
無気力な日々を送る青年アリスが、突如として放り込まれたのは、命を懸けたデスゲームが繰り広げられる「今際の国」でした。
壮絶なサバイバルと深い人間ドラマが描かれる『今際の国のアリス』は、その衝撃的なストーリー展開で多くのファンを魅了しています。
この物語の奥深さをさらに引き立てているのが、個性豊かな登場人物たちの名前に隠された秘密です。
実は、多くのキャラクターの名前が、児童文学の傑作『不思議の国のアリス』に由来していると考えられています。
本記事では、主要キャラクターの名前の元ネタを徹底的に考察し、作品に込められた作者の意図を紐解いていきます。
今際の国のアリスとは?
登場人物の名前の由来を掘り下げる前に、まずは作品の基本情報を確認しておきましょう。
原作漫画から実写ドラマまで、多岐にわたるメディア展開を見せる『今際の国のアリス』の全体像を把握することで、考察がより一層深まります。
今際の国のアリスの基本情報
今際の国のアリスは、麻生羽呂による漫画作品です。
主に小学館の週刊少年サンデーSで2010年から2015年まで連載され、コミックスは全18巻で完結しています。
2014年にはOVAアニメが制作されており、監督は『とある魔術の禁書目録』や『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』などの作品で知られる橘秀樹が務めました。
そして、この作品を世界的な人気作に押し上げたのが、山﨑賢人と土屋太鳳のダブル主演によるNetflix実写ドラマ版です。
シーズン2まで制作され、世界190か国に配信されるという大規模な展開は、日本のコンテンツが持つ可能性を世界に示しました。
また、大人になったアリスが再びげぇむに挑戦する続編「今際の国のアリス RETRY」も刊行されており、作品の世界はさらに広がりを見せています。
今際の国のアリスのあらすじ
物語の主人公は、人生のどん底にいた青年アリス(有栖良平)です。
優秀な弟と比べられることに劣等感を抱き、現実から目を背けてゲームばかりしていました。
ある日、友人たちと渋谷に繰り出し、人っ子一人いなくなった街に迷い込みます。
そこで彼らが足を踏み入れたのは、命を懸けた「げぇむ」をクリアしなければ生き残れない「今際の国」でした。
げぇむの難易度はトランプの数字で、ジャンルはスートで示されており、滞在者は「びざ」を得るために次々とげぇむに挑むことになります。
アリスは、卓越した観察力と洞察力を武器に、この過酷な世界を生き抜いていきます。
そして、サバイバルの中で、生きる意味を再び見出していくのです。
今際の国のアリスの元ネタは不思議の国のアリス?
多くの読者が指摘するように、今際の国のアリスの元ネタはルイス・キャロルの児童小説『不思議の国のアリス』だと考えられています。
ここでは、その説がなぜ有力なのか、そして元ネタとなった作品がどのようなものだったのかを解説します。
不思議の国のアリスとは?
不思議の国のアリスは、1865年にイギリスの数学者兼作家ルイス・キャロルによって書かれた児童小説です。
物語は、少女アリスが白ウサギを追いかけて不思議な世界に迷い込むというファンタジーです。
この物語は、ルイス・キャロルが知人の三姉妹に聞かせた即興のお話がもとになっており、空想的な世界観とユーモアに富んだ言葉遊びが特徴です。
単なる児童文学の枠を超えたその独創性から、刊行から100年以上経った今でも多くの人々に愛され、世界中で10万部を超える大ヒットを記録しています。
1871年には、続編となる『鏡の国のアリス』が刊行され、さらにアリスの冒険は続きました。
不思議の国のアリスを元ネタにした他の作品
不思議の国のアリスは、その独創的な世界観から、後世のクリエイターに多大な影響を与えてきました。
作中では、200を超えるパロディ作品が作られたと語られていますが、実際に多くの映画や漫画がこの作品をモチーフにしています。
その代表的な例の一つが、漫画『ARMS』です。
この作品では、登場人物や組織名に『不思議の国のアリス』のモチーフが使われており、物語のモチーフとしても深く関わっています。
また、映画では、ティム・バートン監督の2010年公開作『アリス・イン・ワンダーランド』が有名です。
この映画は、アリスが大人になって再び不思議の国を訪れるというストーリーで、全世界で10億ドルを超える興行収入を記録しました。
