
原泰久先生による大人気漫画『キングダム』は、2006年から「週刊ヤングジャンプ」で連載が始まり、2025年3月18日にはコミックス75巻が発売されました。
累計発行部数は2025年4月時点で1億1千万部を突破し、集英社の青年誌では初の1億部超えという快挙を達成しています。
テレビアニメは第5シリーズまで放送され、実写映画も大ヒットを記録するなど、その勢いはとどまるところを知りません。
そんな『キングダム』の個性豊かな部隊の中でも、読者に強烈な印象を与えているのが、新六大将軍・桓騎に仕える特殊部隊「砂鬼一家」です。禍々しい仮面を身につけ、拷問を得意とするその異様な姿は、多くの読者を震え上がらせました。
しかし、彼らの正体や桓騎との関係は長らく謎に包まれていました。
この記事では、そんな砂鬼一家の知られざる真実を深掘りします。彼らの正体、史実との関連、桓騎との衝撃的な過去、そして個性豊かなメンバーたちについて、徹底的に解説していきます。
『キングダム』の謎多き集団「砂鬼一家」とは?
禍々しい仮面をまとった拷問部隊
砂鬼一家は、秦の六大将軍・桓騎が率いる桓騎軍の中でも、ひときわ異彩を放つ特殊部隊です。彼らの最大の特徴は、全員が禍々しい仮面と鎧を身につけている点です。
この仮面は、相手に恐怖を与えるだけでなく、自身の性別や素顔を隠すことで、より自由に行動する意図も含まれていると考えられています。
「捕虜の尋問・拷問が得意とする桓騎軍随一の残虐な部隊」と公式ガイドブックにも記されているように、彼らはその拷問技術で名を馳せています。
斬り取った指や耳で作られた装飾品を身につけ、それを見せつけることで敵に心理的な恐怖を与えるなど、その残虐性は中華全土に知れ渡っており、「砂鬼に捕まることが中華一の不運」と噂されるほどです。
特に桓騎軍の兵士たちの間では、「ゼノウ一家と並んで桓騎軍の中でも最もやばい一家」と言われるほど、その存在は恐れられています。
拷問係なので戦闘を直接行う描写は少ないですが、最低限の戦闘は行えるように得物や騎馬を所持しています。
彼らが倒した敵兵を拷問し、情報を桓騎に渡すとともに、利用できれば戦術の一環として遺体を利用することもあります。山陽攻略編で介子坊軍に送り付けられた遺体も、砂鬼一家が処理を行った可能性が高いと見る読者もいます。
名前の由来と桓騎の意外な一面
桓騎軍の者ですら吐き気を催すほどの異臭を放ち、奇妙な仮面を被る砂鬼一家ですが、その名前には特別な由来があります。それは「人を砂の中に引きずり込む鬼」です。
砂鬼一家の者が桓騎に「怖いものがあるのか」と尋ねた際、桓騎が「人を砂の中に引きずり込む鬼が怖い」と答えたことが、この名前の由来となっています。
このエピソードは、残酷な行為を平然と行う桓騎でさえ、恐れるものが存在したことに読者は驚きを隠せませんでした。桓騎自身も、滅多に砂鬼一家には近づかないとされており、彼らの異様さがうかがえます。
実は医療の知識も? 意外な一面
残虐な拷問を得意とする砂鬼一家ですが、実は彼らは医療の分野にも精通しているという意外な一面を持っています。
作中では、宜安城の奪取に成功したものの、命懸けの特攻により瀕死の状態に陥った飛信隊の田有、中鉄、竜川を治療し、命を救っています。
なぜ拷問を専門とする砂鬼一家が医療を行えるのか、その理由は彼らの拷問方法にあります。拷問中に遺体を切り刻み続けることで、彼らは人体の仕組みに自然と詳しくなっていったと考える読者も多いようです。
解剖や実験を重ねる中で、彼らは医療知識を身につけ、拷問技術だけでなく医療という貴重なスキルも持つエリート集団へと変貌していったと言えるでしょう。
肥下の戦いでは、桓騎一家さえも砂鬼一家が治療を行った描写が無いため、特に戦時の医療行為をこの時に初めて行なった可能性が高いと見られています。
砂鬼一家は史実に実在するのか?
