
畠中恵さんが描く大人気あやかし時代小説【しゃばけ】シリーズ。
2001年の第1作発表以来、四半世紀近くにわたり多くの読者を魅了し続けている超長寿シリーズです。
しかし、書店で平積みされているのを見て、「こんなにたくさんあると、どこから読めばいいの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
シリーズを昔読んでいたけれど、「どこまで読んだか忘れてしまった」という“復帰組”の読者もいるかもしれません。
ご安心ください!
この記事では、【しゃばけ】シリーズ全巻の刊行順リストはもちろんのこと、あなたのタイプに合わせた“本当に楽しめる”おすすめの読み方まで、どこよりも分かりやすく徹底解説いたします。
さらに、愛され続ける若だんな・一太郎と妖たちの魅力や、物語の核心に迫る第1作のあらすじと考察も深掘りします。
この記事を読み終える頃には、次に手に取るべき一冊がきっと見つかるはずです。
さあ、あなたも優しくてちょっぴり切ない江戸の世界へ旅立ちましょう。
- 【結論】しゃばけは刊行順に読むのがベスト!シリーズ全巻リスト早見表
- どこから読む?あなたのタイプ別・しゃばけの始め方ガイド
- しゃばけシリーズ全巻のあらすじを刊行順に紹介【ネタバレなし】
- もっと好きになる!しゃばけシリーズが愛され続ける3つの魅力
- 小説だけじゃない!広がり続ける「しゃばけ」の世界
- まとめ
【結論】しゃばけは刊行順に読むのがベスト!シリーズ全巻リスト早見表
早速ですが、結論からお伝えします。
【しゃばけ】シリーズを読む順番は、基本的には刊行された順番に沿って読むのが最もおすすめです。
なぜなら、主人公の一太郎(若だんな)の成長や、彼を取り巻く妖たちの関係性の変化、そして物語の根幹に関わる出生の秘密が、シリーズを通してゆっくりと、かつ着実に描かれているからです。
もちろん、短編集が多いこともあり、どの巻から読んでも楽しめます。
しかし、刊行順に追っていくことで、登場人物たちの細かな感情の機微や、シリーズ全体の世界観により深く没入できるのは間違いありません。
【しゃばけ】シリーズ 刊行順 全巻リスト(2025年最新版)
こちらが、シリーズ全巻の刊行順リスト(2025年時点)です。
※文庫版の発売日は除き、単行本の発売日を基準としています。
| 順番 | 書名 | 発売日(単行本) | 長編/短編集 |
| 1 | しゃばけ | 2001/12/21 | 長編 |
| 2 | ぬしさまへ | 2003/05/30 | 短編集 |
| 3 | ねこのばば | 2004/07/30 | 短編集 |
| 4 | おまけのこ | 2005/08/31 | 短編集 |
| 5 | うそうそ | 2006/05/31 | 長編 |
| 6 | ちんぷんかん | 2007/06/30 | 短編集 |
| – | みぃつけた | 2007/11/30 | 番外編 |
| 7 | いっちばん | 2008/07/31 | 短編集 |
| 8 | ころころろ | 2009/07/31 | 短編集 |
| 9 | ゆんでめて | 2010/07/30 | 短編集 |
| 10 | こいしくて | 2011/07/29 | 長編 |
| 11 | やなりいなり | 2012/06/30 | 短編集 |
| 12 | ひなこまち | 2013/07/31 | 短編集 |
| 13 | たぶんねこ | 2014/07/31 | 短編集 |
| 14 | すえずえ | 2015/07/31 | 短編集 |
| 15 | なりたい | 2016/07/30 | 短編集 |
| 16 | おおあたり | 2017/07/31 | 短編集 |
| 17 | とるとだす | 2018/07/31 | 長編 |
| 18 | むすびつき | 2019/07/31 | 短編集 |
| 19 | てんげんつう | 2020/07/17 | 短編集 |
| 20 | いちねんかん | 2021/07/19 | 短編集 |
| 21 | もういちど | 2022/07/20 | 短編集 |
| 22 | こんぴらさん | 2023/07/20 | 短編集 |
| 23 | またあおう | 2024/07/19 | 短編集 |
| 24 | あやかしたち | 2025/09/18 | 短編集 |
※2025年9月18日に最新刊『あやかしたち』が発売され、現在シリーズは第24弾まで刊行されています。
番外編『みぃつけた』について
『みぃつけた』は、シリーズ初のイラスト入り作品集です。
短編やキャラクター紹介などが収録されており、リスト上は6作目『ちんぷんかん』と7作目『いっちばん』の間で読むと、より楽しめると言われています。
どこから読む?あなたのタイプ別・しゃばけの始め方ガイド
「刊行順がいいのはわかったけど、もっと気軽に始めたい!」という読者の方も多いでしょう。
ご安心ください。
ここでは、あなたの読書スタイルやシリーズへの親しみやすさに応じて、本当に楽しく読み始められるおすすめの読み方をご提案します。
【初心者さんへ】まずは王道の1作目『しゃばけ』から
やはり、何から読めばいいか迷ったら、シリーズ第1作『しゃばけ』から手にとるのが王道です!
