
「2020年の東京オリンピック」という現実と重なる舞台設定。
予言めいた描写の数々。
そして、一度読んだら忘れられない強烈な世界観。
大友克洋氏が描いた漫画AKIRAは、連載終了から30年以上経った今もなお、多くの読者に語り継がれるSF漫画の金字塔です。
単なるフィクションとしてだけでなく、現代社会が抱える問題や人間の本質を鋭く抉り出すかのような内容は、読者の心に深く問いかけます。
なぜAKIRAはこれほどまでに人々を惹きつけ、今なお考察の対象となっているのでしょうか?
この記事では、AKIRAの物語のあらすじを追いながら、その魅力と、多くの議論を呼ぶラストについて深掘りしていきます。
現実と漫画がシンクロするような奇妙な感覚に、きっとあなたも引き込まれることでしょう。
漫画版AKIRAの物語を紐解く
まずは、AKIRAの壮大な物語のあらすじを、巻ごとに追っていきましょう。
第三次世界大戦後の荒廃した世界で、少年たちは何を見て、何と戦ったのでしょうか。
1巻:謎の始まりは若者同士の抗争から
物語は、第三次世界大戦を経て再建された新首都「ネオ東京」が舞台です。
しかし、その繁栄の裏側では、未だ復興が進まない旧市街が残され、混沌とした空気が漂っていました。
主人公の金田が率いる暴走族グループと、ジョーカー率いるクラウンとの抗争が勃発します。
旧市街近くの高速道路で暴走中に、鉄雄は道路の真ん中に佇む謎の少年、タカシを避けきれずに事故を起こしてしまいます。
金田の目の前で、タカシはゆっくりと姿を消し去るという不可解な現象が起きます。
動転する金田の前に現れたのは、救急車でも警察でもなく、軍(アーミー)でした。
病院に運ばれた鉄雄は、タカシとの接触をきっかけに、自身の中に秘められた超能力に目覚め始めます。
金田は、タカシを追い詰める中で出会った反政府ゲリラのケイ、竜と行動を共にするようになり、この世界を揺るがす「AKIRA」という言葉の存在を知ることになります。
2巻・3巻:鉄雄の変貌とAKIRA争奪戦
超能力に目覚めた鉄雄は、その力を使い暴走族グループを次々と壊滅させ、支配していきます。
その過程で、鉄雄はアキラの存在を知り、強い関心を抱くようになります。
大佐の忠告も聞かず、アキラを呼び起こそうとする鉄雄の行動は、軍、金田たち、反政府ゲリラ、ミヤコ教といった様々な勢力を巻き込んだ壮絶なアキラ争奪戦へと発展します。
しかし、その最中にタカシが誤って撃たれたことをきっかけに、アキラの力が暴走。
これにより、東京は二度目の大規模な崩壊を迎えることになります。
4巻・5巻:崩壊後の勢力争いと鉄雄の力の意味
東京崩壊後、ネオ東京は政府や軍の統制を失い、無政府状態と化します。
生活に困窮した人々は、ミヤコ教と、鉄雄がアキラを中心として築き上げた「大東京帝国」という二つの勢力に分かれて生活圏を形成します。
鉄雄は大東京帝国で、ドラッグを使って能力者を育成しようとしますが、やがて自身の力が制御不能な状態へと膨張していきます。
アキラの力の真の意味に興味を持った鉄雄は、敵対するミヤコに接触し、そこで自身の存在意義について深く考えさせられることになります。
そこに、アキラと鉄雄の力を調査・抹殺しようとする諸外国のスパイや軍隊も入り乱れ、戦いはさらに激化していきます。
6巻:鉄雄の暴走と覚醒、そして物語の結末へ
物語の最終巻では、権力欲にまみれた大東京帝国の隊長がミヤコ教を襲撃し、虐殺を行います。
一方、鉄雄の力はさらに強大化し、もはやコントロールができない状態に陥っていました。
ミヤコは、ケイを使って鉄雄を挑発・誘導し、その力を完全に解放させようとします。
その力に誘発されるかのように、アキラの力が反応し、鉄雄はアキラの力と一体化し、消滅します。
脅威が去ったネオ東京に、他国の軍隊が次々と侵攻してきますが、生き残った金田やケイたちは、その侵入を拒否。
「大東京帝国アキラ」の建国を宣言し、「アキラはまだ俺たちの中に生きている」という言葉を残して走り去り、物語は幕を閉じます。
