
現代社会における恋愛や人間関係の「痛み」に、真正面から向き合う漫画作品をご存じでしょうか?
瀧波ユカリ先生が描く「わたしたちは無痛恋愛がしたい~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~」は、そのリアルな描写と深いテーマ性で、多くの読者の心を掴んでいます。
特に、「このマンガがすごい!2023」オンナ編にランクインするなど、その社会的な意義とエンターテイメント性が高く評価されている作品です。
本記事では、Twitterの鍵垢に本音を吐露する「鍵垢女子」星置みなみを主人公に、彼女が経験する恋愛の不条理、そして現代社会に潜む様々な「痛み」の正体を、詳細なあらすじと登場人物の分析、さらには読者のリアルな声を通して深掘りしていきます。
「無痛恋愛」という理想を追い求めるみなみが、いかにして「痛み」と向き合い、成長していくのか。
令和の時代を生きる私たちにとって、この物語が何を問いかけ、どのような気づきを与えてくれるのかを、丁寧に考察してまいります。
はじめに:現代社会のリアルを映す【わたしたちは無痛恋愛がしたい】の魅力
私たちは、恋愛において「痛み」を避けたいと願う一方で、人間関係の中で生じる様々な摩擦や不条理から逃れることはできません。
漫画「わたしたちは無痛恋愛がしたい~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~」は、まさにこの現代社会が抱える複雑な感情や、ジェンダーにまつわる問題を鋭く描き出した作品として、大きな注目を集めています。
「このマンガがすごい!2023」オンナ編に選出されたことからも、その質の高さと読者への影響力がうかがえます。
物語の主人公、星置みなみは、恋愛体質でありながらも、男性からの搾取や不当な扱いに苦しむ「鍵垢女子」です。
彼女が望む「無痛恋愛」とは、具体的にどのような恋愛なのか、そしてその理想と現実のギャップに、多くの読者が共感を覚えるのではないでしょうか。
本作は、単なる恋愛漫画に留まらず、フェミニズムというテーマを深く掘り下げながら、読者に知識と行動のきっかけを与える「フェミニズム入門書」としての側面も持ち合わせています。
瀧波ユカリ先生は、作品を通じて「女性が下に見られて不利益を被る事実がまだまだある」ことや、「妊娠に関する不平等」といった、知っているのと知らないのとでは大違いな「知識」の重要性を訴えかけているのです。
読者の多くは、みなみの葛藤や成長を通して、自分自身の経験を振り返り、社会の不条理について深く考えるきっかけを得ていることでしょう。 [cite: original article, 22]
本記事では、作品の概要から主要な登場人物たちの詳細なプロフィール、最新刊までのあらすじ、そして読者が抱く様々な感想や評価まで、多角的に掘り下げていきます。
「あるある」と感じる日常のモヤモヤから、時に胸をえぐられるような「痛み」まで、この作品が描く世界を共に紐解いていきましょう。
漫画「わたしたちは無痛恋愛がしたい」とは?その概要と社会的反響
「わたしたちは無痛恋愛がしたい~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~」は、瀧波ユカリが手掛ける日本の漫画作品です。
講談社のウェブマンガマガジン「&Sofa」にて、2021年11月22日から連載が開始されました。
本作は、令和という時代背景を色濃く反映しており、特に「フェミニズム」というテーマを軸に、現代における恋愛とコミュニケーションのあり方を問いかけています。
主人公の星置みなみが、鍵をかけたSNSアカウント、通称「鍵垢」でしか本音を語れない「鍵垢女子」であるという設定は、現代の若者たちの自己開示の難しさや、SNSがもたらす人間関係の複雑さを象徴していると言えるでしょう。
彼女が年上の「フェミおじさん」と出会うことで、自身の不条理な立ち位置や社会について考え始める過程が丁寧に描かれています。
「ホテル代割り勘問題」におけるみなみの主張は、SNSで大きな反響を呼び、読者から賛否両論、熱量の高い声が上がったことからも、本作が現代社会のデリケートな問題に切り込んでいることがわかります。
連載開始当初は女性読者が9割を占めていましたが、物語が進むにつれて男性読者も増加しており、性別を超えて多くの人々に響く普遍的なテーマを扱っている証拠と言えるでしょう。
「自分らしく生きたい女性ほどクズに引っかかる法則」といった「あるあるネタ」も、読者の共感を深く誘う要因となっています。