物語の舞台である江戸の日本橋・長崎屋の設定。
主人公一太郎と、彼の犬神・佐助、白沢・仁吉という強力な妖コンビとの出会いと、彼らの関係性が丁寧に描かれています。
ここから読み始めることで、何の予備知識もなく、純粋に【しゃばけ】の世界へ足を踏み入れることができるでしょう。
一太郎がなぜ妖に愛され、守られているのかという根源的な疑問も、この1作目で提示されます。
【気軽に試したい人へ】珠玉の短編集『ぬしさまへ』から入るのもアリ
「いきなり長編はちょっと…」「まずは世界観をサクッと知りたい」という方は、シリーズ初の短編集である2作目『ぬしさまへ』から読んでみるのもおすすめです。
短編集は、1話完結の物語が複数収録されており、通勤・通学中やちょっとした休憩時間にもサクサク読めるのが魅力です。
この『ぬしさまへ』では、主要キャラクターたちの日常や、若だんなを慕う鳴家や屏風のぞきなどの個性豊かな妖たちが登場し、優しく切ない【しゃばけ】の雰囲気を手軽に味わうことができますよ。
物語の根幹に触れる部分が少ないため、ライトな読者にもぴったりの一冊です。
【復帰組さんへ】あらすじを読んで記憶を呼び覚まそう
「昔読んでいたけど、どこまで読んだか忘れちゃった…」という、シリーズ経験者の方は、この後の「しゃばけシリーズ全巻のあらすじ」をチェックしてみてください。
短編集が多く、タイトルだけでは内容を思い出しにくいのが【しゃばけ】シリーズの特徴でもあります。
あらすじを眺めているうちに、「あ、この話は読んだ!」「次はこれだ!」と、記憶が呼び覚まされるはずです。
特に、長編である1作目『しゃばけ』、5作目『うそうそ』、10作目『こいしくて』、17作目『とるとだす』は、物語の大きな転換期となっていますので、長編のあらすじを中心に見ていくと良いでしょう。
しゃばけシリーズ全巻のあらすじを刊行順に紹介【ネタバレなし】
ここからは、第1作の具体的なあらすじを中心に、各巻のエッセンスをネタバレなしでご紹介します。
第1作目の内容は、後のシリーズすべてに繋がる重要な情報を含んでいるため、特に詳しく掘り下げていきます。
1. しゃばけ (2001年)【長編】
記念すべきシリーズ第1作にして、第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作品です。
「しゃばけ」とは「娑婆気」のことで、俗世間におけるさまざまな欲望にとらわれる心を意味します。
まさに、この世の欲が渦巻く江戸の町で、物語は幕を開けます。
舞台と登場人物:長崎屋と忠義の妖たち
物語の主人公は、江戸有数の廻船問屋兼薬種問屋・長崎屋の跡取り息子、一太郎。
数え年17歳(現代でいう15歳ほど)の若さながら、めっぽう体が弱いという持病を抱えています。
その代わりに、彼は不思議と妖(あやかし)の姿が見えるという特異な能力を持っています。
一太郎を誰よりも溺愛し、過保護なまでに守り抜くのが、長崎屋の手代である佐助と仁吉の二人。
佐助は犬神、仁吉は白沢という、人の姿をした高位の妖です。
佐助は、西日本に広く分布する犬霊の憑き物であり、この物語の舞台となる江戸には珍しい妖という設定です。本シリーズでは「力」を象徴しています。
仁吉は、人語を解し、万物に通暁している中国の伝説の神獣、白沢です。徳の高い治世者の世に現れるとされ、本シリーズでは「知」を象徴する高位の妖として描かれています。
一太郎は、彼ら二人をはじめ、屏風のぞきや鳴家、鈴彦姫といった多くの妖たちに囲まれ、賑やかに暮らしています。
彼らが一太郎の側にいるのは、一太郎の祖父が5歳の頃の大病の際に、お稲荷さまに願掛けをして遣わしてもらったためだと、当初一太郎は聞かされています。
