異な体質を利用した、強力な必殺技を持っています。
それは、関節を外して間合いを伸ばした腕を、鞭のように超高速で振るう攻撃です。
この攻撃のスピードは、人間の目では追うことが不可能とされ、直撃すれば「被害者の頭が爆発した」と証言されるほどの破壊力を持ちます。
この技は、死刑囚対決で永島銀司を一撃で殺害しただけでなく、トーナメント後のクーデターでも、敵の守護者（ガーディアン）ランキング7位の大郷を瞬殺しています。
一撃必殺の遠距離攻撃は、接近戦を主とする闘技者たちにとって、非常に厄介な強みと言えるでしょう。
これらの能力を総合すると、坂東洋平は、純粋な格闘技術は劣るものの、特殊な体質と殺人経験に裏打ちされた容赦のなさで、闘技者の中でも上位の強さを持つと考えることができます。
拳願絶命トーナメントでの軌跡：異質な闘技者との激突
坂東洋平の強さは、拳願絶命トーナメントでより明確に示されました。
彼は、他の誰とも違う異質な戦い方で、強敵たちを苦しめました。
1回戦：VS英はじめ
1回戦の相手は、元・帝都大学の同級生で、現在は日本政府お抱えの始末人「解剖魔」英はじめでした。
この試合は、殺人経験豊富な異常者同士の対決として、多くの読者を興奮させました。
英は、中国武術「霊枢擒拿術」を流儀とし、経穴を的確に突くことで坂東を翻弄します。
しかし、坂東の超軟体体質の前には経穴攻撃は通用せず、逆に英の指をへし折るという反撃を食らわせます。
追い詰められた英は、自らの大腿骨から切り出した「骨剣」や、かかとに仕込んだ高圧ガスによる爆発的な蹴りを放つなど、常軌を逸した手段で対抗しました。
この英の戦い方に対し、坂東が「SFの世界じゃないか」と呆れるシーンは、彼が普段は冷静な人間であることを示しており、読者からの笑いを誘いました。
最終的に、坂東は英の首をへし折り、勝利を収めます。
しかし、英は死んだ時のために自らに施していた肉体改造で蘇生し、坂東に致死性ウィルスを感染させていました。
この予想外の展開は、次の試合に向けて大きな波乱を予感させました。
2回戦：VS初見泉
2回戦の相手は、「浮雲」初見泉でした。
致死性ウィルスに感染した坂東がどうなるのか、多くの読者が注目する中、彼は何事もなかったかのように登場しました。
実は、古海製薬の治療によって一命を取り留めていたことが明かされます。
坂東は、1回戦では見せなかった必殺の「鞭」を序盤から解禁し、初見を追い詰めます。
しかし、初見は事前に坂東の技を研究し、紙一重のところで攻撃をかわし続けました。
合気道の関節技が通用しないと判断した初見は、関節ではなく骨に直接技をかけるという、常人には不可能な戦法に出ます。
初見の手のひらで踊らされていたと悟った坂東は、最終的に初見流合気道の奥義「百会投げ」によって脳天から叩きつけられ、敗北しました。
ここでも、彼は自身の体質を利用して衝撃を軽減し、一命を取り留めます。
この試合後、感情がないように見えた坂東が、初めて「勝ちたい」という感情を露わにし、初見へのリベンジを宣言したシーンは、彼の人間的な変化を示す重要な描写でした。
坂東洋平のその後：物語の裏で暗躍する存在
初見に敗れた後、坂東洋平はトーナメント会場で厳重に拘束されていました。
しかし、東洋電力のクーデター中に拘束を解かれ、一時的に参戦。
敵の守護者（ガーディアン）を必殺の「鞭」で殺害するという活躍を見せました。
その後、2年後の世界を描いた続編『ケンガンオメガ』で、彼の意外な動向が明らかになります。
拳願会と「煉獄」の対抗戦の裏で暗躍する謎の組織「蟲」を調査していた山下健蔵が、トーナメント終了後に坂東と面会していたことが明かされました。
坂東は、脳の研究のために「蟲」から資金提供を受けていたことが判明します。
彼は「蟲」の正体までは知らなかったようですが、その行動は結果的に「蟲」の活動に加担していたことになります。
この事実は、坂東洋平が単なる死刑囚闘技者ではなく、物語全体の大きな謎に関わるキーパーソンであったことを示唆しています。
まとめ
本稿では、死刑執行を耐え抜いた男「血染めの象牙」坂東洋平の正体と、その強さの秘密を深掘りしました。
彼の強さは、格闘技術ではなく、超軟体体質という特異な肉体と、そこから生み出される一撃必殺の「鞭」にあります。
格闘漫画のキャラクターとしては異質な存在ですが、だからこそ、彼の戦いは予測不能で、読者を引きつけました。
感情を持たない猟奇殺人犯に見えた彼が、初見に敗れた後に「勝ちたい」という感情を覚えるシーンは、彼の人間性が失われていなかったことを示しており、彼のキャラクターに深みを与えています。
もし相手が事前に彼を研究していなかったら、彼はもっと上位まで勝ち進んでいたかもしれません。
『ケンガンオメガ』では、物語の裏側で暗躍する「蟲」との関係性も明らかになり、彼の物語はまだ終わっていないことを示唆しています。
死刑囚という立場上、自由に動くことはできませんが、彼の再登場を期待する読者は多いのではないでしょうか。
改めて作品を読み返して、坂東洋平の持つ異質さと、その奥深さに触れてみるのも面白いかもしれません。
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