
漫画『アンダーニンジャ』は、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』や『アイアムアヒーロー』などで知られる花沢健吾による異色の忍者アクション作品です。
「忍者は滅んだ」という公の歴史の裏側で、現代の日本社会に約20万人もの忍者が潜伏し、暗躍しているという大胆な設定が多くの読者を惹きつけています。
その独特な世界観や、癖が強くどこか情けないキャラクター造形は、まさに花沢健吾作品の真骨頂と言えるでしょう。
当記事では、ニート同然の生活を送る下忍・雲隠九郎から始まる衝撃的な物語のあらすじを深掘りしつつ、豪華キャストによる実写映画化情報、そして物語を複雑かつ面白くしている登場人物たちと、作品に散りばめられた緻密な伏線と見どころを徹底的に解説していきます。
なお、本記事には最新巻までの重大なネタバレを含みますので、これから物語を読み進める方はご注意ください。
- 『アンダーニンジャ』作品紹介と概要
- 【アンダーニンジャ】単行本各巻あらすじ詳細(1巻~16巻)
- 1巻:ニート下忍の誕生と高校潜入忍務
- 2巻:潜入準備と摩利支天の性能
- 3巻:九郎始動と下忍たちの暗闘
- 4巻:高校潜入とNIN・UNの対立
- 5巻:主事とのタイマン勝負と「遁」の登場
- 6巻:猿田の裏切りと山田の正体
- 7巻:講談高校の悲劇と猿田の真の目的
- 8巻:主人公・雲隠九郎の死と雲隠兄弟の登場
- 9巻:十郎のデビューと加藤の処刑
- 10巻:最強の男・虹郎の敗北と加藤の逃走
- 11巻:十郎VS五十嵐と加藤の奇襲
- 12巻:加藤の共闘提案と黒幕「果心居士」説
- 13巻:ネオ七人衆と九郎のアパートの秘密
- 14巻:NINとUNの会談直前と伏線回収
- 15巻:NINの公表、くノ一の復讐劇、そして三者会談へ
- 16巻:三者会談の核心とUNの真の目的
- 主人公・雲隠九郎のあらすじと顛末(漫画ネタバレ)
- 雲隠兄弟と新たな主人公・雲隠十郎の登場
- 実写映画版の概要、キャスト、原作との違い
- 『アンダーニンジャ』を彩る個性豊かな登場人物
- 漫画の見どころと魅力(シュールな笑い、現代の忍者、伏線)
- アニメ化
- まとめ
『アンダーニンジャ』作品紹介と概要
『アンダーニンジャ』は、2018年より週刊ヤングマガジン(講談社)にて連載が開始された青年漫画です。
ド派手な忍術バトルが主軸の従来の忍者漫画とは一線を画し、「もし現代に忍者が存在したら?」という問いをリアリティとシュールな笑いを交えながら描いています。
戦後、GHQによって解体されたはずの忍者組織は「NIN」として密かに存続し、その末端にいる主人公・雲隠九郎の姿を通して、現代社会における忍者の悲哀と暗闘を描くサスペンス・アクションです。
作者:花沢健吾の経歴と代表作
『アンダーニンジャ』の作者は、漫画家・花沢健吾です。
2004年に『ルサンチマン』で漫画家デビューを果たし、第5回センス・オブ・ジェンダー賞話題賞を受賞しました。
特に『ボーイズ・オン・ザ・ラン』や『アイアムアヒーロー』といった作品は実写映画化もされており、その独特の作風は国内外で高く評価されています。
花沢健吾作品の特徴として、「情けない雰囲気」「ダメ男感満載」といった冴えない主人公が、非日常的な出来事に巻き込まれ、現実と非現実が交錯する世界で生き抜く姿を描く点が挙げられます。
『アンダーニンジャ』の主人公、雲隠九郎もまた、ボロアパートでニート同然の生活を送る下忍という、従来のヒーロー像とはかけ離れた設定が、作品にリアリティと独特な魅力を与えています。
『アンダーニンジャ』の独特な世界観と設定
本作の最大の魅力は、「現代社会に約20万人の忍者が潜伏している」という非現実的な設定を、極めて現実的な視点から描いている点です。
忍者は公的機関や民間企業などあらゆる場所に潜伏し、極秘裏に暗殺や破壊活動に従事しています。
その組織構造は複雑で、主に以下の二大勢力が存在し、対立しています。
NIN(日本の忍者組織)
太平洋戦争終結後にGHQによって解体された組織の残党で、日本の秩序維持を目的とする伝統的な組織です。
