
藤本タツキ氏が手掛ける『チェンソーマン』は、衝撃的な展開と個性豊かなキャラクターで多くの読者を熱狂させている人気作品です。
2022年10月にはアニメ化もされ、その勢いはとどまるところを知りません。
第一部「公安編」の主人公デンジに続き、第二部「学園編」では新たな主人公として、女子高生の三鷹アサと、彼女の身体に憑依した「戦争の悪魔」であるヨルが登場しました。
このヨルが「かわいい」と多くのファンの間で話題になっています。
今回は、戦争という恐ろしい名を冠するにもかかわらず、どこか憎めない魅力を持つヨルに焦点を当て、その正体や能力、そして三鷹アサやチェンソーマンとの複雑な関係性を深く掘り下げていきます。
第二部のストーリーを追いながら、ヨルの行動原理や今後の展開について考察していきましょう。
ヨルのプロフィールと三鷹アサとの共生関係
物語の新たな中心人物として登場したヨルは、そのユニークな設定とキャラクター性で読者の心を掴んでいます。
まずは、彼女の基本的な情報と、身体を共有する三鷹アサとの関係について見ていきましょう。
ヨルのプロフィール
| 本名 | 戦争の悪魔 |
| 仮名 | ヨル |
| 正体 | 悪魔 |
| 見た目 | 女子高生(三鷹アサの身体を共有) |
| 性格 | 冷酷無比で合理主義、どこかおっちょこちょいな一面も |
ヨルは、人間に強く恐れられる「戦争」の名を持つ悪魔であり、その力は本来、非常に強大です。
しかし、物語の冒頭ではコウモリの悪魔にも勝てないほど弱体化した状態で登場し、タチヨタカのような鳥の姿をしていました。
彼女は、命を落としかけた女子高生の三鷹アサが生きたいと願った際に、その願いに応える形で契約を結び、三鷹アサの身体を乗っ取ります。
この共生関係は、二人が脳を共有し、状況に応じて人格を切り替えられるという特殊なものです。
ヨルの人格が前に出ているときは、三鷹アサの顔に傷のようなものが現れるのが特徴です。
ヨルと三鷹アサの共生関係
両親を悪魔に殺された過去を持つ三鷹アサは、悪魔に対して強い嫌悪感を抱いており、人付き合いが苦手な孤独な女子高生でした。
一方、ヨルは悪魔らしい冷酷さと合理性を持ち、目的のためには手段を選ばない性格です。
正反対の性格を持つ二人は、当初は「お前」と呼び合うなど関係は険悪でしたが、三鷹アサの「アサと呼んでほしい」という要望から、互いを名前で呼び合うようになります。
また、悪魔であるヨルには人間社会の常識が理解できない場面も多く、三鷹アサがツッコミを入れる形で物語が展開していきます。
三鷹アサの恐怖心が強いときには、ヨルが身体を乗っ取れないという制約もあり、二人の関係は単なる支配と被支配の関係ではないことが分かります。
ヨルは三鷹アサの人間的な感情に戸惑いながらも、どこか憎めない言動をみせることから、多くの読者が二人のやり取りを微笑ましく見守っています。
チェンソーマン第二部「学園編」の物語
第一部「公安編」で公安のデビルハンターとして活躍したデンジとは異なり、第二部「学園編」は、三鷹アサとヨルをメインに、学校生活を舞台とした新たな展開を迎えます。
しかし、物語の根幹にあるのは、やはりチェンソーマンの存在です。
ヨルがチェンソーマンに執着する理由
第二部の物語は、ヨルが三鷹アサとの契約を結んだ際に「チェンソーマンを探し出して殺せ」と語ったことから始まります。
