
「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」は、ガンダムシリーズの中でも、主人公たちが「血の繋がらない家族」として過酷な運命に立ち向かう、群像劇として高い評価を得ている作品です。
中でも、鉄華団のリーダー、オルガ・イツカを冷静に支え続けた参謀役の少年兵、ビスケット・グリフォンは、多くの読者にとって「鉄華団の良心」とも言える存在でした。
体格が良く穏やかな性格でありながら、その内側には家族への強い愛情と、オルガへの深い信頼を秘めていたビスケット。
彼の死は、鉄華団がその純粋さを失い、「帰れない道」へと進むことを決定づける、物語最大の悲劇の一つとして、今なお語り継がれています。
本記事では、ビスケット・グリフォンのプロフィールから、彼が抱えていた家族への想い、そしてなぜ彼はオルガを庇って死を選んだのか、その壮絶な最期の瞬間と、彼の死が作品全体に与えた影響を深く掘り下げて考察していきます。
ビスケット・グリフォンは参番組所属の少年兵
ビスケット・グリフォンは、鉄華団の前身である民間警備会社・CGS(クリュセ・ガード・セキュリティ)の非正規部隊、参番組に所属していました。
少年兵の中で唯一、就学経験があるという異色の経歴を持ち、その知性は彼を鉄華団の頭脳へと押し上げます。
ビスケット・グリフォンのプロフィール
| 氏名 | ビスケット・グリフォン |
| 年齢 | 16歳 |
| 所属 | CGS参番組 → 鉄華団 |
| 役職 | 参謀役、作戦立案担当 |
| 特徴 | 恰幅が良い、常に帽子を被っている、穏やかで優しい性格 |
| 搭乗機 | モビルワーカー(終盤) |
ビスケット・グリフォンは、その温厚で優しい性格から、隊長であるオルガを冷静に支える参謀役として、絶大な信頼を寄せられていました。
作戦の立案や外部との交渉といった、頭脳労働を一手に引き受け、鉄華団が戦いだけでなく、組織として成立していく上で、必要不可欠な存在でした。
オルガが感情的に突っ走りがちな部分を、ビスケットの冷静な分析と、時として厳しい意見が補っていました。
彼の存在は、鉄華団が血気盛んな少年たちの集団でありながらも、計算された戦略に基づいて行動できる、「知的」な側面を担っていたと言えるでしょう。
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズの作品情報
ビスケット・グリフォンが登場する「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」の基本情報を改めて確認しておきましょう。
「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」は、数あるガンダムシリーズの中でも、宇宙世紀とは別の世界観を舞台にした作品です。
原作は矢立肇・富野由悠季、ジャンルはロボット群像劇アニメとして、2015年10月〜2017年4月にかけて全2期が放送されました。
本作は、ガンダムの予備知識がなくても楽しめることをテーマの一つにしており、特に少年兵たちの過酷な生き様と絆を深く描いた点が、従来のファン層を超えた支持を集めました。
月刊アニメージュ主催の第39回アニメグランプリの作品部門で1位を受賞するなど、「鉄オル」の愛称で親しまれる人気作品です。
機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズの概要
「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」は、長年愛され続けている「機動戦士ガンダムシリーズ」の中でも、「新世紀のガンダム」をテーマに制作されました。
既存のガンプラファンに加え、若い世代やアジア各国に向けて新たなファン層の拡大を狙った作品で、そのテーマは、作中の少年兵たちの「自分たちの居場所」を求める生き様と深くリンクしています。
彼らが理不尽な世界に立ち向かう、熱くも切ない群像劇が、高い録画率やグッズの売れ行きにも繋がり、人気を博しました。
機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズのあらすじ
物語の舞台は、「厄祭戦」という大きな戦争が終結した300年後の世界です。
「ガンダム・フレーム」と呼ばれるモビルスーツの技術と、「阿頼耶識システム」という人体改造技術が存在する世界で、地球の統治下にある火星圏が舞台となります。
自分たちの私欲のために子供を虐げてきた大人たちと、それに反逆するために立ち向かおうとする少年たちが、ガンダム・バルバトスという旧時代の遺産を用いて戦っていく姿を描いています。
この物語は、オルガ率いる少年たちが、自分たちの力で「本当の居場所」、すなわち「家族」を築こうとする旅路であり、その過酷さが多くの視聴者の心を打ちました。
ビスケットの過去:家族を支えた少年兵
ビスケット・グリフォンは、その穏やかな外見からは想像もつかないほど過酷な過去を背負っていました。
彼は、ドルトカンパニーの労働者が居住するドルト2という労働者階級の出身です。
不慮の事故で両親を亡くした後、幼い双子の妹たちと共に、火星のクリュセ独立自治区にある祖母のとうもろこし農場に身を寄せました。
しかし、祖母の農場経営は、バイオ燃料の原料としてとうもろこしが安く買い叩かれるという、大人たちの都合による理不尽な経済構造に苦しめられていました。
優しい性格のビスケットは、家族の財政難を救うため、そして愛する妹たちと祖母を支えるため、危険なCGSの少年兵となったのです。
彼の鉄華団での献身的な活動の根底には、常に「家族を守る」という強い決意がありました。これは、オルガや三日月・オーガスたちが「血の繋がらない家族」を求める一方で、ビスケットは「血の繋がった家族」を最優先していたという、彼独自の「還るべき場所」へのこだわりを示す重要な要素です。
ビスケット・グリフォンの最後は死亡する?
