【地獄楽】ネタバレあらすじ全巻徹底解説! 最強の抜け忍・画眉丸の「愛」を巡る生と死の忍法浪漫

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【地獄楽】ネタバレあらすじ全巻徹底解説! 最強の抜け忍・画眉丸の「愛」を巡る生と死の忍法浪漫

 

賀来ゆうじさんが描く『地獄楽』は、『少年ジャンプ+』で連載され、連載終了後もその独創的な世界観と壮絶なアクション、そして登場人物たちの内面描写の深さから、多くの読者を魅了し続けている忍法浪漫作品です。

江戸時代末期を舞台に、死罪人たちが不老不死の仙薬を求めて謎の島「神仙郷」へと送り込まれるという、過酷な「生」のサバイバルが展開されます。

この記事では、最強の抜け忍・画眉丸の物語を、単行本全13巻の構成に沿って詳細に振り返るとともに、作品を形作る緻密な設定やテーマ性を深掘りしていきます。

テレビアニメや舞台化もされた本作の、深淵なる魅力に迫りましょう。

 

  1. 概要:美麗な絵と残酷な世界が織りなす忍法浪漫
  2. あらすじ:単行本全13巻の軌跡をたどる
    1. 1巻:最強の抜け忍と打ち首執行人、そして地獄への上陸
    2. 2巻:超常の怪物・陸郎太の脅威と画眉丸の覚醒
    3. 3巻:山田浅ェ門・典坐の死と「タオ」の登場
    4. 4巻:天仙との初接触と「方丈」の秘密
    5. 5巻:生死を分かつタオの修行と山田浅ェ門・源嗣の最期
    6. 6巻:天仙・牡丹との決戦と仙汰の献身
    7. 7巻:追加の派遣組と山田浅ェ門・殊現の狂気
    8. 8巻:巌鉄斎と付知の覚悟、そして士遠とヌルガイの決意
    9. 9巻:五行相克の戦いと菊花・桃花の鬼尸解
    10. 10巻:山田浅ェ門同士の対立と付知・巌鉄斎の散華
    11. 11巻:最悪の天仙・蓮と神獣「盤古」の覚醒
    12. 12巻:徐福との邂逅と最後の総力戦
    13. 13巻:全ての物語の終着点、そして希望の御免状
  3. 登場人物:生と死の業を背負う者たち
    1. 画眉丸(がびまる)
    2. 山田浅ェ門 佐切(やまだあさえもん さぎり)
    3. 亜左 弔兵衛(あざ ちょうべえ)
    4. 杠(ゆずりは)
    5. 民谷 巌鉄斎(たみや がんてつさい)
    6. ヌルガイ
    7. 陸郎太(ろくろうた)
    8. 山田浅ェ門 士遠(やまだあさえもん しおん)
    9. 山田浅ェ門 付知(やまだあさえもん ふち)
    10. 山田浅ェ門 典坐(やまだあさえもん てんざ)
    11. 山田浅ェ門 殊現(やまだあさえもん しゅげん)
    12. メイ
  4. 用語:世界観を形作る「地獄楽」独自の概念
    1. 山田浅ェ門(やまだあさえもん)
    2. 石隠れ衆(いわがくれしゅう)
    3. 御免状(ごめんじょう)
    4. 氣(タオ)
    5. 天仙(てんせん)
    6. 島(こたく)
    7. 丹(たん)
  5. スピンオフ:最強の抜け忍が「がまん」する日々
    1. じごくらく 〜最強の抜け忍 がまんの画眉丸〜
  6. テーマ・作風:残酷さの奥にある人間の業と愛
    1. フィクションとリアルの融合
    2. 残酷描写の必然性
    3. 変化せざるを得ない人間ドラマ
  7. 制作背景:『ファイアパンチ』の系譜と劇画研究
    1. 藤本タツキの元アシスタントという繋がり
    2. 劇画タッチへの挑戦
    3. キャラクターの「答え」を反映する作風
  8. 社会的評価:アニメ化と舞台化が示す人気
    1. テレビアニメ
    2. 舞台
  9. 書誌情報
  10. テレビアニメ
  11. 舞台
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概要:美麗な絵と残酷な世界が織りなす忍法浪漫

『地獄楽』は、賀来さんにとって2作目の連載作品であり、その美麗で悲壮感あふれるタッチで一躍人気作品となりました。

物語の根幹にあるのは、死罪を免れたい死罪人と、彼らを監視する打ち首執行人・山田浅ェ門(やまだあさえもん)一門の面々が、極楽浄土と噂される孤島で繰り広げる仙薬争奪戦です。

