
「とんでもスキルで異世界放浪メシ」の物語を語る上で、ムコーダの従魔たちと同じくらい、いや、もしかしたらそれ以上に重要な存在となっているのが、「神様ズ」と呼ばれる異世界の神々です。
彼らは天上の世界、神界に住まう高位の存在でありながら、ムコーダの固有スキル「ネットスーパー」から届く地球の物資に完全に魅了され、その貢物と引き換えにムコーダや従魔たちに強力な加護を与えています。
本記事では、甘味に目がない風の女神ニンリルをはじめとする四柱の残念女神、ムコーダに協力的で酒好きの男神たち、そして神々を束ねる最上位の創造神デミウルゴスまで、この異例の「献上外交」を繰り広げる神様ズの個性、欲望、そしてムコーダの旅に与える影響を徹底的に考察していきます。
なぜ神々はこれほどまでに人間臭いのか、そして寿命を1500年にまで延ばすという規格外の加護の裏側には何があるのでしょうか。
概要:ネットスーパーに魅了された神々の現状
神界の宮殿と下界の物資にハマった神々
神様ズは、主に神界の宮殿に住む神々で構成されています。
神界には酒や食事も存在しますが、その水準は異世界の下界と同等であり、地球の物資、特に現代日本の食料品や美容製品に触れた途端、その美味しさや品質の虜になってしまいました。
ムコーダの「ネットスーパー」を重宝しすぎるあまり、彼らはムコーダとその従魔たちに次々と加護を与え、その見返りとして貢物(実質的にはお供え)を献上させています。
この「貢物をたかる神々」という構図が、物語にコミカルで親しみやすいスパイスを与えており、多くの読者が神々の人間臭い一面を楽しんでいます。
ムコーダは創造神デミウルゴスや地球の神以外の、付き合いの長い神々を時々まとめて「神様ズ」と呼び、その一部は「駄女神」呼ばわりするなど、神と人間という本来は厳かな関係が、この作品では非常にフランクなものになっているのが特徴です。
創造神デミウルゴス登場による前代未聞の事態
神々がムコーダに大した対価も与えず貢物をたかるばかりであった状況は、最上位の創造神デミウルゴスの登場によって一変しました。
デミウルゴスは怒り、貢物を没収して神々を謹慎処分に処しました。
しかし、神々の貢物への執着は尋常ではなく、彼らは謹慎中もムコーダに貢物を要求し続けるという前代未聞の現状になっています。
さらに、ムコーダが勇者召喚という地球と異世界両方を滅ぼす禁忌の術に巻き込まれた代償として、神々はその償いとしてムコーダの旅を強力にサポートしています。
パーティ全員への加護付与に加え、「完全防御スキル」や「経験値獲得倍化」といった規格外のスキルを授け、しまいには創造神の登場でムコーダの寿命を1500年に延ばすなど、その手厚い保護は常軌を逸していると言えるでしょう。
これは、神々がムコーダを「ネットスーパーの供給源」として非常に重宝していることの何よりの証拠であると考察されます。
女神たち:人間的な欲求を持つ四柱の「残念女神」
ムコーダの「献上外交」の主な相手である四柱の女神たちは、絶世の美女の見た目に反して、それぞれが非常に人間的な欲望を持つ「残念女神」として描かれています。
彼女たちはムコーダの質問には答えるものの、基本的には情報提供は行わず、貢物をもらったらさっさと帰ってしまうというドライな一面もあります。
風の女神ニンリル:甘味をたかる「駄女神」代表格
風の女神ニンリルは、ムコーダが最初に加護を得た神であり、「神様ズ」の駄女神代表格です。
神々の内では年長でありながら、堪え性がなく、火の女神や男神以上に早く貢物を消化してしまうという残念な一面を持っています。
彼女の貢物は、あんぱんやショートケーキといった甘味であり、最近は甘味のせいで太り気味であるという描写もあります。
若く絶世の美女の見た目に反して口調は年寄で、周囲から敬われていないというギャップが、彼女のコミカルな魅力となっています。
外伝「スイの大冒険」では、ムコーダやスイにあしらわれることで残念女神ぶりを発揮しており、眷属であるフェルでさえ、女神の残念さに気が付かないふりをするという気遣いを見せるほどです。
また、貢物に夢中になりすぎて本来の仕事をさぼり気味なのか、風の女神の教会がボロボロな状態であることも、彼女が駄女神と呼ばれる所以です。