なお、アニメ映画版では、タカシが撃たれて東京が崩壊する描写はなく、漫画とは異なるニュアンスの結末が描かれています。
AKIRAに登場する画期的な超能力表現
AKIRAが日本漫画史に与えた影響は計り知れません。
その中でも特筆すべきは、超能力の視覚表現における革新性でしょう。
「大友以前」「大友以後」と呼ばれる超能力表現
作者である大友克洋氏の代表作「童夢」で描かれた超能力表現は、それまでの漫画の常識を打ち破るものでした。
壁の円形の陥没、落下する天井、力を出しすぎたことによる血管の浮き上がりや鼻血など、物理的な描写を伴う超能力表現は、今日の漫画では当たり前となっています。
漫画の世界では、超能力の視覚的表現において「大友以前」「大友以後」という言葉が生まれるほど、その衝撃は大きかったと言われています。
それまで漫画での超能力表現は、オーラや電気を飛ばしたり、物を動かしたりといった、比較的シンプルな視覚表現が主流でした。
そこに大友氏は、よりリアルで説得力のある新しい表現手法を確立したのです。
AKIRAでさらにパワーアップした超能力表現
AKIRAでは、その超能力表現にさらに磨きがかかっています。
作中でたびたび描かれるレーザー砲を弾き返すシーンや、爆発を反射させるシーンは、地味ながらも超能力の存在感を強く印象付けます。
特に物語の核となる超能力者アキラが覚醒し、力が暴走してネオ東京を丸ごとブラックホールのような球体に巻き込んでいくシーンは、原爆を彷彿とさせるような圧倒的な迫力です。
緻密な書き込みは、漫画というより絵画を思わせるほどの特徴です。
物語の終盤で、鉄雄はほぼ人間の形を留めず、人体の肉と電気ケーブルなどの無機物が織り交ぜられた異形の姿となります。
この描写は、ケーブルを血管と見立てることで、生命と機械の融合、あるいは人間を超越した存在へと変貌する鉄雄の姿を視覚的に表現していると考察できます。
AKIRAが与えた多大な影響
AKIRAは、漫画やアニメの枠を超え、世界中のクリエイターやアーティストに多大な影響を与えました。
漫画界でAKIRAの影響を受けた作品・人物
人気漫画NARUTOの作者である岸本斉史氏は、AKIRAの映画ポスターを見て漫画家を目指したという逸話があります。
また、作中に登場する我愛羅というキャラクターは、鉄雄がモデルではないかという見方も漫画ファンの間では広まっています。
映像作品やファッションにも影響
ハリウッド映画「マトリックス」を監督したウォシャウスキー兄弟は、日本のAKIRAと攻殻機動隊に大きな影響を受けてマトリックスを制作したとインタビューで語っています。
「パシフィック・リム」では、ペントコスト司令官が敷島大佐をモデルにしていることが明かされています。
さらに、ジェームズ・キャメロン監督は漫画版AKIRAを見て日本の優秀なアニメスタッフを引き抜いて帰ったという逸話もあります。
2012年のアメリカ映画「クロニクル」の監督ジョシュ・トランクや、アメリカ人ミュージシャンのカニエ・ウェスト、SFホラードラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」の製作者ダファー兄弟、映画「LOOPER/ルーパー」の監督ライアン・ジョンソン、SF映画「ダークシティ」のアレックス・プロヤス監督など、多くのクリエイターがAKIRAからの影響を公言しています。
ファッション業界においても、ストリートウェアブランド「シュプリーム」とのコラボレーションや、ファレル・ウィリアムスがシャネルのコレクションでAKIRAにインスパイアされたビジュアルを発表するなど、その影響は広範囲に及んでいます。
AKIRAの個性豊かな登場人物たち
AKIRAの物語は、登場人物それぞれの立場や正義が複雑に絡み合い、深みを生み出しています。
ここでは、主要なキャラクターたちを紹介し、その魅力に迫ります。
金田
物語の中心となるのは、自称「健康優良不良少年」の金田です。
普段はワルで、他人に迷惑をかけることも当たり前ですが、友達のこととなると人一倍体を張る義理堅さを持っています。
