
オンラインゲームの世界観をベースにした憑依転生ダークファンタジー『野生のラスボスが現れた!』。
主人公ルファス・マファールが「黒翼の覇王」として異世界に復活し、かつての配下「覇道十二星天」を回収する旅は、多くの読者を魅了しています。
しかし、この物語を語る上で欠かせないのが、ルファスの野望に立ち向かい、一度は彼女を封印した「七英雄」の存在です。
彼らは世界を救った英雄として崇められていますが、その内情は後悔、自責、そしてルファスへの複雑な愛憎が渦巻く、ねじれた集団でした。
本記事では、ルファスと戦争を演じ、そして封印した「七英雄」のメンバー一人ひとりに焦点を当て、その壮絶な結末と、200年後の世界における彼らの運命を徹底的に深掘りしていきます。
なぜ彼らは英雄でありながら苦悩し続けるのか、その運命の光と影を見ていきましょう。
七英雄とは? 覇王ルファスと戦った「もう一つの主人公」たち
七英雄とは、かつて『エクスゲートオンライン』というゲームにおいて、プレイヤーキャラクターであったルファスと大規模な戦争を演じた7人のキャラクターの総称です。
彼らの多くは本来、ルファスと同じくプレイヤーキャラクターでしたが、物語の舞台となる200年後の世界においては、NPC化して存在しています。
彼らはルファスの世界統一の支配から世界を救った「英雄」として、民衆からは絶大な尊敬と称賛を受けていますが、ルファスを討ったこと自体が彼らに深い呪いと後悔をもたらしています。
ルファスを討伐した直後、ルファスは七英雄との戦いに勝利し、彼らの体の一部を奪うとともに呪いをかけました。この呪いが、200年後の彼らの運命を決定づけることになります。
七英雄メンバー一覧(存命・故人含む)
七英雄は7名で構成されていますが、その運命は様々です。
長命種である3名(メグレズ、メラク、ベネトナシュ)は存命していますが、残りの4名(ミザール、アリオト、ドゥーベ、フェクダ)は既に亡くなっています。
七英雄メンバープロフィール
| 名前(異名) | 種族 | 声優 | 現在の状況 |
| メグレズ(賢王) | エルフ | 前野智昭 | 存命(能力弱体化) |
| メラク(天空王) | 天翼族 | 平川大輔 | 存命(王位にあるが弱気) |
| ミザール(鍛冶王) | ドワーフ | – | 故人(人格ゴーレムが存在) |
| アリオト(剣王・勇者) | 人間 | 武内駿輔 | 故人(永遠の眠り) |
| ドゥーベ | 白熊の獣人 | – | 故人 |
| フェクダ | 小人族 | – | 故人 |
| ベネトナシュ(吸血姫) | 吸血種族 | 明坂聡美 | 存命(人類最強のまま) |
存命する英雄たち:後悔と自責に苛まれる三者三様の苦悩
ルファスを討伐したことで「英雄」の地位を得たものの、その代償として深い後悔とルファスがかけた呪いに苦しみ続けているのが、存命している3名の英雄たちです。
彼らの苦悩は、ルファスに対する複雑な感情、そして「英雄」という重すぎる称号によるものです。
メグレズ(賢王):後悔と自責に苛まれる知的な美形エルフ
メグレズのプロフィールと能力
| 異名 | 賢王 |
| 種族 | エルフの魔法使い |
| 国 | スヴェル国の初代国王 |
| 性格 | 夢見がちで生真面目だが、大胆さと繊細さが同居する面倒な性格 |
メグレズは、眼鏡をかけた知的な美形のエルフの魔法使いで、人々からは「賢王」と呼ばれ、学問と魔法の国であるスヴェル国を建設しました。
ルファスと袂を分かった今でも、「本当に己の行動が正しかったのか」と自問自答を続けており、人類が魔神族に追い詰められたことに深い後悔と責任を感じています。
彼の性格は非常に面倒で、大胆な行動をするくせに後になって悩むという、ず太いのか繊細なのかハッキリしない二面性を持っています。
特に、図書館に七英雄の批判本を揃えさせたというエピソードは、彼が尊敬や称賛をこの上ない苦痛に感じており、その心の奥底にドM疑惑すらあると指摘されています。
200年前はルファスの友人であり冒険者仲間だったという過去も、彼の後悔を一層深いものにしています。
なお、魔神族との戦いにおいて呪われてしまったため、ルファスと戦った全盛期に比べると能力は大幅に弱体化しています。
彼の図々しい(墓荒しを推奨したりする)行動の裏には、自らへの罰意識や、英雄としての重荷から逃れたいという心理が隠されていると考察されています。
メラク(天空王):コンプレックスと自責の念に沈む天翼族の王
メラクのプロフィールと能力
| 異名 | 天空王 |
| 種族 | 天翼族 |
| 国 | ギャラルホルンの建国者にして王 |
| 性格 | 自信がなく、常に他人の顔色を伺う、打たれ弱いサポート型 |