過酷な状況下での力強い人間ドラマは、「生」と「死」、「罪」と「罰」といった普遍的なテーマを深く掘り下げ、読者に強烈な印象を与えます。

『週刊少年ジャンプ』への出張掲載や小説版の発売、そしてスピンオフ漫画『じごくらく 〜最強の抜け忍 がまんの画眉丸〜』の連載など、連載中から大きな注目を集めました。

そして連載終了後には、アニメーション制作スタジオMAPPAによるテレビアニメ化や舞台化が発表され、作品の評価は確固たるものとなっています。

 

あらすじ:単行本全13巻の軌跡をたどる

『地獄楽』の物語は、謎多き島「神仙郷」を舞台に、画眉丸たちの「仙薬探し」と「生還」という目的のもと、激しい戦いとキャラクターたちの成長が描かれます。

ここでは、単行本1巻から完結の13巻まで、その物語の流れを詳しく追っていきましょう。

 

1巻:最強の抜け忍と打ち首執行人、そして地獄への上陸

物語は、最強の忍として恐れられた画眉丸が、愛する妻・結(ゆい)と再会するため、打ち首執行人・山田浅ェ門佐切の提案を受け入れるところから始まります。

その提案とは、「極楽浄土」と呼ばれる島から「不老不死の仙薬」を持ち帰れば、すべての罪が帳消しとなる「御免状」を与えるというもの。

画眉丸を含む選ばれた死罪人10名と、彼らを監視する浅ェ門の面々が島へ向かいますが、出航前から死罪人同士の殺し合いが勃発し、島の恐ろしさを予感させます。

島に上陸すると、そこは美しい花々が咲き乱れる極彩色の光景とは裏腹に、人の顔を持つ巨大な蝶や、異形の化物が潜む「地獄」でした。

早速、死罪人の法流坊が亜左弔兵衛に、いがみの慶雲が画眉丸に倒され、極度の緊張感の中で物語が動き出します。

画眉丸は佐切と行動を共にし、お互いの価値観をぶつけ合いながら、共に島を探索することになります。

 

2巻:超常の怪物・陸郎太の脅威と画眉丸の覚醒

島での探索を進める画眉丸と佐切の前に、異常な巨躯を持つ死罪人・陸郎太が立ち塞がります。

空腹によって暴走した陸郎太は、監視役の衛善を一瞬で殺害し、画眉丸たちにとって島の化物をも凌ぐ脅威となります。

佐切は、人の死を生業とする己の存在意義に悩みながらも、画眉丸と協力し、壮絶な激闘の末に陸郎太を討ち倒します。

この戦いを通じて、佐切は刀が鈍る原因となっていた「迷い」を断ち切り、打ち首執行人としての業を受け入れ、大きく成長する一歩を踏み出します。

また、この巻では、杠と監視役の仙汰、民谷巌鉄斎と付知のコンビも合流し、生存者たちの連携が始まります。

一方、大盗賊の弔兵衛は、弟の桐馬と共に島の深部へと進み、驚異的な再生能力を持つ謎の怪物に遭遇し、自らの身体でその秘密を探ろうとします。

 

3巻:山田浅ェ門・典坐の死と「タオ」の登場

ヌルガイとその監視役である典坐は、島の異様な化け物竈神(そうしん)の群れに遭遇し、絶体絶命の危機に陥ります。

そこへ、盲目の浅ェ門・士遠が駆けつけ、驚異的な強さで竈神を一掃します。

士遠の教え子である典坐は、サンカ(山の民)ゆえに死罪人とされたヌルガイに「生き抜け」と力強く説き、彼女の心を救います。

しかし、直後に現れた人造人間天仙の一人・朱槿(ヂュジン)との戦いで、典坐はヌルガイを庇い、壮絶な最期を遂げてしまいます。

典坐の死は、士遠とヌルガイに深い悲しみと、「生き残る」ことへの強い決意を植え付けました。

この戦いの中で、士遠は天仙の使う超常の力こそが、この世の万物に内在する生命力「氣(タオ)」であることを見抜き、物語の核心に迫る重大な概念が読者に提示されます。

 

