今回は、筒井哲也先生の漫画作品「NEETING LIFE」の記事を書いて行きたいと思います。
様々な社会問題を描いた作品を世に出してきた筒井先生が「NEETING LIFE」で描いたのは45歳を過ぎたおっさんニートの生活です。
都会の喧騒、満員電車、終わりの見えない仕事、そして、あの、どうしようもない人間関係。そんなもの全部、捨ててしまいたくなったことはないでしょうか?
今作の主人公の小森建太郎は、それを実際にやってのけました。45歳、貯金2000万円を握りしめ、会社を辞め、部屋に引きこもる。
おっさんのニート生活と言えば、どこにでもありそうな話ではありますが、小森は予想を超えた自堕落な暮らしを始めてしまいます。
食糧、物資などの受け取りは宅配の置き配を利用、ゴミの排出は部屋の窓からダクトを通して、果てはトイレまで寝たまま行えるようにしてしまう徹底ぶり、誰にも邪魔されない、究極の引きこもり生活。しかし、現実はそう甘くはなかったのです。
隣人の騒音、謎の侵入者、そして、社会からの容赦ない攻撃。小森の平穏な生活は、次々と押し寄せるトラブルによって、もろくも崩れ去っていきます…
その他筒井哲也先生の作品もまとめています。

ニーディングライフの見所
©筒井哲也/集英社
今作の見所と言えば、小森の徹底したニートへのこだわりと細かなニーディングライフの豆知識というほのぼのとしたストーリーから始まり、そのこだわり故に作中の話がほぼすべてが部屋の中だけで完結しているというのも注目すべき点です。
主人公が、木造のボロアパートの一室から出らずに話が進んで行くというだけでどんな作品なのか気になってくる方も多いことと思います。
ニーディングライフでは、小森の部屋の中で繰り広げられる人間模様を中心に物語が進んでいきます。 小森の部屋に侵入しようとする人物との攻防や、隣人伊織澄香との交流など、限られた空間の中で展開されるドラマは、読者を飽きさせません。
また、小森のニーティング生活を脅かす存在として登場する元同僚の蔵屋敷優と長屋シゲミチの存在も、物語に緊張感を与えます。
彼らが小森の貯金を狙う理由や、小森との過去の関係性などが徐々に明らかになっていくことで、物語は単なる引きこもり生活を描いた作品ではなく、人間ドラマとしての深みを増していきます。
さらに、物語後半では、小森のニーティング生活が社会情勢の変化によって大きく揺さぶられる様子が描かれます。
戦争状態に突入した日本で、小森は預金を没収され、ニーティング生活を続けることが困難になります。そんな状況下で、小森は一匹の子犬と出会い、世話をすることで再び生きる希望を見出します。
この子犬との出会いは、小森の心情に変化をもたらし、物語は感動的な結末へと向かっていきます。 このように、「ニーティング・ライフ」は、引きこもり生活を題材にしながらも、サスペンス、人間ドラマ、社会風刺など、様々な要素が盛り込まれた作品です。
小森のニーティング生活の行方、そして彼がどのように人生を取り戻していくのか、ぜひ見届けてください!
NEETING LIFE 1巻あらすじ
コロナ禍で世界の常識が大きく変わり始めた頃、45歳のサラリーマン小森建太郎は、20年間勤めた会社を早期退職し、貯金と退職金を合わせて2000万円を手に、長年思い描いていた理想の生活スタイル「ニーティング」を実現させるため、家賃3万2000円の木造アパートに引っ越します。
ニーティングとは、35歳以上の無業者が、就業にも学業にも意欲を持たず、ニートのように生活を送ることを意味し、小森は部屋から一歩も出ない生活を目標に、生活環境を整え始めます。
通販サイト「ジャングル」で生活必需品を揃え、ゴミ出しは窓からダクトを通して行い、トイレは尿瓶で済ませるなど、徹底的に外部との接触を避ける工夫を凝らします。
また、65歳までの生活費を計算し、その後の生活が困難になった場合には「自死」も視野に入れるなど、周到な計画を立てていました。
ブラック企業での過酷な労働から解放され、誰にも邪魔されない静かな生活を手に入れた小森は、ようやく安息の日々を送れると安堵します。しかし、そんな小森の平穏な生活は、思わぬ出来事によって脅かされることになります。
引っ越し後、日々の生活の中で、何者かの気配を感じるようになります。防犯の為ドアノブに盛っておいた塩がチラシの上に落ちていたりと、不可解な現象が起き、小森は防犯カメラを設置するなど、警戒を強めるのでした。
そんな中、小森の隣の部屋に、伊織澄香という19歳の女子大学生が引っ越してきます。伊織は、小森のアパートには不釣り合いなほど明るく、活発な女性で、毎晩のようにゲーム実況のライブ配信を行い、その騒音が小森の静かな生活を邪魔します。
騒音に悩まされた小森は、伊織のゲーム配信チャンネルを見つけ、コメントや投げ銭を使って注意を促しますが、効果はありません。
そこで小森は、隣人であることは明かさずゲーム経験者であることを活かし、伊織と一緒にゲームをプレイすることを提案します。最初は乗り気でなかった伊織も、小森のゲームスキルに助けられ、次第に打ち解けていきます。ゲーム配信は盛り上がり、二人の間には奇妙な友情が芽生え始めます。
しかし、そんな矢先、小森の部屋に何者かが侵入した形跡が見つかります。小森は、周囲の人物に疑念を抱き始め、警戒を強めます。