『キングダム』は古代中国の春秋戦国時代末期を舞台としているため、作中には多くの史実上の人物が登場します。
しかし、砂鬼一家に関しては、中国の歴史文献にその存在が記載されておらず、史実には実在しない創作キャラクターであると考察されています。これは、作者の原泰久先生が物語に深みと独自性を加えるために生み出した、重要な存在と言えるでしょう。
桓騎と砂鬼一家の衝撃の過去:最古参は桓騎?
桓騎と砂鬼一家の出会い:雨の中の少年
砂鬼一家のメンバーが全員仮面を被っているため、その素顔や性別は長らく謎に包まれていました。しかし、漫画の第700話で砂鬼一家の長である衣央が仮面を取り、その素顔が美しい女性であることが明かされ、多くの読者を驚かせました。
砂鬼一家は元々、親に売られたり、過酷な境遇から逃げ出したりした子供たちが集まって形成された集落でした。当時リーダー格であった衣央の姉・偲央は、激しい雨が降る山道で倒れていた当時推定13〜14歳の桓騎を助けたことが、彼らの関係の始まりでした。
彼らは生計を立てるために盗みを行っていましたが、報復を恐れてか殺しは一切せず、必要以上に盗みもしないように徹していました。
桓騎が伝えた「生きる術」と「最古参」の真実
桓騎は、砂鬼一家が盗んだ物を大人の野盗集団だった狼甫一家に奪われ、抵抗できないでいる姿を目撃します。当時、偲央は「殺された数より生きている数の方が多い。
力の無い私たちはこうやって生きていくしかない」と桓騎を制止しますが、更に偲央を凌辱しようとした狼甫一家に対して桓騎はついに攻撃を開始します。
桓騎は瞬く間に5人の狼甫一家を殺害しました。しかし、大人に対する抵抗の先を知る偲央は「あいつらは屈強で…ものすごい数なんだ…。
私達は決して抗えない…。子供達を守れない!」と絶望します。
それに対し桓騎は「お前らおかしいんだよ。当たり前になっちまってんだよ。『奪われる』ことが」「おかしいだろうが!そんなこと!」「だって…私達は…無力で…」「大丈夫だ。俺に任せとけ。全部上手くいく」と言い放ちます。
その後、桓騎は狼甫一家の子どもの下僕に紛れて彼らの住処に侵入し、宴会に乗じて酒に何かを仕込んで泥酔させた上で、頭目・狼甫を暗殺しました。
しかし、それでも狼甫一家は潰れず追手が幾度となく現れ、自分たちの住処も捨てることになります。
ある時、追手の狼甫一家が罠にかかりましたが、その光景は子ども達に衝撃を与えるものでした。それは遺体を切り刻み、腸を引きずり出して木々に括り付け、手足を枝に刺したような「門」でした。子ども達も吐き気を催し、偲央も「おぞましいことを」とドン引きします。
しかし桓騎は言います。「お前らちょっとこの中入って来てみろよ」「いっ行くわけないだろ!」「きっ気持ち悪いっ!」「お前頭おかしくなったのか!?」「だよなー。これだけ頭おかしなとこまでやれば近づけねーよなー」「力のねェ奴は頭使わねェとな」「普通のことやって生き延びられないなら」「誰もやらないことをやらねーとな」「これが…私達が生きる術だと……?」「ああ。この先この仲間(お前達)が誰一人傷つけられないための手段だ」
その後、野盗として召の顔を焼いた城主を襲った際、桓騎の目的は財宝ではありませんでした。
「無抵抗のガキだった召の顔を焼かれ、お前達姉妹は体中斬られながら犯され続け、他も皮をはがされ、腕を切断されてその腕を犬が喰うのを見せられたり、そういうことをする連中相手に意味なんて必要なのかよ!」