4巻:天仙との初接触と「方丈」の秘密

士遠とヌルガイは、典坐の遺志を継ぎ、島のさらに内側へと進みます。

画眉丸、佐切、杠、仙汰の一行は、島の中心部へ進むための第二エリア「方丈(ほうじょう)」にたどり着きます。

そこで彼らは、島に古くから住む樹の姿をした民、木人(ほうこ)の最後の生き残りと出会います。

木人は、この島が秦の始皇帝に仕えた徐福(じょふく)によって作られた研究施設であり、天仙が不老不死の仙丹を作るために存在すること、そして仙丹こそが人を樹化させる毒「丹(たん)」であることを明かします。

さらに、彼らは幼女の姿をした天仙の一人、メイを保護します。

一方、島の深部にいた弔兵衛は、天仙の菊花(ジュファ)と桃花(タオファ)との戦いの中で、自らの肉体を顧みず弟の桐馬を守ろうとし、驚くべき「花化」を遂げてしまいます。

 

5巻:生死を分かつタオの修行と山田浅ェ門・源嗣の最期

画眉丸たちは、天仙を倒し仙薬を手に入れるため、木人からタオの存在とその操作方法である周天(気功法)の基礎を学び始めます。

タオの力は、その属性(五行相克)によって相性があり、それを意識した戦闘こそが、圧倒的な力を持つ天仙への唯一の対抗手段だと判明します。

画眉丸と佐切は、それぞれの抱える「生きたい理由」をタオに乗せ、修行に励みます。

しかし、そこへ暴走し花化した弔兵衛が桐馬を伴って現れ、画眉丸たちを襲います。

さらに、死罪人・茂籠牧耶の監視役だった浅ェ門・源嗣が、画眉丸と佐切を庇って致命傷を負い、佐切に「迷いを捨てろ」と言い残して壮絶な死を遂げます。

仲間たちの死を目の当たりにし、画眉丸と佐切は「生きて帰る」という決意を固くします。

 

6巻:天仙・牡丹との決戦と仙汰の献身

島の最深部、天仙たちが住まう第三エリア「蓬莱(ほうらい)」へ辿り着いた画眉丸、佐切、杠、仙汰の四人。

彼らの前に、タオの力で死体を操る天仙・牡丹(ムーダン)が立ちはだかります。

牡丹は、木人の信仰を嘲り、その圧倒的な力で一行を追い詰めます。

学者肌で一見非力に見えた仙汰は、牡丹の操る殭屍(キョンシー)の弱点、そして牡丹自身の戦闘スタイルを見抜き、その分析力を活かして勝利に貢献します。

しかし、その代償は大きく、仙汰は致命傷を負い、杠の腕の中で息絶えます。

仙汰の死は、常に奔放で自己中心的に見えた杠の心に深い傷を残し、彼女の「生きる」ことへの執着が単なる自己保身ではないことを示唆します。

この巻をもって、当初10人いた死罪人は画眉丸、佐切、杠、巌鉄斎、ヌルガイ、そして死罪人ではないが弔兵衛、桐馬、士遠、付知といった限られた人数に絞られ、戦いはさらなる激化を見せます。

 

7巻:追加の派遣組と山田浅ェ門・殊現の狂気

幕府は、度重なる調査団の消息不明を受け、山田浅ェ門の追加組を島へ派遣します。

派遣されたのは、試一刀流二位の殊現(しゅげん)、その推薦で別式(女性の指南役)となった威鈴(いすず)、そして若年の天才剣士・清丸(きよまる)の3名。

殊現は、佐切の初恋の相手であり、高いカリスマ性と一流の剣術を誇りますが、罪人に対しては極めて残酷で独善的な思想を持つ男でした。

彼は、島に潜む異形の化物を次々と討伐し、圧倒的な実力を見せつけます。

一方、画眉丸は、天仙・蘭(ラン)の作り出す幻術と建物移動の能力に苦戦を強いられながらも、杠と協力して蘭の撃破に成功します。

しかし、画眉丸は戦闘中に一時的に記憶を失い、「妻に会う」という「生きる理由」すら見失ってしまいます。

 

8巻:巌鉄斎と付知の覚悟、そして士遠とヌルガイの決意

記憶を失った画眉丸は、佐切の献身的な助けによって徐々に記憶を取り戻していきます。

一方、剣豪・巌鉄斎と解剖が得意な付知のコンビは、島を跋扈する怪物たちと戦いながら、真の目的である仙薬の在処を探ります。

士遠とヌルガイは、典坐の仇である天仙・朱槿と再び相まみえます。

朱槿のタオの力を応用した変態的な戦法に対し、士遠は持ち前の「タオの波動を読む」力と、ヌルガイの「水」のタオを組み合わせて立ち向かい、ついに朱槿を撃破します。

この戦いを通して、ヌルガイは、典坐から託された「生きる」という意思を、士遠と共に貫くことを決意します。

また、追加組の殊現は、島の異様さと、浅ェ門の仲間たちが罪人と共闘している現状に苛立ちを募らせ、「悪・即・斬」の狂気を増していきます。

 

