
蝦夷地に眠るアイヌの黄金を巡る争奪戦は、単行本第5巻でさらに予断を許さない展開を見せます。
黄金の価値が一挙に千倍アップという説も飛び出しヒートアップする中、鶴見中尉一派と土方歳三一派の暗躍をよそに、杉元・アシリパ・白石トリオの旅は続くも、思わぬ危険な敵に遭遇します。
「悪夢の熊撃ち」二瓶鉄蔵との死闘を制し刺青人皮を求めて旅を続ける杉元一行が次に訪れたのは、鰊漁で賑わう海岸でした。
一見平和に見えるこの地に潜んでいたのは、死刑囚の中でも屈指の危険人物、これまでに百人以上を殺害してきたシリアルキラー「辺見和雄」です。
また、この巻では、鶴見中尉配下の軍人谷垣源次郎が、アイヌの人々に救われ傷を癒やす中で直面する「反鶴見派」の襲撃と、彼のマタギとしての魂の在処が描かれ、物語はもはや群像劇の様相を呈し始めます。
二人の「東京愛物語」:特務曹長・菊田杢太郎と「ノラ坊」杉元佐一の出会い
第5巻の前半の中心となるのは、杉元と最凶のシリアルキラー辺見和雄との遭遇です。
「不死身の杉元」誕生前夜:菊田がノラ坊杉元に見たもの
一見ごく普通の温厚な青年に見える辺見ですが、彼はかつて弟が眼前で獣に食い殺されたのを目撃して以来、「人が死に抗う姿」に取り憑かれ殺人を繰り返してきました。
そして同時に、「自分が誰かに殺されかけ、死に抗う姿」を想像しては恍惚となるという大物の変態であります。
そんな「喧嘩稼業」に出てきそうな変態に見初められてしまった杉元に危機が迫ります。
辺見は杉元の「不死身」の異名を持つ生命力と、死を恐れない強さに異常な興味を示し、彼を「最も愛し合える相手」として殺害しようと企みます。
辺見の存在は、杉元の「生き抜くことへの執念」という根源のテーマと深く絡み合います。
辺見が杉元に迫る危機と同時に、この海岸の地に鶴見中尉一行まで現れ、一気に大乱戦が繰り広げられることになります。
秘密作戦「花沢勇作・童貞防衛」:替え玉見合いの裏側にある思惑
戦闘が終わった後、物語の新たな緊張感を生む出来事が起こります。
杉元と土方歳三が「接近遭遇」するのです。
杉元は目の前の老人が土方とは気づきませんが、土方は例によって杉元を「新選組隊士になぞらえる癖」を出しつつも観察します。
このシーンは、土方が杉元を新たな「近藤の器」として見定めようとしていることを示唆し、土方サイドの野望に杉元が巻き込まれていく可能性を高めます。
二大勢力のリーダーが杉元に注目しているという構図は、主人公の存在感を強烈に際立たせています。
網走監獄の黄金:剥がされた刺青人皮の謎と争奪戦の幕開け
主人公サイドで緊迫したドラマが繰り広げられる一方、第5巻の最も意外かつ感動的な展開は、鶴見中尉配下の軍人谷垣源次郎に関するエピソードです。
花沢勇作の運命:旗手としての条件と家族の対立
谷垣はマタギの血を引く男ですが、かつて二瓶と共に杉元たちを狙った際に負傷し、なりゆきからアシリパのコタンで傷を癒やしていました。
そこに同じく鶴見中尉配下の尾形と二階堂が現れます。
彼らこそは部隊の中の「反鶴見中尉派」であり、谷垣が自分たちのことを中尉に密告するものと誤解し、谷垣の口を封じるために襲撃してきます。
この谷垣と尾形・二階堂の対決は、相手の出方の読み合いをメインとした本作らしいバトルの面白さに溢れています。
尾形が細かいところでキャラクターを立ててくるのもさることながら、双方とも単純な善玉悪玉というわけではなく、それぞれに「背負う者」がある人間として戦う描写が秀逸です。
策略の舞台:帝国ホテルでの洋食マナー大騒動
何よりも読者の胸を打つのは、アイヌの人々に命を救われた谷垣の行動です。
彼は彼女たちを巻き込まぬために、かつて相棒であった二瓶の遺した銃を手に、一人立ち向かうという「マタギの魂」を見せます。
額に傷を負った谷垣が包帯代わりに巻く「マタンプシ(アイヌの鉢巻き)」は、彼の「魂の在処」が、もはや鶴見の部隊ではなくアイヌの人々と共にあることを、無言のうちに感じさせてくれます。
このエピソードは、単なる戦闘を超えて谷垣の人間としての変化と成長を描いており、群像劇としての本作の深みを増しています。
以前の巻では主人公サイド以外の物語展開が多い点に不満があった読者も、この谷垣のドラマには強く惹きつけられることでしょう。
裏切りと再会:銃弾が引き裂いた杉元と菊田の運命
第5巻のラストでは、すべての発端である謎の死刑囚「のっぺらぼう」の正体が判明し、物語は次の大きな局面へと向かいます。
鶴見中尉の思惑と銃撃:菊田が杉元を庇った真意
のっぺらぼうの意外な正体は、読者に大きな衝撃を与えます。
これにより、刺青人皮の暗号を巡る争奪戦は、単なる金の奪い合いではなく、主人公アシリパの「家族を巡る物語」へとその様相を一変させます。
次に杉元たちが向かう場所は、あまりに危険かつ意外な場所であり、鶴見や土方といった大きな勢力の思惑が絡み合い、先の展開がいよいよ読めなくなってきました。
この予測不能な展開こそが、『ゴールデンカムイ』を猛烈に面白い作品たらしめている要因であり、読者の期待はさらに高まります。
辺見との戦闘を経て杉元が何を感じ、谷垣がアイヌと共に立つ決意を固めるなど、第5巻は単なるアクションに留まらない人間ドラマの深みを感じさせてくれました。
まとめ
『ゴールデンカムイ』第5巻は、愛と死に取り憑かれたシリアルキラー辺見和雄との極限の戦いを描く一方で、谷垣源次郎のマタギの魂とアイヌの人々との絆を描いた感動的な群像劇の側面が強調されました。
| クライマックス | シリアルキラー・辺見和雄との遭遇戦。杉元に「死に抗う姿」を求め迫る最凶の変態 |
| 主人公サイドの動き | 土方歳三と杉元が接近遭遇。土方が杉元を「新選組隊士」になぞらえ観察する |
| 谷垣のドラマ | アイヌのコタンで傷を癒やし、反鶴見派(尾形・二階堂)の襲撃を受ける |
| 谷垣の決意 | アイヌの人々を巻き込まぬため、マタンプシを巻き二瓶の銃を手に単身立ち向かう |
| 物語の急展開 | 全ての発端である謎の死刑囚「のっぺらぼう」の意外な正体が判明 |
| 今後の展望 | 物語がアシリパの家族を巡る個人的なドラマへと一変し、予測不能な展開へ |
辺見の狂気を退け生き抜いた杉元と、アイヌの人々の恩義に報いようとする谷垣の姿は、命の価値と人間の尊厳を問いかけます。
物語の発端であるのっぺらぼうの正体が明らかになった今、杉元・アシリパの旅はより個人的な使命を帯び、次巻以降の展開から目が離せません。
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