一太郎は好奇心旺盛で、身体の弱さをものともせず、夜の外出や事件の詮索を好む、心優しい若だんなです。
一太郎(若だんな)のプロフィール
| 本名 | 一太郎 |
| 年齢 | 数え年17歳(物語開始時) |
| 職業 | 廻船問屋兼薬種問屋「長崎屋」の跡取り |
| 特徴 | 生まれつき体が弱い(虚弱体質) |
| 能力 | 妖の姿が見える |
| 性格 | 好奇心旺盛、心優しい、時に悪知恵が働く |
第1作のあらすじ:連続殺人と秘薬の謎
夜の外出を屏風のぞきに身代わりを頼み、こっそり家を抜け出した一太郎。
幼馴染みの栄吉(和菓子屋「三春屋」の倅)と密談し、帰りが遅くなった道中、お稲荷様に仕える鈴彦姫と出会います。
その時、二人は血の臭いを嗅ぎつけ、「香りがする…寄越せ」とつぶやく何者かに襲われ、ふらり火の助けを借りてなんとか逃げ切ります。
その後、月明かりの下で見つけたのは、殺害された大工の徳兵衛の遺体でした。
この事件を追うのは、岡っ引きの日限の親分・清七。
清七から聞かされた話では、徳兵衛の首は切り落とされていたというが、一太郎が見た遺体とは状況が異なり、この時点で事件の不可思議さが示唆されます。
事件の背後には、「人を生き返らせる秘薬」を探す怪しい男たちの影がちらつきます。
長崎屋にも秘薬「木乃伊」を求めてぼてふり・長五郎が訪れますが、彼は木乃伊を見て「違う!」とわめきだし、仁吉を吹き飛ばすという超常的な力を見せつけます。仁吉が気を失うほどの力は、彼らが人間ではないことを知る者たちを動揺させました。
次々と薬種問屋が狙われる中、一太郎は、捕まった下手人が異様に薬の話ばかりするなど、妙な行いが目立つことから、この一連の事件の裏には人ならぬ妖が関わっていると推理します。
事件の鍵を握るのは、殺された大工・徳兵衛が失くした墨壺と、一太郎の幼くして亡くなった兄・松之助の存在。
幼馴染みの栄吉は、一太郎の頼みで兄・松之助について調べごとをしていたことで刺されてしまいます。
そして物語のクライマックス、見越の入道という佐助や仁吉よりも上位に位置する妖が登場し、一太郎の祖母である皮衣(ぎん)の頼みでやってきたことが明かされます。
皮衣は齢三千年の大妖であり、一太郎に妖たちが付いていることや、妖の存在をすぐに分かるのは、その血を受け継いでいるからのようです。
見越の入道は、一太郎の出生の秘密と、今回の薬種問屋殺しの事件との驚くべき関連性を話し、今後の一太郎の行方を左右する大事な用件を伝えました。
一太郎は、事件の真相と自身の運命を知り、大きな決断を迫られることになるのです。
第1作の考察と魅力:惜しさの残る結末の真意
第1作『しゃばけ』は、単なるミステリーとしてだけでなく、ファンタジーノベルとして非常に高く評価されています。
しかし、一部の読者からは「最後に物足りなさの残る」という感想も聞かれます。
これは、一太郎の出生の秘密という壮大なテーマが提示されたにもかかわらず、その全てが解決したわけではないという点に起因していると考える読者が多いようです。
しかし、この「物足りなさ」こそが、作者・畠中恵さんの巧みな構成であり、シリーズを続けるための推進力となった、という見方もできます。
第1作のラストで明かされる「皮衣(ぎん)が一太郎の祖母であり、齢三千年の大妖である」という事実。
そして、一太郎の母・おたえも一太郎と同じく妖の存在を認識しているという血筋の秘密は、「若だんなはなぜ妖に愛され、守られているのか」というシリーズ最大のテーマへの答えとなります。
