『有害都市』ネタバレあらすじ!規制に抗い続けた男、沈黙を強いられた漫画家

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yuugaitosi 『有害都市』ネタバレあらすじ!規制に抗い続けた男、沈黙を強いられた漫画家

 

筒井哲也先生が自身の作品『マンホール』の有害図書指定という経験を経て描いた問題作『有害都市』。

これまで様々な社会問題を取り上げた作品を描いた筒井先生の作品を記事にしてきましたが、今回の「有害都市」で描かれたのは厳しい規制と戦う漫画家でした。

舞台は、過剰な「健全化」が進む日本。表現は厳しく監視され、漫画家・日比野幹雄は、渾身のホラー漫画『DARK WALKER』を発表しようとするが、強大な権力と表現規制の壁が立ちはだかります。

これは、自由が失われた世界で、それでも描き続けることを諦めない漫画家の苦闘を描いた物語。

果たして彼は、検閲の嵐を乗り越え、真に「面白い」漫画を届けることができるのか? そして、この物語は私たちに、表現の自由の意義を改めて問いかけます。

 

その他筒井哲也先生の作品もまとめています。

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あらすじ

日本では「健全図書法」が施行され有害図書の指定制度が一元化される中。漫画家の日比野幹雄は、小出版社「週刊ヤングジャンク」でホラーアクション漫画『DARK WALKER』の連載が決まり、ヒットを確信していました。

しかし連載第一話掲載号は、有害図書指定を行う有識者会議委員長・故寺修の圧力により回収されてしまいますが。編集担当の比嘉忠岑の尽力で、『DARK WALKER』はウェブコミックとして連載を継続しました。

そんな中、日本の漫画を愛するアメリカ人編集者アルフレッド・ブラウンが、日比野の才能を見抜き、翻訳出版の契約を持ちかけました。

かつてアメリカで施行された「コミックス倫理規定」を引き合いに、規制の中でも「本当に描きい漫画」を追求するよう励ましたアルフレッド

一方、有識者会議では、故寺をはじめ、児童ポルノに過敏な活動家・金木鈴、クールジャパンにエログロは不要と考える音楽プロデューサー・綾本清志らが、強硬な規制を主張しました。

劇作家の戸田ユキヲは唯一、表現の自由の重要性を訴えますが、その意見は聞き入れられませんでした。

過去に児童虐待を描いた作品で「有害作家」指定を受けた先輩漫画家・松本慎吾は、規制に対して諦めの姿勢を見せます。

しかし日比野は、表現を歪めるような自主規制を拒否し、あくまで面白い漫画を描くことに情熱を燃やしました。ウェブ連載で人気を集めた『DARK WALKER』でしたが、有識者会議はついに本作を有害図書に指定します。そして日比野は公開審議に呼び出されました。

それはまるで法廷のような場で、多くの報道陣が見守る中、一方的な糾弾が続きました。参考人として現れました松本慎吾は、過去の経験から規制の恐ろしさを語りました。

有識者会議の決定に疑問を持った戸田は、かつて松本の作品が問題視された事件の真相を独自に調査しました。事件の主犯となった少年の父親を訪ね、有害指定制度の矛盾や、表現と犯罪の安易な結びつけに警鐘を鳴らしました。

公開審議で追い詰められました日比野は、それでも自身の表現の正当性を訴えようとしました。規制が強化される社会で、漫画家として何を描くべきか、表現の自由とは何かを深く考えさせられ物語は、衝撃的な結末へと向かいます。

 

登場人物一覧

漫画家・編集者

日比野 幹雄(ひびの みきお)

主人公の漫画家。32歳。ホラー・アクション『DARK WALKER』で初連載を獲得するも、有害図書指定の圧力に苦悩しながらも「面白い漫画」を描くことを追求する。

比嘉 忠岑(ひが ただみね)

日比野の担当編集者。42歳。日比野を支え、規制の厳しい状況下で連載を続けられるよう奔走する。ドーナツ好き。

松本 慎吾(まつもと しんご)

日比野の先輩漫画家。社会派作品でヒットを飛ばすも、過去の作品を理由に「有害作家」指定を受け、表現活動に制限を受けている。

 

有識者会議

故寺 修(ふるでら おさむ)

有識者会議委員長。滫嬰文化大学教授で元文部科学大臣。「未成年者の凶悪犯罪は有害なメディアによって引き起こされている」と強く信じ、規制を推進する。

金木 鈴(かねき りん)

東京都浄化運動推進委員を務める女性活動家。児童ポルノ禁止法の強化に熱心で、あらゆる子供の裸を敵視する。

綾本 清志(あやもと きよし)

クールジャパン普及委員会代表を兼務する音楽プロデューサー。「クールジャパンにエログロは不要」と主張し、規制に賛同する。

戸田 ユキヲ(とだ ユキヲ)

劇作家・小説家。有識者会議委員の中で唯一、規制に慎重な立場を採るが、自身の意見が反映されないことに不満を感じている。

 

その他の人物

アルフレッド・ブラウン

米国の翻訳漫画専門出版社・カミカゼマンガの代表。日本の漫画を愛しており、『DARK WALKER』の才能を見抜いて配信契約を結ぶために来日する。

感想・まとめ

『有害都市』というタイトルと表紙絵を見るだけだとどこかの都市で感染症爆発的な話かと勝手に想像していました。読んでみると意外にも有害指定されていたのは漫画家の漫画。

筒井哲也先生の、表現の自由と規制っていう、今まさに現実でも色々議論されてるテーマを、ここまで深く、そしてエンタメとして面白く描いているのが本当にすごい。先生ご自身の『マンホール』が有害指定された経験がベースにあるって聞いて、その時の怒りとか悔しさみたいなものが、この作品全体からひしひしと伝わってくるようでした。

主人公の漫画家・日比野幹雄が、自分の描きたいものを描こうとするんだけど、色んな圧力でがんじがらめになっていくのを見てると、こっちまで息苦しくなってくる。特に、国が主導で有害図書を指定するっていう近未来の設定が、SFっぽくもありつつ、今の社会の状況を考えると、本当にありそうで怖い。

有害図書を決める有識者会議のメンバーたちの描写も、ただの悪役として描かれていなくて、それぞれの立場や考え方があって、それがまたリアル。表現の自由を守ろうとする人もいるんだけど、結局は大きな力に押しつぶされていく感じが、なんとも言えない気持ちにさせられました。

読んでる間、ずっと「表現の自由って何なんだろう?」「誰が何を有害だって決めるんだろう?」って考えてました。ただ面白いだけじゃなくて、色んな問題提起がされていて、読み終わった後も色々と考えさせられる、そんな作品でした。

規制が厳しくなっていく社会で、それでも自分の信じる「面白い」漫画を描こうと必死にもがく日比野の姿は、同じクリエイターじゃなくても、何かを表現したい全ての人に響くはず。ちょっとヘビーなテーマだけど、漫画好きなら絶対に読んでほしい。読み終わった後、きっと色んなことを考えさせられると思いますよ。

 

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