9巻:五行相克の戦いと菊花・桃花の鬼尸解

弔兵衛と桐馬、そして付知は、天仙の菊花と桃花が房中術を修める房中宮に潜入します。

菊花と桃花は、自らの不老不死の維持のために木人を丹として犠牲にしてきたことに内心苦しんでおり、その心の内が描かれます。

弔兵衛は、自身が花化し、タオをコントロールする力を得たことで、菊花の「火」のタオと相克する「金」のタオを駆使し、双子の天仙に挑みます。

追い詰められた菊花と桃花は、タオを大量消費する禁断の形態「鬼尸解(きしかい)」へと変身し、植物と人が混ざったような巨大な化物となって一行を圧倒します。

桐馬と付知は、連携して菊花と桃花の弱点である植物の「胚殊」にあたる部分を破壊し、壮絶な戦いの末に勝利を収めます。

この戦いは、タオを操る力だけでなく、仲間との連携と知恵、そして「絶対に弟を守る」という弔兵衛の強すぎる愛が勝利をもたらした、象徴的なエピソードと言えるでしょう。

 

10巻:山田浅ェ門同士の対立と付知・巌鉄斎の散華

天仙を撃破し、満身創痍の状態で合流した弔兵衛、桐馬、巌鉄斎、付知の一行の前に、ついに殊現率いる追加組が立ちはだかります。

殊現は、罪人たちと共闘し、天仙を倒した浅ェ門たちを「島の毒に冒された裏切り者」と断じ、攻撃を開始します。

佐切の初恋の相手であった殊現の、残酷で独善的な正義は、浅ェ門同士の悲しい対立を生み出します。

巌鉄斎と付知は、殊現の圧倒的な剣技と、模倣によってタオの属性すら変化させる驚異的な能力に追い詰められます。

伝説の剣豪として名を残す野望を持つ巌鉄斎と、彼を支えたマッドサイエンティスト付知は、壮絶な斬り合いの末に敗北。

付知は、最後の力を振り絞って巌鉄斎の命を救い、自らは師の十禾(じっか)に看取られて静かに命を落とします。

この悲劇的な展開は、山田浅ェ門という組織の「業」と、「正しいこと」と「生きること」の板挟みになる人々の苦悩を深く描き出しています。

 

11巻:最悪の天仙・蓮と神獣「盤古」の覚醒

浅ェ門同士の戦いを終え、画眉丸、佐切、士遠、ヌルガイ、杠、弔兵衛、桐馬、そして十禾は、天仙のリーダー格である蓮(リエン)、そして常に顔を本で隠す天仙・桂花(グイファ)と対峙します。

蓮は、不老不死の研究者・徐福によって生み出された最初の天仙の一人であり、その圧倒的なタオの量と洗練された技術で一行を翻弄します。

蓮の目的は、外丹法の研究をさらに進め、不老不死の丹を作り出すための神獣「盤古」を完成させ、日本本土の住民を丹に変換するという、おぞましいものでした。

一方、かつて典坐を殺した朱槿は、士遠に敗れた後、最後の力を振り絞って地下水道を辿り、ついに神獣盤古と一体化し、巨大な花の姿となります。

この巨大な化物の出現は、島での戦いが単なる仙薬争奪戦ではなく、日本全土を巻き込む巨大な危機へと発展したことを示しています。

 

12巻:徐福との邂逅と最後の総力戦

盤古と化した朱槿、そして天仙の蓮と桂花を相手に、画眉丸たちは最後の総力戦に挑みます。

この巻では、全ての元凶である徐福(シューフゥ)の過去と、彼が不老不死に至るまでの狂気的な研究の軌跡が明かされます。

徐福は、タオを直接改造する術に辿り着き、生物同士のタオを掛け合わせて、天仙や島の異形の生物たちを生み出していたことが判明します。

画眉丸は、佐切や杠、弔兵衛たちとの共闘を通じて、愛する妻との再会という個人的な願いを、仲間たちの「生還」という新たな使命へと昇華させ、蓮に挑みます。

タオの力、忍術、剣技、そして何よりも「生きる」ことへの執念がぶつかり合う、クライマックスへ向けての激しい展開が続きます。

 