政府とも一定の関係性を持ち、精鋭忍者から末端の下忍までが存在します。
主人公・雲隠九郎もここに所属していました。
UN(アンダーニンジャ)
「NIN」と敵対する世界規模の忍者ネットワークです。
忍者の増殖・拡大を目指す過激な思想を持ち、従来の秩序を破壊しようと暗躍しています。
物語の進行に伴い、この二大勢力の対立の裏に、さらに大きな陰謀や黒幕の存在が浮上していきます。
忍者の忍具も現代技術と融合しており、ステルス性能を持つパーカー「摩利支天」や、人工衛星レーザー兵器「遁(とん)」など、「忍者×テクノロジー」という斬新なアプローチが作品の魅力を高めています。
【アンダーニンジャ】単行本各巻あらすじ詳細(1巻~16巻)
本作の物語は、ニート同然の生活を送る下忍・雲隠九郎の日常から始まり、やがて日本全体を揺るがす壮大な組織間戦争へと発展していきます。
本記事では、その複雑で衝撃的な物語を振り返るため、単行本1巻から最新16巻までのあらすじを、各巻のポイントを深掘りしながら詳しく解説していきます。
主人公の死、組織の裏切り、そして黒幕の存在…物語の核となる要素を順を追って見ていきましょう。
※本記事は単行本16巻までの内容を全て含むネタバレ記事です。ご注意ください。
1巻:ニート下忍の誕生と高校潜入忍務
物語は、忍者組織NINの末端に所属する下忍、雲隠九郎の情けない日常から始まります。
九郎はボロアパートに住み、仕事を与えられないままニート同然の生活を送っています。
彼の元に、中忍の加藤から重大な「忍務」が下されます。それは「講談高校への潜入」でした。
九郎は転入試験を週末に控える中、緊急で「男性器の切断事件を起こした外国人テロリストの討伐」を命じられます。
この外国人テロリストは、「立ち小便禁止。したものは竿を切り落とす」という張り紙を「忍者の暗号」と勘違いし、忍者に会うために犯行を繰り返しているという、非常にシュールな動機を持っていました。
九郎は、支給された最新式のステルスパーカー「摩利支天」を活用し、この外国人を殺さずに捕縛するという、忍者としての実力の片鱗を見せます。
この巻では、九郎がアパートから一歩も出ないまま物語が進行するという、花沢健吾らしい「日常と非日常の絶妙なバランス」が描かれます。
また、九郎が「雲隠一族最強の雲隠虹郎の忍術を全て継承したクローン」という噂を持つ、ただの下忍ではないことが示唆されます。
2巻:潜入準備と摩利支天の性能
九郎は依然としてアパートから出ないまま、知り合った高校生を使って標的の情報収集を進めます。
一方、外国人通り魔は、降忍した元一等忍尉の佐々魔と対戦し、佐々魔は銃弾2発を受けてしまうという事態が発生します。
九郎に支給された最新型忍具「摩利支天」は、迷彩装備や衝撃吸収機能といった高性能ぶりを発揮し、九郎のニート生活を支えるアイテムとして描かれます。
この巻では、摩利支天が九郎のような末端の下忍に支給されたことを、中忍の加藤が訝しむ描写があり、組織内部の情報格差や陰謀の伏線が張り巡らされます。
また、九郎の師匠である平が、弟子である日比奇跡をアレクセイ確保のために動かすなど、NINの組織的な動きが活発化し始めます。
3巻:九郎始動と下忍たちの暗闘
ついに九郎が行動を開始し、通り魔捕縛の忍務は、次の仕事のために手柄を欲しがる複数の下忍による「手柄の奪い合い」となります。
九郎は、冷静な状況判断と摩利支天の機能、そして拳で通り魔を制圧するという、卓越した戦闘能力を発揮します。
この戦いの後、下忍の蜂谷紫音が九郎の前に現れ、高校への編入試験の突破方法を伝え、すでに高校に下忍が潜入していることを明かします。
この巻で描かれる下忍たちのリアルな「仕事への執着」は、忍者の世界が「命がけの資本主義社会」であることを読者に示唆し、作品のリアリティを深めています。
また、九郎が高校転入試験で、アパートの住人である川戸に電話で母親役を演じてもらうなど、シュールな笑いも健在です。
4巻:高校潜入とNIN・UNの対立
九郎は無事に編入試験に合格し、講談高校に登校します。
そこで、先に潜入していた蜂谷紫音、日比奇跡、そして女性忍者鈴木と合流します。