メラクは、天翼族の国ギャラルホルンの建国者であり王ですが、その性格は非常に打たれ弱く、面倒臭いと評されています。
生まれながらにして地位は約束されていましたが、「自らは王に相応しくない」というコンプレックスを抱き、常に他人の顔色を伺うため、リーダー気質には全く向いていませんでした。
むしろルファスのような強力なリーダーを近くで補佐することで真価を発揮するサポート型であり、ルファスを討ったことを心から悔いています。
彼のどっち付かずでハッキリしない態度は、自国民からも非難され、内戦を招いてしまうほどでした。
図々しさを持つメグレズとは違い、メラクは「放置するとどこまでも沈んでいく非常に面倒臭い男」とされ、常に自分は無能だと自分を責め続ける自罰的な傾向があります。
ルファスが「七英雄マジ面倒臭い」と評する際、その最たる例としてメラクの存在が念頭にあると考える読者も多いようです。
ベネトナシュ(吸血姫):ルファスへの異常なまでのライバル意識
ベネトナシュのプロフィールと能力
| 異名 | 吸血姫 |
| 種族 | 吸血種族(白銀の髪の美少女) |
| 能力 | ルファス台頭以前の人類最強。全盛期の力を保持し、戦闘力は増大している。 |
| 記録 | 歴史上最多殺戮記録保持者(ルファスの10倍以上) |
ベネトナシュは、七英雄の中で最も異質な存在です。
「吸血姫」の異名を持つ白銀の髪の美少女であり、ルファス台頭以前から高レベルに到達し、大陸一つを滅ぼすことで自力でレベル600まで到達した化物です。
殺戮記録は、魔物、魔神族、人間の数を含めてルファスの10倍以上に及び、七英雄の中では最大の問題児と位置づけられています。
彼女が他の6人と決定的に違うのは、ルファスを討ったことを微塵も悔いていないどころか、自分の手で殺せなかったことを心から悔いている点です。
ルファスに対して異常なまでのライバル視を抱き、自らの手で殺すことを最大の目標としています。
さらに特筆すべきは、他の英雄と違い、彼女だけは全盛期の力をそのまま保持しており、その戦闘力は衰えていないどころか増大しているという点です。
彼女は英雄というより、もう一人のラスボス候補であり、物語における戦闘面での最大のスパイスとして機能しています。
亡くなった英雄たち:壮絶な結末と残された遺志
長命種以外の4名の英雄たちは、ルファス封印後の200年の間に、魔神族との戦いや自身の呪い、あるいは己の信念を貫く形で命を落としました。
彼らの存在は、ルファスが不在の間に人類が直面した困難と、彼らが払った犠牲の大きさを物語っています。
アリオト(剣王):愛と大言を貫いたリーダー
アリオトのプロフィールと能力
| 異名 | 剣王 |
| 種族 | 人間(勇者クラス保持者) |
| 役割 | 七英雄のリーダー的存在 |
| 結末 | 魔神王に敗れ、己の命と引き換えに結界を張り、永遠の眠りにつく。 |
逞しい体躯の人間であるアリオトは、ミズガルズ一の剣の腕前を持つ「剣王」であり、さらに「勇者」クラス保持者でもあったため、七英雄のリーダー的存在でした。
彼は過去にルファスの世界統一の夢を笑い、「本当にそれが出来たら鼻からパスタを喰ってやる」という大言を吐き、実際にそれを実行する羽目になったという、コミカルながらも熱いエピソードを持っています。
(この一件以降、パスタが嫌いな食べ物になってしまったというのは、彼らしい逸話です。)
魔神王に敗れた際、彼は己の命を使い果たしてレーヴァティン全体を護る結界を張り、永遠の眠りにつきました。
特筆すべきは、彼がルファスに対して気があったという事実です。
ルファスの夢を笑い、討伐した英雄でありながら、その心にはルファスへの秘めたる愛があったという、複雑な感情の持ち主でした。
彼の壮絶な自己犠牲の結末は、「英雄」としての役割を最後まで全うした、悲劇的なリーダーの姿を示しています。
ミザール(鍛冶王):親友を裏切り、失意の中で逝った錬金術師
ミザールから生まれた後継者
| 異名 | 鍛冶王 |
| 種族 | ドワーフ |
| 能力 | ミズガルズ随一の錬金術師(ゴーレム、建造物) |
| 代表作 | 十二星天リーブラ、全高300mのアホみたいな王都ゴーレム |
髭モジャの典型的なドワーフであるミザールは、ミズガルズでも並ぶ者のいない錬金術の腕前を持ち、「鍛冶王」と呼ばれました。
彼の錬金術は、ルファスすら及ばないほどであり、全高300m、全長1100mというアホみたいな王都ゴーレムを造り出すほどの天才でした。
ルファスの配下である十二星天の一人、リーブラも彼の作品であり、リーブラがメイド型なのは彼の趣味です。
反面、薬などの錬金術は全くの専門外であり、ゴーレムも頑なに金属か岩でしか造ろうとしない非常に頑固な親父でした。