優しさと知性を兼ね備えたビスケット・グリフォンですが、物語の序盤で、その命を散らすことになります。
彼の死は、鉄華団のメンバー、特にオルガに計り知れない衝撃を与えました。
ビスケットの死亡シーンは何話?
ビスケット・グリフォンが死亡したのは、機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズの第1期・第21話「還るべき場所へ」です。
この第21話は、彼が命を賭して守ろうとした「還るべき場所」という言葉がタイトルに使われていることから、視聴者の間でも「ビスケットの日」として記憶され、非常に象徴的なエピソードとなっています。
ビスケットの死亡の経緯:鉄華団の分裂と襲撃
ビスケット・グリフォンが最後に死亡してしまった経緯は、鉄華団の進むべき道についてのオルガとの意見の対立が背景にあります。
ネタバレ① カルタに襲撃される
この時、鉄華団は、マクギリス・ファリドとの共同戦線を巡り、オルガとビスケットの間で意見が対立していました。
ビスケットは、コロニーでの騒乱を経て、大人たちの権力争いに深く関わることの危険性を察知し、オルガに鉄華団の撤退を進言します。
しかし、オルガは「より大きな力」を求め、マクギリスとの提携を進める決意を固めていました。意見が対立し、不穏な空気が流れる中、鉄華団は、ギャラルホルンのカルタ・イシュー率いる地球外縁軌道統制統合艦隊に投降を命令されます。
投降を拒否し、島から脱出しようと考えた鉄華団メンバーでしたが、簡単に脱出はできず、武力組織のギャラルホルンと対峙することになります。
ビスケットは、オルガの考えに賛成できないと思いながらも、オルガのモビルワーカーを操縦して戦いに参戦します。
そして、カルタ・イシューに見つかり、カルタに襲撃されることが、彼の死の直接的な原因となります。
カルタ・イシューのプロフィール
ビスケット・グリフォンを襲撃したカルタ・イシューは、武力組織・ギャラルホルンの地球外縁軌道統制統合艦隊司令官の一人であり、セブンスターズの一席であるイシュー家の一人娘です。
独特なヘアスタイルと眉毛、赤のラインが特徴的な奇抜な外見で、感情の起伏が激しく、とても負けず嫌いでプライドが高い性格の持ち主です。
一方で、自身の部下が危機に陥るとすぐに助けようとするなど、面倒見が良く、部下からはとても慕われているという、ギャラルホルンの中では数少ない情の厚さを持ったキャラクターでもありました。
しかし、そのプライドの高さが、彼女を鉄華団との戦いへと駆り立ててしまったとも言えます。
ネタバレ② オルガを庇う
ビスケット・グリフォンの最後・死亡の経緯の2つ目が、「オルガを庇う」という自己犠牲の行動です。
ビスケットのモビルワーカーを襲撃しようと狙うカルタに気付いたビスケットは、このままではオルガが乗るモビルワーカーごと死亡してしまうと悟ります。
意見が対立していたとはいえ、ビスケットにとってオルガは家族同然の大切な仲間であり、鉄華団を率いる唯一無二のリーダーでした。
鉄華団のために、オルガまで死亡させるわけにはいかないと思ったビスケットは、最後にオルガをモビルワーカーから振り落とし、オルガを庇います。
オルガを振り落としたビスケットは、カルタの攻撃を受けてしまい、自身が操縦していたモビルワーカーの下敷きになってしまい、そのまま死亡してしまいます。
死の直前、ビスケットは故郷の農場や、愛する双子の妹たち、そして祖母のことを思い出し、「還るべき場所」への強い未練と、オルガを守り切ったという優しさに満ちた表情で息を引き取りました。
このビスケットの死は、オルガに「お前を庇って死んだ」という重い十字架を背負わせ、その後の彼の無謀な行動を加速させる要因となりました。
ビスケット・グリフォンの兄と妹:グリフォン家の悲劇
ビスケット・グリフォンの背景には、彼が命を賭して守ろうとした愛する家族、そしてその家族にも関わる深い悲劇が存在します。
