賀来ゆうじが描く忍法浪漫活劇「地獄楽」は、ウェブコミックサービス『少年ジャンプ+』で連載され、その独創的な世界観と美麗かつ迫力ある作画で、多くの読者を魅了しました。
物語の骨子となるのは、死罪人たちが無罪放免をかけて、極楽浄土と噂される謎の島「神仙郷」へ仙薬を探しに向かうという、命を懸けたサバイバルです。
この過酷な旅路において、死罪人たちを監視し、時に試刀の名の下に処刑を執行する役目を担うのが、山田浅ェ門（やまだあさえもん）一門の面々です。
今回スポットを当てるのは、山田浅ェ門誠一刀流九位に名を連ねる付知（ふち）です。
小柄で少年のような容姿から、読者からはしばしば「かわいい」と評されて人気を集めていた付知ですが、その裏の顔は、感情をあまり表に出さないサイコパスのような一面を持つという、強烈な個性を持っていました。
しかし、仙薬探しの旅を通して、付知は監視対象であった死罪人・民谷巌鉄斎（たみやがんてつさい）との間に、師弟を超えた絆を築き上げます。
この記事では、山田浅ェ門 付知のプロフィールや、彼が持つ特異な能力、そして「かわいい」という評価を凌駕するほど読者の心を打った、仲間思いな真の性格と壮絶な最期について、深く掘り下げて考察していきます。
付知というキャラクターが、過酷な物語の中でどのように輝き、読者に感動を与えたのかを再確認しましょう。
地獄楽の付知（ふち）とは？プロフィールと第一印象
地獄楽の物語における付知の役割と、彼が読者に与えた第一印象について解説します。
付知の基本情報：山田浅ェ門誠一刀流九位
付知は、江戸幕府に仕える打ち首執行人の一族である、山田浅ェ門の一員です。
彼は、山田浅ェ門が代々伝授する剣術の流派、誠一刀流の九位という地位にあります。
仙薬探索の任務においては、最強の剣豪として知られる死罪人・民谷巌鉄斎の監視役を担当していました。
付知のプロフィールを詳しく見てみると、切り揃えた前髪と、小柄な体型が特徴的で、20歳前後という実年齢よりも非常に幼く少年のような容姿をしています。
この見た目が、彼が「かわいい」と評される大きな理由の一つとなりましたが、その内面には、生と死、そして肉体というものに対する、人並み外れた探求心が秘められていました。
山田浅ェ門 付知 プロフィール（一部）
| 役職 | 山田浅ェ門誠一刀流 九位 |
| 担当死罪人 | 民谷巌鉄斎 |
| 主な能力 | 解剖学、医学、剣術 |
| タオの属性 | 金 |
小柄な容姿と初期の「サイコパス」的な人物像
付知の読者への第一印象は、その可愛らしい見た目とは裏腹に、感情を表に出さない冷静沈着さ、そして非情な合理性を兼ね備えた人物、というものでした。
特に、遺体を目の前にすると、まるで嬉々としているかのように解剖に取り掛かったり、未知の生物や異形の怪物に遭遇しても、恐怖よりも「すごっ」という探求心と好奇心を優先させたりする姿は、一部の読者から「マッドサイエンティスト」「サイコパス」といった印象を持たれました。
彼は、「目に見えるものしか信じない」という合理的な思考の持ち主であり、このスタンスが、物語の序盤では冷徹な打ち首執行人としての側面を強調していました。
しかし、この冷静さと、未知への飽くなき探求心こそが、後に仙薬探索において、彼がかけがえのない役割を果たす基盤となっていきます。
付知は、人としての情を欠いているように見えながらも、その奥底には、仲間や大切な存在に対する深い思いやりが隠されていたのです。
付知の強さと能力：「解剖学」に精通した刀剣使い
付知の戦闘能力は、小柄な体型から過小評価されがちですが、彼を語る上で欠かせないのは、その剣術と医学・解剖学の知識を組み合わせた独自の戦闘スタイルです。
剣術の実力：巌鉄斎に見せた切っ先のイメージ
付知は試一刀流の九位であり、山田浅ェ門としての確かな剣術の腕前を持っています。
その実力は、作中でも最強の剣豪と謳われた民谷巌鉄斎を相手に、刀の切っ先を見せただけで、巌鉄斎に自身が切り刻まれるイメージを見せるという、圧倒的な緊張感を与える場面からも窺えます。
これは、付知の剣が、単なる力任せの斬撃ではなく、相手の肉体の構造や急所を熟知した上での、緻密で正確な攻撃であることを示唆しています。
