
『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』は、「いのちの糧は、戦場にある。」というキャッチコピーの通り、少年たちの過酷な運命を描ききった作品です。
この物語の中で、その過酷さと悲劇性を体現したキャラクターの一人が、アイン・ダルトンでしょう。
治安維持武装組織「ギャラルホルン」の若き士官として登場したアインは、鉄華団との激しい交戦を経て、やがて両腕・下半身を失い、最終的にはモビルスーツと一体化するという、想像を絶する運命を辿ります。
特に、彼が「グレイズ・アイン」のコックピットに生体パーツとして組み込まれた姿、さらにはその後の「脳だけの状態」という結末は、視聴者に強烈な衝撃と倫理的な問いを投げかけました。
本記事では、アイン・ダルトンが辿ったエピソードを詳細に振り返り、彼の正体と最後、そしてなぜ両腕・下半身が取り除かれるという非人道的な手段がとられたのかについて、深く掘り下げて考察していきます。
彼の純粋な正義感が、いかにして復讐の鬼と化し、禁忌のシステムの実験台へと変貌していったのか、その壮絶な軌跡を追っていきましょう。
鉄血のオルフェンズのアイン・ダルトンとは何者?
アイン・ダルトンは、『鉄血のオルフェンズ』の物語初期において、「ギャラルホルン」という巨大組織の一員でありながら、「鉄華団」の少年兵たちとは対照的な「正義」を信じる純粋な若者として描かれます。
しかし、鉄華団との戦いを通じて、彼の人生は一変してしまいます。
アイン・ダルトンのプロフィール
| 氏名 | アイン・ダルトン |
| 所属 | ギャラルホルン火星支部(モビルスーツパイロット) |
| 階級 | 三尉(初登場時) |
| 性格 | 義理堅く、正義感溢れる青年、一途な性格 |
| 出自 | 母が火星出身であることから差別を受ける |
| 搭乗機 | グレイズ(初期) → グレイズ・アイン(モビルスーツと一体化) |
ギャラルホルンの若き士官が辿った悲劇
アイン・ダルトンは、治安維持武装組織「ギャラルホルン」の火星支部に所属するモビルスーツのパイロットです。
階級は三尉であり、作中では上司であるクランク二尉とオーリクス二尉と共に、クーデリア・藍那・バーンスタインの身柄を確保するべく、民間警備会社CGSを襲撃しています。
当初は、義理堅く正義感に溢れた青年として描かれていましたが、彼の人生はCGS基地襲撃作戦で一変します。
三日月・オーガスの駆るガンダム・バルバトスに敗北し、さらに彼が敬愛する上官のクランク二尉たちが相次いで戦死してしまいました。
この一件を機に、アインの純粋な正義感は、鉄華団に対する激しい憎悪と復讐心へと変貌していきます。
この悲劇的な転換が、ネット上で彼を「悪役」に相応しい人物だと評されるような、極端なキャラクターへと押し上げていった要因でしょう。
鉄血のオルフェンズの作品情報
鉄血のオルフェンズの概要
アイン・ダルトンが登場する『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』は、矢立肇、富野由悠季原作によるテレビアニメです。
第1期が2015年10月から2016年3月、第2期が2016年10月から2017年4月まで放送されました。
キャッチコピーは「いのちの糧は、戦場にある。」です。
既存のガンダム作品とは一線を画す、少年兵たちの「居場所探し」と過酷な闘争を描いた群像劇として、放送当時から大きな話題となりました。
鉄血のオルフェンズのあらすじとアインの登場
物語は、火星の民間警備会社CGSに所属する三日月たち少年兵が、火星の独立運動を指揮する少女クーデリアの護送任務を請け負うところから始まります。
アイン・ダルトンの主要な登場回は、第1期の序盤、鉄血編(第4話-第6話)です。
クーデリアを護送する計画の最中、鉄華団の元一軍隊員のドド・ミルコネンと仲介業者の背信行為によって、ギャラルホルン火星支部の奇襲を受けることになります。
アインはこの奇襲部隊の一員として、上官のコーラル・コンラッドたちと共に鉄華団と交戦。
さらに、後にアインの運命を左右することになるマクギリス・ファリドとガエリオ・ボードウィンも参戦し、物語は大きく動き出します。
鉄血のオルフェンズのアインの最後は?モビルスーツと一体化して復活?