地の女神キシャール:美容と流行に敏感なセクシー女神
地の女神キシャールは、ニンリルが貢物をたかっている場面を目撃し、他の女神たちにばらしたという要領の良い一面を持つ女神です。
土魔法に適性のあるムコーダに加護を与える代わりに、美容製品を貢物としてリクエストします。
豊満な肉体を持つセクシーな美女で、口が達者で、ややヒステリックな面もありますが、神々の中では水の女神の次にしっかりした女神であるとされています。
彼女は異世界の地上だけでなく、地球の様子を見て流行に関する情報を収集するなど、非常に計画的に貢物をリクエストしており、美容への探求心と流行への敏感さが伺えます。
地上では豊作・豊穣の神として祭られており、デミウルゴスの世界で最も多い信者を抱えていることも、彼女の安定性と人気を物語っています。
火の女神アグニ:酒と勝負を愛する露出度の高い活発な美女
火の女神アグニは、キシャールに教えてもらい、火魔法に適性のあるムコーダに加護を与える代わりにビールやつまみを貢物としました。
口調も砕けた活発な美女で、露出度が高い恰好をしており、赤髪褐色肌が特徴です。
好物が親父臭いというギャップを持ち、日常的に従者たちと槍の厳しい鍛錬に励むなど、非常に好戦的でストイックな一面も持っています。
男神たちと同様に、ムコーダのレベル上げやダンジョン踏破に協力的であり、酒を確保するためにムコーダの成長を促すというわかりやすい動機が、彼女の豪快な性格をよく表しています。
web500話を越えた辺りからビールの予備を確保するようになったというエピソードは、彼女の貢物への執着の深さを示しています。
水の女神ルサールカ:幼い外見に秘めた食への情熱としっかり者の一面
水の女神ルサールカは、大人しく幼い外見をしていますが、神たちの中で一番のしっかり者であると評されています。
ムコーダに水魔法の適性がないため、ムコーダの思いつきにより従魔のスイに水魔法の加護(大)を与えました。
彼女が加護を与えたのは120年ぶりであり、スイが水の加護の適性を持っていたことで、結果的に通常の加護(加護大)を与えることができました。
貢物はアイスや洋菓子の他、美味しそうな御飯であり、控えめな外見とは裏腹に食への好奇心を秘めています。
創造神デミウルゴスの謹慎処分中でも、時間停止効果のあるアイテムボックスを利用して計画的に貢物を楽しんでいたというエピソードは、彼女のしっかり者としての側面と食への情熱を示しています。
口数が少ないのは喋るのが面倒なだけで無口ではないという点も、彼女のユニークな個性となっています。
男神たち:女神よりムコーダに協力的な存在
男神たちは、女神たちと同様に貢物と引き換えにムコーダとその従魔たちに加護を与えますが、女神たちよりもムコーダに協力的な姿勢を見せます。
これは、女神たちが貢物をもらったらさっさと帰ってしまったりするため、男神たちが「もう少し協力的であるべきだ」と考えているのかもしれません。
戦神ヴァハグン:レベル上げを促す好戦的な酒好きの神
戦神ヴァハグンは、アグニの酒の匂いを嗅ぎつけ、酒を求めてフェルとドラちゃんに加護を与えた酒好きの神です。
長髪の精悍な男性で、好戦的な性格をしています。
彼はムコーダに「武に関することなら、俺の右に出るものはいない」と語り、「何か困ったことがあったら何でも言ってこい」と協力的な姿勢を見せています。
「異世界の酒は種類も豊富だし、美味いからな。これが飲めなくなったら、俺は下界で暴れるぜ」という危ない台詞から、他の神は下界に降りることはできませんが、戦神には神界から下界に降りる手段がある可能性が示唆されています。
鍛冶神ヘファイストスと組んで「獲得経験値倍化」や「神の聖刻印」を贈るなど、ムコーダのレベル上げやダンジョン踏破を積極的に促し、ムコーダのネットスーパーのランクアップをこっそり狙っているという動機も、彼らの人間臭い一面を強調しています。
彼の信者が集まる教会は、ムコーダ曰く「虎の穴」のような場所であり、好戦的な信仰形態が伺えます。
鍛冶神ヘファイストス:ムコーダに「完全防御」を授けた老神