巌鉄斎のような経験豊富な剣豪ですら、付知の剣には生理的な恐怖と、その技術の高さを感じ取っていたと考えることができるでしょう。
特異な能力：解剖学と手術の技術
付知の最大の特異性は、山田浅ェ門の中でも群を抜いて解剖学と医学に精通しているという点です。
彼は、腰に刀ではなく解剖道具を下げており、二振りの刀を肩にかけているという異例のスタイルが、その専門性を物語っています。
彼が使用する刀も、先が大きく反ったものと、ノコギリ状の刀という、通常の剣士とは異なる独特の形状をしており、これは彼が遺体の解剖を得意としていることが理由だとされます。
仙薬探索一行にとって、付知の解剖学の知識は非常に貴重でした。
彼は、ただ解剖するだけでなく、その知識を応用して怪我人や病人の治療、さらには島で手に入れた未知の植物などを利用した新薬の開発まで行い、探索の道中において欠かせない医療担当としての役割を果たしました。
この「殺すための刀」を扱う一族の中で、「殺さないための処置」も心得ているという付知の二面性が、彼のキャラクターをより魅力的にしています。
付知のタオの属性：「金」の力と戦闘スタイル
地獄楽の後半で重要な概念となる、万物を構成する五行の力「タオ」において、付知の属性は「金」です。
「金」のタオは、「硬さ」「鋭利さ」「斬撃」といった性質を持ち、付知の持つ剣術と解剖学の知識と非常に相性の良いものでした。
彼の緻密な剣技は、この「金」のタオによってさらに強化され、小柄な体型ながらも、素早く俊敏な動きと、ピンポイントで相手の急所を突く鋭い斬撃を可能にしました。
また、付知は、戦闘だけでなく、その知識と冷静さを活かして、巌鉄斎と組んで天仙（てんせん）の一人である桃花と対峙した際にも、その小回りの利く動きで巌鉄斎をサポートし、見事なチームワークを見せています。
付知の強さは、単なる剣の腕前だけでなく、彼独自の「知性」と「医学的視点」が融合した、他に類を見ない戦闘スタイルにこそあったと言えるでしょう。
仙薬探しの旅で開花した「仲間思い」の真の性格
物語が進むにつれて、付知の冷徹に見えた初期の人物像は影を潜め、その奥に秘められていた仲間思いで心優しい性格が浮き彫りになっていきます。
監視対象の死罪人・民谷巌鉄斎との絆
付知の真の性格が開花する上で、最も重要な存在となったのが、彼の監視対象であった死罪人・民谷巌鉄斎です。
巌鉄斎は、付知とは正反対の豪快で武骨な剣豪であり、当初は単なる監視役と死罪人という、利用し合う関係に過ぎませんでした。
しかし、生死を共にする過酷な仙薬探しの道中、二人は徐々に心を通わせ、コンビとして行動するようになります。
付知は、巌鉄斎の豪胆な剣の腕を評価し、巌鉄斎もまた、付知の冷静な判断力と、医学的な知識を信頼するようになりました。
特に、巌鉄斎は当初こそ荒くれ者の印象が強かったものの、物語が進むにつれて付知や他の仲間たちとの交流を通じて、頼れる存在へと変化していき、この関係性の変化が、付知の優しさを引き出す結果に繋がったと考察されます。
付知は、山田家の一員である仲間たちだけでなく、この旅を通じて行動を共にした巌鉄斎も、かけがえのない大切な存在として認識するようになっていったのです。
巌鉄斎とのコンビネーションバトル：天仙・桃花との戦い
付知と巌鉄斎の絆が最も輝いたのが、島を統べる仙人である天仙・桃花（とうか）との戦いです。
この戦いにおいて、二人は死罪人と打ち首執行人という立場を超え、見事なチームワークを発揮します。
巌鉄斎の豪快な剣技と、付知の俊敏な動きと医学知識に基づいた正確なサポートが組み合わさることで、圧倒的な力を持つ天仙相手に互角以上の戦いを展開しました。
読者からは、「付知と巌鉄斎のコンビが好き」という声が多数寄せられており、初期のサイコパス的な印象から、心を通わせた仲間へと成長した二人の関係性は、地獄楽の人間ドラマの深さを象徴する要素の一つと評価されています。
この共闘は、付知が、冷徹な合理主義者から、仲間のために命を懸けることができる心を持つ人間へと変化した、決定的な瞬間だったと言えるでしょう。
壮絶な最期：巌鉄斎を守るための自己犠牲