女性関係には奔放な一面を見せる一方で、国家権力にも臆することなく立ち向かう度胸も持ち合わせています。
超能力に侵食され暴走していく鉄雄を最後まで見捨てず追いかける金田の優しさは、まさに主人公たる所以と言えるでしょう。
東京崩壊後に一時的に姿を消しますが、鉄雄が力の覚醒の片鱗を見せた際に、力のブラックホールの中から飛び出してくる描写があり、東京崩壊時にアキラの力の中に飲み込まれていたと考える読者も多いです。
金田の代名詞とも言えるのが「金田のバイク」です。
そのスタイリッシュで未来的なデザインは、発表当時から多くの読者を魅了し、AKIRAの象徴の一つとなっています。
| 金田 正太郎 プロフィール | |
|---|---|
| 生年月日 | 2003年9月5日生まれ |
| 年齢 | 16歳 |
| 身長 | 164cm |
| 体重 | 52kg |
| 所属 | 第8区職業訓練校の生徒 |
| 特徴 | バイクチームのリーダー格、自称「健康優良不良少年」、高い運動神経、人望が厚い |
鉄雄
金田の幼馴染である鉄雄は、金田とは対照的に、幼少の頃から何でも自然にこなす金田に対して劣等感を抱いていました。
当初は気弱な性格でしたが、超能力に目覚めてからは凶暴な性格へと豹変し、暴走族を次々と壊滅させ、支配していきます。
金田に「俺に命令すンじゃねェ」と反抗する場面や、金田に拳銃を突きつけられても「撃てるわけねーよなァ」と挑発する場面は、鉄雄の鬱屈した感情が爆発した瞬間として描かれています。
様々な社会から疎外され、唯一自分を守ってくれた金田への複雑な感情が、彼の行動原理に深く影響していると考察する読者もいます。
ネオ東京崩壊後、鉄雄はアキラを教祖とした新興宗教国家を立ち上げますが、アキラの力の真髄を知ってからは、魂が抜けたような日々を送るようになります。
その後、ミヤコの存在を思い出し接触を図ることで、自身の存在意義を諭されます。
物語のラストでは、力が暴走して第二のアキラになりかけていた鉄雄は、ミヤコたちによって力を導かれ、本来のアキラの力と衝突、吸収されることで、その存在を消滅させます。
暴走直前に鉄雄が金田に助けを求める姿は、多くの読者に切ない感情を抱かせました。
鉄雄の最後は、暴走した力が人体の原型を留めることができなくなり、アキラの力に呼応するだけの存在となります。
白いTシャツの上に真っ赤なマントを羽織り、右腕が機械とワイヤーでできた異形の姿は、彼の変貌を象徴するトレードマークです。
| 島 鉄雄 プロフィール | |
|---|---|
| 生年月日 | 2004年7月29日生まれ |
| 年齢 | 15歳7ヶ月(物語スタート時点) |
| 身長 | 160cm |
| 体重 | 46kg |
| 血液型 | A型 |
| 別名 | 41号 |
| 特徴 | 金田の幼馴染、超能力者、当初は気弱だが覚醒後は凶暴化 |
ミヤコ
映画版と漫画版で、ミヤコの描かれ方には大きな違いがあります。
映画版では、終末思想を説く過激な新興宗教の教祖として描かれ、最期は情けない叫び声をあげて死を迎え、その描写に驚いた読者も多いでしょう。
しかし、漫画版のミヤコは、物語の重要なナビゲーターであり、時にはケイを通じて鉄雄にアクションを起こさせたり、鉄雄の力を本来の力に導くために挑発したり、暴走時には自らの命を犠牲にしてまで鉄雄の力を調整しようとします。
目が見えないためサングラスを着用しており、その姿は怪しさを感じさせますが、サカキを娘のように可愛がり、難民を助けるなど、慈愛に満ちた人物として描かれています。
漫画版におけるミヤコの「カッコよさ」を挙げる読者も少なくありません。
敷島大佐
アキラの力を恐れ、制御しようとしてきた敷島大佐は、作中で数々の名言を残しています。
第三次世界大戦の原因となった最初のアキラの暴走後、凍結処理されたアキラの施設で発した「見てみろ…この慌てぶりを…」「怖いのだ…怖くてたまらずに覆い隠したのだ…」という言葉は、アキラの力が人類にとって触れてはならないものであったことを示唆しています。