鍛冶神ヘファイストスも、アグニの酒の匂いを嗅ぎつけ、酒を求めてスイに加護を与えた酒好きの神です。
小柄で筋肉質な老人の姿をしており、ドワーフの信者が多いため、信者に危害を加えるルバノフ教を嫌っているという義理堅い一面も持っています。
ヴァハグンと同様にムコーダに協力的であり、ドランダンジョンでのムコーダの即死対策として「完全防御」を授けました。
「儂らのためにも此奴(ムコーダ)に防御系スキルは必須じゃというのにのう」という彼の台詞からは、ムコーダに貢物を安定して献上してもらうための下心が透けて見えます。
彼もまたヴァハグンと組んで「獲得経験値倍化」などを贈っており、ムコーダのネットスーパーの「酒テナント」付与を狙うという利害の一致が、ムコーダへの手厚いサポートに繋がっています。
鍛冶神の教会は、エルマン王国ブリクストでは鍛冶屋そのものであり、熟練ドワーフが多く信仰していることが分かります。
最上位の神:創造神デミウルゴスの介入と役割
神様ズの中で最も重要な役割を果たしているのが、Web285話で登場した異世界の最上位に君臨する創造神デミウルゴスです。
彼の介入は、ムコーダの異世界生活の安定と安全に決定的な影響を与えました。
創造神デミウルゴスの登場と神々への謹慎処分
デミウルゴスは少なくとも4万3千年以上生きている老人の姿をした神です。
彼は、他の神々がムコーダに大した対価も与えず貢物をたかるばかりであったことを知り、怒りをもって貢物を没収し、謹慎処分を言い渡しました。
これにより、ムコーダは貢物をたかられる頻度が減り、精神的な負担が軽減されました。
しかし、神々の貢物への執着は強く、謹慎後もあの手この手でムコーダに貢物を要求し続けているのが現状です。
デミウルゴスの存在は、ムコーダにとって貢物をたかる神々を制御するための強力な後ろ盾となり、最重要の存在となっています。
ムコーダの寿命を延ばす強力な加護と後ろ盾としての存在
デミウルゴスは、ムコーダが勇者召喚という禁忌の術に巻き込まれ、地球に帰せないことへの代償として、ムコーダに加護(小)を与えました。
この加護(小)は、なんと人間の寿命を100年足らずから1500年にすることが可能な強力な加護であり、ハイエルフ並みの寿命をムコーダにもたらしました。
デミウルゴスは、ムコーダに色々な情報を提供してくれる上、貢物をたかる神々を制御するという点で、ムコーダの異世界生活において最も重要な存在となっています。
また、彼はムコーダの恋愛運を上げることはあえてしていないと明かしており、苦難を乗り越えた上での恋愛成就や、新たな出会いによる恋愛成就を娯楽として楽しんでいる雰囲気すらあります。
地球の神との関係と異世界発展を促す考察
デミウルゴスは、地球の神と仲が良く、日本の酒が大好きで定期的に酒(アグニらと違い梅酒などを好む)を提供してもらう代わりにムコーダに加護を与えています。
長く生きているため、「転移の魔道具」や「異世界恐竜」といった存在をうっかり忘れていたこともあるなど、その桁外れの年齢が伺えます。
鑑定の上位能力かどうかは不明ですが、「近未来を見る事が出来る能力」を持っているようで、ムコーダにルバノフ教との対立についてそれとなく話すなど、重要な示唆を与えることもあります。
デミウルゴスの元ネタから、地球の神と共にムコーダを異世界発展を促すために勇者召喚に紛れ込ませたという考察もされており、ムコーダの異世界での存在が、神々の大きな計画の一部である可能性も考えられます。
デミウルゴスは、万が一作った異世界下界の後始末が出来るように「抑制力と保険」を備えているとも発言しており、その絶大な力と思慮深さが伺えます。
眷族と教会:神々を支える存在と信仰の現状
神々は、眷族や教会を通して地上での活動や信仰を広めています。
しかし、神々の個性が強いため、その信仰形態にもユニークな特徴が見られます。
神々の地上眷族と神界所属の世話役
神々にはそれぞれ眷属がおり、神界や地上で活動しています。
例えば、風の女神ニンリルの眷属には、ムコーダ(加護小)やフェル(加護大)がおり、地の女神キシャールの神界眷族には、石鹸を与えられ口外厳守の約束を誓った下級神の娘がいます。
