不滅のあなたへの観察者とは?
大今良時によるファンタジー大河漫画『不滅のあなたへ』において、物語の根幹を成す最大の謎の一つが、主人公フシを導く観察者(通称:黒いの)の存在です。
観察者は、物語の冒頭からナレーターとして登場し、フシという存在を地上に投げ込み、その成長を「観測」し続けます。
真っ黒なローブをまとい、ローブの隙間から見える肌の色は真っ白という、人間離れした不気味な特徴を持つことから、一見すると悪役のようにも見えますが、その言動はフシに助言を与える頼もしい味方でもありました。
観察者が使う「ファイ」(魂)や「楽園」(天国やあの世を意味すると考えられる)といった意味深な言葉は、彼が人間ではなく、超常的存在であることを示唆しています。
作中ではフシに助言を与える重要な役割を担いながらも、その正体や目的はいまだ多くの謎に包まれています。
この記事では、観察者の正体に迫るべく、その目的やノッカーとの関係、そして『不滅のあなたへ』の現世編でサトルになった理由などを詳細に考察していきます。
不滅のあなたへの作品情報
『不滅のあなたへ』は、講談社の『週刊少年マガジン』にて、2016年50号より連載がスタートしたファンタジー漫画です。
作者である大今良時によるオリジナル長期連載作品としては2作目にあたり、その壮大な世界観から大河ファンタジー漫画として高く評価されています。
第43回講談社漫画賞少年部門を受賞するなど、国内外で熱い支持を得ています。
不滅のあなたへの概要
本作は、不死身の肉体と、物体の性質を写し取る能力を持つ存在フシを主人公に据えたストーリーが展開されます。
フシは、石、コケ、レッシオオカミ、少年と次々に姿を変えながら、人との出会いと別れを通じて成長していきます。
フシの旅は、生命の誕生から死、そして再生という普遍的なテーマを扱い、読者に「人が生きる意味とは何か?」を問いかける深遠な物語です。
不滅のあなたへのあらすじ
観察者がフシに干渉し始めるのは、フシが少女マーチと出会うニナンナ編がひとつの大きな区切りとなります。
ニナンナ村に住む少女マーチは、巨大なオニグマへ捧げられる生贄に選ばれ、その夢を絶たれてしまいます。
マーチを大切に思うパロナが儀式を妨害し、マーチは脱走しますが、その途中でまだ言葉を持たないフシと遭遇します。
この出会いこそが、フシが人間としての感情を学び始める重要なきっかけとなり、観察者はこの過程を「世界の保存」に不可欠な刺激として見守り始めます。
観察者(黒いの)とは?
物語序盤で、観察者は物語の不明瞭な部分を補完するナレーターとしての役割を担っていました。
ストーリーが進むにつれて、徐々にフシの前に姿を現し、フシにのみ認識される存在として描かれます。
その特異な外見から、フシ以外の人間は彼の存在を明確には認識できず、フシの様子からその存在を察知する程度でした。
そのため、フシの周囲の人間からは「黒いの」や「ミスターブラック」といった通称で呼ばれています。
しかし、漫画10巻・第93話では、観察者がカイたちの前に意図的に姿を現す場面が描かれており、観察者が望めば周囲の人も彼の姿を見られるようになると考えられます。
不滅のあなたへの観察者の正体や目的を考察
全身黒いローブ姿で肌が真っ白という怪しい雰囲気を纏う観察者ですが、フシに助言を与える重要な役割を担っていました。
その正体や目的は物語の核心に深く関わっており、多くの読者によってさまざまな考察がされています。
考察①観察者は球体(フシ)を作った?