さらに桓騎は、奪われる側から取り返す側に変わる、その意味を語りました。「この世には、高い所に立って好き放題やるバカ共と、そいつらの犠牲になる底辺の者達と、その中間の者達がいる」「底辺のお前達の”仇”は高い所にいるクソヤロォ共と思っているだろうが、本当はそうじゃない」「底辺が本当に”怒り”を向けるべき相手は、無関係を決め込んでいる”中間の奴らだ”」召は中間の人は何もしていないと反発しますが「だが、数で言うとこの世界はその中間の奴らで占められている。
そいつらが何もしねェから、世の中の”構造”が変わらねェんだよ」「そいつらこそ全身の生皮はいでも足りねェクソヤロォ共だ」
こうして砂鬼一家は桓騎の熱意に押され、あらゆる残虐行為に手を染め、「人の所業と思われない残忍な集団」へと生まれ変わっていくのです。
興味深いことに、作中では桓騎自身が砂鬼一家の最古参メンバーであることが明かされています。那貴によると、かつて砂鬼一家の者から桓騎について聞いた時、桓騎の根っこにあるのは「岩をも溶かす程の全てへの怒り」だと答えたそうです。
これは、桓騎が砂鬼一家の形成に深く関わり、彼らに大きな影響を与えたことを示唆しています。桓騎軍の他の部下たちが桓騎を「お頭」と呼ぶのに対し、砂鬼一家のメンバーが彼を「桓騎」と呼び捨てにすることからも、彼らの間に特別な関係性があることがうかがえます。
読者の中には、この関係性こそが桓騎の「面白さ」の根源にあると考える見方もあります。
砂鬼一家の主要メンバーと桓騎との関係
砂鬼一家の主要メンバー
見た目こそ恐ろしい砂鬼一家ですが、彼らの戦闘シーンははっきりとは描かれておらず、その実力は不明なままとなっています。桓騎軍において尋問・拷問を担当しているため、特別、高い戦闘力を持っているという様子はなさそうです。
砂鬼一家は、衣央や召、偲央といった個性豊かなメンバーで構成されています。
衣央(いお)
砂鬼一家の現頭目です。女性。姉の偲央と共に親に売られ、売られた先で体を切り刻まれた過去を持つとされています。
姉の偲央を失ったことで、桓騎と同じ苦しみを経験していると言われます。肥下の戦いの後は、故郷の復興に尽力していると思われます。
69巻のおまけ漫画によると酒癖が悪いらしく、嬴政に詰問された後、落ち込んでいた桓騎の天幕に慰めるため飲みに来たのは良いものの、身体を触られることは無かったらしいです。この話は、桓騎の天幕に砂鬼一家の女性が居た本編の1コマの真相であるとされています。
ちなみにこの話では、作中の大真面目なキャラが崩壊する号泣ぶりを見せており、琳にも「衣央ってこんなキャラだっけ?」と言われてしまっています。
新鄭決戦時点では参戦していませんが、琳が衣央を連れてこなかったために飛信隊の犠牲者への対応が間に合わないことを悔いていたため、今後の再登場もあり得るかもしれません。

召(しょう)
砂鬼一家の最古参の一人です。親に売られて地元の領主の下僕となりましたが、その領主によって顔を焼かれたり皮を剥がされたりしたことで、人前で素顔を晒すことはしませんでした。
しかし、桓騎はその顔を見て憐れみや同情などの念を抱かずに彼と接し、後にその領主に対して報復を行なったことで、桓騎に心を開くようになりました。
肥下の戦いで腹部を負傷し、飛信隊とともに撤退する最中に李信に桓騎について語り、力尽きました。
竹耳(ちくじ)
砂鬼一家の最古参の一人です。右頬が剥がされた形跡が見られます。桓騎が砂鬼一家に加わった当初は、彼を歓迎していない様子が描かれていました。
夕亜(ゆうあ)
宜安城侵攻に際し、瀕死になった飛信隊の田有、中鉄、竜川を救ったメンバーの一人です。
波宇(はう)
夕亜と共に宜安城侵攻に際し、瀕死になった飛信隊の田有、中鉄、竜川の治療を担当したメンバーの一人です。
偲央(しお)
衣央の姉にして砂鬼一家の元頭目です。作中開始時点では故人。衣央と共に親に売られた後で体を切り刻まれています。
