
ゴールデンカムイ第20巻:物語の折り返し地点と再編される勢力図
| 野田サトル | 著者 |
| 週刊ヤングジャンプ | 掲載誌 |
| 樺太編の終結と北海道編の再開 | 主な流れ |
| 鯉登音之進、鶴見、菊田、有古 | 焦点となる人物 |
野田サトルが描く冒険活劇ゴールデンカムイは、この第20巻をもって物語の大きな折り返し地点に到達します。
樺太での凄惨な戦いを経て、杉元佐一とアシリパが再会を果たし、物語は再び北海道へとその舞台を戻そうとしています。
本巻では、主要キャラクターたちの絆の再確認だけでなく、鶴見率いる第七師団の新たな強者たちの登場、そして読者の間で長年謎とされていた鯉登音之進と鶴見の出会いが克明に描かれます。
歴史的な背景に基づいた重厚なドラマと、本作特有のシュールなギャグが絶妙なバランスで混ざり合い、読者を飽きさせない展開が続きます。
特に、鶴見のカリスマ性がどのようにして部下たちの心を掌握していったのか、その恐るべき手法の一端が明かされる点は、本作のミステリー要素を深める重要なポイントとなっています。
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杉元佐一とアシリパの再契約:異なる想いと共通の目的地
| 相棒としての再契約 | イベント名 |
| 杉元佐一、アシリパ、白石由竹 | 参加者 |
| アシリパを黄金の呪縛から解放すること | 杉元佐一の目的 |
| 父ウイルクの真意を知ること | アシリパの目的 |
亜港監獄での激闘を終え、杉元佐一とアシリパは再び手を取り合います。
一度はキロランケや尾形百之助によって引き裂かれた二人ですが、流氷の上での再会を経て、その絆は以前よりも強固なものとなりました。
しかし、二人が抱く黄金への想いは必ずしも一致しているわけではありません。
杉元佐一は、アシリパを黄金争奪戦という血生臭い運命から一刻も早く解放したいと願っています。
対してアシリパは、父ウイルクがなぜ自分に暗号の鍵を託したのか、アイヌの未来のために何を残そうとしたのかを、自らの目で見極める覚悟を固めています。
想いは異なりながらも、互いを信じ抜く「相棒」として再び歩み出す二人の姿は、多くの読者に感動を与えました。
ここに白石由竹を加えた、お馴染みの三人組による旅が再び幕を開けることになります。
登別温泉の激闘:新キャラクター菊田と有古の登場
| 菊田特務曹長 | 新キャラクター1 |
| 有古一等卒 | 新キャラクター2 |
| 都丹庵士 | 対峙する刺青囚人 |
| 登別温泉(第七師団の療養地) | 舞台 |
物語は一時、樺太から北海道の登別温泉へと飛びます。
そこは第七師団の傷病兵たちが身体を癒やす療養地ですが、同時に新たな陰謀の舞台でもありました。
ここで登場するのが、第七師団の中でも異彩を放つ菊田特務曹長と、アイヌの血を引く有古一等卒です。
菊田は特務曹長という肩書きに相応しい、冷静沈着かつ高度な射撃技術を持つ軍人です。
有古はかつて八甲田山の遭難者捜索にも駆り出された経験を持つ、優れた身体能力と追跡術の持ち主です。
彼らは登別に潜伏しているという刺青脱獄囚の噂を聞きつけ、調査に乗り出します。
そこで彼らの前に立ちはだかったのは、かつて杉元佐一らと死闘を繰り広げた盲目の盗賊、都丹庵士でした。
暗闇の死闘とキャラクター造形の深み
都丹庵士は温泉の湯気を巧みに利用し、音を頼りに菊田と有古を追い詰めます。
一度は杉元佐一に敗れた都丹庵士ですが、その戦闘力は衰えておらず、菊田たちを窮地に陥れます。
しかし、菊田が見せる軍人としての無駄のない動きや、有古がアイヌの知恵を活かして対抗する様は、彼らが単なる端役ではないことを強く印象づけました。
彼らは月島基や谷垣源次郎に通じるような、職人気質の軍人キャラクターとして描かれており、第七師団の層の厚さを物語っています。
また、同じく登別にやってきた二階堂浩平や宇佐美上等兵といった「面白変態組」との対比も、本作らしいユーモアを添えています。
尾形百之助の逃走と杉元佐一の複雑な表情
| 尾形百之助 | 逃走者 |
| 右目の失明、瀕死の重傷 | 状態 |
| アシリパへの不殺の誓いを守るため | 杉元佐一が救った理由 |
樺太では、重傷を負った尾形百之助の処遇が問題となっていました。
杉元佐一にとって尾形百之助は自分を殺そうとした憎い敵ですが、アシリパが放った毒矢によって死なせることは、彼女の「不殺」の精神を汚すことになります。
杉元佐一はアシリパの手を汚させないために、あえて尾形百之助を救い、適切な治療を受けさせようとします。
しかし、尾形百之助は病院から隙を突いて脱走を図ります。
尾形百之助を追う杉元佐一の表情には、憎しみ、軽蔑、そしてどこか割り切れない複雑な感情が入り混じっており、野田サトルの卓越した画力が光ります。