サヴァラン・カヌーレ
ビスケット・グリフォンの兄・サヴァラン・カヌーレは、ドルトカンパニーという公営企業に勤務している頭の良い男性です。
ビスケットと同じく貧困街の出身ですが、学生の頃にとても優秀な成績を収めていました。
そのため、両親を亡くした後、サヴァランはビスケットたちと共に祖母の元に行くのではなく、工場経営者の養子になり、ビスケットたちとは離れ離れになっていました。
経営者の養子になったことで、サヴァランは労働者との板挟みを受けるなど、上流階級に入ったことで苦労もしていたキャラクターです。
そして、経営陣と労働者との間で起きたドルトコロニーでの騒乱で、サヴァランは大切な人たちを亡くしてしまいます。
この出来事が原因で、サヴァランは深い喪失感や罪悪感、無力感から、自殺という悲しい最期を迎えてしまいました。
ビスケットが鉄華団でオルガを諌めようとした背景には、兄サヴァランが大人たちの権力争いに巻き込まれて命を落としたという、家族の悲劇が強く影響していたと考察されます。
クッキー・グリフォンとクラッカ・グリフォン
クッキー・グリフォンとクラッカ・グリフォンは、ビスケット・グリフォンの双子の妹たちです。
性格は対照的ですが、髪型を除いた容姿はそっくりな可愛らしい双子の姉妹です。
二人とも兄のビスケット・グリフォンのことが大好きで、クッキーは「おにいちゃん」、クラッカは「おにい」と呼び、兄に甘えている姿が描かれました。
クッキー・グリフォンの特徴
クッキー・グリフォンは、セミロングの髪をみつあみのおさげスタイルにした少女です。
おっとりとした性格の持ち主で、料理が得意な、グリフォン家の優しい側面を体現したキャラクターです。
クラッカ・グリフォンの特徴
クラッカ・グリフォンは、セミロングの髪を後ろで結ったヘアスタイルのキャラクターです。
もう一人の妹クッキーよりも気が強く負けず嫌いで、活発な印象の少女です。
彼女たちは、兄ビスケットが鉄華団として戦う「還るべき場所」であり、ビスケットが最後まで守りたかった「日常」の象徴でした。
ビスケットの死後も、彼女たちは祖母と共に生き残り、その存在は鉄華団の生き残り組が目指す「未来」の象徴となりました。
ビスケット・グリフォンのアニメ声優
ビスケット・グリフォンの穏やかで優しい声は、人気声優の花江夏樹が担当しています。
彼の演技は、ビスケットの知性と優しさ、そして死の直前に見せた家族への愛という、複雑な感情を見事に表現しました。
花江夏樹のプロフィール
| 氏名 | 花江夏樹(はなえなつき) |
| 生年月日 | 1991年6月26日 |
| 出身地 | 神奈川県 |
| 所属 | アクロスエンタテインメント |
| 受賞歴 | 第9回声優アワード新人男優賞(2014年)、第14回声優アワード主演男優賞(2019年) |
| 愛称 | なっちゃん |
花江夏樹は、2011年に声優デビューを果たし、2012年に「TARITARI」でTVアニメ初レギュラーを獲得しています。
その後も多くの人気作品に出演し、新人男優賞、主演男優賞を受賞するなど、その演技力は高く評価されています。
ビスケット役では、その優しく落ち着いたトーンが、キャラクターの知的な参謀役という役割に深みを与えています。
花江夏樹の主な出演作品や演じたキャラ
ビスケット・グリフォン以外にも、花江夏樹は数多くの人気キャラクターを演じています。
鬼滅の刃:竈門炭治郎
吾峠呼世晴の人気ダークファンタジー漫画を原作にしたアニメ「鬼滅の刃」の主人公です。
花江夏樹は、鬼になってしまった妹を助けるために、鬼殺隊として鬼と戦う主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)を演じています。
炭治郎の優しさと強い意志を表現する彼の演技は、幅広いファンに愛されています。