この言葉から、ヨルがチェンソーマンに強い恨みを抱いていることが分かります。
その理由は、かつて地獄でチェンソーマンと戦い、敗北した過去にあります。
チェンソーマンは、悪魔を喰らうことで、その悪魔の存在を概念ごと消滅させるという特殊な能力を持っています。
ヨルもまた、この能力によって弱体化し、地獄から現世へと逃れてきたのです。
彼女の目的は、チェンソーマンを倒し、彼が過去に食べた「核兵器の悪魔」をはじめとする戦争関連の概念を復活させることだと考えられています。
人々が戦争を忘れてしまったことで、戦争の悪魔であるヨルは弱体化してしまいましたが、核兵器が復活すれば人々の恐怖心が増し、本来の力を取り戻せると考えているのです。
偽チェンソーマンとチェンソーマン教会の思惑
デンジが高校生として学校に通う一方で、世間では「チェンソーマン教会」という組織が台頭し、偽のチェンソーマンが現れます。
この教会は、人々にチェンソーマンを信仰させ、その力で悪魔のいない世界を創ろうと主張しています。
しかし、その実態はデンジを都合の良いヒーローとして利用し、チェンソーマンを操ろうとする勢力であり、その裏には飢餓の悪魔や武器人間たちの存在が垣間見えます。
ヨルは、この偽チェンソーマンを倒すことで、自身が持つ本来の力を取り戻し、本物のチェンソーマンを倒す機会をうかがっています。
この一連の騒動は、デンジを翻弄し、彼の「普通の生活」を再び奪い去ろうとするマキマの計画と似ているという声も読者から上がっています。
飢餓の悪魔と死の悪魔の登場
第二部では、「ヨハネの黙示録」に登場する四騎士の存在がより明確に描かれています。
マキマは「支配の悪魔」、ヨルは「戦争の悪魔」ですが、物語には新たに「飢餓の悪魔」が登場し、ヨルの姉を名乗る悪魔も登場しました。
この姉が悪魔が「死の悪魔」ではないかという考察がファンの間で広まっています。
飢餓の悪魔は、チェンソーマン教会を裏から操り、デンジとヨルの両方を手中に収めようと画策しているようです。
彼女の目的は、死の悪魔を倒すために、デンジとヨルを「死の悪魔よりも強い存在」にすることだとナユタが語っています。
四騎士がそれぞれどのような思惑を持って行動しているのか、その関係性が物語の今後の鍵を握ると言えるでしょう。
ヨルの強さと弱体化の秘密
ヨルは、その見た目からは想像できないほど強力な「戦争の悪魔」です。
しかし、物語の序盤では、彼女は本来の力を発揮できていませんでした。
ここでは、彼女の強さの秘密と、その弱体化の原因について深掘りしていきます。
悪魔の強さの法則
『チェンソーマン』の世界では、悪魔の強さはその名前が人々にどれだけ恐れられているかによって決まります。
例えば「コーヒーの悪魔」はあまり恐れられないため弱いですが、「チェンソーの悪魔」は強力な力を持っています。
「戦争」という言葉は、本来なら人類に最も恐れられる概念の一つであり、戦争の悪魔であるヨルはマキマと同じく、非常に強力な悪魔であったはずです。
しかし、彼女は地獄でチェンソーマンに敗北した際に、その存在を一部喰われてしまいました。
この影響で、地球上では戦争が起こりにくくなり、人々が戦争への恐怖を忘れてしまった結果、ヨルは弱体化してしまったのです。
ヨルは魔人に近い?
