将棋界を舞台に、人間ドラマと繊細な心理描写で多くの読者を魅了し続ける漫画『3月のライオン』。
主人公の桐山零をはじめ、個性豊かな棋士たちが織りなす物語は、時に胸を締め付け、時に温かい感動を与えてくれますよね。
そんな作中に登場するキャラクターの中でも、ひときわ異彩を放つのが、将棋界の絶対王者、宗谷冬司名人です。
「神」あるいは「悪魔」とまで評されるその存在感は、読者のみならず作中の棋士たちをも惹きつけてやみません。
今回は、そんな宗谷冬司名人を徹底解剖し、その謎多きベールに包まれた姿に迫ります。
果たして、彼には現実世界のあの「天才棋士」がモデルとなっているのでしょうか?
宗谷冬司の魅力や彼を取り巻く人間関係、さらに実写版を演じたキャストまで、深掘りしていきましょう!
『3月のライオン』とは?将棋と人生を描く不朽の名作
『3月のライオン』は、2007年から『ヤングアニマル』で連載されている将棋を題材とした青年漫画です。
幼い頃に家族を失い、孤独を抱える高校生プロ棋士、桐山零を中心として物語が展開していきます。
彼を取り巻く個性的な棋士たちとの真剣な対局や、温かい人々との交流を通じて、零が少しずつ心を癒やし、成長していく姿が描かれています。
作中に登場する棋士たちが実在の人物をモデルとしていることも非常に有名で、読者の間でも「あのキャラクターはもしや?」といった考察が活発に行われる点も、作品の魅力の一つと言えるでしょう。
また、思わず涙が溢れてしまうような温かい名言がとても多いことも、長年にわたり人気を集める理由の一つだと考えられます。
プロ棋士への道:狭き門と将棋界の頂点
将棋のプロ棋士になるためには、日本将棋連盟が運営する「新進棋士奨励会」に入会し、厳しい試験を突破する必要があります。
奨励会の中でさらに勝ち進み、所定の段位に達することで「プロ棋士」と名乗ることが許される、まさに狭き門の世界です。
作中では、宗谷冬司や桐山零が「史上最年少」でプロ棋士となり、将棋界にその名を轟かせました。
特に宗谷冬司は、その勢いのまま最年少で名人タイトルを獲得するという偉業を成し遂げ、まさに伝説的な存在として描かれています。
『3月のライオン』将棋界の絶対王者:宗谷冬司とは?
『3月のライオン』の将棋界で「天才」と称される宗谷冬司は、物語の連載当時から名人位についている絶対王者です。
年齢は30代後半と描写されており、京都の銀閣寺近くの自宅で祖母と一緒に生活しているとされています。
作中では、その圧倒的な強さだけでなく、どこか浮世離れした独特の雰囲気を纏っています。
宗谷冬司はどんなキャラクター?神と称される所以
宗谷冬司は作中でほとんど喋らず、無口で少し寂しげな雰囲気を纏っているキャラクターです。
その行動は天才だからこそ一般人が思いもよらないことをよく行い、棋士の間でも容易に近づくことができない人物として扱われています。
名前の通り、雪を連想させるような白く透き通った肌が特徴的で、その容姿から「新雪よりも美しく煌びやか」と表現されることもあります。
彼の一挙手一投足が、まさに「神がかり的」であり、将棋盤の上で繰り広げられる彼の思考は、凡人には到底理解できない領域にある、と多くの読者が感じていることでしょう。
宗谷冬司の初登場シーン:零との邂逅
宗谷冬司が作中に初登場したのは、雪が降り積もる将棋会館の前で、桐山零が彼とすれ違った時でした。
雪のように透き通る肌と、どこか人間ではないような雰囲気でその場の空気を支配する描写は、読者に強烈な印象を与えました。
未来の名人候補である零と、現名人である宗谷冬司が邂逅したこのシーンは、物語の「厚み」を感じさせる名場面の一つだと考えられます。
『3月のライオン』宗谷冬司のモデルとなっている棋士は?
『3月のライオン』の宗谷冬司には、現実世界の複数の天才棋士がモデルになっていると言われています。
作者の羽海野チカ先生が、特定の棋士をモデルにしていることを明言しているわけではありませんが、多くの読者が「あの棋士がモデルではないか」と推測しています。
宗谷冬司のモデル①:羽生善治九段
宗谷冬司のモデルの一人として、最も有力視されているのが「将棋界のレジェンド」羽生善治九段です。
新人の頃から注目され、史上初の永世七冠を達成するなど、数々のタイトルを総なめにしてきた羽生九段の圧倒的な実績は、宗谷冬司の作中での偉業と共通点が非常に多いです。
また、盤上でのその天才的な発想力や、盤外での穏やかでありながらもどこか掴みどころのない雰囲気が、宗谷冬司のキャラクター像と非常に類似していると考える読者が多いようです。
宗谷冬司のモデル②:谷川浩司十七世名人
宗谷冬司のモデルとなっているもう一人の人物は、これまた天才棋士と言われている谷川浩司十七世名人です。
作者が「羽生善治と谷川浩司を足して2で割ったキャラクターが宗谷冬司」と語っているという見方もあり、天才と天才を掛け合わせたからこそ、宗谷冬司というこれほどまでに魅力的な棋士が誕生したことに納得がいくのではないでしょうか。
谷川十七世名人の「光速の寄せ」と呼ばれる棋風や、若くして名人位を獲得した実績が、宗谷冬司のキャラクター形成に影響を与えている可能性も考えられます。
宗谷冬司が持つタイトルは?
