『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて、原泰久先生原作で2006年9号より連載されている漫画キングダムについてまとめていきたいと思います。
キングダムは中国の春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍を目指す少年・信と後の始皇帝となる秦国の若き王・政の活躍を中心に、戦乱の世を描かれています。
現在までに50巻が販売されており第17回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞作。単行本の累計発行部数3300万部以上、アニメ化、ゲーム化もされている人気作です。
漫画好きの僕が、50巻も販売されるほどなぜ読んでいないのかというと、中国の歴史物はあまり好きではなかったので敬遠していました。
ただあちこちで推されている作品だったので読んでみることにしました。
完全なオリジナルと違って史実から逸脱できない縛りの中で本当にこんな人いたんだろうか?とか中国史なんか全く興味のなかった僕ですら興味が湧いてきました。
秦の始皇帝?
紀元前に生きた人々で学のない僕ですら、始皇帝と聞いてボヤーっと顔が浮かんでくるほどの人物始皇帝、中国史で初めて中国を統一した人物なんだそうです。
国家単位での貨幣や計量単位の統一、交通規則の制定、万里の長城の建設などを行ったとされています。
現代の形を作るために戦う男たち
後の始皇帝となる政は、秦以外の6国を武力で制覇して王も民も関係なく法の元に平等に生きれる世の中を作ろうとします。
逆に腹心というか身内の呂不韋は、政とは違いお金で他国と上手くやりとりできる世の中を作ろうとします。呂不韋1年を春夏秋冬の四季に分け、更にそれを孟・仲・季の三節に分けて(1ヶ月単位)、各々の天文気候に沿って 人間の日常生活を規定し、それに従うようにすればよいとした人物で頭が良かったことが分かります。
武力よりお金で解決してしまおうという考え方からすると政より呂不韋の方が現代的だったのではないかと思います。今の世の中なら始皇帝はただの危険な独裁者になっていたでしょう。
この時代に”法”というものがどの程度まで定まっていたのかはよくわかりませんが、このように“法”というものがあまり定まっていなかったであろう時代に、中国という大国で言語も紙幣も違う国が交わっている中で法で治めるとはどいうことなのか、様々な葛藤が描かれます。現代の平和な世の中って古代の人たちの多くの血が流れて出来てるんだなと、この漫画を読んで思いました。
天下の大将軍を目指す信
ところで物語の主人公なんですが、始皇帝ではなく信(しん)という少年なんです。下僕の出で剣術を漂(ひょう)という少年とともに天下の大将軍を目指して1200を超える戦いを行っていたところ王宮の大臣、昌文君に見出され漂だけが仕官します。
というのも漂は秦王、政にそっくりであったため影武者として見出されただけだったんですが、それをきっかけに信と政が出会い天下の大将軍への道を切り開くのです。
元々、下僕の出と蔑まれていた信でしたが、数々の将軍を打ち破ったり窮地を逆転したりしてどんどん武功を上げていきいまでは五千人将にまで上り詰めます。
更に副将の羌瘣(きょうかい)も三千人将となっているため合わせて八千人の将となります。
五千人将の次はいよいよ将軍ということなんで、信が将軍になる日が楽しみですね。
このように、弱王政が本当の意味で王になっていったり、下僕の出の信だったりがどんどん成長していき、旧世代の英雄が撃ち滅ぼされたりキャラの成長と世代交代が見れるのがキングダムの魅力の一つでもあります。
漫画を彩る女の子たちの活躍
この漫画では、数々の強い女の子たちが出てきます。これもまたこの漫画の魅力の一つなんです。
羌瘣(きょうかい)
伝説の刺客一族「蚩尤」の後継候補として育てられた羌族の少女。年齢は信の一つ下。緑穂(りょくすい)という剣を武器に戦う