厳密には、人間の死体を乗っ取った「魔人」ではないものの、ヨルは人間の身体に憑依していることから、魔人の特徴を多く持っています。
顔に現れる傷のような模様や、身体の主導権が人格によって切り替わる様子は、魔人にも似た特性です。
しかし、三鷹アサが生きているため、ヨルは魔人というよりも、人間と悪魔の共生という特殊なケースと言えます。
この共生関係が、彼女の能力や今後の行動にどのような影響を与えるのか、注目が集まっています。
ヨルの能力:武器を創り出す力
弱体化した状態でも、ヨルは非常にユニークで強力な能力を持っています。
それは、自分に「所有権」のあるものを武器に変える力です。
この能力は、単純な破壊力だけでなく、戦略的な可能性を秘めています。
武器化の仕組み
ヨルが武器に変えることができるのは、彼女自身が「私の物だ」と認識しているもの全般です。
この対象は、物体だけでなく、生物や人間にも及びます。
さらに、武器の強さは、その対象に対する「罪悪感」が高いほど増すという特殊な仕組みがあります。
これは、冷酷な悪魔であるヨルには理解しにくい概念であり、人間である三鷹アサの感情が、武器の強さに直接影響を与えることになります。
大切な人や思い出の品を武器に変えることには、三鷹アサに強い罪悪感が生まれるため、その武器は恐ろしいほどの威力を発揮するのです。
これまでに登場したヨルの武器一覧
ヨルは物語の中で、三鷹アサの感情を利用しながら様々な武器を生み出してきました。
ここでは、その中から特に印象的な武器をいくつか紹介します。
田中脊髄剣
三鷹アサの担任教師であった田中先生を使って作り出された武器です。
三鷹アサが田中先生に少しでも懐いていたことから、罪悪感が高まり、正義の悪魔を一刀両断するほどの威力を発揮しました。
手榴弾
正義の悪魔と契約していた委員長の手を切り落とし、手榴弾へと変貌させた武器です。
自分に所有権のあるものだけでなく、自分で殺した死体も武器にできるという、悪魔らしい恐ろしい能力を示しています。
鉛筆の槍
三鷹アサが持っていた鉛筆を使って作り出された武器です。
ヨルにとっては「弱い武器」と認識されていましたが、それでも人を殺せるほどの威力があり、その強さに読者は驚かされました。
制服強強剣
ユウコの攻撃を止めるために、三鷹アサが自ら作り出した武器です。
三鷹アサのお母さんが買ってくれた、思い入れのある制服だったため、弱い攻撃でもユウコをバラバラにするほどの威力を発揮しました。
この出来事は、三鷹アサの感情が武器の強さを左右する重要な要素であることを示しています。
水族館槍(アクアリウムスピア)
三鷹アサが水族館を丸ごと武器に変え、永遠の悪魔を一撃で仕留めた槍です。
槍の形状をしていますが、永遠の悪魔に刺さった後に魚が飛び出していることから中身が解放されるという強力な武器です。
爪ナイフ
アサの爪を媒介として作り出され、落下の悪魔に捕らわれたアサのトラウマを一時的に忘れさせるために使われました。
寿司剣
寿司でできた剣で、チェンソーの悪魔への攻撃を試みましたが、簡単に防がれました。
石鹸剣
アサの家の風呂にあった石鹸を使い、能力の進化を実験するために作られた剣です。
銃右腕鎧(ガンライトガントレット)
眷属である銃の悪魔を武器に変えたもので、チェンソーの悪魔の腹を貫くほどの絶大な威力を持ちます。
戦車左腕鎧(タンクレフトガントレット)
銃の悪魔と同様に眷属である戦車の悪魔を武器にした左腕の義手で、大きな罪悪感から絶大な威力を発揮すると考えられています。
ヨルとゴールデンカムイ・杉元の共通点
『チェンソーマン』の作中では、他の漫画作品へのオマージュやリスペクトが随所に見られます。
ヨルについても、他の人気作品のキャラクターとの類似点が指摘されています。
それが、野田サトル氏による大人気漫画『ゴールデンカムイ』の主人公、杉本佐一です。
杉本佐一とは?
杉本佐一は、日露戦争で「不死身の杉本」と呼ばれた元軍人です。
彼は戦死した親友の妻である梅子の治療費を稼ぐため、北海道で埋蔵金を探すことになります。
そこでアイヌの少女アシリパと出会い、共に冒険を繰り広げます。
義理人情に厚く、子供や女性に優しい性格ですが、戦闘では鬼神のごとき強さを見せる二面性も持っています。
その顔には、彼が不死身の異名を得るきっかけとなった、三本の傷跡が刻まれています。
ヨルと杉元の傷は似ている?