これらの作品は、元ネタである『不思議の国のアリス』を新たな視点で再解釈し、全く異なる物語として提示している点が共通しています。
『今際の国のアリス』もまた、この系譜に連なる作品だと言えるでしょう。
今際の国のアリス シーズン1のキャラクターの名前の由来
ここからは、今際の国のアリスに登場する主要キャラクターの名前を、元ネタである『不思議の国のアリス』と比較しながら考察していきます。
まずは、物語の始まりから登場するシーズン1のキャラクターたちから見ていきましょう。
名前がアリスの由来と考察
本作の主人公は「有栖良平(ありすりょうへい)」です。
「有栖」は、そのまま「アリス」と読めることから、元ネタの主人公である「アリス」を指していると考えられます。
アリスは白ウサギを追いかけて不思議の国に迷い込みます。
今際の国のアリスでも、主人公のアリスは無人の東京という奇妙な世界に迷い込んでいきます。
彼の名前は、物語の始まりを象徴する重要な役割を担っていると言えるでしょう。
名前がウサギの由来と考察
ヒロインのウサギは「宇佐木柚葉(うさぎゆずは)」という名前です。
「宇佐木」は、そのまま「ウサギ」を意味することから、『不思議の国のアリス』に登場する「白ウサギ」が元ネタだと考えられます。
白ウサギは、不思議の国へアリスを導く存在です。
今際の国のアリスでは、ウサギはアリスと出会い、共にげぇむをクリアしていく中で、アリスの生きる希望となり、彼を物語の核心へと導く重要な存在になっていきます。
名前がボーシヤの由来と考察
「ビーチ」の支配者である「ボーシヤ」の本名は、「弾間剛(だんまごう)」です。
彼のあだ名「ボーシヤ」は、元ホストクラブの店名「帽子屋/ボーシア」に由来しています。
これは、元ネタである『不思議の国のアリス』に登場する「帽子屋」を指していると考えられます。
帽子屋は、狂ったお茶会を開いているキャラクターで、常識が通用しない人物として描かれています。
今際の国のアリスでも、ボーシヤは巨大な組織「ビーチ」を率い、秩序と規律を重んじながらも、その独裁的な言動はどこか狂気じみていました。
「帽子屋」という名前は、彼の持つ狂気性と、現実離れした行動を象徴していると言えるでしょう。
名前がチシヤの由来と考察
医大生である「チシヤ」の本名は、「苣屋駿太郎(ちしやしゅんたろう)」です。
「苣屋」は、元ネタの「チェシャ猫」を意味していると考えられます。
チェシャ猫は、不気味な笑みを浮かべ、自由自在に姿を消す能力を持つ謎めいたキャラクターです。
今際の国のアリスのチシヤもまた、謎めいた言動でアリスたちを翻弄し、単独で行動しながらも常に物語の鍵を握る存在として描かれています。
「命に価値を感じない」という彼の考え方も、チェシャ猫の浮世離れした雰囲気を彷彿とさせます。
名前がクイナの由来と考察
アパレル店員の「クイナ」の本名は、「水鶏光(くいなひかる)」です。
彼女の名前「水鶏」は、「クイナ」という鳥を意味し、元ネタの『不思議の国のアリス』には直接登場しません。
しかし、彼女が「トランスジェンダーである」という設定と名前には、深い繋がりがあると考えられます。
「水鶏」は水辺に生息する鳥で、水の中と外を自由に行き来する存在です。
これは、男性として生まれながら女性として生きるクイナの姿を象徴しているという見方ができます。
また、彼女の役割は、ハートの女王が主催するクロッケー大会を彷彿とさせるげぇむに参加するなど、ハートの女王と関連付けられることが多いようです。
今際の国のアリス シーズン2のキャラクターの名前の由来
シーズン2では、さらに多くの謎めいたキャラクターが登場します。
彼らの名前にも、元ネタである『不思議の国のアリス』や、続編の『鏡の国のアリス』に由来する意味が隠されていると考えられます。
名前がヘイヤの由来と考察
特別編「すぺえどのなな」の主人公である「ヘイヤ」の本名は、「塀谷朱音(へいやあかね)」です。
「塀谷」は、元ネタの『不思議の国のアリス』に登場する「三月ウサギ」を指していると考えられています。
三月ウサギは、帽子屋と同じく狂ったお茶会を開いているキャラクターです。
しかし、さらに深い考察として、ヘイヤは元ネタの続編『鏡の国のアリス』に登場する「ヘイヤ」という名前のキャラクターを指しているという見方もあります。
塀谷が現実世界ではギャルであり、今際の国では一匹狼として生き抜く姿は、三月ウサギの狂気的な自由さを彷彿とさせます。
名前がヤバの由来と考察
ベンチャーキャピタルの社長である「ヤバ」の本名は、「矢場旺希(やばおうき)」です。