作者:瀧波ユカリの多才な活動
本作の作者である瀧波ユカリは、漫画家としてだけでなく、ラジオパーソナリティなども務めるマルチタレントとして知られています。
彼女の作品は、常に時代や社会の空気を捉え、読者に深く考えさせるテーマを内包しています。
代表作としては、「臨死!!江古田ちゃん」や「モトカレマニア」などが挙げられ、これらの作品はテレビドラマやアニメ化もされるほどの人気を博しています。
瀧波ユカリは、自身の作品を通じて、女性が直面する困難や不平等を具体的に描き出し、読者に「知識」の重要性を伝えています。
日常生活に潜む性差別の問題に光を当てることで、多くの女性が自身の経験を言語化し、社会について考えるきっかけを与えているのです。
彼女はインタビューの中で、「無痛恋愛」というタイトルについて、「女性側が思う『無痛恋愛』とはつまり『加害や、搾取をされない恋愛』ではないか」と語っており、作品に込められた強いメッセージがうかがえます。
また、「男の嫉妬って女の性欲と同じくらいなかったことになってるよね」という作中のセリフに代表されるように、これまで語られにくかった男性側の感情や社会構造にも目を向けることで、より多角的な視点からジェンダー問題を提示しています。
瀧波ユカリの作品は、私たちに「痛み」から目を背けるのではなく、それとどう向き合い、乗り越えていくかを問いかけていると言えるでしょう。
【わたしたちは無痛恋愛がしたい】主要登場人物たち
「わたしたちは無痛恋愛がしたい」に登場するキャラクターたちは、それぞれが現代社会を生きる人々の縮図のようです。
彼らの言動や思考を通じて、読者は自身の経験と重ね合わせたり、新たな視点を得たりすることができます。
ここでは、物語の中心となる主要人物たちのプロフィールと、その人物像を深く掘り下げていきます。
星置みなみ:恋愛体質の鍵垢女子が辿る成長の軌跡
| 名前 | 星置みなみ(ほしおき みなみ) |
| 年齢 | 20代(物語序盤)→30代(10年後) |
| 特徴 | 恋愛体質、男性から搾取されやすい、Twitterの鍵垢で本音を呟く「鍵垢女子」 |
| 変化 | 物語の中で「言葉」を手に入れ、自分の意見を主張できるようになる。恵比島千歳との関係を清算し、自立への一歩を踏み出す。 |
物語の主人公である星置みなみは、20代の恋愛体質な女性です。
しかし、彼女は男性から「搾取されやすい」という一面も持ち合わせており、その繊細な心理描写は多くの読者の共感を呼んでいます。
自身の本音を公にせず、Twitterの鍵をかけたアカウント、通称「鍵垢」でしか呟けない「鍵垢女子」という設定は、現代のSNS社会における若者の自己表現のあり方を象徴していると言えるでしょう。
恋愛体質であるがゆえに、傷つくことを恐れながらも、時には顔の良いクズ男である恵比島千歳との関係を断ち切れないなど、矛盾を抱えながら生きています。
物語の序盤では、男性関係で落ち込むことが多かったみなみですが、物語が10年後へと進むにつれて、彼女は目覚ましい成長を遂げます。
「言葉」を手に入れ、自身の不条理な立ち位置や社会について考え、おかしいと感じたことを自分の言葉で表現できるようになります。
特に、千歳との関係を自らの意思で清算するという決断は、彼女が男性に搾取されるだけの女性ではなくなったことを示す象徴的な出来事と言えるでしょう。 [cite: 2, original article]
彼女の成長は、多くの読者にとって、自分自身も「痛み」と向き合い、変化できるという希望を与えているのかもしれません。
月寒空知:みなみの「フェミおじさん」としての役割と過去
| 名前 | 月寒空知(つきさむ そらち) |
| 特徴 | 女性の立場を尊重し、寄り添う「フェミおじさん」。周囲への気遣いができる優しい男性。 |
| 役割 | 主人公みなみが社会や自身の状況を考えるきっかけを与える。過去に深い葛藤を抱えている。 |
月寒空知は、みなみの人生に大きな影響を与える年上の男性です。
読者からは「女性の立場を尊重しつつ、寄り添ってくれる」ような「フェミおじさん」と呼ばれており、その存在は多くの女性読者にとって理想的な男性像として映るかもしれません。
みなみがストーカー被害に遭っていた際に助けてくれるなど、周囲への気遣いができる優しい人物として描かれています。
瀧波ユカリ先生は、月寒というキャラクターを、恵比島千歳のような「ダメな男の人」の対極として構想したと語っています。