『3月のライオン』の作中で宗谷冬司が保持しているタイトルは、名人位の他に「獅子王」「王将」「聖竜」「棋神」があります。
彼は21歳で最年少名人に輝き、名人位を12期、王将戦では5連覇を達成するなど、現実離れした偉業を成し遂げています。
『3月のライオン』の作中では、「最年少でプロになった人物は必ず名人になっている」という描写がされているため、主人公の桐山零が今後どのようにタイトルを獲得していくのかにも注目が集まっています。
現実と異なる?将棋のタイトル
現実の世界では、「竜王戦」「名人戦」「王位戦」「王座戦」「棋王戦」「王将戦」「棋聖戦」という7大タイトルを獲得することが、棋士として頂点に立つことを意味します。
『3月のライオン』の作中タイトルとは若干相違していますが、天才である宗谷冬司が次々とタイトルを総なめにする姿は、現実の将棋ファンをも唸らせるものがあるでしょう。
また、桐山零が成長していく中で、どのタイトルを手に入れていくのかも物語の大きな見どころの一つです。
宗谷冬司が患っている病気とは?天才の苦悩
『3月のライオン』の作中で、宗谷冬司は「突発性難聴」という病を患っており、時折耳が聞こえなくなるという症状に襲われます。
この事実を知っているのは、将棋会館の神宮寺会長と主人公の桐山零だけであり、宗谷冬司の不思議な行動は、周囲の人間からは「天才だから」と誤解されている描写がされています。
この病気は、彼が孤高の存在であること、そしてその強さの裏に隠された苦悩を象徴しているとも考えられます。
宗谷冬司の病気が治る見込みは?
突発性難聴はストレスなどが原因で起こるとされていますが、タイトルを何年も守り続ける天才の苦悩は想像を絶するものがあるでしょう。
そのため、彼が棋士を現役で続けている内は、完全に治癒することは難しいのではないか、という考察もできます。
「天才薄命」という言葉もあるように、宗谷冬司の身に何も起こらないことを願うばかりだと感じる読者も多いのではないでしょうか。
彼の病気が、物語の展開に今後どのように影響していくのかも、注目すべき点です。
『3月のライオン』宗谷冬司と激闘を繰り広げるライバル棋士たち
宗谷冬司は将棋界の絶対王者ですが、彼に挑み、あるいは深く関わる個性豊かなライバル棋士たちが存在します。
彼らとの対局や関係性を通じて、宗谷冬司の人物像はより深く描かれています。
柳原朔太郎
棋匠のタイトルを保持しているキャラクターで、通算で14期もタイトルを獲得しています。
ひらひらと相手を躱すような棋風を得意としており、作中ではタイトルを掛けて島田と激闘を繰り広げました。
宗谷冬司のことは「天才」と称しており、名人位を諦めているような描写がされていますが、生涯現役を貫く強い意志をもっている人物です。
将棋会館の神宮寺会長とは昔からの知り合いで、とても仲が良い様子が描かれています。
藤本雷堂
見た目と名前同様に豪快な棋風を得意としているキャラクターで、鋼のメンタルをもっています。
作中では名人挑戦権の一歩手前で敗れていますが、確かな実力をもっているA級棋士です。
また、とても口が悪く気に入らない棋士に対しては辛辣な言葉を浴びせますが、気に入ったら素直に褒めるという分かりやすい人物でもあります。
プライベートでは浮気を繰り返して奥さんに愛想をつかされている描写もされており、その人間味あふれる一面も魅力の一つと言えるでしょう。
隈倉健吾
格闘家のような体格をしている棋士で、作中では宗谷冬司と名人タイトルを掛けて激闘を繰り広げました。
行動や発言がとても男らしく、他の棋士たちの憧れの存在でもあります。
とても甘党で、ケーキをつまみに芋焼酎のボトルを1本飲み切ったという伝説をもっているなど、そのギャップも魅力です。
彼と宗谷冬司の対局は、その「力強さ」が際立つものだと考える読者が多いようです。
島田開
本作の中心的キャラクターの一人で、桐山零が所属する研究会を発足させた人物でもあります。
作中では宗谷冬司との名人タイトルを掛けて激闘を繰り広げましたが、惜しくも敗れています。
髪が薄く「幸が薄い」と他の棋士にいじられることもありますが、血が滲むような努力をしてコツコツと実力を上げてきました。