物語は、観察者によるナレーションから始まり、彼が地上へ「球」を投げ込み、その球がフシの最初の姿となった様子が語られます。
この描写から、観察者がフシの創造主、あるいはフシと同じ存在の先駆者であった可能性が浮上します。
観察者は、フシの成長を促すために、意図的に様々な刺激を与えており、フシの能力開発の設計者であると考えるのが自然です。
考察②観察者はフシ以外から見えない存在
観察者がフシ以外の人間から見えない存在であるという設定は、彼の超常性を際立たせています。
これは、彼が高次元の存在であり、通常の人間には認識できない次元にいることを示唆しています。
ただし、前述のように観察者はその気になれば姿を現すことができるため、彼がフシの成長を見守るために、あえて人間社会に干渉しないという自己規制を課していたとも解釈できます。
考察③観察者の目的は世界の保存
観察者がフシの前に初めて姿を現した際、フシを地上へ放った目的は「世界を保存するため」だと明言しました。
彼は、フシの再現能力や情報収集能力を利用して、世界に関するあらゆる情報を記録し続けることを目的としていたと考えられます。
「多くの刺激を受けなさい」とフシに助言しているのは、フシが様々な場所に行き、多様な人々の生と死を経験し、それを通じて「世界が保存される様子」を観察し続けることを期待していたからです。
考察④観察者とノッカーの関係
フシにとっての宿敵であるノッカーは、観察者にとっても天敵です。
ノッカーはフシの情報を奪い、フシの姿を写し取ることで新しい世界を創造しようとしている可能性があります。
このノッカーの特性は、フシの情報収集能力をあてにしている観察者にとって最大の脅威となります。
そのため、観察者はフシにノッカーの居場所を正確に教えたり、戦うよう誘導したりと、フシとノッカーの戦いは、「世界の記録と保存」を目指す観察者と、「世界の更新と変容」を目指すノッカーの、壮大な対立構造であると捉えられます。
考察⑤観察者はフシを後継者にしたかった?
観察者は、フシに向かって「フシが成長すると自分は消える」と発言しています。
この発言は、観察者がフシのような黒い球体から成長した存在であり、成長の末に自己の存在が消滅するという運命を受け入れていることを示唆しています。
この可能性を踏まえると、観察者の真の目的は、自分が消滅する前に、成長したフシを「世界の観察と保存」という役割の「後継者」にすることだったと推測できます。
考察⑥観察者がメサ―ルの指摘に無言だった理由
漫画10巻・第93話「船の行く末」にて、フシの仲間たちと観察者が議論する中で、メサールは観察者に対して「そのためにフシを作ったのか?」「消えてしまうから?」「それともお前が消えたいからか?」などと鋭い問いを投げかけます。
しかし、観察者はこの問いに対して一貫して無言を貫きました。
この無言は、一般的に「同意」を示すと考えられ、観察者には「自身の消滅」という、真の目的が関係している可能性が浮上します。
考察⑦観察者の本当の目的
メサールの指摘に無言だったという事実から、観察者の本当の目的は「自身の消滅」であった可能性が高いと考察されます。
全知全能に近い力を持ち、永遠に世界を観察し続けるという運命は、観察者にとって永遠の孤独と苦痛を伴うものであったのかもしれません。
メサールの「自分が消えるためにフシを作った」という指摘は、観察者にとって図星だったと考えられ、フシを成長させ、後継者として世界を託すことこそが、彼自身の「引退」であり、「救済」でもあったと推測できるのです。
不滅のあなたへの観察者が現世編でサトルになった理由
観察者は、フシの成長を促すために、死者を復活させられる能力があることをあえて教えずにフシを困らせるような状況を作り出すなど、基本的にフシに直接的な干渉をしませんでした。
しかし、『不滅のあなたへ』の最終章である現世編では、観察者は自ら人間に姿を変え、フシと再会を果たします。
この行動は、観察者の「消滅」という目的と深く関係していると考えられます。
考察①観察者が現代編で11歳の「サトル」になる
現世編は、フシとノッカーとの戦いに終止符が打たれ、一時的に世界に平和が訪れたところからスタートします。
フシが長い眠りから目覚めたと同時に、観察者も姿を現し、フシに「世界と繋がり再接続できる能力」を譲ります。
その後、観察者はどこか満足そうな表情で姿を消し、再び姿を現した時は、今までの黒いローブ姿とは違い、11歳の「サトル」という名前の少年へと姿を変えていました。
サトルが初登場したのは漫画126話「いなくなったひと」で、130話「へいわのしょうめい」でフシと再会し、自分が観察者であることを明かしています。
考察②サトルは15歳になった時点で観察者の記憶を失う?