13巻:全ての物語の終着点、そして希望の御免状

最終巻では、最強の敵・蓮との最後の決戦が描かれます。

画眉丸は、自らのすべての忍術とタオの力を注ぎ込み、蓮を打ち倒します。

この戦いの中で、画眉丸は、自分自身がかつて愛する妻・結から教わった「人としての温かい心」こそが、自らの命を繋ぎ、力を生み出す源であったことを悟ります。

戦いは終わり、生き残った画眉丸、佐切、杠、弔兵衛、桐馬、ヌルガイ、士遠、十禾、威鈴、清丸、そしてメイは、島からの脱出に成功します。

生還した彼らを待っていたのは、幕府からの「御免状」と、それぞれの新たな「生」でした。

佐切は、山田浅ェ門の道を進みながら、画眉丸の妻・結と対面し、画眉丸の愛が幻想ではなかったことを確信します。

そして、画眉丸は愛する妻・結と再会を果たし、誰にも追われることのない穏やかな暮らしを手に入れるという、感動的な結末を迎えるのです。

多くの犠牲を払った壮絶な旅路は、画眉丸と佐切にとって、それぞれの「生」の意義を見出すための試練であったと解釈できます。

 

登場人物:生と死の業を背負う者たち

『地獄楽』の魅力は、その残酷な世界観の中で、自らの「生」と「死」の業(ごう)に向き合う個性的なキャラクターたちにあります。

ここでは、主要な人物たちのプロフィールと、彼らの背景を掘り下げます。

 

画眉丸(がびまる)

項目内容
年齢16歳
身長150cm
誕生日1月8日
渾名がらんの画眉丸
氣の属性
得意忍術火法師(ひぼうし)
結(ゆい)

石隠れの里の筆頭を示す屋号「画眉丸」を名乗る主人公の一人です。

幼少期に里長に両親を殺され、感情のない「がらんどう」な人間として育てられました。

しかし、里長の娘である結と出会い、人間らしい温かさを知ったことで、彼女のために里を抜けることを決意します。

「愛する妻にもう一度会うため」という強烈な動機が、彼に超人的な生命力と、諦めない強さを与えています。

 

山田浅ェ門 佐切(やまだあさえもん さぎり)

項目内容
年齢17歳
身長172cm
誕生日12月16日
血液型A型
段位試一刀流十二位
氣の属性
職業打ち首執行人
初恋の相手殊現(しゅげん)

山田浅ェ門家現当主の実娘で、もう一人の主人公。

女性ながら御様御用(おためしごよう)の道を選び、「人の死を生業とする山田家に生まれた業を見極める」ことを自らに課しています。

当初は、その迷いが太刀筋を鈍らせていましたが、画眉丸たちとの過酷な戦いを通じて、自分の強さも弱さも受け入れ、一人の剣士として、執行人として大きく成長していきます。

彼女の気迫には、最強の忍である画眉丸も死のイメージを見たという描写があり、秘めたる実力は一門の中でも高く評価されています。

 

亜左 弔兵衛(あざ ちょうべえ)

項目内容
異名伊予の賊王
氣の属性
出身赤稿藩の武家
唯一の身内弟の桐馬

若くして大盗賊団を作り上げた伊予の賊王です。

不幸な生い立ちから盗賊へと落ちぶれましたが、弟の桐馬を何よりも大切に思っており、その兄弟愛こそが、彼を突き動かす原動力となっています。

死罪人の中でも高い戦闘能力に加え、驚異的な分析力・対応力・人心掌握術に優れ、作中で最も「花化」が進むなど、人外の強さを発揮します。

 

杠(ゆずりは)

項目内容
異名傾主の杠
氣の属性
正体甲斐忍者のくのいち
生きる理由夭折した妹・小夜の分まで生きる

「傾主の杠」の異名を持つ、自称甲斐忍者のくのいちです。

奔放で自己中心的な言動が多いですが、根底には夭折した妹・小夜の分まで「何としても生き抜く」という強い思いがあります。

その冷静沈着な判断力と、時に冷酷さも見せる行動は、物語の緊張感を高める重要な要素となっています。

 

民谷 巌鉄斎(たみや がんてつさい)