この4人の潜入を、厚生労働省援護工作二課「エンコー」が監視しており、エンコーはNINと敵対する組織「UN(アンダーニンジャ)」と繋がっていることが判明し、組織間の緊張が一気に高まります。
九郎が雲隠一族最強の忍者・雲隠虹郎のクローンであるという事実が改めて明かされ、彼の持つ特別な血筋が物語の鍵を握ることが明確になります。
高校という日常の舞台で、NINとUNの抗争の火種がくすぶり始めるという、後の大戦を予感させる展開です。
5巻:主事とのタイマン勝負と「遁」の登場
潜入先の学校に潜むUNのリーダー格、主事(用務員)と九郎がタイマン勝負を繰り広げます。
この戦いの中で、NINが所持する人工衛星レーザー兵器「遁(とん)」が初めて登場します。
遁に捕捉された主事の腕は、刀を振る途中で蒸発するという、「最新技術VS忍者」という現代的なバトルが展開されます。
九郎のアパートを怪しむ加藤の描写や、UNの戦闘員ではないかという疑いがかかる校内一の美人山田美月が登場するなど、主要な伏線が次々と提示されます。
そして、何者かによる忍者殺害事件が勃発し、物語は血生臭い展開へと傾倒していきます。
6巻:猿田の裏切りと山田の正体
連続忍者殺害事件の実行犯が、元NINの忍者で、UNに寝返った猿田であることが判明します。
猿田は講談高校に潜入し、鈴木、加藤、そして加藤の部下である鬼首が迎え撃つ準備をします。
一方、九郎と日比は、ヤンキー校への殴り込みに参加しており、九郎は同行する山田美月こそがUNの戦闘員であると目星をつけていました。
猿田の裏切りは、NIN内部の不信感を高め、組織間の対立を不可避なものとします。
そして、日常パートのヒロインと思われていた山田美月が、UNの戦闘員であるという「衝撃の展開」が読者に突きつけられます。
7巻:講談高校の悲劇と猿田の真の目的
講談高校を舞台に、猿田とNIN勢(鈴木、加藤、鬼首)による壮絶な戦闘が勃発します。
猿田は生徒や教師を次々と殺害し、鈴木は片足を切断されるなどの重傷を負います。
猿田の真の目的は、NINの七人衆の一人「多羅」の孫である蜂谷紫音の殺害でした。
蜂谷が重要な血筋の持ち主であったことが明かされ、NIN内部の権力闘争が抗争の背景にあることが示唆されます。
猿田は蜂谷に対し、「遁」に捕捉されていることを警告し、NIN側の最新兵器の脅威を露呈させます。
その頃、九郎は他校の屋上で、ついに姿を現した山田美月との最終決戦に備えていました。
8巻:主人公・雲隠九郎の死と雲隠兄弟の登場
九郎は、手練れの山田美月との戦いに挑みます。
九郎は刀を手に善戦し、山田の鼻を切り落とすものの、新型摩利支天の弱点を突かれ、口内に刀を突き立てられ死亡するという、あまりにもショッキングな最期を迎えます。
主人公が物語の途中で死ぬという展開は、読者に大きな衝撃を与え、本作の持つ「容赦のない現実主義」を強烈に印象づけました。
一方、猿田は遁によって学校ごと消滅させられ、NINは忍者20万人分のデータが入った「遁」への侵入をUNに許すという大失態を犯します。
九郎が死んだアパートの部屋には、彼の弟である十二郎、十一、そして新たな主人公となる十郎といった雲隠兄弟がワラワラと現れ、物語は新たなフェーズへと移行します。
9巻:十郎のデビューと加藤の処刑
NINは、攻撃衛星「遁」を失い、忍者名簿をUNに奪われたことで劣勢に立たされます。
形勢逆転のため、NINは雲隠十郎たち若手忍者をデビューさせ、世論を味方につけようと画策します。
一方、講談高校事件の責任を問われた加藤は、忍法会議の議決により死刑を宣告され、処刑番組「おっさんといっしょ」への強制出演を命じられます。
加藤は、ともに処刑される予定だった下忍たちと協力し、処刑忍者たちを倒しますが、そこに処刑人である雲隠兄弟最強の男雲隠虹郎が現れます。
この巻で描かれる加藤の脱獄劇は、NINという組織の腐敗と、「汁忍」をはじめとする下層忍者の怨念が爆発するポイントであり、物語の緊張感をさらに高めています。
10巻:最強の男・虹郎の敗北と加藤の逃走
加藤と雲隠虹郎との激しい戦いが繰り広げられます。
加藤は、佐々魔から受け取っていたUN製の男根型破壊兵器という、非常にユニークで強力な兵器を駆使し、見事虹郎に勝利します。