東京リベンジャーズ:九井一
和久井健の人気SF不良漫画を原作にしたアニメ「東京リベンジャーズ」に登場するキャラクターです。
花江夏樹は、お金を作る能力に優れた元黒龍の親衛隊長で、現代の東京卍會の最高幹部・九井一(ここのいはじめ)を演じています。
ヴァニタスの手記:ヴァニタス
望月淳の人気ダークファンタジー漫画を原作にしたアニメ「ヴァニタスの手記」の主人公です。
花江夏樹は、目的のためなら手段を選ばない吸血鬼専門の医師で、ヴァニタスの手記の主人公・ヴァニタスを演じています。
進撃の巨人:ファルコ・グライス
諫山創の人気ダークファンタジー漫画を原作にしたアニメ「進撃の巨人」に登場するキャラクターです。
花江夏樹は、内気で思いやりのあるグライス家の次男・ファルコ・グライスを演じています。
ビスケット同様、ファルコも花江夏樹の演技によって、優しさと芯の強さが表現されているキャラクターと言えるでしょう。
ビスケット・グリフォンに関する感想や評価
ビスケット・グリフォンは、その登場期間は長くなかったものの、その献身的な生き方と悲劇的な最期から、多くの視聴者に強い印象を残しました。
鉄華団の良心としての評価
ビスケット・グリフォンは、とても面倒見が良く優しい性格のキャラクターとして、視聴者から高い評価を得ています。
「前へ前へと突き進むオルガを諌め受け止め許した君の強さが好きだ」という感想に見られるように、オルガの暴走を食い止める理性的な存在としての彼の役割は、多くのファンに鉄華団の「良心」として認識されていました。
特に、家族思いで仲間のことを一番に考えられるところや、オルガを庇って最後は死亡してしまうところなど、強い信念を持ちながら最後まで優しさが溢れていた点が、人気を集める理由となっています。
彼の死は、鉄華団にとって「戻るべき場所」への道標を失わせただけでなく、組織全体の冷静さと思慮深さを奪ったと、多くの読者が分析しています。
声優・花江夏樹への評価
ビスケット・グリフォンの優しさが魅力的と評価する声が多い中、彼の声が好きといった声も多く上がっています。
優しくてとても親近感の沸くキャラクターとして人気を集めていますが、中には花江夏樹が声優だと知らず、鉄血のオルフェンズを見返していて気付いたという視聴者もいるほど、彼の演技はビスケットというキャラクターに自然に溶け込んでいました。
この「親近感の沸く優しい声」は、彼が鉄華団のメンバーにとって「兄貴」や「保護者」のような、温かい存在であったことを、視聴者に強く印象付けた要因の一つと言えるでしょう。
「死亡してほしくなかった」と彼の最期を悲しむファンが多いのは、彼が持つ温かさと、その温かさが失われたことへの喪失感が大きいからです。
ビスケット・グリフォンまとめ:オルガに託された最後の願い
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズの登場キャラ・ビスケット・グリフォンは、家族や仲間思いでとても優しくてまっすぐな性格のキャラクターでした。
鉄華団の参謀役として、オルガの暴走を食い止め、組織を理性的に運営する上で、なくてはならない存在でした。
彼の死は、単なる一兵士の死ではなく、オルガから「還るべき場所」への道標を奪い、鉄華団を「復讐」という名の悲劇的な終末へと向かわせる決定的な転換点となりました。
ビスケットが最後にオルガを庇って命を落としたその瞬間、オルガの心には「ビスケットが還りたかった場所」、そして「ビスケットが守りたかった鉄華団の未来」という重い願いが託されたのです。
彼の死は悲劇でしたが、その自己犠牲の精神と、最後まで家族と仲間を想い続けた優しさは、物語を通して多くの視聴者の心に深く刻まれ、鉄華団の「良心」として永遠に語り継がれていくでしょう。
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