サトルと再会したフシは、彼の口から衝撃的な事実を聞かされます。
サトルは、「地上の生物になり、お前たちを見守ることにした」と語り、さらに「この体は15歳で私が何者だったか思い出せなくなるよう設定してある」「つまり、あと4年でただの人間になる」と告げます。
この内容は、観察者が全知全能の存在から解放され、サトルとしてのただの人間になるという運命を選んだことを示しています。
彼の目的は、不死の存在としての役割をフシに託し、自分自身は有限の命を持つ人間として生き、最後に死を迎えることであったと結論づけられるのです。
考察③観察者はサトルの姿でも能力がある
ただの人間として生き、最後に死ぬという運命を選んだ観察者ですが、驚くべきことに、サトルの姿でも観察者(黒いの)だった頃の能力は健在でした。
彼はサトルの姿で時間を止め、ノッカーからフシを守るという超常的な力を使用しています。
これは、観察者が自身の力を完全にフシに譲ったわけではなく、フシの成長を見守るために、まだ最低限の力を保持していたことを示唆しています。
「15歳で記憶を失う」という設定は、彼が全能の力を持ったまま、意図的に人間の有限の生を選んだという、自己の運命に対する強い意志の表れであると言えます。
考察④ノッカーは共存を選んだ?
平和になったと思われた現世編ですが、実はノッカーはフシが感じ取れないほど小さくなり、密かに繁殖を続けており、おびただしい数のノッカーが生息していました。
ノッカーは、人を亡き者にすることで、人の体に囚われているファイ(魂)の解放を目指しており、フシと観察者をファイの解放を邪魔する存在だと主張していました。
しかし、フシが長い眠りについている間に、ノッカーはファイを解放し続けることができたはずですが、ノッカーはそれをしませんでした。
このことから、ノッカーもまたフシと観察者との共存、あるいは人間社会の傍で密かに活動するという、以前とは異なる新たな選択をしたと解釈できます。
これは、長い戦いの末に、ノッカーの目的そのものにも何らかの変化が生じた可能性を示唆しています。
不滅のあなたへの観察者の能力
観察者の正体については、フシのような球体だった可能性と、神や天使などの超常的存在である可能性の二つが候補として考えられます。
これらの可能性は、彼が使用する超常的な能力によって裏付けられる部分があります。
ここでは、観察者が持っていた驚異的な能力について詳しく見ていきます。
観察者の能力①ノッカーの居場所がわかる
観察者は、フシにノッカーの居場所を教えており、「ここから6㎞北西の地点だ」「4日以降地中に潜ったまま動きは感じられない」など、非常に正確な情報把握能力を持っていました。
これは、彼が世界そのものとリンクしている、あるいは高次元から全てを見渡すことができる能力を持っていることを示唆しています。
ただし、小さい卵状態のノッカーは把握できず、孵化して動くようになるとひどい不快感がするという制約もありました。
観察者の能力②不死の存在?