義理堅く一途な青年だったアイン・ダルトンが、憎しみを原動力に禁忌の力を求めるに至った経緯は、彼の人間的なドラマを物語っています。
彼の最後は、単なる戦死ではなく、モビルスーツと一体化するという、驚愕の「復活」を経た壮絶な結末でした。
ネタバレ① アインはクランクの敵討ちを誓う
アイン・ダルトンは、火星支部に配属されて間もない新人MSパイロットでした。
彼の母が火星出身であったという理由から、地球出身の士官たちから差別を受けるという苦い経験をしています。
しかし、上官のクランク二尉だけはアインを差別することなく、他のパイロットと同等に扱ってくれました。
これにより、アインは「自分を取り戻すことができるようになった」と感じ、クランク二尉に対して深い敬愛の念を抱くようになります。
そのクランク二尉を、三日月の操縦するバルバトスが戦死へと追い込んだことで、アインの鉄華団への憎しみは頂点に達し、クランク二尉の敵討ちを自身の存在意義とするまでになってしまいます。
この「恩人への一途な思い」が、後に彼の復讐劇と悲劇的な運命を決定づけることになります。
ネタバレ② アインは鉄華団追撃任務で重傷を負う
火星支部のトップであるコーラルが戦死したことにより、ガエリオ・ボードウィン特務三佐が火星支部を仕切ることになります。
ガエリオは、鉄華団追撃任務をおこなうことを決定し、アインはこれに志願します。
この時、アインはガエリオの知性や品性の高さを目の当たりにし、ガエリオを上官として深く慕うようになっていました。
任務開始当日、ガエリオ率いるギャラルホルン火星支部のMSパイロットたちは鉄華団と交戦。
当初はアインたちが優位に戦いを進めていましたが、鉄華団の増援によって形成が逆転してしまいます。
アインは、尊敬するガエリオの危機を身を挺して守るのですが、その代償として自身が致命的な大怪我を負ってしまいました。
この自己犠牲的な行動は、彼の義理堅い性格と純粋な忠誠心の現れであり、彼の悲劇が復讐心だけでなく、崇高な犠牲心によってもたらされたことを示唆しています。
ネタバレ③ モビルスーツと一体化して復活?下半身がない理由は?
致命的な大怪我を負い、臓器を失ったアインは、生命維持装置でかろうじて命を繋ぎ止める状態になってしまいました。
ここで、マクギリス・ファリドは、アインに対し、ギャラルホルンの禁忌とされていた阿頼耶識システムの施術をおこなうことを決定します。
この非人道的な施術の結果、アインはモビルスーツと一体化した形で「グレイズ・アイン」として復活を遂げます。
ところが、この復活は、両腕・下半身がないという凄惨な姿でした。
なぜ両腕・下半身が切断されたのかというと、これにはマクギリスの冷酷な意図が関係しています。
マクギリスは、「人間の余計な部分」を切断することで、モビルスーツを動かすための「単なるユニット」にするという目的を持っていました。
阿頼耶識システムは、パイロットの背中に3本のパイプが繋がれ、機体の両サイドと腰から固定されます。
両腕・下半身を取り除くことで、アインの肉体はモビルスーツの駆動系に最大限に最適化され、人間の意志や余計な感情を排した戦闘マシンへと強制的に変貌させられたのです。
このマクギリスの冷酷な判断は、目的のためには手段を選ばないという、ギャラルホルン内部の腐敗と非情さを象徴しています。
鉄血のオルフェンズのグレイズ・アインを考察
モビルスーツと一体化して復活したアイン・ダルトンは、その後、自身の復讐心を具現化したかのようなMSグレイズ・アインとして戦場に舞い戻ります。
グレイズ・アインは、従来のMSよりも1.5倍ほどの巨大なサイズを誇り、阿頼耶識システムによってパイロットの思想を機体にダイレクトに反映させることが可能でした。
考察① グレイズ・アインとは?
