
畠中恵さんが描く大人気あやかし時代小説「しゃばけ」シリーズの主人公、若だんな・一太郎。
彼は江戸有数の廻船問屋兼薬種問屋「長崎屋」の跡取りですが、生まれつき体が弱く、さらに妖(あやかし)の姿が見えるという特異な体質を持っています。
一太郎を誰よりも溺愛する犬神・佐助や白沢・仁吉をはじめとする妖たちに囲まれ、時に事件に首を突っ込みながら、優しく賑やかな日々を送っています。
そんな一太郎のファンなら誰もが気になるのが、彼の「結婚問題」ではないでしょうか。
「大店の跡取りなのに、一体いつ結婚するの?」
「お嫁さんが来たら、佐助や仁吉といった妖たちとは別れちゃうの?」
若だんなの幸せと、長崎屋の未来を左右するこの重要な出来事が、シリーズの何巻で、そしてどのような経緯で描かれたのか、この記事で詳しく、深く掘り下げて解説していきます。
一太郎の許嫁(いいなずけ)が決まる物語は、単なる縁談話に留まらず、「人間と妖は本当に共存できるのか」という、シリーズが長年抱えてきた根幹のテーマに迫る、非常に重要なターニングポイントとなっています。
この記事を最後まで読めば、あなたの「しゃばけ」愛がさらに深まること間違いなしです。
しゃばけの若旦那の結婚相手がわかる巻
シリーズの初期から、一太郎の虚弱体質と妖が見える能力は、彼の人生における大きな障害として描かれてきました。
特に結婚に関しては、一太郎を溺愛する妖たちにとって、「若だんなを奪われる」にも等しい、一大事です。
このデリケートな問題に、物語が本格的に踏み込んだのが、シリーズ第13巻です。
若旦那の結婚は何巻で語られる?
結論から言うと、若だんな・一太郎の結婚、正確には許嫁(いいなずけ)が決まるのは、シリーズ第13巻の短編集『すえずえ』です。
「すえずえ」とは、子孫、末裔を意味する言葉です。
このタイトルからもわかるように、物語は長崎屋の「家」の存続、そして一太郎の未来という、非常に重いテーマを扱っています。
『すえずえ』の物語は、一太郎の病弱ぶりを心配する両親や親族が、長崎屋の跡取りとして、一太郎に大量の縁談を持ち込むことから大きく動き出します。
大店の跡取り息子として、縁談話がたくさん来るのは当然の成り行きですが、長崎屋の縁談は一般的な結婚話とは一線を画します。
なぜなら、もし結婚して奥様が長崎屋に来た場合、これまでのように仁吉や佐助、そして屏風のぞき、鳴家といった多くの妖たちと、一太郎が離れで一緒に暮らすことが難しくなってしまうからです。
この巻は、「若だんなの幸せ=妖たちとの別れ」という、シリーズの根幹に関わる悲劇的な予感を、読者に強く意識させる重要な役割を果たしています。
ただの縁談騒動に終わらず、人間と妖の寿命の違いや、共に暮らすことの難しさという深遠なテーマを、一太郎の結婚問題をきっかけに描き切った、シリーズ中盤の傑作と評価されています。
若旦那の許嫁は一体誰なの?
さて、一太郎と妖たちの未来、そして長崎屋の行く末を決めることになる、一番気になる許嫁ですが、そのお相手は材木問屋「中屋」の娘、於りん(おりん)です。
於りんのプロフィール
| 本名 | 於りん |
| 一太郎との関係 | 許嫁(いいなずけ) |
| 実家 | 材木問屋「中屋」の娘 |
| 特徴 | 妖(あやかし)の姿が見える |
| 初登場 | 短編集『ぬしさまへ』収録の「おまけ」 |
「於りんちゃん」という名前を聞いて、初期の作品を読んでいる方は「え、あの小さな女の子?」と驚くかもしれません。
於りんは、シリーズ第2巻の短編集『ぬしさまへ』に収録されている短編「おまけ」で初登場した少女です。
この時、一太郎が迷子になっていた於りんを助けており、この小さな出会いが、まさか数巻後に長崎屋の未来を担うことになるとは、読者も予想できなかったのではないでしょうか。
『すえずえ』の時点ではまだ十歳にも満たない少女ですが、彼女が許嫁に選ばれたのには、一太郎の病弱さや店の格といった俗世間的な理由を超越した、極めて重要な理由があったのです。
許嫁決定の舞台裏
於りんが一太郎の許嫁に決定した背景には、【しゃばけ】シリーズが描く、人間と妖の共存という、切なくも温かいテーマが深く関わっています。
これは、一太郎の結婚問題が、長崎屋の愛すべき妖たちを追い出すという事態につながることを恐れた、佐助や仁吉、そして一太郎の両親の強い思いから生まれた、究極の選択だったと言えます。
結婚と「妖との共存」というシリーズの根幹
一太郎は、佐助や仁吉を「兄や」と呼び、妖たちを家族同然に思っています。
しかし、世間の大多数の人間は妖の存在を知覚できません。
もし、妖が見えない女性が一太郎の妻として長崎屋に入ってくれば、彼女は離れに住む佐助や仁吉を「不気味な手代」と思い、一太郎が妖たちと親しくしていることを「頭のおかしいこと」と見なす可能性が高いでしょう。
最悪の場合、「妖たちを追い出すか、長崎屋を潰すか」という二者択一を迫られ、一太郎は大切な家族との別れを余儀なくされてしまいます。
これは、長年一太郎の病弱な体と、妖が見える特異な体質を守り続けてきた、佐助や仁吉にとっては絶対避けたい事態でした。
