「鬼畜の街」は、人気ノンフィクション作家石井光太のオリジナル原作を俊才・今野涼が描いた漫画です。物語は救済者ごとにエピソードが分けられていますが、主人公はNPO法人「十三企画」の代表である冷泉雪隆と助手の宮崎タクマの二人です。
彼らは加害者家族の依頼を受け、世間の偏見や偏向から目の届かない場所へと救済をしていく物語を描いています。
「鬼畜の街」は実際に起きた事件も取り上げられており、現代社会の闇を映し出す作品、今回はそんな、鬼畜の街について徹底解説したいと思います。
あらすじ
最初のエピソードでは少年事件の犯人の家族が登場し、犯人の父親である牧村が冷泉達に救いの手を求めます。
依頼者である父親は、何の罪もない娘が連日の報道で精神を病んでしまい、救って欲しいと願っています。
次に、犯罪者の闇を追うエピソードが収録されています。
畑中邦雄という男が対象者となり、家族の依頼で犯罪を犯した息子と離れて暮らせる住居と新しい名前を用意してもらう加害者家族を冷泉達がサポートします。
畑中は再犯を繰り返そうとする中、冷泉達は彼を監視し、更生プログラムを提供します。
最後に、獄中から姉の娘である詩織を助けて欲しいという依頼がやってきます。
依頼者は姉を命を奪った罪で服役中であり、姉の娘に虐待をしていたため、仕方なく姉を刺し違えたという過去を持っていたのです。
詩織は離婚した父親と暮らしており、彼が元暴力団員であるため、冷泉達は厄介な案件に直面します。
詩織の父親は薬物を密輸するために彼女を利用しており、冷泉達は彼から命以外の全てを要求します。
このエピソードの結末は次巻へ持ち越され、1巻ではここで終了します。
鬼畜の街の見所
鬼畜の街の内容なんですが、まさに現代社会の闇そのものを映しています。
鬼畜の街とはまさに僕らが住んでいるリアルそのものを忠実に描いています。
主人公である冷泉も特別なにか能力があるわけでもなく見た目が綺麗なだけということで僕らの住む世界がどれほど漫画を通してみると鬼畜か生々しく見せつけます。
特別、力が強いわけでもなく、魔法が使えるわけでもない、お金持ちでもない
冷泉が変わっているとしたらそれは犯罪者と関われるということでしょう。
誰も犯罪者と関わりたくないだから金になる。
この漫画のラベルにはこのように書いています。もし実際に冷泉みたいなことをしていたら自らもSNSの餌食になり社会生活は困難になることは間違いなさそうです。
最初の少年犯罪で家族がバラバラになる話ですが、今や犯罪が起きるとSNSやネットですぐに個人が特定され、家族まで晒されて逃げ場がなくなるというのは必ずと言っていいほどあることだと思います。
実際に、現実で報道された事件も取り上げられた少年事件も取り上げられたりしていて、現実の社会問題に対するメッセージが書かれています。
この事件では、加害者の自宅の壁にまで落書きされる事態になっています。
このように最近では、加害者家族へのケアも結構問題となっています。その知られざる加害者家族が今回の漫画ではスポットが当たっています。
加害者家族の苦しみと世間からのバッシングを描くとなかなか鬼畜です。
なお冷泉の契約金は決して安いとは言えない800万円、お値段も鬼畜
まとめ
「鬼畜の街」は、暗闇の中に光を見出す物語です。
冷泉雪隆と宮崎タクマの奮闘は、現代社会の闇を浮き彫りにし、加害者家族の孤独や苦悩を丹念に描き出します。
彼らの努力は決して容易なものではありませんが、それは社会の盲点を照らし出し、人間の複雑さと温かさを示すものでもあります。
登場人物一覧
NPO法人一三企画の代表・冷泉 雪隆
見た目以外、あまり取り柄はなさそうだが、人を助けたりする気はありそう。
冷泉の助手 宮崎タクマ
ヤンキーっぽい見た目通り少し暴力に走りがちな一面が見られる。
冷泉とは考え方が少し違うこともあるが、正義感は強そう。
作者情報
石井光太プロフィール
1977年生まれ。東京都世田谷区出身。日本大学藝術学部卒。海外を旅をする中、アジアの最深部に分け入り、その体験を元に『物乞う仏陀』を上梓。斬新な視点と精緻な取材、そして読み応えのある筆致でたちまち人気ノンフィクション作家に。
近年は、ノンフィクションだけでなく、絵本、シナリオ、写真集、小説なども発表している。本作『鬼畜の街』では、これまでの暗黒街の取材の集大成と意気込む!! 主な作品に『物乞う仏陀』(文藝春秋)『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『レンタルチャイルド』『遺体』『「鬼畜」の家』(いずれも新潮社)『砂漠の影絵』(光文社)『世界の産声に耳を澄ます』(朝日新聞出版)など。
今野涼プロフィール
2013年第265回スピリッツ賞にて最高評価となる「スピリッツ賞」を受賞。 デビュー作『モッシュピット』は新しい音楽青春漫画の幕開けと称され、各方面から高い評価を受けた。
本作『鬼畜の街』で新たなアウトロー漫画の境地を開くと期待が高い。 代表作『モッシュピット』全4巻(小学館)
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