グレイズ・アインは、両腕・下半身を取り除かれたアイン・ダルトンが生体パーツとして組み込まれた、モビルスーツ「グレイズ」をベースに秘密裏に開発されていた実験機です。
この実験機の目的は、禁忌とされる阿頼耶識システムを研究し、その戦闘能力を最大限に引き出すことにありました。
阿頼耶識システムは、ギャラルホルンなどの正式な機関では「非人道的」として使用が禁忌とされています。
アインの肉体への過大な負担と、両腕・下半身の切断という非人道的な施術が、その禁忌の理由を明確に示しています。
しかし、マクギリスは、ギャラルホルンの権威を失墜させるという自身の目的のため、このシステムをアインに利用。
アインが阿頼耶識システムの施術を受け、機体と直結したのがグレイズ・アインであり、まさに「モビルスーツに魂を売った」かのような悲劇的な存在として描かれました。
考察② グレイズ・アインのコクピットの中身
グレイズ・アインのコックピットは、その非人道性を象徴する凄惨な構造となっていました。
コックピットの中には、両腕・下半身など「余分な部分」が切り離されたアイン・ダルトンの姿があります。
両腕・下半身を取り除かれたアインの背中には、阿頼耶識システムと繋がっている3本のパイプが確認できます。
さらに、コックピットハッチ内は、羊水のような液体で満たされていました。
これは、アインの生命維持と、モビルスーツからの物理的・精神的な負担を軽減するための処置と考えられますが、その姿はまさに「生命維持装置としてのコックピット」であり、アインがもはや人間ではなく、機体の一部となってしまったことを痛烈に示しています。
考察③ コクピット内のアインの顔には表情がない
グレイズ・アインとして復活したアインは、一見すると人間らしさを失っていないように見えました。
ガエリオに向かって「再び戦えることができて嬉しい」と語ったり、三日月との再戦時に怒りの発言をしたりと、感情の起伏も見せています。
しかし、視聴者が違和感を覚えたのは、三日月に対して怒りの発言をするアインの顔に、表情がなく、うつろな目をしていた点です。
さらに、話している時も口が動いていませんでした。
この「無表情で話す」という描写は、アインが阿頼耶識システムによって脳からの信号を機械的に音声データとして出力しているためと考えられます。
つまり、アインの感情はまだ残っているものの、その肉体はもはや彼自身の制御下にはなく、システムに依存した半機械的な存在へと変貌してしまったことを示唆しているのです。
彼の感情と機械的な肉体の乖離が、彼の悲劇性をさらに深めています。
考察④ アインの脳はその後移植される?
グレイズ・アインの最後となったのは、アーブラウ市街地攻防戦での三日月との激闘でした。
序盤は三日月が操縦するガンダム・バルバトスを圧倒し、阿頼耶識システムの凄まじい戦闘能力を見せつけますが、三日月がバルバトスのリミッターを解除したことにより、コックピットを貫かれ機能停止してしまいます。
コックピットと直結していたアインは、当然、体が損傷し死亡している可能性が高いです。
しかし、驚くべきことに、この戦いの後、アインの脳だけは無事でした。
そして、彼の脳の一部がグレイズ・アインの阿頼耶識システムと共に、ガンダム・ヴィダールに移植されるという衝撃の展開を迎えます。
脳を移植され改良を施されたアインの脳は、高い戦闘能力を再現する「阿頼耶識システムtype-E」という形で、パイロットと機体の間に「脳だけの状態」で経由されることになりました。
これは、アインの脳が操作することで、パイロットの身体機能を奪うという阿頼耶識システムの欠点を克服した状態です。
ガンダム・ヴィダールは、ガエリオがヴィダールとして操縦することになるため、アインは脳だけの状態で、再び敬愛する上官ガエリオに力を与えるという役割を担います。
結果的に、ガエリオがギャラルホルンの腐敗に勝利をもたらすことに貢献しており、脳だけの状態になったアインは、最後の最後まで大活躍していたと言えるでしょう。
ファンからは、「微妙なとこやな」という声や、「人間としては結局死んでたって認識でいいんですかね?」といった、アインの生存に対する複雑な思いが寄せられています。
しかし、肉体を失っても脳として生き続け、恩人の勝利に貢献するという彼の一途な忠誠心は、『鉄血のオルフェンズ』が描いた壮絶な犠牲の一つとして、深く記憶されています。
鉄血のオルフェンズのアインのアニメ声優
アイン・ダルトンという、純粋さと狂気が混在する複雑なキャラクターに命を吹き込んだのは、実力派声優の内田雄馬です。