「しゃばけ」というタイトルが示す通り、俗世の欲(秘薬)が引き起こした悲しい事件を通じて、人と妖の「絆」と「優しさ」が、どれほど貴重なものなのかを描き出した、傑作の幕開けと言えるでしょう。
2. ぬしさまへ (2003年)【短編集】
シリーズ初の短編集です。
長編で明らかになった一太郎を取り巻く環境と、妖たちの愛すべきキャラクター性に焦点が当たります。
菓子を届けたり、恋の相談に乗ったりと、若だんなと妖たちの切なくて心温まる日常を描いた6つの物語が収録されています。
この短編集から入ることで、仁吉と佐助の過保護っぷりや、屏風のぞきのツンデレな兄貴分としての魅力など、キャラクターたちの個性がより一層深く理解できるようになります。
シリーズの優しい雰囲気を知るには最適な一冊です。
3. ねこのばば (2004年)【短編集】
3作目も短編集です。
人の言葉を話す不思議な猫の捜索を頼まれた一太郎が、江戸の町で起こる小さな事件の数々を解決していきます。
本作でも、一太郎の優しさあふれる行動と、それを支える妖たちの献身的な姿が描かれます。
短編形式のため、各話で異なる妖が登場し、江戸の暮らしを背景にした人情話としても楽しむことができます。
4. おまけのこ (2005年)【短編集】
日常の謎や、ちょっとした事件、そして長崎屋に訪れる新たな妖の物語などが詰まった短編集です。
特に、一太郎の優しさが、人の心や妖の運命を大きく変える様が描かれ、シリーズが持つ「優しさと絆」のテーマがより深く掘り下げられています。
この頃から、一太郎を取り巻く人間関係も豊かになり、幼馴染みの栄吉との友情もより強固なものになっていきます。
5. うそうそ (2006年)【長編】
シリーズ2作目となる長編です。
この巻では、一太郎が関わる「嘘」が大きなテーマとなります。
長編ならではのスケール感で、一太郎の出生の秘密に触れるような、より根源的な物語が展開されます。
長崎屋の外の世界にも物語が広がり、人々の欲望や妖たちの悲しい過去が複雑に絡み合い、読者を驚かせる展開が待ち受けています。
シリーズ中盤の大きな転換点の一つとして、刊行順に読む読者にとっては必読の一冊です。
6. ちんぷんかん (2007年)【短編集】
長編『うそうそ』の後の、日常に焦点を戻した短編集です。
大きな事件が一段落した後の、若だんなと妖たちの変わらぬ温かい日々が描かれています。
彼らが織りなす「ちんぷんかん」なやり取りは、読者に安らぎを与えてくれます。
この巻を読むことで、長編で張り詰めた読者の緊張が解きほぐされ、改めてキャラクターたちの魅力を再認識できるでしょう。
番外編. みぃつけた (2007年)【番外編】
シリーズ初のイラスト入り作品集です。
小説本編では描ききれない、掌編やキャラクターの紹介、挿絵などが収録されており、長崎屋の面々の裏話や設定をより深く知ることができます。
本編の合間に挟むことで、より一層、シリーズへの愛着が増すこと間違いなしです。
7. いっちばん (2008年)【短編集】
個性的な妖たちが、また新たな日常の事件や騒動を巻き起こします。
一太郎の推理力と優しさが光る物語が多く、一太郎が少しずつ若者として成長していく姿が描かれ始めます。
長崎屋の日常が、より活気に満ちたものになっていることが感じられる一冊です。
8. ころころろ (2009年)【短編集】
タイトルが示すように、「転がる」ような小さな事件や、人々の心の機微がテーマとなる短編集です。
一太郎が、大店である長崎屋の跡取りとして、世間の厳しさや人間の業に触れる描写が増え、物語に深みが増しています。
妖たちが一太郎を支える「絆」が、より強く感じられるようになります。