また、神界には2人組の世話役女性がおり、風の女神だけでなく水の女神にも声をかけていることから、神々全体の世話役である可能性が高いと見られています。
創造神デミウルゴスの眷属は、ムコーダからの貢物を嫌がる仕事へのやる気を出させるために有効活用しており、神々の貢物への執着が、神界の労働意欲にまで影響を与えているというユニークな現状があります。
創造神信仰の特殊性とマイナーな教会形態
創造神デミウルゴスは下界に関わることは滅多にないため、創造神の加護を授かった人たちも、組織的なトラブルを避けるために存在を隠していました。
そのため、創造神教会は存在せず、地方の言い伝え程度でしか伝わっておらず、四女神の方が知名度が高いという特殊な現状があります。
一方で、風の女神ニンリルの教会は、貢物に夢中になりすぎてボロボロな状態であり、神様ズの笑いの対象になっています。
地の女神キシャールの教会は、デミウルゴスの世界で最も多い信者を抱え、カイト一行の女性陣のあこがれの的となっているなど、女神によって信仰の現状に大きな差が見られます。
しかし、デミウルゴスはルバノフ教に対して制裁を加えるため、地上の王族と四女神の教会関係者に神託を行い、ムコーダ一行に攻撃命令を下すなど、裏では地上に影響力を及ぼしています。
薬神と地球の神:ムコーダ一行と関わりのない神々
ムコーダ一行とは今のところ関わりがない神々も存在します。
薬神は、500年以上自分の宮に引き篭もって研究している神で、世間では「研究三昧の変人集団」とされる薬神教徒たちですが、いくつかの有用なポーションの開発もしている優秀な集団です。
地球の神は、創造神デミウルゴスと知り合いであり、ムコーダの恋愛運の酷さや嫉妬深い性格に関して色々絡んでいる可能性が考察されています。
また、創造神と共にムコーダを勇者召喚に紛れ込ませたという考察もあり、ムコーダの異世界での運命に深く関わっている可能性もあります。
王都の神殿には、高位神官がおり、回復魔法で重い病気を治せるほどの力を持っていますが、ムコーダ一行は謁見問題を起こしたばかりのため、レオンハルト王国の神殿には関わらなかったというエピソードがあります。
余談:神々も手を焼くムコーダの従魔と子供たちの関係
神々がムコーダに手厚いサポートをする一方で、ムコーダの従魔たち、特にフェンリルや古竜ですら、子供や協会の孤児相手には手も足も出ないというユニークな状況がネタにされています。
某所では「孤児様」とたたえられたり、「悪魔」と恐れられたりするこの子供たちの存在が、街に魔物が侵入しない原因として冗談めかして語られるほどです。
しかし、スライムのスイは、子供の面倒を見たり、子供と遊ぶのが好きなので、フェルやゴン爺やドラちゃんほど子供に苦手意識をもたず、ストレスフリーで付き合っているという点が、スイの無垢な可愛らしさを強調しています。
この「最強の魔獣も子供には勝てない」というユーモラスな構図は、異世界放浪メシという作品の温かい雰囲気を象徴しています。
まとめ
「とんでもスキルで異世界放浪メシ」に登場する「神様ズ」は、地球の物資、特に現代日本のグルメに魅了され、ムコーダに貢物をたかるという人間臭い神々の集団です。
ニンリルの甘味への執着、アグニの酒好き、キシャールの美容探求心、ルサールカの食へのこだわりといった四女神の個性が、物語にコミカルな彩りを与えています。
一方、ヴァハグンやヘファイストスといった男神たちは、下心があるとはいえムコーダに強力なスキルやレベル上げの恩恵を授けるなど、比較的協力的な存在です。
創造神デミウルゴスの登場と謹慎処分は、神々の横暴を制御し、ムコーダに寿命1500年という規格外の加護を与えるなど、ムコーダの異世界生活の安定に決定的な役割を果たしています。
神々による「献上外交」と、それによってムコーダにもたらされる絶大な恩恵は、この作品のユニークな世界観を構築する核であり、今後の物語においても、神様ズの人間臭い要求と、それに応えるムコーダの「ネットスーパー外交」から目が離せません。
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