彼の存在は、みなみが自身の不条理な状況や社会について考え始めるきっかけを与え、彼女の成長を後押しする重要な役割を担っています。
しかし、物語が進むにつれて、月寒自身も過去に深い葛藤や経験を抱えていることが明らかになります。
彼の持つ「フェミニズム」への理解や、女性への配慮は、単なる表面的なものではなく、彼自身の経験に裏打ちされたものであると考える読者も多いでしょう。
一部の読者からは、月寒のような男性が現実世界に本当に存在するのか、という疑問の声も上がっていますが、同時に「まともな男性こそがどうか立ち上がって救いの手を差し伸べまくっていただきたい」という、理想と願望が入り混じった意見も見られます。
月寒の存在は、男性がフェミニズムに対してどのように向き合えるか、あるいは向き合うべきかという問いを、読者に投げかけていると言えるでしょう。
恵比島千歳:現代の「クズ男」像を体現する存在
| 名前 | 恵比島千歳(えびしま ちとせ) |
| 特徴 | 顔が良いクズの「星屑男子」。彼女がいながらみなみと関係を持ち、浮気も繰り返す。自己中心的で、他人を貶める言動が多い。 |
| 役割 | みなみが経験する恋愛の「痛み」の象徴。男性側の「嫉妬」や、社会が許容する「クズ男」の姿を映し出す。 |
恵比島千歳は、物語において「星屑男子」(顔の良いクズ男)と称されるキャラクターであり、みなみを翻弄する存在です。
彼には本命の彼女がいるにもかかわらず、みなみに手を出したり、複数の女性と関係を持ったりするなど、その言動は多くの読者から「最低」と評されています。
自分が優位な立場になるためにみなみを貶めるような発言をするなど、その行動は自己中心的で、共感しがたい側面が多々見受けられます。
しかし、瀧波ユカリ先生は、千歳のような「ダメな男の人」を描くことを当初から構想しており、その存在は物語における重要な対比となっています。
千歳のようなキャラクターは、現実世界にも一定数存在すると考える読者が多く、「なぜこんなクズ男に惹かれるのか理解できないけれど、現実にいる」という、ある種のリアリティを読者に感じさせています。
彼の存在は、なぜ女性がこのような関係から抜け出せないのか、あるいは抜け出すことが難しいのかという、恋愛における複雑な心理を浮き彫りにします。
物語の後半では、千歳が歳を重ねるごとにさらに堕落し、未成年にまで手を出してしまうなど、その「クズ男」としての性質が加速していく様子が描かれています。
これは、単にキャラクターの悪行を示すだけでなく、社会が男性の「クズ」な言動を許容し続けることの危険性や、個人の成長が必ずしもポジティブな方向に向かうとは限らないという現実を突きつけていると捉えることもできます。
千歳の存在は、読者に「痛み」を伴う恋愛の典型例を示し、そこからいかに抜け出すべきかという問いを投げかけていると言えるでしょう。
栗山由仁:みなみを支える親友の視点
| 名前 | 栗山由仁(くりやま ゆに) |
| 特徴 | 主人公みなみの親友。恋愛不用論者のフェミニスト。みなみに「無痛恋愛」という概念を提案する。 |
| 役割 | みなみの精神的な支えであり、客観的な視点を提供する。物語の重要な転換点において、月寒の過去を知るなど、核心に触れる役割を果たす。 |
栗山由仁は、主人公みなみの親友であり、彼女の恋愛における葛藤を最も近くで見守る存在です。
由仁は、みなみが恵比島千歳との関係に苦しむ姿を心配し、本で読んだ「無痛恋愛」という考え方を提案します。
この「無痛恋愛」とは、「友人のような間柄でありながら、恋人のような関係を持ち、互いにほどほどの好意を持った状態」を指し、痛みや支配のない関係性を模索する現代的な視点を含んでいます。
由仁は、恋愛に対してより客観的かつ現実的な視点を持つ人物として描かれており、みなみの恋愛体質とは対照的な存在です。
しかし、彼女の「恋愛不用論者」としての側面や、フェミニストとしての明確な思想は、時にみなみとの関係に摩擦を生じさせることもあります。
瀧波ユカリ先生は、みなみと由仁の関係について、「距離を詰めすぎて姉妹っぽくなってしまうというか、干渉しすぎてしまうと破綻してしまう」と語っており、親友同士の関係性においても「痛み」や葛藤が生じることを示唆しています。
物語の後半では、由仁が月寒と再会し、月寒がみなみたちのそばから離れた理由や、彼が抱える過去について知ることになります。
これにより、由仁はみなみの成長を外側から見守るだけでなく、物語の核心に触れる重要な役割を果たすことになります。