彼の名前は、元ネタの『鏡の国のアリス』に登場する詩「ジャバウォックの詩」に出てくる「ジャバウォック」を指していると考えられます。
ジャバウォックは、獰猛で恐ろしい架空の生物として描かれています。
現実世界で金と権力を手に入れても満たされなかった支配欲を持つヤバのキャラクター性は、まさにジャバウォックの持つ「狂気」や「圧倒的な強さ」を象徴していると言えるでしょう。
名前がバンダの由来と考察
死刑囚である「バンダ」の本名は、「盤田素那斗(ばんだすなと)」です。
彼の名前は、「ジャバウォックの詩」に登場するもう一つの架空の生物「バンダースナッチ」を指していると考えられます。
バンダースナッチは、「素早い」と記述され、獰猛な顎を持つ生物として描かれています。
心理学に精通し、猟奇的な殺人犯であるバンダの静かで不気味な狂気は、バンダースナッチの持つ狂気性を彷彿とさせます。
ヤバと同じく、彼の名前もまた、元ネタの詩に登場する狂気的な存在に由来していると言えるでしょう。
名前がミラの由来と考察
精神科医兼脳科学者である「ミラ」の本名は、「加納未来(かのうみら)」です。
ミラは、アリスをクロッケーの試合に誘うなど、ハートの女王と共通する行動を見せることから、ハートの女王が元ネタだと考えられています。
また、彼女の名前「ミラ」は、英語の「mirror(鏡)」を指しているという見方もできます。
これは、続編である『鏡の国のアリス』の世界を象徴していると考えられ、作者が作品全体に仕掛けた壮大な伏線の一つではないかという考察も生まれています。
今際の国のアリスに関する感想や評価
今際の国のアリスは、その緻密な設定と衝撃的な展開で、多くの読者や視聴者から様々な感想が寄せられています。
ここでは、作品に対する主な感想や評価をまとめ、その魅力の核心に迫ります。
キャラクターがかっこいいという感想
多くのファンが口にするのが、「キャラクターがかっこいい」という感想です。
それぞれのキャラクターが持つ独自のスキルや能力が、げぇむの攻略において重要な役割を果たし、読者を魅了します。
特に、ウサギやクイナといった女性キャラクターは、男性に引けを取らない身体能力や精神的な強さを見せ、多くの称賛を集めています。
彼らが命を懸けてげぇむに立ち向かう姿は、読者に感動と興奮を与えました。
名前の元ネタが面白いという感想
本記事で考察したように、キャラクターの名前が『不思議の国のアリス』に由来しているという事実は、多くの読者に驚きと面白さを与えました。
特に、元ネタを知っているファンにとっては、名前の由来を考察しながら読むという新たな楽しみ方が生まれました。
「元ネタを変形させた名前が面白い」「バンダースナッチとジャバウォックの名前が分かったときは興奮した」といった感想は、作者が仕掛けたこの仕掛けが、多くの読者に受け入れられた証拠だと言えるでしょう。
実写ドラマも面白いという感想
Netflixで配信された実写ドラマ版は、多くの視聴者から「面白い」という高評価を得ています。
原作の世界観を見事に再現した映像クオリティや、キャストの迫真の演技が絶賛されました。
続編を望む声も多く、「シーズン2で終わってしまったのが寂しい」といった感想も多く見られます。
また、実写ドラマ版をきっかけに、原作漫画を読み始めたという人も少なくありません。
メディアミックスが、作品の新たなファン層を獲得することに成功した良い例だと言えるでしょう。
まとめ
本記事では、今際の国のアリスの登場人物の名前の由来を、元ネタである『不思議の国のアリス』や『鏡の国のアリス』との関連性から考察しました。
主人公アリスやヒロインのウサギをはじめ、ボーシヤ、チシヤ、クイナ、そしてシーズン2に登場するヤバ、バンダ、ミラなど、多くのキャラクター名が元ネタに由来していることが明らかになりました。
キャラクターの性格や役割が、元ネタのキャラクターと共通している点も多く、作者が意図的に名前を付けていることが伺えます。
げぇむのルールが平仮名で表記されるなど、細部にまでこだわりが見られるこの作品は、単なるデスゲーム漫画ではない、深い文学的な背景を持っていると言えるでしょう。
今際の国のアリスを読んだことがない方も、この記事を参考に、キャラクターの名前に隠された秘密を探しながら読んでみてはいかがでしょうか。
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