加藤は処刑施設ごと兵器で破壊し、共闘していた元汁忍の五十嵐と共に逃走します。
NINは、この二人の抹殺を鈴木や十郎らに命じます。
虹郎の敗北は、雲隠一族の権威が地に落ちる出来事であり、NINという組織の伝統的な力に対する「テクノロジー」と「怨念」の勝利として描かれます。
五十嵐は過去にNINから不当な扱いを受けていたことに恨みを持ち、NINへの復讐の機会を狙い、練馬区内で姿をひそめます。
11巻:十郎VS五十嵐と加藤の奇襲
NINへの復讐に燃える五十嵐は、鈴木の陽動作戦に引っかかり、NINのエゴ田のアジトへ潜入してしまいます。
五十嵐討伐のためにアジトへ向かっていた十郎たちは、非常階段で透明化していた五十嵐に襲われてしまいます。
しかし、五十嵐は十郎のハッタリや、竜虎のマーキングによってあっさり降参してしまいます。
十郎たちは安堵しますが、その背後には透明化した加藤が待ち構えており、アジトは一瞬にして加藤に制圧されます。
この巻は、十郎の高い観察眼と、加藤の用意周到な計画がぶつかり合う、スリリングな展開です。
また、十郎が連れている猫の姿になったしのぶ(かつての猫平)の正体も明らかになり、十郎との複雑な関係性が描かれます。
12巻:加藤の共闘提案と黒幕「果心居士」説
アジトを制圧した加藤は、NINに洗脳されている忍者をあぶりだすため、忍歌斉唱を強要するという異様な行動に出ます。
加藤は、自身がかつて汁忍であった過去を打ち明け、さらに「果心居士」こそがNINとUNが争いを起こすように洗脳している全ての元凶であるという説を唱えます。
加藤は、この状況を打破するため、NINとUNの共闘を提案します。
これまではNINとUNの対立が主軸でしたが、ここにきて両組織の抗争が「第三者によって仕組まれたもの」という新たな視点が提示され、物語のスケールが一気に拡大します。
加藤の提案は、伝統的な組織の枠組みを超えた「忍者による忍者社会の解放」という、壮大なテーマを予感させます。
13巻:ネオ七人衆と九郎のアパートの秘密
NINを統括する七人衆の孫たちで構成されたネオ七人衆が暗躍を開始します。
ネオ七人衆の一人が、自身の祖母である七人衆の一角千代女の殺害を計画し、十郎が加勢。
十郎は様々な武器を駆使し、千代女の首を落とすことに成功します。
一方、加藤の共闘提案を聞かされた下忍の竜虎にUNのメンバーが接触し、NINとUNの会談の日時と場所を伝えるという重大な忍務が託されます。
そして、かつて九郎が住んでいたアパートで、十二郎が広大な地下通路へ繋がる入り口を発見します。
九郎の住居であったアパートにも、組織の抗争に関わる重大な秘密が隠されていたことが示唆され、物語の伏線が収束に向かい始めます。
14巻:NINとUNの会談直前と伏線回収
UNとNINの会談の情報伝達を任された竜虎の前に、NINの上忍・嶋田が現れ、UNメンバーと接触した情報を話せば昇任させると提案します。
しかし、その最中にUNからの襲撃を受け、嶋田は手足や顔面を斬られ死亡します。
NIN側が敗北しかけた瞬間、嶋田の傷口から毒ガスのようなものが噴出され、UNの主力を撃破できるのかという緊迫した状況で巻は閉じられます。
終盤では、クローンの培養施設らしきものが登場し、九郎の死体と思われる肉体が保管されている描写が描かれます。
これにより、九郎の死とクローン技術が、物語の根幹に関わる重要なテーマであることが確定し、読者の間で議論されていた伏線が一気に回収され始めます。
15巻:NINの公表、くノ一の復讐劇、そして三者会談へ
物語はさらに予測不能な展開を見せ、毒ガス事件でのNINの「活躍」をきっかけに、NINの存在が政府によって公に発表されます。
これは、今まで影で活動していた忍者の存在が表舞台に出るという、忍者社会全体を揺るがす出来事でした。
また、双子のくノ一による五十嵐への復讐劇が描かれ、キャラクター個々の因縁が物語に深みを与えます。
そして、NINとUN、そして政府による「歴史的三者会談」が予告され、各勢力の思惑が交錯する新たな局面が始まります。
この巻は、雲隠兄弟や野口彩花といった主要キャラクターたちが、この新たな局面をどう乗り越えるのか、期待が高まる展開で締めくくられています。