9. ゆんでめて (2010年)【短編集】
「ゆんでめて」とは、「弓で射る」という意味と、「結んで開いて」という和歌の枕詞から来ています。
縁(えん)や運命をテーマにした、切なくも温かい物語が収録されています。
一太郎と、佐助・仁吉の関係性にも、新たな段階が訪れることが示唆され、長編への期待が高まる一冊です。
10. こいしくて (2011年)【長編】
シリーズ3作目となる長編です。
「恋」や「慕情」、そして「喪失」が大きなテーマとなります。
一太郎の周辺だけでなく、佐助や仁吉といった妖たちの過去や秘められた思いにもスポットが当たり、彼らの存在がより立体的に描かれます。
物語の深さと切なさが増し、読者の涙腺を緩ませるような、感動的な展開が待っています。
17. とるとだす (2018年)【長編】
シリーズ4作目にして、約7年ぶりとなる長編です。
この巻では、一太郎が長崎屋の若だんなとして、そして妖の血を引く存在として、「何を選び、何を捨てるのか」という、究極の選択を迫られます。
「取る」ことと「出す」こと、すなわち得るものと失うものの対比を通じて、物語は過去と現在、そして未来へと繋がっていきます。
一太郎の成長が明確に示され、シリーズ全体を貫く「使命」のようなものが感じられる、重要な一冊です。
24. あやかしたち (2025年)【短編集】
2025年9月発売の最新刊(24巻)です。
長寿シリーズとなった今も、若だんなと妖たちが織りなす変わらぬ日常と、そこに潜む優しくも切ない事件が描かれています。
長年の読者にとっては、「帰るべき場所」のような安心感があり、最新の長崎屋の空気感を味わうことができます。
もっと好きになる!しゃばけシリーズが愛され続ける3つの魅力
【しゃばけ】シリーズは、なぜ20年以上にわたり、多くの読者に支持され、愛され続けているのでしょうか。
それは、単なる「時代劇ミステリー」や「あやかしファンタジー」というジャンルに収まらない、物語の根源的な魅力があるからです。
その魅力を3つのポイントで深掘りします。
病弱だけど心優しい若だんなと、個性豊かな妖(あやかし)たち
このシリーズ最大の魅力は、なんといっても登場人物たちの織りなす関係性にあります。
主人公の一太郎は、すぐに熱を出し寝込んでしまうほどの虚弱体質。にもかかわらず、好奇心が強く、誰よりも心が優しいため、人間も妖も分け隔てなく接します。
そんな一太郎を過保護なまでに見守るのが、最強コンビの佐助(犬神)と仁吉(白沢)です。
佐助は「力」を象徴する怪力の持ち主で、その態度の豪胆さが魅力。
一方の仁吉は「知」を象徴する頭脳明晰なイケメンで、長崎屋の薬種問屋を切り盛りする片腕です。
彼ら二人の「若だんな命!」という一貫した忠誠心と、一太郎に対する過剰なまでの心配っぷりは、読んでいて本当に微笑ましく、読者の心を掴んで離しません。
ある読者からは、「佐助と仁吉の『兄や』ぶりは、まるで理想の親代わりを見ているようだ」という声もあるほど、彼らの存在は物語に欠かせません。
事件の謎解きだけじゃない!江戸の四季と暮らしの描写
【しゃばけ】シリーズには、殺人事件や盗難事件などのミステリー要素が含まれていますが、その魅力は謎解きだけではありません。
物語の舞台は、活気あふれる江戸の町。
作者の畠中恵さんは、季節の移ろいや、当時の人々が食べていたお菓子、着物、お祭りなど、江戸の暮らしを生き生きと、かつ丁寧に描き出しています。
特に、和菓子屋「三春屋」の倅である栄吉の登場によって、きんつばやねりきりといった和菓子の描写が頻繁に登場し、読者の食欲をそそります。
