
不滅のあなたへのピオランはヒロイン?
大今良時による人気漫画『不滅のあなたへ』は、不死身の存在フシが、人との出会いと別れを通じて「生きること」を学んでいく壮大な物語です。
フシの旅路において、彼に人間としての振る舞いや言葉を教え、その成長に最も大きな影響を与えたのが、老婆のピオランです。
彼女は90歳近い老婆でありながら、心優しい性格とかわいらしい独特な魅力を放ち、読者や視聴者からはヒロイン的な存在として絶大な人気を集めました。
当初、ピオランはニナンナでのオニグマへの生贄の儀式において、ヤノメ人によって仕立て上げられたエセ祈祷師として登場しました。
生贄の儀式は、ヤノメ人たちが自分たちの利益のためだけに行っていた根拠のない儀式であり、ピオラン自身もその被害者の一人でした。
この記事では、ヒロインともいわれるピオランの壮絶な生涯と、フシにとっての役割、悲しい最後の死亡シーン、そして彼女の驚くべき生まれ変わりについて、詳細なネタバレ情報と共に深く考察していきます。
不滅のあなたへの作品情報
『不滅のあなたへ』は、岐阜県大垣市出身の女性漫画家である大今良時によって描かれている大河ファンタジー漫画です。
週刊少年マガジン(2016年11月・50号から)で連載され、第43回講談社漫画賞において少年部門を受賞するなど、高い評価を得ています。
不滅のあなたへの概要
本作は、ある観察者によって地上へ投げ込まれた「球」が主人公のフシです。
フシは、あらゆるものの姿をうつし、変化することができる不死の存在であり、物語はフシが人間らしく成長していく過程を軸に展開されます。
見た目は立派な少年へと変化したフシですが、中身は人間らしくない獣のような言動を放つなど、不思議な世界観が描かれています。
不滅のあなたへのあらすじ
物語の冒頭で、観察者によって地上へ投げ込まれた球は、近くにあった石やコケ、狼などに出会うたびにその姿を変えていきました。
その後、力尽きた少年に出会い、その姿と性質を手に入れたフシは、見た目だけは人間として振る舞うようになります。
しかし、中身は言葉も感情も持たない未熟な存在でした。
フシは、強い刺激を受けることでそのものの記憶や性質を記憶できるという特殊能力を持っており、この能力が、彼が出会うすべての人々を大切な仲間の「器」としていくことに繋がります。
ピオランは罪人で老婆?
フシにとって、自分を人間として導いてくれた最も重要な人物の一人がピオランです。
彼女は、当初はただの球体であり意識さえなかったフシに、言葉や文化、そして愛といった人間としての基盤を教え込みました。
馬に生まれ変わった?と注目を集めているピオランですが、彼女は90歳近い老婆であると同時に、ヤノメ人に囚われていた罪人でもありました。
ヤノメ人らは、罪人であるピオランをエセ祈祷師に仕立て上げ、生贄の儀式を無理矢理行おうとしていたのです。
しかし、この罪人という立場が、後のフシとの旅において、社会の偏見や人の心の裏側といった、より深い人間社会の知識をフシに教えるきっかけともなったという見方もできます。
不滅のあなたへのピオランの最後や死亡シーン・生まれ変わりを考察
ピオランは、フシを人間らしく成長させた後も、彼の旅路に欠かせない存在として同行します。
しかし、不死ではない彼女もまた、避けられない「死」という運命を迎えることになります。
ネタバレ①認知症になってしまうピオラン
ノッカーに命を狙われているフシの役に立ちたいという一心で、フシの後を追いかけてきたピオランは、一緒に旅を続けていくうちに、老いの兆候を見せ始めます。
90歳近い老婆である彼女は、認知症になってしまったのかもしれません。
芋を朝に食べたことをすっかり忘れてフシに絡んだり、乗っているロバから落ちてしまったりするなど、徐々に記憶と体力の衰えが顕著になっていきます。
この変化に対し、フシは楽しそうにいつもお世話を焼き、ピオランの衰えを悲観するのではなく、愛情をもって受け止めていました。
このフシの態度は、ピオランが教えてきた人間らしい優しさが、フシの中に根付いていることの証明であり、感動的なシーンの一つです。
ネタバレ②ピオランは死亡した?