16巻:三者会談の核心とUNの真の目的
前巻で予告された通り、加藤と仕留忍たちは、政府・NIN・UNの三者による極秘会談のため、国会議事堂へ向かいます。
国会議事堂の地下で行われる会談には、政府側代表として織田総理と佐々魔が、NIN側代表として加藤が、そして突如としてUNの宗主である禍山とUN幹部の山田美月が現れます。
三勢力の代表が一堂に会する緊迫の場で、ついにUNの真の目的が語られ、物語は新たなフェーズへと突入します。
この会談では、加藤を中心に幻術や心理戦が交錯し、交渉の場がそのまま戦いの前哨戦として描かれます。
UNが単なる反体制組織ではなく、忍者世界を再編しようとする思想集団であることが明確になり、「幻術の不安定性」や「現代的な忍術のアレンジ」といった、本作独自の忍者バトルの新局面が打ち出されます。
この巻は、シリーズ全体の伏線が収束し、今後の物語の方向性を決定づける重要なターニングポイントとなっています。
主人公・雲隠九郎のあらすじと顛末(漫画ネタバレ)
物語は、末端の下忍でニート同然の生活を送る雲隠九郎のもとに、中忍の加藤から「講談高校への潜入忍務」が下されるところから始まります。
九郎は、雲隠一族最強の雲隠虹郎の忍術を全て継承し、「虹郎のクローン」とまで呼ばれる実力の持ち主でありながら、仕事にあぶれるという、いかにも花沢健吾らしい主人公です。
当初、九郎に下されたのは、高校潜入の傍らで発生した「忍者になりたい外国人」による通り魔事件(男性器切断事件)の解決という、どこかシュールな忍務でした。
この序盤の展開で、九郎の隠された実力や、高性能忍具「摩利支天」の存在が示唆され、物語は一気に動き出します。
雲隠九郎のプロフィール
| 氏名 | 雲隠 九郎(くもがくれ くろう) |
| ニンドルネーム | No.9(ナンバーナイン) |
| 階級 | 下忍(ノンキャリア) |
| 特徴 | ニート同然の生活を送る引きこもり、無精髭、常に裸足。雲隠虹郎のクローンと言われるほどの天才的な実力を持つが、嘘とハッタリが得意。 |
| 末路 | 講談高校襲撃の際、UNの山田美月との対決で敗北し、死亡。 |
衝撃の主人公交代劇と死の考察
九郎は講談高校への潜入忍務の最中、UNとの抗争に巻き込まれ、校内一の美人とされるUNの戦闘員・山田美月と対決します。
九郎は山田の鼻を切り落とすという意地を見せるものの、新型摩利支天の弱点を突かれ、上顎から上を切断され死亡するという、あまりにもショッキングな最期を迎えます。
この主人公が死亡するという展開は、花沢健吾が『アイアムアヒーロー』などで見せた、現実の不条理さを突きつける作風の極致であり、読者に大きな衝撃を与えました。
九郎の死は、物語の途中で「死んだら終わり」というシビアな現実を突きつけ、この作品が単なるヒーローアクションではないことを強烈に印象づけるターニングポイントとなりました。
しかし、九郎の遺体と思われる肉体がクローン培養施設らしき場所に保管されていた描写や、弟である十郎が九郎とそっくりな顔で登場することから、「九郎は本当に死んだのか?」「クローン技術による復活の可能性は?」といった考察がファンの間で絶えず議論されています。
この「死」がもたらす不安定さこそが、物語の緊張感を高めている要因の一つと考える読者も多いです。
雲隠兄弟と新たな主人公・雲隠十郎の登場
九郎の死後、物語の軸は彼の弟である雲隠十郎へと引き継がれます。
雲隠一族には、九郎を含め一郎から十郎まで、さらに十一、十二郎といった多くの兄弟が存在しており、それぞれが「NIN」内で重要な役割を担っています。
彼らは「虹郎のクローン」説や、それぞれの名前が持つ意味など、物語の根幹に関わる大きな謎を背負っているキャラクターたちです。
雲隠十郎のプロフィール
| 氏名 | 雲隠 十郎(くもがくれ じゅうろう) |
| ニンドルネーム | 天(てん) |
| 階級 | 下忍 |
| 特徴 | 九郎亡き後の新たな主人公。NIN最強の男とされる。自己中心的で奔放な性格。九郎と同じく、裸足で生活する。高い観察眼を持つが、どこか抜けている一面もある。 |
雲隠兄弟の個性と役割