由仁の存在は、恋愛だけでなく、友情という人間関係の中にも存在する「痛み」や「成長」の可能性を読者に提示していると言えるでしょう。
その他の登場人物たち:物語を彩る多様な人間模様
「わたしたちは無痛恋愛がしたい」には、主要人物以外にも、現代社会の様々な問題を象徴する個性的なキャラクターたちが登場し、物語に深みを与えています。
うずらは、かつてSNS上で幸せな生活をアピールしていたものの、実際は夫である清隆からのモラハラに苦しむ女性です。
出産後の育児ノイローゼに加え、清隆からのDVに苛まれ、精神的に追い詰められていきます。
彼女の物語は、SNS上で見られる華やかな生活の裏に隠された現実や、家庭内におけるDV(ドメスティック・バイオレンス)の問題を浮き彫りにします。
のりこは、うずらの相談相手となり、彼女の受けている行為が単なるモラハラではなく、DVであると指摘する重要な役割を果たします。
彼女の言葉は、被害者が自身の状況を正確に認識し、問題解決に向けて動き出すためのきっかけとなります。
清隆は、うずらの夫であり、自身に加害者の意識がほとんどないままモラハラやDVを繰り返す人物として描かれています。
彼の存在は、加害者自身が自身の行いを反省する機会に恵まれなかった社会の構造や、DV問題の根深さを読者に突きつけます。
さらに、第5巻では清隆の部下でクローズドゲイの誉というキャラクターが登場し、男性が抱える「男らしさの呪縛」といった問題にも光を当てています。
このように、本作は多種多様なキャラクターを通して、恋愛だけでなく、育児、家庭、セクシュアリティといった、現代社会が抱える様々な「痛み」の側面を提示し、読者に多角的な視点から問題について考えさせる構成となっています。
【わたしたちは無痛恋愛がしたい】あらすじ深掘り:痛みと向き合う物語
「わたしたちは無痛恋愛がしたい」は、主人公みなみの10年間の変化を軸に、現代社会に潜む様々な「痛み」と、それに向き合う人々の姿を描いています。
ここでは、各巻のあらすじを深掘りし、物語の展開が持つ意味を考察していきます。
第1巻:無痛恋愛への憧れと「フェミおじさん」との出会い
物語は、恋愛体質な20代の星置みなみが、顔の良いクズ男、恵比島千歳との関係に苦しむところから始まります。
千歳には本命の恋人がいるにもかかわらず、みなみは彼との肉体関係を断ち切れずにいました。
親友の栗山由仁は、そんなみなみを心配し、本に載っていた「無痛恋愛」という考え方を提案します。
これは、友人のような関係性の中でほどほどの好意を持ち、互いに痛みを伴わない恋愛を意味するものでした。
みなみはこれに憧れを抱きつつも、自分自身を変えることができずにいました。
さらに、街中で「わざと弱そうな女性にぶつかる男性」(通称「わざぶつ」)に遭遇するなど、嫌なことが重なり落ち込むみなみ。
そんな彼女に手を差し伸べたのが、「フェミおじさん」と呼ばれる月寒空知でした。
この出会いが、みなみが自身の不条理な立ち位置や社会について考え始める大きなきっかけとなります。
第1巻では、みなみが抱える恋愛の「痛み」と、それを乗り越えるための新たな視点を示唆する月寒の登場が、物語の重要なターニングポイントとして描かれています。
読者の多くは、みなみの置かれた状況に「あるある」と共感しながらも、彼女がどのように変化していくのか、期待を抱いたのではないでしょうか。
第2巻:セクハラ問題と10年後の変化、そして新たな悩み
第2巻では、みなみがセクハラ美容師に悩まされる問題が描かれ、月寒がその状況を改善するために力を貸します。
このエピソードは、日常生活に潜む女性へのハラスメント問題に光を当て、月寒の「フェミおじさん」としての役割を明確に示しています。
みなみは、千歳と会えない状態が続く中で、徐々に月寒に好意を抱き始めますが、物語はここで大きな時間の飛躍を見せます。
それから10年の月日が流れ、みなみは30代に。
彼女のそばには、月寒も親友の由仁すらもいない状況が描かれます。
唯一残っているのは、腐れ縁となった千歳だけでした。
しかし、この10年間でみなみは大きく成長を遂げ、男性に搾取されるだけの女性ではなくなっていました。
鍵垢に思いを呟くだけだった彼女が、「言葉」を手に入れ、おかしいと感じたことを自分の言葉で表現できるようになったのです。
この変化は、多くの読者にとって、個人の成長と自己肯定感の獲得の重要性を強く印象付けます。
一方で、成長したみなみはまた別のことに頭を悩ませており、人間関係の複雑さや、社会の「痛み」が形を変えて彼女の前に現れることを示唆しています。