この美貌でも作中トップクラスの強さを誇り、「トン」「タタン」という不思議なリズムに乗って雑魚敵をバサバサと切り倒していく姿は痛快です。
画像ではバンダナを外していますが、バンダナを付けた状態だとその強さから男とはしばらく気づかれず、後に女だと発覚して飛信隊の仲間たちを驚かせます。
実際に史実には残っているそうなんですが、残念ながら女ではなく男だったそうです。
やっぱり女でこの時代に戦って無理があったのでしょうか^^;
河了貂(かりょうてん)
河了貂は、梟鳴(きゅうめい)という山民族の末裔で黒卑村で祖父と暮らしていた山の民でした。黒卑村の人たちに通行人が来たことを教え小銭を稼いでいたそうですが、信、政と出会いやがて軍師を目指すようになります。河了貂は実在する人物ではなくキングダムオリジナルのキャラクターなんだそうです。
楊端和(ようたんわ)
女性でありながら、圧倒的な武力を持って山の民をまとめ、さらに勢力の拡張を
図っている事から別民族に恐れられる楊端和(ようたんわ)
秦王政と山界の民で盟約を結び、共存共栄の約束を交わしていて秦のピンチに助けに入る場面もあります。女性ながらイカツイ山の民を統べる楊端和(ようたんわ)ですが、やっぱり史実では男となっているそうです。
戦いばかりが描かれるキングダムで華やかに彩る女性キャラですが実際に戦場にいた人はいなかったようです。
中弛みしない漫画
キングダムは50巻も続く長編漫画です。これだけ長い間続くと、ここは読み飛ばそうかなーと思えるようなシーンだったり、読み返してみるとこの辺りはどうでもいいなと思えるような回があったりします。
初見でも、そろそろ飽きてきたなと僕が思い始めたころ、秦以外の6国が秦に攻め込んでくる「対合従軍」というものが始まります。
画像のように7国はどちらか1国を攻めれば、横から他国が攻めてくるという微妙なバランスで成り立っているんですが、自国以外の国が全部攻めてきたらエライことですw
一国滅ぼすのにさえ多大な労力がかかるのに6国が敵に回ります。これで一国というから絶望的ですよね。これには流石の無鉄砲さが売りの信も追うだけにとどまります。こんな窮地でも、知略と将軍たちの活躍で何とか難を逃れますがいったいどうやって逃れるのか?気になりませんか?
派手に描かれる将軍たち
キングダムの世界では本当にこんなことあるのかよ?って思うぐらい将軍などが大げさに書かれています。
画像では麃公(ひょうこう)将軍が先頭に立ち一点突破していますが、ここまで極端に突破するのはなかなか難しいんではないかと思います。見方によっては完全に敵に囲まれていますw
なんとなく軍師になった気分に
画像のように実際の地形を用いてコマを使って説明的に軍略をわかりやすく解説してくれるので、なんとなく軍師になった気分になれますが、読者にわからせた上で逆転の目がない戦いでも奇策で勝ったりするので毎回、面白い。
周りの城を占領して、目的の城に民を避難させていき食料を減らさせるという戦い方や全兵で城を攻めると見せかけて実は目的の丘だけを奪取したりなどただ戦って勝つだけが戦争ではないというところも魅力です。
まとめ
最後に特記したい点はページごとに何度も登場するキャラでもフリガナが振ってあるところです。中国の漫画ということで普段使わない漢字がふんだんに出てきて、よく登場するキャラでも「あれこれなんて読むんだっけ?」ということはしばしばあります。
ページごとにフリガナが振っていないとこれが起こるたびにフリガナがあったページを探すという作業をしなければならなくなりますが、キングダムではしっかりフリガナも振ってあり読者への配慮がしっかりしているなと感じました。
僕も中国の歴史には興味がなかったですが、キングダムのお陰で少し興味が湧きました。
主人公信も下僕の出でなんとなく親近感が湧きますよね。
是非読んでみてはいかがでしょうか?
その他バトル系漫画も紹介していますので是非ご覧ください
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