また、胃が弱いことから胃薬を常備しており、神宮寺会長によく心配されています。
彼の泥臭いまでの努力と、優しさあふれる人柄に惹かれる読者も多いことでしょう。
後藤正宗
宗谷冬司への挑戦権を掛けて島田と対局した棋士です。
体格がよく強面で他の棋士からは恐れられていますが、強者のことは尊敬する心をもっているキャラクターです。
島田との対局に敗れ名人戦には出ることはできませんでしたが、島田のことを悪く言っている他の棋士たちを一喝するという男らしいシーンが描写されています。
桐山零の義理の姉と関係を持っていることから、零が彼を嫌悪しているという一面もあり、少し謎の多い人物でもあります。
桐山零と宗谷冬司の関係とは?未来を担う二人の棋士
『3月のライオン』の作中で、桐山零が新人王のタイトルを獲得した際に、記念対局として宗谷冬司と対局しました。
結果は桐山零の敗北に終わりましたが、対局後に無言でお互いの打ち方を確認するなど、二人の間にはどこか通じ合う近い雰囲気が感じられました。
その他にも、宗谷冬司が難聴で困っていた際に桐山零がたまたま助けたことなどもあり、今後二人の関係はもっと深まっていくと予想できます。
将棋界の未来を担う零と、絶対王者である宗谷冬司の関係性がどのように変化していくのか、目が離せません。
名人戦での宗谷冬司の激闘を振り返る
作中では、宗谷冬司と他の棋士たちの名人戦での対局がいくつか描かれています。
彼がただ強いだけでなく、人間味あふれる一面を見せる貴重な場面でもあります。
宗谷冬司 vs 島田開
宗谷冬司と島田開の対局は、島田の並々ならぬ努力と覚悟が描かれ、多くの読者の涙を誘いました。
対局の結果は島田の惨敗に終わり、島田が自分と宗谷冬司の間の途方もない差に愕然とする様子が描かれています。
しかし、宗谷冬司は島田の体調不良を見抜き、名人戦終了後の取材を全て引き受けるという、王者の風格と優しさを見せています。
宗谷冬司 vs 隈倉健吾
作中では挑戦者隈倉健吾と宗谷冬司名人の対局も描かれており、「お互いに力いっぱい振り回しても壊れないおもちゃ」と表現されるほどの激闘を繰り広げています。
対局中には宗谷冬司がブドウ糖を鷲掴みにしたり、隈倉健吾がケーキ3つを丸のみにするなどの面白いシーンも描かれており、キャラクターの個性が光ります。
その他には、宗谷冬司に負けた隈倉健吾が怒りのあまり旅館の壁を破壊するなど、対局が終わった後も見どころたっぷりの一戦でした。
宗谷冬司 vs 土橋健司
幼少の頃から土橋健司の前には宗谷冬司がいつも立ち塞がっていたという、因縁のある対局です。
どんなに努力しても準優勝しかできない土橋健司のことを両親は心配していましたが、本人はそんなことはまったく気にせず、宗谷冬司との対局を楽しんでいます。
この名人戦の結果は土橋健司の敗北に終わりましたが、天才と努力型の二人が対局し、化学変化を起こしたことで新しい研究会を開くという「名シーン」に生まれ変わりました。
実写映画版『3月のライオン』の宗谷冬司は加瀬亮!
『3月のライオン』の実写版映画では、俳優の加瀬亮が宗谷冬司を演じました。
加瀬亮は、独特の雰囲気をまとった個性的な演技で、見事に原作の宗谷冬司のイメージを再現しています。
怪物ばかりの棋士たちとの激闘は手に汗握る熱いものがあったと評価されており、アニメ・漫画だけでなく実写映画版もおすすめです。
加瀬亮の演技が、宗谷冬司の謎めいた魅力をさらに引き出したと考えるファンも多いようです。
宗谷冬司を知ってもっと『3月のライオン』を楽しもう!
本記事では、『3月のライオン』の宗谷冬司を中心にその魅力を深掘りしてきましたが、いかがだったでしょうか?
彼の強さ、孤独、そして人間味あふれる一面を知ることで、作品をより深く楽しめるようになったのではないでしょうか。
『3月のライオン』には宗谷冬司以外にも、桐山零をはじめ魅力的なキャラクターがたくさん登場します。
これを機に、まだ読んだことがない方も、改めて『3月のライオン』を読んでみてください!
きっと、新たな発見や感動があなたを待っていますよ。
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