また、アキラの存在を知った鉄雄が強引にアキラの居場所を聞き出そうとした際、希望的観測で鉄雄の力を擁護するドクターに対し、「思いあがるな!貴様ら科学者の実験の為に何千万の人間の命を賭けられるか!」と叫ぶ大佐の言葉からは、彼の強い責任感が感じられます。
敷島大佐は、最初のアキラの暴走で実の父親を亡くしており、アキラの力が再び暴走することを予見していました。
それを防ぐために政治的、軍事的にあらゆる努力をしてきた苦労人として描かれています。
物語のラストでは、金田に他国からの侵略を防ぐための建国を持ちかけられますが、未来を担う若者にすべてを委ねる選択をします。
| 敷島 大佐 プロフィール | |
|---|---|
| 生年月日 | 1977年11月15日生まれ |
| 年齢 | 42歳 |
| 身長 | 203cm |
| 体重 | 92.5kg |
| 血液型 | O型 |
| 所属 | 軍の実質的な最高指揮官、アキラの管理者 |
| 特徴 | 責任感が強い、苦労人 |
その他の登場人物
AKIRAには、他にも魅力的な登場人物が多数登場し、物語に深みを与えています。
ケイを娘のように可愛がるマッスルおばさん、チヨコ。
鉄雄の内面の寂しさを感じ取り、最後まで鉄雄を裏切らなかった心優しいカオリ。
軍に協力してアキラの暴走を食い止めようとする超能力者、タカシ、キヨコ、マサル。
特にキヨコは、他のナンバーズにはない「予言」の能力を持っており、アキラの復活や鉄雄の覚醒、東京崩壊までを予知します。
鉄雄でさえ予言の能力は発動できなかったことから、キヨコの能力がいかに特殊であったかがうかがえます。
大佐はキヨコの予言を元に様々な対策を講じますが、結果的に東京は崩壊へと向かいます。
軍の能力開発により強大な力を得たものの、自我を失い力そのものと化してしまったアキラなど、多くの登場人物の背景が綿密に描かれ、それぞれの立場と正義が衝突する様子は、非常に練られた構成と言えるでしょう。
AKIRAという存在の核心に迫る
この物語の根源をなす「AKIRA」という存在とは、一体何だったのでしょうか?
そして、超能力とは何を示唆していたのでしょうか。
超能力は軍主導で行われた開発能力
アキラは、物語の舞台から30年前にあたる1980年代に軍が秘密裏に行っていた超能力開発実験における「ナンバーズ」の一人です。
実験によって何らかの結果を出した被験者には番号が割り振られ、「ナンバーズ」と呼ばれます。
結果を出せなかった実験体は廃人になったり死亡したりと、国家機関による実験としてはかなり非人道的なものであったことが描かれています。
映画には登場しない漫画版にのみ登場するナンバーズや超能力者も多数存在します。
タカシ(26号)、マサル(27号)、キヨコ(25号)、そして仮死状態で廃棄された元ナンバーズでありミヤコの正体である19号。
鉄雄は41番目の番号が割り振られ、アキラは28号です。
漫画版限定では、ミヤコに育てられたサカキ、モズ、ミキや、鉄雄たちによって能力を開発させられた鳥男、ホーズキ男といった超能力軍隊も登場します。
特に鳥男は、両腕がなく目も見えないが遠視能力で全てを見通すことができ、攻撃部隊ではなく偵察や監視として厄介な存在感を示していました。
第三次世界大戦の真相はアキラが原因だった
28号のナンバーが割り振られたアキラは、タカシたちと一緒にいた時期もありましたが、実験時に力が暴走し、その際に東京崩壊を引き起こしました。
当時、それがアキラが原因であると判明するまでには3年を要したとされています。
そして、その強大な力を巡って第三次世界大戦が勃発するきっかけとなりました。
アキラは、オリンピック会場建設予定地の地下深くに即時凍結処理され、30年間封印されます。
しかし、その力はあまりにも強大すぎたため、あくまでも「蓋をした」に過ぎない状態だったと考えることができます。
アキラが持つ力そのものとは?