一方、伊織も小森の過去やニーティング生活に興味を持ち始め、二人の関係は次第に複雑さを増していきます。そんな中、小森の部屋への侵入者の影は、ますます濃くなり、小森は自分の身に危険が迫っていることを悟ります。
小森は、ニーティング生活を守るため、そして自分の身を守るため、侵入者の正体を探り始めるのでした。
NEETING LIFE 2巻あらすじ
1巻で隣人伊織澄香との騒音トラブルや、自身の部屋に侵入者の影を感じるなど、ニーティング生活が脅かされる出来事を経験した小森建太郎は、騒音問題が収束し、侵入者の気配もなくなったことで、再び平穏な日々を取り戻したかのように思えました。
小森は、伊織とのゲーム内での交流を通して、徐々に人間関係を取り戻し始めますが、すっかり伊織を信用しきっていたある日、伊織からフードデリバリーを注文するよう言われます。
その翌日も、伊織とのゲームを楽しんでいた小森でしたが「実は朝からずっとお腹の調子が悪くてね」と体調不良であることを伊織に告げます。
すると伊織からは「リンジナさん、今までありがとうございました。結構楽しかったですよ」「急にごめんなさい、私の契約はここまでなんで、さよなら」と意味不明の言葉を告げられるのでした。
しかし謎の言葉に疑問を抱く間も、悲しみに暮れる間も無く、体中の血流が全部腹に集中しているかの様で、冷や汗が止まらないほどの腹痛
「さすがにこれは病院か…」とこれまで徹底した引きこもり生活を送ってきた小森に外出を決意させるほどの腹痛が襲ってきたのです。
そんなピンチの最中に、小森の過去の職場関係者である蔵屋敷優と長屋シゲミチが突如部屋のガラスを破って現れ、小森が所有する2000万円の貯金を奪おうとします。
彼らは伊織という架空の人物を作りだし、ゲームフレンドとしてレンタル彼女として雇い、長屋に女装させて小森の家に挨拶に訪れ、さも「伊織」という人物がいるかのように錯覚させていたのです。
そしてフードデリバリーを注文するよう仕向け、注文した食事に腹痛を起こすよう細工し、意識を失った小森は、部屋の中で拘束され、金を渡すよう脅迫されます。
しかし、小森は緊急用の合言葉を発動させ、部屋に毒ガスを充満させるなど、反撃を試みます。蔵屋敷もガスマスクを用意しており、小森の攻撃は失敗に終わりますが、小森は蔵屋敷に反撃し、なんとか彼らを撃退することに成功します。
この事件をきっかけに、小森は自身のニーティング生活を見直し始めます。彼は、これまでの引きこもり生活から一転、体を鍛え始め、食生活も改善するなど、積極的に社会との繋がりを持つようになりました。そんな中、世界情勢は一変し、日本は戦争状態に突入します。
政府は国民の銀行口座を凍結し、1000万円を超える預金を没収するなど、強硬な政策を打ち出します。小森も預金の半分を失い、絶望の淵に立たされますが、そんな彼を救ったのは、一匹の子犬でした。小森は、瀕死の子犬を保護し、「ハチ」と名付けて世話を始めます。
ハチとの生活を通して、小森は再び生きる希望を見出し、ニーティング生活から完全に脱却することを決意します。物語は、小森がハチと共に新たな人生を歩み始める姿を描き、幕を閉じます。
登場人物一覧
小森建太郎
45歳で会社を早期退職し、貯金2000万円を元手に究極の引きこもり生活「ニーティング」を始めた主人公で、長年勤めた会社での人間関係や過酷な労働に疲れ果て、誰にも邪魔されない静かな生活を求めています。
しかし、ニーティング生活は思わぬ出来事によって脅かされ、隣人との騒音トラブルや謎の侵入者に悩まされることになります。
伊織澄香
小森の隣に引っ越してきた19歳の女子大学生で、明るく活発な性格で、毎晩のようにゲーム実況のライブ配信を行い、騒音で小森を悩ませます。
しかし、ゲームを通して小森と交流を深めるうちに、次第に打ち解けていきます。伊織はただの大学生ではなく、裏の顔を持っており、小森のニーティング生活を脅かす存在でもあります。
蔵屋敷優
小森の会社の元同僚で、崎川支店のトップセールスマンだったが金遣いが荒く借金があり、小森が所有する2000万円の貯金を奪おうと企んでいます。
長屋シゲミチと共謀し、伊織をレンタル彼女として雇い、小森の家に監視カメラを送り付けるなど、周到な計画を練ります。
長屋シゲミチ
小森の会社の元同僚で、2度の離婚歴があり女性関係が派手で、蔵屋敷優と共に小森の貯金を奪おうと企んでいます。伊織に女装し、小森の家に挨拶に行くなど、蔵屋敷の計画に協力します。
まとめ
「ニーティング・ライフ」は、現代社会の歪みと、そこから抜け出そうとする人間の葛藤を描いた作品です。
主人公の小森建太郎は、職場の人間関係に疲れ果て、究極の引きこもり生活「ニーティング」を始めますが、それは決して安息の日々ではありませんでした。隣人との騒音トラブル、謎の侵入者、そして容赦ない攻撃。
小森の平穏な生活は、次々と押し寄せるトラブルによって、もろくも崩れ去っていきます。しかし、小森は諦めません。
この物語は、社会からドロップアウトした男が、孤独と戦い、自分の居場所を見つけるまでの壮絶なドラマです。
ボロアパートの一室で繰り広げられるニーディングライフ是非ご覧になってください!
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