尾形百之助という男が、今後どのようにして黄金争奪戦に再介入してくるのか、その不気味な存在感は依然として消えることはありません。
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鯉登音之進の過去:函館での誘拐事件と鶴見との出会い
| 鯉登音之進(少年時代) | 主役 |
| 鯉登平二(海軍少将、父) | 関係者 |
| ロシアのスパイによる誘拐 | 事件内容 |
| 三輪車での爆走アクション | 見どころ |
第20巻の後半では、多くのファンが熱望していた鯉登音之進の過去編が描かれます。
海軍の名門に生まれた鯉登音之進は、日清戦争で兄を亡くしたことで父との間に深い溝を抱え、荒れた少年時代を過ごしていました。
そんな彼が、函館で出会ったのが当時まだ壮年の面影を残していた鶴見でした。
鶴見は鯉登音之進に対して威圧的に接するのではなく、一人の人間として対等に向き合い、その孤独を埋めるような優しさを見せます。
しかし、物語は数年後、鯉登音之進がロシアのスパイと思われる集団に誘拐されるという衝撃の展開へと進みます。
犯人たちの狙いは、父・鯉登平二が持つ軍事機密でした。
緊迫のアクションと父子の和解
誘拐された息子を救うため、鯉登平二は苦渋の決断を迫られますが、そこに鶴見が救出作戦を提言します。
鶴見は部下を率いて犯人のアジトを急襲し、鯉登音之進を奪還しようと試みます。
このシーンでは、三輪車を駆使した無茶苦茶なチェイスシーンや、本作らしいシュールなアクションがふんだんに盛り込まれています。
最終的に鯉登音之進は父の真の愛情を知り、二人は涙ながらに和解を果たします。
そして、窮地を救ってくれた鶴見に対し、鯉登音之進は絶対的な忠誠を誓うようになるのです。
【考察】仕組まれた悲劇?鶴見の謀略に対するファンの推測
この鯉登音之進の過去編は、一見すると「いい話」で終わるように見えますが、ゴールデンカムイを読み込んでいる読者の間では、ある戦慄すべき考察がなされています。
それは、「この誘拐事件自体が、鶴見によって仕組まれた自作自演ではないか」という説です。
第18巻で明かされた鶴見の過去を知る読者にとって、彼が目的のためには手段を選ばない男であることは明白です。
鯉登音之進という有望な若者を自分に心酔させ、さらにはその父である鯉登平二という海軍の重鎮に恩を売るために、鶴見がロシア側と通じて誘拐を演出した可能性は非常に高いと考えられています。
事実、物語が現在に戻った際、鯉登音之進は当時の誘拐犯が口にしたロシア語の違和感から、鶴見に対する疑念を抱き始める描写があります。
この「疑念」が、今後の第七師団内部の力関係を大きく揺るがす火種となることは間違いありません。
連載当時の背景と読者の反応
第20巻が刊行された当時、ゴールデンカムイはアニメ化の効果もあり、社会現象的な人気を博していました。
アイヌ文化への関心が高まる一方で、歴史の暗部を突くような鶴見の謀略編は、大人の読者層からも高い支持を得ていました。
当時のSNSでは、鯉登音之進の少年時代の可愛らしさと、現在のキエエエッという猿叫のギャップに驚く声が溢れる一方で、鶴見の底知れない恐ろしさに震えるファンが続出しました。
また、他の歴史漫画と比較しても、これほどまでにキャラクターの精神的な洗脳や掌握をリアルに描く作品は珍しく、野田サトルの人間観察眼の鋭さが改めて評価されました。
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第20巻のまとめ:黄金争奪戦、最終局面への再突入
ゴールデンカムイ第20巻は、これまでの旅の総括と、次なる戦いへの布石が見事に組み合わされた一冊でした。
| 項目 | 内容 |
| 杉元佐一とアシリパの再会 | 二人の目的の再設定 |
| 菊田・有古の登場 | 第七師団の戦力強化 |
| 鯉登音之進の過去 | 鶴見への忠誠と疑念の芽生え |
| 尾形百之助の逃走 | 予測不能な第三勢力の存続 |
しばらくの間、各キャラクターの思惑が入り乱れ、勢力がシャッフルされていましたが、この第20巻を経て再び「杉元一派」「第七師団」「土方一派」という三つ巴、あるいは四つ巴の構造が明確になりました。
特に鶴見という巨大な個性が、どのようにして人々を支配し、そしてどのようにしてその支配が崩れていくのか、その兆しが見え始めた点は見逃せません。
杉元佐一とアシリパは、第七師団の監視下からいかにして抜け出し、北海道に残された黄金の暗号へと辿り着くのか。
次巻、第21巻では、物語は再び北海道を舞台に、残された刺青囚人たちを巡るスピード感溢れる争奪戦へと突入します。
誰が味方で、誰が敵か。吹雪の中に消えた尾形百之助の行方と共に、黄金へのカウントダウンが再び始まります。
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