桓騎を助けた後で、上記のように桓騎に助けられたことで恋仲になりましたが、凄惨な死を遂げました。
これにより桓騎一家が生まれることとなったと言われています。
彼女の光が桓騎の中に微かに残っていたことで、最低限の情を失くすこと無く桓騎一家をまとめあげることができ、家族にもなり得たと衣央は推測しています。



琳(りん)
砂鬼一家の最古参の一人です。後に番吾の戦いでは、とりあえず1戦だけ飛信隊に医療班として加勢しました。韓攻略からは正式に配属されており、新鄭決戦初日の夜には多数の負傷兵に対し救護や応急措置を中心に行なったことで、飛信隊の面々には信頼されていました。
河了貂によれば、飛信隊が砂鬼一家から応急措置の方法を教わったことで、飛信隊の死者を大きく減らすことができている模様ですが、琳は砂鬼一家の人手が足りないために負傷者を救いきれないことを苦悩していました。
風(ふう)
琳とともに飛信隊医療班として従軍する10人のうちの1人です。番吾で姿を見せた中では紅一点。新鄭決戦初日の夜では、傷を治しても増える犠牲者が生じる戦争という行為に対して「バカみたい」と毒づきました。
山多(さんた)
琳とともに飛信隊医療班として従軍する10人のうちの1人です。右頬の剝がされたような跡が特徴的です。
衣央と桓騎の「ただならぬ関係」
砂鬼一家の現首領である衣央と桓騎の間には、ただの主従関係を越えた、複雑で深い関係性が築かれていることが示唆されています。衣央は姉の偲央を失った悲しみを経験しており、その苦しみは桓騎が経験した過去の苦しみと共通するものがあるとされています。
桓騎は砂鬼一家をあえて遠ざけているような描写もあり、読者の中には、彼が衣央を一番守るべき大切な存在だと考え、彼女を危険な目に遭わせないようにしているのではないかと考察する見方もあります。
実際に、桓騎と李牧の戦いにおける最終局面でも、桓騎は自軍ではなく飛信隊のもとに砂鬼一家を送り込んでいました。これは、彼らの命を守ることを最優先した桓騎の配慮だったのかもしれません。
また、桓騎と衣央の間に子供がいる可能性についても、読者の間で話題に上がっています。桓騎は李牧との戦いで死亡しましたが、もし子供がいたとすれば、彼の意思が受け継がれていると考える読者も多いようです。
まとめ:砂鬼一家の今後の役割に期待
『キングダム』の砂鬼一家は、禍々しい仮面と拷問技術で恐れられる特殊部隊でありながら、その裏には桓騎との深い絆と悲惨な過去を抱えた集団であることが明らかになりました。
桓騎が彼らに生きる術を教え、自らも最古参として関わってきたことは、彼らの関係が単なる主従関係ではないことを示しています。
また、残虐な拷問技術の裏で、医療の知識も身につけているという意外な一面も明らかになりました。
桓騎軍が壊滅した後、砂鬼一家は故郷に戻りましたが、その医療スキルは依然として価値があると考えられています。
特に番吾の戦いでは、琳をはじめとする10名が飛信隊に医療班として加入し、負傷兵の救護や応急処置に尽力しました。韓攻略時点では正式に医療班としての同行が許可され、飛信隊の死者を大きく減らすことに貢献しています。
謎に包まれた存在だった砂鬼一家の真実が明らかになり、読者の間では彼らへの見方が大きく変わったという声も多く聞かれます。
その非人道的な行為の根源にある、桓騎との出会いや過去を知ることで、彼らの行動にもまた違った側面が見えてくるのではないでしょうか。
『キングダム』の物語は、まだまだ続いていきます。砂鬼一家、特に長である衣央の今後の動向に、引き続き注目していきましょう。
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