付知の「仲間思い」の性格が極限まで発揮され、読者の涙を誘ったのが、彼の壮絶な最期です。
島に後から上陸した山田浅ェ門の殊現（しゅげん）は、山田家への強い尊敬の念を持つ一方で、罪人に対しては過剰なほどの非情さを持っていました。
殊現が巌鉄斎を討とうとした際、付知は躊躇なく巌鉄斎を庇い、友によって重傷を負ってしまいます。
この時の付知は、自身も瀕死の重傷を負っていましたが、時間的にも、物資的にも、治療できるのは自分か巌鉄斎のどちらか一人という極限の状況に追い込まれます。
そして付知は、自分が生き残る選択肢を捨て、「剣豪として生きる道を選んだ巌鉄斎の命を繋ぐ」ことを決意し、持てる全ての医療技術と治療薬を巌鉄斎のために使用しました。
命懸けで巌鉄斎の命を救った付知は、力尽きてそのまま息を引き取ります。
この自己犠牲の精神は、当初「サイコパス」と評された付知が、旅を通して真に心優しい、仲間思いな剣士へと変貌を遂げたことを証明し、多くの読者に深い感動と悲しみをもたらしました。
「あぁ…推しがまた…」という読者の悲痛な叫びは、付知というキャラクターがどれほど愛されていたかを物語っています。
付知に関する読者の感想と評価
付知は、その衝撃的な最期によって、物語に深い余韻を残しました。読者は、彼をどのように評価し、記憶しているのでしょうか。
読者から「かわいい」と推される魅力
付知に対する読者の感想で、初期から一貫して多かったのが「かわいい」という評価です。
小柄で幼い容姿と、切り揃えられた前髪というビジュアル的な要素に加え、彼が持つ冷静さや、時折見せる年相応の戸惑いや驚きといった人間的な側面も、その「かわいさ」を構成していました。
また、物語が進むにつれて彼の奥底にある優しさや仲間思いな性格が明らかになることで、その「かわいい」という印象は、「応援したい」「守ってあげたい」という愛情へと変化していきました。
「付知くん推しです！！！！！！かわいい！！！！！！！」というストレートなツイートからも、付知がビジュアルと内面の両方で、読者の心を掴んでいたことがわかります。
巌鉄斎とのコンビに対する熱い支持
付知の人気のもう一つの柱は、やはり民谷巌鉄斎とのコンビに対する熱い支持です。
「付知と巌鉄斎のコンビが好き」という感想は非常に多く、正反対に見える二人が、過酷な状況下で互いを認め合い、最強のパートナーへと成長していく過程は、多くの読者の胸を打ちました。
豪快な剣豪と、冷静な解剖学のスペシャリストという異色の組み合わせが、天仙という強大な敵とのバトルにおいて見せる絶妙な連携は、読者に大きなカタルシスを与えました。
特に、付知が自らの命を犠牲にしてまで巌鉄斎を救おうとしたエピソードは、二人の間に築かれた絆が、どれほど深く、純粋なものだったのかを雄弁に物語っており、読者にとっては忘れられない名シーンとして記憶されています。
まとめ
この記事では、大ヒット作「地獄楽」に登場する、山田浅ェ門 付知のプロフィール、能力、そして彼の真の魅力について深く考察しました。
付知は、小柄な体型と可愛らしい容姿を持ちながらも、当初は感情を見せないサイコパス的な一面を持つ、異色の打ち首執行人でした。
しかし、彼は試一刀流の剣術に加え、解剖学と医学という特異な能力を駆使し、仙薬探索の道中において、一行にとって欠かせない存在となっていきます。
特に、監視対象であった死罪人・民谷巌鉄斎との間に築かれた師弟愛にも似た深い絆は、付知の心に隠されていた仲間思いで心優しい性格を浮き彫りにしました。
そして、その絆は、巌鉄斎を守るために、自らの命を犠牲にして治療薬を譲るという、壮絶な自己犠牲の最期として結実します。
付知の短い人生は、山田浅ェ門という過酷な宿命の中で、一人の人間として、「誰かのために生きる」という真の価値を見出した、感動的な軌跡であったと言えるでしょう。
「かわいい」という初期の評価を超え、読者の心に深く刻み込まれた付知の活躍と、巌鉄斎との熱いコンビネーションバトルは、地獄楽という物語の重厚な人間ドラマを支える、重要な要素の一つです。
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