雲隠兄弟は、主人公交代後、物語の主軸として登場します。
特に、雲隠兄弟最強の男とされる雲隠虹郎は、要人警護や忍者関係者向けの番組「おっさんといっしょ」の「殺すお兄さん」役を務めるなど、忍者社会の闇を象徴するような存在です。
雲隠十郎は九郎亡き後の新たな主人公として、九郎以上に奔放で自己中心的ながら、NIN最強の男としての実力と高い観察眼を持ち、猿田や猫平をパシらせていた過去が明かされるなど、物語を牽引します。
雲隠十一は十郎の双子の妹で、「くノ一最強の女」とされ、野口彩花の身辺警護にあたります。
雲隠十二郎は、雲隠兄弟の中で数少ない常識人であり、情報分析を得意とする頭脳派として、兄たちの尻拭いを担うことが多いです。
九郎の死と十郎の登場は、単なる主人公交代ではなく、雲隠一族という特殊な血筋や組織構造、そしてNINとUNの抗争の核心に迫るための必然的な展開だったと分析されています。
実写映画版の概要、キャスト、原作との違い
『アンダーニンジャ』は、2023年10月にアニメ化されたほか、2025年1月24日には山﨑賢人主演で実写映画化が予定されており、大きな話題を集めています。
花沢健吾作品は実写化との相性が良いとされる一方で、その独特のグロ描写やシュールな世界観をどう表現するのかが注目されていました。
映画『アンダーニンジャ』の作品概要
| 公開日 | 2025年1月24日 |
| キャスト(一部) | 雲隠九郎役/山﨑賢人 |
| 野口彩花役/浜辺美波 | |
| 加藤役/間宮祥太朗 | |
| 鈴木役/白石麻衣 | |
| 上映時間 | 123分 |
実写映画版と原作漫画の主な違い
実写映画版は、原作の序盤、主に8巻までの内容を2時間にまとめているため、設定や展開にいくつかの変更点が見られます。
特に顕著な違いは、以下の通りです。
主人公・雲隠九郎の結末
原作では山田との戦いで明確に「死」が描かれましたが、映画では地下道での刺し違えとなり、瓦礫に埋もれて生死不明となる結末です。
最終的には、九郎を地上まで運ぼうとした野口彩花をかばう形で命を落とした様子が描かれます。
また、原作では九郎の死後、部屋に戻った野口の前に九郎とそっくりな顔の雲隠十郎が現れ、物語は幕を閉じます。
原作の九郎の凄惨な最期は、年齢制限なしの映画として、よりマイルドな表現に変更されたと分析されています。
グロテスクな描写の変更
原作では足の切断や顔面の切除など、過激なグロ描写が特徴ですが、実写映画版は全年齢設定のため、流血表現程度のマイルドな表現に抑えられています。
原作ファンからは賛否両論あるものの、幅広い層に作品を届けるための工夫と考えることもできます。
登場人物と設定の変更
重要キャラクターである佐々魔や、九郎の妹である雲隠十一など、複数のキャラクターが映画では登場しません。
また、原作では講談高校襲撃の黒幕がNIN七人衆だったのに対し、映画ではUNの仕業とされているなど、ストーリーを分かりやすくするために設定が簡略化されています。
こうした変更は、8巻分の内容を2時間に凝縮し、物語の核を分かりやすく伝えるための「取捨選択」だったと見られています。
『アンダーニンジャ』を彩る個性豊かな登場人物
『アンダーニンジャ』の魅力の一つは、主人公以外にも癖の強い、個性豊かなキャラクターが多数登場する点です。
彼らが織りなすシュールな会話や、忍者としてのシビアな行動原理が、物語を奥深くしています。
主人公とその周辺人物
雲隠 九郎
(前述のプロフィールを参照)
ニート同然の生活を送る下忍。
噓とハッタリが得意で、高い読心術を持つなど、その実力は未知数でした。
加藤
| 氏名 | 加藤(かとう) |
| 階級 | 元中忍(キャリア)、後にNINを離脱 |
眼鏡をかけた短髪の青年。冷静沈着。元汁忍という過去を持つ。NINへの絶望から、脱獄後はUN側に寝返る。
宅配便「志能便」の配達員として活動するキャリア忍者でした。
九郎に忍務を与える上司的な立場でしたが、NINの腐敗に絶望し、組織を裏切ります。
彼の行動原理は、組織への忠誠ではなく、自身の正義感や過去の経験に強く根ざしており、「忍者組織の闇」を体現するキャラクターです。