認知症になりながらも意外と元気いっぱいだったピオランですが、さすがに年には勝てず、ついに死の瞬間を迎えます。
自分の死を受け止めた彼女は、フシがいなくなった隙に観察者に自分を連れていくように話します。
観察者は、馬に生まれ変わったとしても、ピオランの魂は別のものになってしまうという話を聞かせますが、ピオランはそれでもいいからと死を選びました。
この選択は、「肉体がなくても、フシの傍にいたい」という彼女の強い願いの表れであり、彼女のフシに対する深い愛情が示されています。
帰って来たフシは、大好きなピオランが死亡していることで絶望しますが、生前の彼女の言葉を思い出し、「忘れなければ自分の中に生きている」と考え直すことができました。
ネタバレ③忘れられることは2度目の死?
ピオランとの出会いによって、人間らしく成長していったフシは、彼女の恋人である酒爺とタクナハで再会します。
酒屋を営む酒爺の住居でしばらく過ごすことになりますが、フシを襲ってきたノッカーによって、仲良しになったグーグーが死亡してしまったことで、フシは責任を感じ、一人でタクナハを出ていきました。
残り少ない命をフシのために使おうと考えたピオランは、恋人の酒爺に別れを告げ、フシを追いかけていきます。
フシは、ピオランが自分に付き従うことに反対しますが、ピオランは決して死亡しないという約束をして、旅を共にしました。
その際、ピオランはフシに対して「本当の死は、忘れられることだ」という名言を語っています。
この言葉は、不死のフシに対する生命の有限性と、記憶の尊さを教える、ピオランの集大成とも言えるメッセージでした。
ネタバレ④ピオランは馬に生まれ変わった?
死亡後、ピオランは、この世界にとどまるか、楽園に行くかの二択から、こちらの世界にとどまることを望みました。
そして、彼女の生まれ変わりの姿は、一頭の馬となっていました。
かつての仲間であったグーグーやマーチは、自分の意志でこの世界にとどまり、フシの側にい続けていますが、ピオランは馬という非人間的な姿を選んだのです。
馬に生まれ変わって登場したピオランですが、かつて老婆だったピオランがボン王子からプレゼントされた馬だとは、フシはすぐには気付いていませんでした。
しかし、その後の行動や特殊な能力から、フシは彼女がピオランであることを確信し、読者にも大きな感動を与えました。
ネタバレ⑤ピオラン馬の能力
最後の死亡シーンにおいて、ピオランは観察者に「生まれ変わる際にはフシの役に立つものになりたい」と強く望んでいました。
観察者は、肉体がなければピオランではいられないことを踏まえた上で、目を閉じて生まれ変わりでなりたいものを想像するように伝えます。
目を閉じたピオランは、最後まで旅を共にすることができる馬を想像したことで、生まれ変わって馬になったと考えられます。
生まれ変わり馬になったピオランは、かなり能力が高い馬としてフシの旅を支えました。
生前、魚を捕まえることが得意だったピオランは、馬の姿でも川に入って器用に魚を捕まえたり、冷静さを欠いてノッカーと戦おうとしたフシの足を噛んで止めたりと、フシの忠実な仲間として活躍し続けたのです。
不滅のあなたへのピオランとフシの関係
ピオランとフシの関係は、師弟であり、親子のようであり、そして最も信頼し合える特別な関係性でした。
ピオランがいなければ、フシは人間としての言葉や感情を理解することはできなかったと言えるほど、彼女はフシの成長に不可欠な存在です。
ネタバレ①フシとの旅の始まり
特別な力を発揮してマーチを救ったフシは、仲間のパロナ、そしてエセ祈祷師だったピオランらと一緒にヤノメ国へ連れていかれてしまいます。
連行されている際に、荷車で一緒だったピオランは、フシたちに鎖で繋がれている両足を見せて、自分が罪人であり、エセ祈祷師として利用されていたことを打ち明けました。