内田雄馬のプロフィール
| 氏名 | 内田雄馬(うちだゆうま) |
| 所属事務所 | アイムエンタープライズ |
| 声優デビュー | OVA『Holy Knight』 |
| 受賞歴 | 第11回声優アワード新人男優賞(2017年) |
| 主な出演 | 『ガンダムビルドファイターズトライ』コウサカ・ユウマ役(初のレギュラー) |
内田雄馬の主な出演作品や演じたキャラ
内田雄馬は、アインのようなシリアスな役柄から、爽やかな主人公、クールなライバルまで、幅広い役柄を演じ分けています。
マクロスΔ:ハヤテ・インメルマン
2016年放送の『マクロスΔ』では、主人公のハヤテ・インメルマンを演じ、その歌唱力と演技力が高く評価されました。
ダイヤのA:奥村光舟
野球漫画を原作とするアニメ『ダイヤのA』では、冷静沈着なキャッチャー、奥村光舟を演じています。
うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEシリーズ:鳳瑛二
アイドルアニメ『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEシリーズ』では、鳳瑛二を演じ、歌手としても活躍しています。
その他の主な出演作品
他にも、凪のあすから(旭火華)、Classroom☆Crisis(霧羽ナギサ)、血界戦線(音速猿〈ソニック〉)、ReLIFE(大神和臣)、BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS(カワキ)、東京喰種トーキョーグール:re(不知吟士)など、数々の人気作品に出演しています。
鉄血のオルフェンズのアインに関する感想や評価
アイン・ダルトンが辿った悲劇的な運命は、多くの視聴者の心に深く刻まれ、様々な感想や考察を生み出しました。
純粋さから狂気へ:予想できなかった転落
初期の純粋な士官としての姿から、復讐心に駆られてモビルスーツと一体化するまでのアインの転落は、多くのファンにとって予想外でした。
「アインがここまでなるとは初期のころには予想できなかった」という感想に見られるように、彼の非人道的な末路は、視聴者に強い衝撃を与えました。
特に、両腕・下半身を切断され、脳だけの状態になるという凄惨な描写は、『鉄血のオルフェンズ』の倫理的なタブーへの挑戦として、大きな波紋を呼びました。
脳だけの「生存」に対する複雑な感情
アインがグレイズ・アインとして機能停止した後も、脳だけが阿頼耶識システムtype-Eとして移植され、ガエリオのヴィダールに力を与えるという結末は、アインの「生存」に対する複雑な感情をファンに抱かせました。
「推しが全員死んだ…あ、いや待てよアインくんは脳が残っててガンダムに組み込んであるから生きてる…?」という意見に見られるように、「肉体的な死」を超えた「脳だけの状態」を「生きている」と捉えるかどうかの議論も生まれました。
「人間としては結局死んでたって認識でいいんですかね?」という問いは、彼の哀れな境遇に対する同情と、技術の進歩がもたらす倫理的な疑問を表しています。
しかし、脳としてでも尊敬する上官に貢献し続けるという彼の一途さは、アインというキャラクターの魅力を最後まで保っていた要因とも言えるでしょう。
鉄血のオルフェンズのアインまとめ
アイン・ダルトンは、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』という過酷な世界において、純粋な正義感と一途な忠誠心ゆえに、最も悲劇的な運命を辿ったキャラクターの一人です。
彼は、クランク二尉の敵討ちという復讐心に突き動かされ、最終的にはマクギリスの冷酷な陰謀によって両腕・下半身を取り除かれ、グレイズ・アインと一体化するという非人道的な姿で「復活」しました。
さらに、グレイズ・アインの機能停止後も、彼の脳は阿頼耶識システムtype-Eとしてガエリオに移植され、最後まで戦いに貢献し続けました。
アインの境遇は、ギャラルホルンという巨大組織の闇と、鉄華団との戦いがもたらした「犠牲」の極端な例として、視聴者に強い印象を残しています。
彼の壮絶なエピソードは、『鉄血のオルフェンズ』の物語の深みを理解する上で欠かせない要素であり、彼の活躍に注目することで、作品の新たな側面が見えてくるかもしれません。
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