ヨルが三鷹アサに憑依した際、その顔には杉本佐一の顔にある傷と似た三本線が現れました。
直接的な関連性があるかは不明ですが、多くの読者がこの類似性を指摘し、藤本タツキ氏が『ゴールデンカムイ』をリスペクトしているのではないかと考察しています。
第一部で、銃の悪魔の被害者リストの中に野田サトル氏の名前があったことも、この説を後押しする要因となっています。
デンジ、アサ、そしてヨルの関係性の変化
第二部の物語が進むにつれて、デンジ、三鷹アサ、そしてヨルの三人の関係は複雑に変化していきます。
彼らはそれぞれの目的を果たすために行動していますが、その過程でお互いの人生に深く関わっていくことになります。
ナユタの死とデンジの暴走
デンジの護衛役である三船フミコや、チェンソーマン教会の副総帥であるバルエムの思惑に翻弄される中で、デンジはナユタの生首を見せられるという衝撃的な出来事に遭遇します。
ナユタは、デンジがマキマを倒した後、彼女の転生体としてデンジが育てていた大切な存在でした。
彼女の死を目の当たりにしたデンジは激しい怒りを露わにし、腹部から「黒色チェンソーマン」を出現させ、暴走を始めます。
この暴走は、デンジの心の奥底に眠る闇や、彼がどれほどナユタを大切に思っていたかを物語っています。
老いの悪魔との死闘
暴走した黒色チェンソーマンを止めるため、日本政府は「老いの悪魔」を差し向けます。
老いの悪魔は、非常に強力な存在であり、その攻撃はクァンシやサムライソードといった強力な悪魔たちをも圧倒しました。
しかし、老いの悪魔は「日本国籍を持つ0歳から9歳までの子供を1万人殺す」という恐ろしい条件でチェンソーマンに自ら食べられることを提示します。
この非情な交渉は、チェンソーマンという存在が持つ恐ろしさと、それを巡る人間たちの歪んだ思惑を浮き彫りにしています。
デンジを救出するアサとヨル
デンジが公安によって拉致され、解体手術を受けそうになった際、アサとヨルはデンジを救出するために行動を起こします。
この行動は、チェンソーマンを殺すという目的を持つヨルと、チェンソーマンを助けたいアサの願いが一致した、非常に興味深い場面です。
二人は飢餓の悪魔から情報を得て、サムライソードやクァンシといった強敵に立ち向かいながら、バラバラにされたデンジを救い出すことに成功します。
この出来事を経て、アサはデンジに対する感情をより強く自覚し、ヨルもまた、デンジを倒すという目的のために、彼との関わりを深めていきます。
まとめ
『チェンソーマン』第二部で登場したヨルは、その「かわいい」見た目や、三鷹アサとのユーモラスなやり取りで多くの読者を惹きつけました。
しかし、その正体は人類に最も恐れられる「戦争の悪魔」であり、チェンソーマンに敗北した過去を持つ、非常に強力な存在でもあります。
彼女の目的は、チェンソーマンを倒し、弱体化した自らの力を取り戻すことですが、その過程で彼女はアサやデンジ、そして他の四騎士たちと深く関わっていくことになります。
第二部の物語は、第一部以上に複雑な人間関係や悪魔たちの思惑が絡み合い、読者を飽きさせません。
ナユタの死、デンジの暴走、そしてアサとヨルによるデンジ救出作戦など、衝撃的な展開が次々と描かれています。
今後、ヨルは本来の力を取り戻し、デンジとの宿命的な対決を迎えるのか、それとも二人の関係に変化が生まれるのか、その結末から目が離せません。
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