漫画作中のミヤコの発言から考察すると、アキラの力とは「宇宙のような不可逆的な一方通行になっている流れを押しとどめようとする力」であると示唆されています。
そして、せき止めた力を解放した時、それまでにせき止められた流れが速度を倍加させながら元の状態へ戻ろうとする、という見方もできます。
アキラの姿形はすでに形骸であり、その流れにすら留まっていないという考え方もあります。
東京を崩壊させたあの凄まじいエネルギーも、その力の一部でしかなかったと解釈できるでしょう。
漫画AKIRAの衝撃的なラスト
多くの読者がその結末に心を奪われた、漫画AKIRAのラストを詳しく見ていきましょう。
そこには、人類への問いかけが込められているのかもしれません。
物語のラストから考察するAKIRA
力を制御できなくなった鉄雄は、アキラの力と呼応し、アキラに吸収されてその存在を消滅させました。
この吸収の際に金田も巻き込まれ、力の波の中で漂う中で、鉄雄の記憶と金田がリンクしていきます。
アキラと鉄雄の力が融合していく深淵の中で、金田は力の本質が「生命」であり「宇宙」そのものであることを理解します。
この力が破壊を招いた原因は、人類が進化を望んだ結果ではないか、という結論に至ります。
ラボで行われた実験による新しい力が進化を求めた結果でしたが、金田は不幸しか生まれなかったのかと、記憶の中のキヨコに問いかけます。
それに対しキヨコは、「心から通じ合える本当の仲間が出来た」と回答し、消えていきます。
そして記憶のリンクは少年時代に戻り、金田は一言、鉄雄に「俺はただ、あのとき友達になろうと思ったんだ…」と語りかけます。
鉄雄との記憶に感化され、力に飲み込まれようとしていた金田を現実に引き戻したのは、ケイや仲間たちでした。
力の融合が終わった後の東京には、瓦礫だけが残されました。
鉄雄との戦いが終わったことで、他国が調査を名目に次々と東京に上陸してくる中、金田たちは新たに「大東京帝国アキラ」を建国し、他国の侵入を拒否します。
そしてラストに「アキラはまだ俺たちの中に生きている」という言葉を残して走り去り、物語は幕を閉じます。
なお、当時のヤングマガジンに掲載された最終回と、単行本に収録された最終回では結末が異なり、最後の金田が去っていくシーンは単行本にのみ追加されています。
単行本化の際に結末が変更される漫画はかなり珍しいと言えるでしょう。
漫画AKIRAのラストから読み解くメッセージ
AKIRAのラストから考察できるのは、人類が超能力という強大な力を見つけ、何の畏怖もなく開発したことで、自分たちではコントロールできないパンドラの箱を開けてしまったということです。
その力に蓋をするために、コントロールできない力の研究を続けた結果、第二のアキラである鉄雄を生み出してしまい、最終的に東京は二度の崩壊を引き起こしました。
ラストでミヤコが金田に「お前はゆかねばならぬ」と言う場面は、すべてが消え去った後でも、金田たちは生きていかなければならないというメッセージだと考えることができます。
ただの人間である金田は、誰からも力を借りず、自分たちだけの力で生きていくことを決意し、他国の干渉を完全に拒否します。
人類の真の力は、個人の生きる強さにあるという見方もできるでしょう。
過去を否定するわけでもなく、未来に絶望するわけでもない。
だからこそ、「アキラは俺たちの中で生きている」というセリフには、困難を乗り越えて未来を切り開く人間の力強さが込められていると考察されます。
漫画AKIRAの世界は現実を予言していた?
AKIRAが「予言の書」と呼ばれる理由の一つに、現実と奇妙な符合を見せる描写の数々があります。
2020年の東京五輪を見事に予言!
第三次世界大戦を経て復興に向かうAKIRAの世界では、復興の象徴として東京オリンピックの開催を目指して国が動いていました。
しかし、オリンピック跡地が軍事利用されるという情報が流れ、反政府ゲリラに爆弾テロを起こされます。
その後、反政府ゲリラのスパイが得た情報の中には、跡地の利用に関して「地球を100回壊しても釣りがくる金」のアキラのメモがついた予算書が流出します。
まだ戦後復興で失業者が溢れ、インフラが復旧しきっていない現状にも関わらず、貧困者の救済よりも東京オリンピックを優先する政府の姿勢は、国民の不満を爆発させます。
現実でも、連続する文書流出事件や役人のスキャンダル、築地市場の跡地問題など、AKIRAの描写と重なるような状況が多々見られました。
特に、現実の東京オリンピック開催に向けて、民泊法が強行されたり、貧富の格差がより顕著になったりする中で、政府に対する不穏な空気が流れたことは、AKIRAが予言していたのではないかという見方もあります。
漫画では明確には語られませんでしたが、映画版では東京オリンピック開催前の政府の税制改革が失敗し、大量の失業者が出て、東京オリンピック反対運動が起きているという設定になっています。
これもまた、現実の消費税増税や経済状況と重ねて考える読者も多いようです。
漫画ではアキラが東京を再度崩壊させてしまったため、東京オリンピック自体は中止になりましたが、「大東京帝国」の記念すべき第一回目の「大集会」という形で、東京オリンピック会場が再利用されることになります。
AKIRAは原発事故も予知していた?