雲隠 十郎
(前述のプロフィールを参照)
九郎の弟で、新たな主人公。
雲隠兄弟最強とされ、自己中心的ながら高い観察眼を持ちます。
NINの主要な忍者たち
佐々魔
| 氏名 | 佐々魔(ささま) |
| 階級 | 元一等忍尉、現在は下忍 |
摩利支天のβ版で中年男性に偽装した女性忍者。奇行が目立つが、加藤や小津のかつての隊長。
摩利支天のβ版を用いて中年男性に変装している女性忍者です。
元キャリア組でありながら、何らかの忍務のために降忍し、UNとも関係を持つなど、その行動には常に謎がつきまといます。
鈴木
| 氏名 | 鈴木(すずき) |
| 階級 | 忍長 |
金髪の女性忍者。吉田昭和の担当編集者。若者の匂いが苦手で、男性の加齢臭が性癖。
吉田昭和の担当編集者として活動するくノ一で、佐々魔の部下でした。
講談高校に潜入し、九郎たちと行動を共にします。
若者の匂いが苦手で、男性の加齢臭を好むという極端な性癖を持つなど、そのキャラクターの振り幅も魅力の一つです。
日比 奇跡
| 氏名 | 日比 奇跡(ひび みらくる) |
| 階級 | 中忍 |
| 特徴 | 長髪で顔に傷(リヒテンベルク図形)がある青年。平の弟子。かつての伝説の不良「サンダー日比」。耐電体質。 |
九郎の忍者学校時代の友人であり、平の弟子です。
九郎のせいで落第した過去を持ちますが、九郎を気遣うなど、友情と確執が入り混じる複雑な関係性を持っています。
蜂谷 紫音
| 氏名 | 蜂谷 紫音(はちや しおん) |
| 階級 | 下忍 |
| 特徴 | ゆるふわ系の見た目。小津の弟子。NIN最高幹部「多羅」の孫。腹話術と色仕掛けを得意とする。 |
小津の弟子で、ゆるふわ系の見た目ですが、腹話術で毒舌を吐くというギャップを持ちます。
NIN最高幹部の孫という、物語の根幹に関わる重要な血筋の持ち主です。
小津
| 氏名 | 小津(おづ) |
| 階級 | 中忍(准忍尉) |
| 特徴 | 眼鏡をかけた小太りの忍者。練馬区役所の職員。蜂谷の師匠。情報統制を担当する。 |
練馬区役所の職員として活動する中忍で、蜂谷の師匠です。
目立つ服装や、走ると「プリン、プリン」という効果音が付くなど、シュールな笑いを誘うキャラクターです。
アパートの住人たち
川戸
| 氏名 | 川戸(かわど) |
| 特徴 | 九郎のアパートの住人。夜の仕事をしており、酒好き。過去に「22・2・22事件」で両親を失う。 |
九郎の住むアパートの住人です。
九郎の高校転入試験で母親役を演じるなど、九郎のニート生活を支える重要な一般人(?)です。
大野
| 氏名 | 大野(おおの) |
| 特徴 | 九郎のアパートの住人。九郎の部屋と押し入れで繋がっている。九郎にビールを飲まれるなど、散々な目に遭う。 |
九郎の隣の部屋に住んでおり、押し入れで部屋が繋がっているという物理的な近さから、九郎の私生活に巻き込まれがちです。
このアパートの住人たちは、忍者の暗闘がすぐ近くで繰り広げられているにもかかわらず、どこか平和な日常を送り続ける「一般社会の象徴」として機能していると考察できます。
漫画の見どころと魅力(シュールな笑い、現代の忍者、伏線)
『アンダーニンジャ』は、その衝撃的な展開や複雑な組織間の抗争だけでなく、花沢健吾特有の「シュールな笑い」と「緻密な伏線」が最大の魅力です。
面白い魅力①情けない雰囲気漂う主人公
本作の主人公、雲隠九郎は、ボロアパートでゴロゴロし、寝ながら吹き矢を吹くという、情けないニート同然の生活を送る下忍として登場します。
『アイアムアヒーロー』の主人公と同様、「ダメ男感満載」の主人公が、突如として国家レベルの争いに巻き込まれるという構図は、読者に強烈な親近感と、物語への引き込み力を与えます。
最強の血筋を持ちながらも、組織から仕事を与えられずにいるという現状は、現代社会における「非正規雇用」や「ニート問題」といった社会的なテーマを、忍者というフィルターを通して風刺しているという見方もできます。
面白い魅力②現代の忍者
本作の忍者は、伝統的な忍術だけでなく、現代のテクノロジーを駆使します。