一太郎の両親もまた、一太郎を溺愛する妖たちの存在を知っているため、「若だんなの幸せ=妖たちとの別れ」という事態を避けるために、世間の常識から外れた結婚相手を探す必要があったのです。
読者の間では、この縁談騒動が、「ファンタジー小説の根幹テーマを現実的なレベルに落とし込んだ」として、非常に高く評価されています。
ただの結婚話ではなく、「愛」の形、そして「家族」の定義を問い直す、深みのある展開だったと言えるでしょう。
於りんが許嫁に選ばれた決定的な理由
於りんが、縁談話が大量に持ち込まれた中で、最終的に許嫁に選ばれた決定的な理由は、非常にシンプルで、そして【しゃばけ】らしいものでした。
その理由とは、於りんが妖たちの姿を見ることができたからです。
彼女は、幼い頃に迷子になった際、一太郎に助けられた経験を通して、一太郎の周りには妖がいるということを知覚していました。
この「妖が見える」という特異な能力こそが、於りんを他の縁談相手とは一線を画す存在にしたのです。
於りんであれば、一太郎が大切にしている佐助や仁吉、そして他の愛すべき妖たちと一緒にいても問題がない。
彼女なら、若だんなと妖たちの絆を理解し、長崎屋の特殊な環境をそのまま受け入れてくれる。
この事実が、一太郎の未来、そして長崎屋の安泰のために、最も重要な決め手となりました。
許嫁の決定は、「将来、もしお互いの気持ちが変わらなければ」という条件付きではあるものの、この事態によって、佐助や仁吉は若だんなのそばに居続けられることになり、妖たちも一安心します。
若だんなの結婚話が、大切な家族(妖)との別れではなく、「人間と妖が一緒にいられる最善の策」につながったという展開は、シリーズのファンにとって最高のハッピーエンドの一つとして語り継がれています。
一太郎の幸せと、妖たちの安泰が同時に叶えられる、長崎屋らしい愛の解決策だったと言えるでしょう。
しゃばけの若旦那と結婚後のシリーズ情報
第13巻『すえずえ』で一太郎に許嫁が決まった後も、物語は続いています。
許嫁が決まったことで、一太郎は「将来の旦那様」としての自覚を少しずつ持ち始め、物語は新たなステージへと進んでいきます。
ここでは、許嫁決定後のシリーズをさらに楽しむための情報と、最新の刊行情報についてご紹介します。
シリーズを読む順番はどうすればいい?
「しゃばけ」シリーズは、著者の畠中恵さんが「どこから読んでもいいように」と配慮して書かれていますが、やはり刊行順に読んでいくのが一番おすすめです。
なぜなら、病弱だった一太郎が、様々な事件を解決していく中で、心身ともに成長していく様子を順序立てて感じ取ることができるからです。
特に、松之助の自立や、今回の許嫁決定のような大きな出来事は、それまでの物語の流れがあってこそ、より深く、そして感動的に楽しめるでしょう。
第13巻『すえずえ』までの主要な刊行順は以下の通りです。
しゃばけ
ぬしさまへ
ねこのばば
おまけのこ
うそうそ(長編)
ちんぷんかん
いっちばん
ころころろ
ゆんでめて
こいしくて(長編)
やなりいなり
ひなこまち
たぶんねこ
すえずえ(若だんなの許嫁が決まる巻)
この順番で読んでいくと、一太郎と妖たちの関係性の変化や、物語の根幹に秘められた謎の進展がよくわかります。
シリーズの長編は、特に大きな物語の転換期を示しているため、長編が収録されている巻は、その前後の短編集を挟みながらじっくりと読むのがおすすめです。
最新刊の発売日はいつなの?
「しゃばけ」シリーズは、現在も続いており、20年以上にわたる超長寿シリーズとして、ファンにとっては新刊の発売が最大の楽しみの一つとなっています。
2024年7月には、シリーズ第23弾となる『なぞとき』が刊行されました。
そして、さらに嬉しいお知らせとして、シリーズ第24弾となる『あやかしたち』が2025年9月18日に発売予定です。
許嫁が決まり、若だんなとして着実に成長している一太郎ですが、物語はまだまだ続いていきます。
妖が見える許嫁・於りんが、長崎屋の新たな日常にどのような変化をもたらすのか、今後のシリーズ展開にも期待が高まりますね。
まとめ
今回は、「しゃばけ」シリーズの主人公、若だんな・一太郎の許嫁について、決定した巻やお相手の於りん、そしてその裏に隠された深遠な理由を徹底解説しました。
✅ 許嫁が決まるのは第13巻『すえずえ』。
✅ 許嫁のお相手は、材木問屋「中屋」の娘・於りん。
✅ 選ばれた決定的な理由は、彼女が「妖の姿が見える」から。
一太郎の結婚問題は、「人間と妖の共存」というシリーズの根幹テーマを解決し、若だんなと妖たちが一緒にいられる最善の道を開いた、感動的なエピソードでした。
若だんなの成長、そして長崎屋の未来を大きく変えるこの重要な巻を、ぜひ改めて手に取って読んでみてください。
これからも続く、若だんなと妖たちの優しく賑やかな日々に、目が離せませんね。



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