漫画10巻・第93話にて、観察者はメサールに刺されますが、一時的に体から血が流れただけで、すぐに止血し反撃しています。
この描写は、フシと同様に観察者もまた不死の存在であることを明確に示しています。
彼が不死であることは、フシを後継者にしようとした理由の一つでもあり、「永遠の生」という運命からの解放を望んだという、彼の切実な願いの背景ともなっています。
観察者の能力③剣を丸める
観察者は、自分を剣で刺したメサールに反撃する際、メサールが持っていた剣を、手を使わずに「ガシャガシャと音を立てさせながら丸める」という、驚異的な力を見せました。
これは、物質の形状を自在に変化させる能力であり、フシの持つ「変化」の能力とは異なる、世界そのものに干渉することができる、より上位の能力であると考えることができます。
観察者の能力④物体の時間を止める
観察者の能力の中でも特筆すべきは、物体の時間を止めることができるという能力です。
現世編では、サトルの姿になってからもこの能力を使用しており、これは作中最強の能力の一つと言えるでしょう。
時間を止める能力は、彼が時間軸を超越した存在であることの証明であり、全知全能に近い力を持っていたことを裏付けています。
不滅のあなたへの観察者の声優
観察者は、その正体や目的が不明という謎めいた存在であり、そのキャラクター性をアニメで魅力的にしていたのが、声を担当した津田健次郎の声です。
彼の低く渋い声は、観察者の持つ威厳と不気味さ、そして超越的な雰囲気を完璧に表現していました。
津田健次郎のプロフィール
アニメ『不滅のあなたへ』にて観察者(黒いの)の声を務めたのは、声優・俳優として活躍する津田健次郎です。
彼は1971年6月11日生まれ、大阪府出身で、1995年にアニメ『H2』の野田敦役で声優デビューを果たしました。
2021年には第15回声優アワードにて主演男優賞を受賞するなど、その演技力は高く評価されています。
名前 | 津田健次郎(つだ けんじろう) |
愛称 | ツダケン、つんちょ |
生年月日 | 1971年6月11日 |
出身地 | 大阪府 |
職業 | 声優、俳優 |
所属事務所 | アンドステア |
津田健次郎の主な出演作品や演じたキャラ
津田健次郎は、そのセクシーな低音ボイスを活かし、数々の有名キャラクターを演じています。
代表作としては、1999年からの『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の豊臣秀吉役、2000年からの『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』の海馬瀬人役、2011年からの『TIGER & BUNNY』のファイヤーエンブレム / ネイサン・シーモア役などが挙げられます。
彼の声は、観察者のように威厳があり、時に冷徹で感情が読み取れないキャラクター性に深くマッチしており、「観察者が津田健次郎名のわかりみがあまりにも深い」といった感想がネット上でも多く見られました。
不滅のあなたへの観察者に関する感想や評価
観察者は、その正体や目的が徐々に明らかになることで、読者の興味を惹きつけ、ストーリーを大きく盛り上げました。
ここでは、観察者に関して寄せられたネット上の感想や評価を紹介していきます。
観察者の目的に関する感想
アニメ6話で観察者の目的の一端が「世界の保存」だと明かされた際、「面白くなってきたな」といった声が多くあがっていました。
観察者の目的が、単なる悪役の動機ではなく、世界の存続という壮大なテーマに関わっていたことで、物語のスケールが一気に拡大しました。
目的と同時に明らかになっていく観察者の正体も、読者の考察意欲を刺激する重要な要素となりました。
観察者(黒いの)の声優に関する感想
前述のように、観察者の声を担当した津田健次郎に対する評価は非常に高く、「観察者が津田健次郎名のわかりみがあまりにも深い」といった感想が多数寄せられました。
これは、漫画での正体が掴めない謎の存在という印象が、アニメで感情が読み取れない声によってさらに強まり、キャラクター性がより魅力的に強化されたことを示しています。
観察者の能力とフシとの関係性に関する感想
観察者の絶大な力をフシが受け継ぐのか、という点に注目する感想も多く見られました。
「観察者の絶大な力をフシは受け継ぐのか」という問いは、フシの未来の運命を大きく左右するテーマであり、読者の関心を集めています。
また、フシが能力を受け継ぐべきかどうか葛藤する中で、周囲の仲間たちが様々な意見を出す展開は、周囲の人の人間性とフシとの関係性を深く描き出し、物語の感動を深めました。
まとめ
『不滅のあなたへ』に登場する観察者(黒いの)は、フシの創造主であり、その成長を促し、世界の保存という使命を託そうとした全能の存在であったと考察されます。
彼の真の目的は、永遠の孤独から解放されるための「自身の消滅」であり、フシを後継者にすることで、自らの「引退」と「救済」を望んでいました。
そして、現世編では、フシにその役割を完全に譲り渡した後、自ら11歳の少年サトルの姿となり、15歳で全ての記憶と能力を失い、ただの人間になるという、有限の生を選びました。
時間を止め、物質を丸めるなど、超常的な能力を持っていた観察者の、この自己犠牲的で慈愛に満ちた選択は、物語に深い感動と、「命の有限性」という普遍的なテーマを改めて投げかけています。
観察者の存在は、フシの旅路と成長の礎を築き、この壮大な物語を唯一無二のものにした、最も重要なキャラクターであったと言えるでしょう。
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