牢獄へ入れられてしまった一行でしたが、その後何とか脱出することができ、故郷であるニナンナへ帰ることができました。
死亡してしまったマーチの言葉を大切に人間に成長しようと考えたフシは、別行動していたピオランと再会し、お腹が空いたピオランをきっかけとして、フシとピオランの二人旅が始まります。
ネタバレ②フシに人間としての生き方を教える
優しいピオランと再会することができた人間としてはまだまだ未熟なフシは、一緒に旅をしていくことで、少しずつ意思の疎通ができるようになります。
旅の途中に地図を見つけたピオランは、紙にその地図を写していきました。
初めて見るピオランの行動に興味を抱いたフシに対し、ピオランは「わしがお前に人としての生き方を教えるのだよ」という名言を放ち、その後フシを導いていきます。
生まれ変わり馬となったと注目を集めているピオランは、寛大な心を持っていたために、言葉を発することができなかったフシに対して、ゆっくりとさまざまな知識を教えていきました。
言葉や物の名前を覚えられるようになったのも、ピオランの大きな心と根気強い教育のおかげであり、彼女は最終的にフシが人間らしく話せるようになるまで面倒を見てあげていました。
ネタバレ③フシにとって尊い存在
フシは、ジャナンダ島へと連れて行かれてしまったピオランと、何とか脱出しようとします。
先に脱出したピオランは、ゼダンにおいてフシを待っていましたが、やっと脱出したフシは、自分の大切なピオランがわずかな食糧で暮らしているのを見て、「自分と一緒では不幸になる」と思い、その場を立ち去ります。
しかし、フシはピオランのことが心配になり、手紙を残したり、果物を届けたりしていました。
死亡シーンや生まれ変わり馬となったと話題になっているピオランは、自分に毛布を掛けてくれた少女を見て、それがフシだとすぐにわかります。
待っていたフシが現れたことで嬉しくなったピオランは、孫のようなフシをぎゅっと抱きしめていました。
この一連の描写は、フシにとってピオランがかけがえのない、尊い存在になっていたことを示しています。
不滅のあなたへのピオランの恋人
ピオランは90歳近い老婆でありながらも、その人生には深い愛情と強い絆で結ばれた恋人がいました。
彼女の恋人である酒爺の存在は、ピオランというキャラクターに、より人間味のある深みを与えています。
ピオランの恋人は酒爺
腰が曲がっているかなりの老婆となっていたピオランには、酒爺という恋人がいたことが明らかになっています。
最後の死亡シーンや生まれ変わり馬になったなどさまざまに注目を集めているピオランは、乙女の心を忘れておらず、タクナハに住んでいる酒爺と恋人関係となっていました。
穏やかな笑顔を披露しているピオランの恋人である酒爺は、酒についてとことん追求していく精神を持った老人です。
酒の研究に夢中になりすぎて、時に犯罪的な行為にまで及んでいたようです。
フシと酒爺の関係
お酒の研究に励んでいる酒爺は、自宅に店舗を構えており、ある事故によって顔がぐちゃぐちゃになってしまった少年グーグーを助け、住み込みで働かせてあげていました。
自分にとって人間になるための師匠となったピオランと一緒に旅をしていたフシは、旅の途中立ち寄ったタクナハにおいて、ピオランの恋人である酒爺と出会います。
お酒に関してはかなり詳しく研究熱心な酒爺は、住み込みで働いているグーグー同様にフシのことを可愛がっていました。
酒に対して熱心すぎるところもある酒爺ですが、基本的には親切な老人であり、フシにとっても大切な家族の一員となったのです。
不滅のあなたへのピオランのアニメ声優
心優しいピオランの声をアニメ版で担当したのは、声優の愛河里花子です。