また、病弱な一太郎が薬種問屋の息子であることから、薬種や漢方に関する知識も随所に散りばめられており、単なるファンタジー小説に専門性の高さを加えています。
これらのディテールが、読者を「江戸の世界にタイムスリップしたような気分」にさせ、物語の奥行きを深くしているのです。
事件の解決を通して描かれるのは、「弱さ」や「欲」といった人間の”しゃばけ”な部分であり、江戸の日常というリアルな土台があるからこそ、妖たちの存在がより際立つのです。
心にじんわり沁みる、優しさと絆の物語
【しゃばけ】シリーズの物語の芯にあるテーマは、「優しさ」と「絆」です。
人ではない妖たちと、病弱な若だんな。
異なる存在、あるいは「命の長さ」が根本的に違う者同士だからこそ生まれる切なさや哀愁が、このシリーズには満ちています。
一太郎は、佐助と仁吉を「兄や」と慕い、妖たちを分け隔てなく大切にします。
そして、佐助と仁吉は、彼らの「主」である一太郎を、病から守り、俗世の事件から遠ざけようと必死になりますが、結局は一太郎の好奇心に振り回されてしまいます。
この主従を超えた「家族」のような関係性が、読むたびに読者の胸を打ちます。
特に、一太郎の虚弱体質という設定は、「失われるかもしれない命」を常に意識させ、妖たちの「永遠」との対比を生み出しています。
この対比があるからこそ、彼らが心を通わせる様子や、小さな事件の裏に隠された人間模様が、心にじんわりと沁みるのです。
読者の間では、「読み終えた後、心が洗われたような気分になる」という感想が多く、この「温かさ」こそが、長きにわたりシリーズが支持される最大の要因でしょう。
小説だけじゃない!広がり続ける「しゃばけ」の世界
【しゃばけ】は、小説だけにとどまらず、さまざまなメディアでその世界を広げています。
小説を読んで魅了された方は、ぜひ他のメディアミックス作品にも触れてみてください。
テレビドラマ・舞台
【しゃばけ】シリーズは、これまで何度もテレビドラマ化、そして舞台化されています。
豪華な俳優陣が、若だんなや妖たちをどのように演じているのかを見るのは、小説のイメージとはまた違った楽しさがあります。
特に、佐助や仁吉といった、人の姿をしているが高位の妖という難しい役どころが、どのように映像や舞台上で表現されているのかに注目が集まることが多いです。
漫画(コミカライズ)
原作小説は、みもりさんの手によってコミカライズもされています。
漫画版は、全4巻で完結しており、原作小説の第1作『しゃばけ』の物語が中心に描かれています。
小説とはまた違った表現で、キャラクターたちの豊かな表情や、江戸の町の活気が描かれており、若だんなの可愛らしさや、佐助と仁吉のイケメンぶりが際立っています。
「活字が苦手」「まずは雰囲気を掴みたい」という方は、漫画版から入ってみるのもおすすめです。
グッズやイベント情報
シリーズ20周年を記念したイベントが開催されるなど、ファン向けの展開も豊富です。
特設サイトや新潮社の公式サイトなどで、最新情報をチェックしてみると、限定グッズや原画展といった情報が見つかるかもしれません。
まとめ
今回は、【しゃばけ】シリーズの読む順番について、最新の刊行順リストやタイプ別のおすすめな読み方をご紹介しました。
このシリーズは、単なる「あやかしミステリー」ではなく、人と妖の絆を描いた、心温まる「家族の物語」です。
どの巻から読んでも、きっとその優しく温かい世界に魅了されるはずです。
ぜひ、あなたに合った一冊を手に取って、若だんなと妖たちが待つ江戸の町へ訪れてみてくださいね。



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