「痛み」を感じることは避けられないものの、それとどう向き合い、乗り越えていくかという、本作の核心的なテーマがより深く提示される巻と言えるでしょう。
読者の中には、みなみの初期の雑な振る舞いに苛立ちを感じた人もいたかもしれませんが、この2巻まで読むことで、彼女の成長と物語の奥深さを理解し、見方が変わったという声も少なくありません。
第3巻:過去との対峙と人間関係の複雑さ
第3巻では、みなみの友人であるうずらの抱える問題がクローズアップされます。
かつてSNS上で華やかな幸せをアピールしていたうずらは、現在、旦那である清隆が原因で育児ノイローゼに悩まされていました。
SNSのキラキラした表面的な情報だけでは見えない、実際の生活の苦しさが描かれ、現代社会の闇を深く切り込んでいます。
一方、クズ男だった千歳は、歳を重ねても落ち着くどころか、さらに最低な男へと堕落していきます。
浮気を繰り返すばかりか、未成年にまで手を出してしまうその姿は、みなみとは真逆の方向へと進む人間の姿を示し、読者に衝撃を与えます。
彼の行動は、一部の読者から「胸くそ悪い男性の描写が多い」との感想を呼んでいます。
また、この巻では由仁が月寒と再会し、これまで明かされていなかった月寒がみなみたちのそばから離れた理由や、彼が抱える過去について知ることとなります。
月寒の過去が明らかになることで、彼の「フェミおじさん」としての振る舞いが、単なる優しさだけでなく、彼自身の経験に根差していることが示唆され、キャラクターにさらなる深みを与えます。
この巻は、登場人物たちの過去や現在の「痛み」が交錯し、人間関係の複雑さや、社会の根深い問題が多層的に描かれる、物語の転換点となる重要な巻と言えるでしょう。
第4巻:モラハラ/DVの認識と自立への一歩
第4巻では、うずらが夫・清隆からのモラハラに苦しみ、精神を病む寸前の状況が詳細に描かれます。
彼女がのりこに相談した際、のりこはそれが単なるモラハラではなく、DV(ドメスティック・バイオレンス)であると明確に指摘します。
当初、自身の状況を否定していたうずらは、のりこの説明によってDVというものの本質を理解し、自身が被害を受けていることを認識していきます。
このエピソードは、モラハラとDVの境界線が曖昧になりがちな社会において、その違いを明確に提示し、被害者が自身の状況を正しく認識することの重要性を読者に訴えかけます。
うずらは、兄や友人と共に清隆との話し合いの場を設けますが、清隆には自身の行いを反省する意識がほとんどなく、これまでの人生で自身の行動を深く顧みる経験が少なかったことが示唆されます。
これは、加害者側の無自覚さや、社会がその無自覚さを温存してきた構造的な問題を示唆していると考える読者も多いでしょう。
うずらと清隆が理解し合うことの厳しさが描かれる一方で、みなみは自身にとって初めての著書を出版し、大きな成長を見せます。
そして、「もう男はいらない」と宣言し、長年の腐れ縁であった千歳を拒否するという決断を下します。
これは、みなみが他者に依存することなく、自らの意思で人生を切り開くという、強い自立への一歩を象徴しています。
第4巻は、DVという深刻な社会問題に切り込みつつ、主人公みなみの精神的な自立という、希望に満ちた変化を描き出す、物語の重要な転換点と言えるでしょう。
最新刊までの展開と今後の展望
「わたしたちは無痛恋愛がしたい」は、既刊7巻(2025年6月23日現在)までが発売されており、物語はさらに深みを増しています。
まとめ
瀧波ユカリによる漫画『わたしたちは無痛恋愛がしたい~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~』は、「このマンガがすごい!2023」オンナ編にランクインするなど、現代社会における恋愛とジェンダーの「痛み」に真正面から向き合った社会派ラブコメディです。
本記事では、恋愛体質でありながら男性からの搾取に苦しみ、Twitterの鍵垢に本音を吐露する「鍵垢女子」星置みなみを主人公に、彼女が追い求める「無痛恋愛」の理想と、現実のギャップを描く物語を深掘りしました。
物語は、みなみの人生に影響を与える年上の「フェミおじさん」月寒空知との出会い、そして顔の良い「クズ男」恵比島千歳との腐れ縁という、現代的な人間関係の対比を軸に展開します。
親友の栗山由仁は、みなみに「痛みや支配のない関係」としての無痛恋愛という概念を提案します。



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