漫画版では特に明確な表現はありませんでしたが、映画版では鉄雄が力を使った際のデータに陽子崩壊が確認されたシーンがあり、アキラの力そのものの性質が非常に「核」の力に似たものであると推測されます。
最初の大崩壊の際は、その力を巡って第三次世界大戦までが勃発しましたが、結局アキラをコントロールできずに地下深くへ慌てて押し込めてしまいます。
アキラの力をコントロールするために莫大な国家予算が組まれ、研究は継続されていくのですが、結局は鉄雄もコントロールできずに二度目の東京崩壊を起こしてしまいます。
1973年のオイルショックを機に日本は原発の設置が進みましたが、1979年のスリーマイル島原発事故を受け、原発に対する恐怖から世界の原発建設は一時停滞することとなりました。
「コントロールができる」という驕りから始まった原発の建設ラッシュは、福島原発事故で「本当にコントロールできるのか?」という問いに変わってしまいました。
AKIRAと同じく、コントロールができなくなれば慌てて閉じ込めるしかなくなるのか。
我々人類は、制御できない大きな力に対して、今一度深く考える必要があるのかもしれません。
漫画ではなく宗教と宗教の争いは現実に起きている?
ネオ東京崩壊後、ネオ東京は大きく二つの宗教団体によって復興していくことになります。
アキラを教祖として鉄雄が作る「大覚教」(大東京帝国)と、ミヤコが難民を無差別に助けた結果巨大化したミヤコ教です。
両宗教ともに人民を統制していくために救世主となる存在を使うわけですが、大覚教のNo.3である隊長は、自己保身や自己利益のためにミヤコ教を襲撃したり、鉄雄に反旗を翻したりと、欲に走る一面を見せます。
破壊し尽くされた街の中で生きていくために、人々は救世主や宗教というものに頼らざるを得ないのは、人間の宿命と捉えることもできるでしょう。
隊長が「道義」や「大義」「正義」などを盾に人々を先導し、コントロールして虐殺していく様は、近年ではテロ組織の行動を想起させるとの声もあります。
世界的評価を受けたアニメ映画AKIRA
漫画版AKIRAの魅力は、アニメ映画版によってさらに世界へと広まりました。
その製作現場は、まさに「狂気」とも言えるこだわりにあふれていました。
製作費はなんと10億円!時はバブル絶頂期!
まだ未完状態の漫画原作の映画に、当時の日本映画としては異例の10億円という予算が割り当てられたことは、大きな話題となりました。
総セル画枚数約15万枚という数は、CGが主流ではなかった当時としては破格の枚数です。
同時期のヒットアニメ映画である宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」(1984年公開)が5~7万枚程度であることを考えると、AKIRAの製作がいかに異常な規模であったかがわかります。
これは、バブル経済の絶頂期という時代背景が大きく影響しているとも言われています。
漫画では想像できなかった音楽の世界観
映画の音楽を担当したのは、民族音楽を中心としたパフォーマンス集団「芸能山城組」です。
漫画AKIRAの世界観は、サイバーパンクを中心とした近未来であったため、どのような音楽が展開されるのか、多くの人が期待を寄せていました。
AKIRAの映画予告編では、バリ島の民族楽器である竹製の楽器「ジェゴグ」の音から始まり、歌が始まったと思ったら「嵐」「力」といった単語を歌うだけという、非常に独特なものでした。
しかし、その世界観が漫画AKIRAの世界観と完璧にマッチし、作品に唯一無二の雰囲気を与えています。
特に映画におけるジョーカーの登場シーンで、バイクにまたがって両手を離し腕組みをしながら走るジョーカーの登場BGMの冒頭は、一切の楽器の音がなく、「だっだ~ん…し~はぁ~…」という低音ボイスのみで構成されており、多くの観客に衝撃を与えました。
AKIRAに興味を持った方は作品をチェック!
いかがでしたでしょうか?
AKIRAは、結末や様々な予言めいた描写が考察され続ける作品ですが、まだまだ伝えきれない魅力がたくさんあります。
SF、超能力、社会風刺、そして人間の心理描写など、様々な要素が複雑に絡み合ったAKIRAの世界は、きっとあなたを深く引き込むことでしょう。
もし少しでも興味を持たれたなら、ぜひAKIRAという作品を手に取ってみてください。



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