ステルス性能を持つパーカー「摩利支天」や、衝撃吸収機能を持つエアバッグなど、「現代でも実際にあり得そう」なリアリティ感あふれる忍具が多数登場します。
忍者と言えば忍術や手裏剣といったイメージが強い中で、「落下した際にエアバッグが作動する」という描写は、「現代の忍者とは何か?」という問いを読者に投げかけ、作品の世界観に深みを与えています。
面白い魅力③癖のあるキャラとシュールな笑い
登場するキャラクターたちの「癖の強さ」は、この作品の大きな魅力です。
「立ちション禁止」の張り紙を「忍者の暗号」と勘違いし、男性器を切断すれば忍者に会えると信じる外国人や、浮浪者のような姿で子供に母乳を飲ませようとする忍者など、個性的なキャラクターたちが繰り広げる会話や行動は、思わず吹き出してしまうほどのシュールさを持っています。
特に、九郎の弟である雲隠十郎の自己中心的な行動や、小津の目立つ服装と走る際の擬音など、緊張感のある物語の合間に差し込まれる「不意打ちの笑い」が、読者の心を掴んで離しません。
面白い魅力④緻密に散りばめられた伏線
九郎の正体や、タイトルである「アンダーニンジャ」の意味、そして組織間の抗争の裏に潜む「果心居士」の存在など、物語には多くの伏線が緻密に散りばめられています。
九郎が下忍にもかかわらず、海外の精鋭忍者よりも最先端の「摩利支天」を支給された理由や、雲隠兄弟のクローン説など、小さな描写一つ一つが、後の壮大な展開に繋がっていく構成は、「伏線回収系」の作品が好きな読者にとってたまらない魅力です。
特に、九郎の死後、彼を慕う仲間たちがその死を悼む一方で、九郎と同じ顔をした十郎が現れるという展開は、「忍者は誰でも替えがきく」というシビアな現実を突きつけつつ、物語の根幹に関わるクローン技術の存在を強く示唆しています。
面白い魅力⑤花沢健吾が描く「日常の崩壊」
花沢健吾作品の共通するテーマとして、「日常が非日常によって崩壊していく過程」があります。
『アンダーニンジャ』では、講談高校というごく普通の日常の場に、20万人の忍者が潜入し、やがてUNによる襲撃という血生臭い戦場へと変貌していく様子が描かれます。
九郎と川戸、大野といったアパートの住人たちの平和な日常会話と、裏で繰り広げられる過激な忍者同士の暗闘の「落差」こそが、この作品の緊張感とリアリティを際立たせています。
読者は、この「日常の裏側」に潜む恐怖と、シュールな笑いという両極端な感情を同時に揺さぶられることで、他の漫画では味わえない独特の読書体験を得ていると言えるでしょう。
アニメ化
『アンダーニンジャ』は、その衝撃的な世界観と展開から、多くのファンが映像化を望んでいました。
テレビアニメ化
2023年10月にテレビアニメが放送されました。
下忍である九郎に、なぜ最新式の忍具「摩利支天」が支給されたのか、という序盤の伏線や、個性的なキャラクターたちの動向が、アニメを通してさらに多くの視聴者に注目されました。
アニメ化によって、九郎の情けない雰囲気と、忍者としての実力のギャップ、そして作品の持つシュールな笑いが、映像と音声を通してよりダイレクトに伝わり、新規読者を獲得する大きなきっかけとなりました。
まとめ
『アンダーニンジャ』は、花沢健吾が描く「現代忍者奇譚」として、従来の忍者漫画の枠を超えた独創的な世界観を構築しています。
ニートの下忍・雲隠九郎の物語から始まり、その死を経て雲隠十郎へと主人公が交代する衝撃的な展開は、「予測不能」という言葉が最も似合う作品であると言えるでしょう。
「NIN」と「UN」という二大組織の抗争の裏に潜む、より巨大な陰謀や、「果心居士」といった黒幕の存在が示唆され、物語は最終決戦に向けてさらなる加速を見せています。
情けない主人公、現代のテクノロジーと融合した忍具、そして癖の強すぎるキャラクターたちが織りなすシュールな笑いと、緻密に張り巡らされた伏線は、一度読み始めたら止まらない中毒性を持っています。
アニメ化、実写映画化と、今後ますます注目度が高まることは間違いありません。
まだ未読の方も、この機会にぜひ、花沢健吾の描く「リアル」と「非日常」が交錯する忍者世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。




コメント