ミザールの悲劇は、ルファスという親友を裏切ってルファスを討ち、平和な世界を失い、自身も腕を奪われたことで、失意に暮れながら最期を迎えたという点です。
彼は200年前の時点で自分がおかしくなっていることを自覚しており、もしもの時に備えて自分の人格を映したゴーレムを造っていました。
この「人格を映したゴーレム」こそが、後の物語に登場し、ルファスとの関係を再構築していくことになります。
自己の人格をゴーレムに移すという行為は、親友を裏切った罪悪感からくる一種の「自己否定」であり、彼の深い苦悩を物語っています。
ドゥーベとフェクダ:英雄としての影の薄さと最期
白熊の獣人であるドゥーベは、語尾に「ベアー」と付けて話すというユニークなキャラ付けをしていましたが、実は意識してそうしており、時々語尾を間違えるという愛嬌がありました。
性格は温厚ですが、背を向けて逃げる相手を本能的に追いかけてしまうという「やはり熊は熊」と言われる悪癖があったとされています。
小人族であるフェクダは、七英雄の中では最も影が薄かったと記述されており、彼の具体的なエピソードは少ないものの、ルファス討伐という大役を果たした英雄の一人であったことに違いはありません。
二人の最期は明確には語られていませんが、彼らもまたルファス不在の間に起きた魔神族との戦いや、呪いによって命を落としたと考えられます。
彼らが七英雄としてルファスを討ち、世界を救ったという事実は、後の世界の基盤を築いた大きな功績として称えられています。
七英雄とルファスのねじれた関係:愛憎と後悔の群像劇
七英雄とルファスの関係性は、単なる「英雄とラスボス」という対立構造では語りきれない、非常にねじれた愛憎に満ちています。
彼らの多くがルファスを討ったことを後悔し、自責の念に苛まれているという事実は、ルファスが彼らにとって単なる「敵」ではなかったことを示しています。
ルファスへの後悔:英雄たちの呪いの正体
ルファスを討った英雄たちにとって、「ルファス封印」は世界の平和をもたらしましたが、同時に彼ら自身の心に深い傷を残しました。
メグレズやメラクが長年苦しみ続ける自責の念は、ルファスが彼らにかけた「呪い」以上に、ルファスという存在を失ったこと、そして親友を裏切ったことに対する精神的な苦痛が原因であると分析されています。
特にメグレズが批判本を揃える行為は、自らを英雄として祭り上げる周囲への抵抗であり、ルファスを討った罪を忘れないための自罰的な行動だと考える読者が多いです。
ルファス自身も「七英雄マジ面倒臭い」と評するように、彼らの複雑すぎる感情は、ルファスの異世界での旅をさらにドラマティックで人間味のあるものにしています。
ルファスへの愛:アリオト、ミザール、そしてベネトナシュの特殊な感情
七英雄の中には、ルファスに対して特殊な感情を抱いていたメンバーがいます。
アリオトの秘めたる愛は、英雄の責務と個人の感情の間で引き裂かれた彼の悲劇性を高めています。
ミザールはルファスを親友と呼び、裏切ったことへの深い後悔から自己をゴーレムに投影しました。
そしてベネトナシュは、ルファスを「自らの手で殺す」ことを最大の目標とする、異常なまでのライバル視という形でルファスへの執着を示します。
ベネトナシュはルファス討伐を後悔せず、むしろルファスと戦い続けることを望んでおり、彼女の行動原理はルファスへの闘争心という形での「愛」に近いものだと言えるでしょう。
この多様な愛憎の形こそが、七英雄の物語を単なる「正義の味方」で終わらせない、深い群像劇へと昇華させています。
まとめ
『野生のラスボスが現れた!』の七英雄は、世界を救った「英雄」という称号の裏で、ルファスに対する後悔、自責、そして複雑な愛憎に苛まれ続けた、悲劇的な存在です。
メグレズの自己嫌悪、メラクのコンプレックス、そしてベネトナシュの異常なまでのライバル意識といった三者三様の苦悩が、200年後の物語の大きな軸となっています。
また、アリオトやミザールといった亡くなった英雄たちの壮絶な自己犠牲の結末も、ルファス不在の間に人類が背負った重荷を物語っています。
ルファスは、かつての敵である七英雄を「面倒臭い」と評しながらも、彼らの存在を通じて世界との関係を再構築していきます。
単なる「ラスボス」の物語ではなく、ルファスと七英雄が織りなす「英雄」と「裏切り者」のねじれた愛憎劇こそが、この作品が多くの読者を惹きつける最大の魅力です。
アニメ化によって、この複雑で人間味あふれる英雄たちの苦悩が、どのように映像化されるのか、その展開に期待せずにはいられません。




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