彼女の演技は、ピオランの持つかわいらしさ、老獪さ、そして母性を表現し、キャラクターの魅力を引き立てました。
愛河里花子のプロフィール
ピオランのアニメ版の声を担当したのは、声優・女優として活躍する愛河里花子です。
彼女は1967年10月7日生まれ、神奈川県出身で、幼少期から劇団日本児童に所属して子役として活動してきた、かなりのキャリアを持つ実力派声優です。
声優デビューは1990年で、現在はアトミックモンキーに所属しています。
| 名前 | 愛河里花子(あいかわ りかこ) |
| 血液型 | O型 |
| 生年月日 | 1967年10月7日 |
| 出身地 | 神奈川県 |
| 職業 | 声優、女優 |
| 所属事務所 | アトミックモンキー |
愛河里花子の主な出演作品
愛河里花子の主な出演作品は、幅広い層に知られる人気アニメのキャラクターが多数含まれています。
主な出演作品には、『それいけ!アンパンマン』の花咲かぼうや役、『とっとこハム太郎』のこうしくん役、『ジャングルはいつもハレのちグゥ』のハレ役、『ポケットモンスター サイドストーリー』のカスミのコダック役、『かいけつゾロリ』のイシシ役などがあります。
ピオランのユニークでおもしろいおばあちゃんさと、フシに対する愛情深さを表現した彼女の演技は、視聴者から高い評価を得ました。
不滅のあなたへのピオランに関する感想や評価
ピオランは、そのユニークなキャラクター性と、フシとの関係性から、読者や視聴者から多くの感想が寄せられ、高い評価を受けています。
ピオランはヒロインだという感想
「不滅のあなたへで食べることが大好きなピオランが作中のヒロインだと思っている」といった感想が寄せられるなど、彼女は単なる脇役ではない、物語の核心を担う存在として認識されています。
死亡シーンや生まれ変わりが馬であったことも話題となっている彼女は、「めっちゃかわいいおばあちゃん」だと感じている読者が多いようです。
ピオランの教育パートに関する感想
話すことも人間らしく振舞うこともできなかったフシを人間らしくしたピオランの教育パートは、「あったかい気持ちになって見れました」と感想を寄せている人がいるなど、感動的なシーンとして記憶されています。
罪人であったものの、フシと出会って以降は素晴らしい活躍をすることになるピオランの生き方は、多くの読者の心を打ちました。
馬に生まれ変わったピオランに関する感想
「不滅のあなたへで生まれ変わり馬としてフシの役に立っているピオランは、おもしろいおばあちゃんさが増していたシーンがかわいい」と感想を寄せている人もいました。
最後は老衰によって死亡してしまうピオランですが、この世界にとどまって生まれ変わってもフシの役に立つ道を選んだ彼女の献身的な愛と、その後のユーモラスな活躍が、読者から高い評価を得ていることが窺えます。
まとめ
『不滅のあなたへ』に登場するピオランは、登場当初は偽者の祈祷師として利用されていた罪人でしたが、不死の存在であるフシに人間としての知識、言葉、そして心を教えた「人生の師」であり、読者からヒロインとも称されるほどの心優しい老婆です。
彼女は、認知症という老いと闘いながらも、フシの傍を離れることなく、最後は老衰によって静かに息を引き取りました。
最後の死亡シーンで「忘れられることが2度目の死だ」という名言を残し、生まれ変わって再びフシの役に立ちたいと望んだ彼女は、その願い通り美しく凛々しい馬に生まれ変わりました。
馬となったピオランは、フシの足となり、彼の旅を支え続けました。
ピオランの生涯は、命の有限性と、愛情の不滅性を描き出し、フシという存在に生きる意味を与えた、物語に不可欠な光であったと言えるでしょう。
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