項目内容
異名剣龍、八州無双
氣の属性
目的伝説の剣豪として後世に名を遺す
特徴島上陸後、左手を切り落とし義手を使用

「剣龍」「八州無双」と讃えられる剣豪です。

不老不死には興味がなく、伝説の剣豪として後世に名を遺すという野望のために仙薬探しの道を選びました。

その剣術は折り紙つきですが、毒への即座の対処として左手首を自ら切り落とすなど、その覚悟と行動力は死罪人の中でも異彩を放っています。

 

ヌルガイ

項目内容
正体まつろわぬ民・サンカ(山の民)の末裔
氣の属性
特徴鍛えられた体と少年のような容姿の少女
死罪の理由侍を助けたことで集落の存在が発覚し虐殺されたため

まつろわぬ民・サンカの末裔である少女です。

侍を助けたことで集落が滅んだという自責の念から自棄になっていましたが、監視役の典坐に説得され、生き抜くことを決意します。

典坐の死後は、彼の師である士遠と行動を共にし、戦いの中で成長を遂げていきます。

 

陸郎太(ろくろうた)

項目内容
異名備前の大巨人(だいだらぼっち)
氣の属性
身長3m以上
精神年齢3〜4歳
特徴異常な巨躯と怪力、無意識にタオを使用していた

「備前の大巨人」の異名を持つ大男。

知能は低いですが、画眉丸をも圧倒する怪力と異常な巨躯を持ち、その力は無意識にタオを使っていたためと後に推測されています。

空腹で暴走し、監視役の衛善を殺害するなど、島の化け物をもしのぐ脅威となりましたが、画眉丸と佐切の共闘によって倒されます。

 

山田浅ェ門 士遠(やまだあさえもん しおん)

項目内容
年齢27歳
誕生日6月13日
段位試一刀流四位
氣の属性
特徴生まれつき盲目、タオを波動として感知できる
趣味「目」に絡めた冗談を言うこと

試一刀流四位の浅ェ門です。

生まれつき盲目ですが、その代わりに物質が放つ氣(タオ)を波動として感知する能力に長けており、健常者以上の動きが可能です。

冷静怜悧な剣士ですが、弟子の典坐を可愛がり、彼の死後はヌルガイを託され、共に典坐の遺志を継ぐことを決意します。

 

山田浅ェ門 付知(やまだあさえもん ふち)

項目内容
段位試一刀流九位
氣の属性
担当死罪人巌鉄斎
特徴解剖と製薬が得意なマッドサイエンティスト
愛刀解剖に向いた形の二振り

試一刀流九位で、巌鉄斎の担当です。

処刑された遺体の解剖を得意とする学者肌で、腰には常に解剖道具を下げています。

当初は感情が乏しくサイコパスのように見えましたが、仲間の死や死罪人との触れ合いを通して、人間らしい感情を取り戻し、仲間全員の生還を願うようになります。

 

山田浅ェ門 典坐(やまだあさえもん てんざ)

項目内容
年齢17歳
身長176cm
誕生日7月22日
血液型A型
段位試一刀流十位
氣の属性
口癖「〜っす」

試一刀流十位で、ヌルガイの担当です。

士遠に拾われ浅ェ門門弟になった体育会系青年で、明るく前向きな性格です。

サンカゆえに死罪とされたヌルガイに「生き抜くこと」を説き、彼女を庇って壮絶な最期を遂げました。

 

山田浅ェ門 殊現(やまだあさえもん しゅげん)

項目内容
年齢20歳
身長177cm
誕生日7月26日
血液型O型
段位試一刀流二位
氣の属性
特徴罪人に対して極めて残酷、浅ェ門の剣技とタオを模倣できる

試一刀流二位の浅ェ門で、佐切の初恋の相手です。

高いカリスマ性と一流の剣術の腕前を持ちますが、親を殺されているため罪人に対しては非常に残酷で独善的です。

一門への強い尊敬の念から、他の浅ェ門の剣技を憑依に近い理解力で再現できる驚異的な模倣能力を持ち、タオの属性すら変化させることが可能です。

 

メイ

項目内容
正体徐福によって作り出された天仙の一人
氣の属性
特徴普段は幼女の姿、タオを消費すると元の大人に近づき樹化する
髪色ピンク

徐福によって作られた天仙の一人ですが、蓮の非人道的な外丹法を諫め、制裁によって力の大半を失った後に木人に保護されました。

幼い容姿で、画眉丸たちに島やタオの事を教える重要な役割を果たします。

 

用語:世界観を形作る「地獄楽」独自の概念

『地獄楽』は、その緻密な世界観を支える独自の専門用語が多数登場します。

これらの用語を理解することで、物語の深層をより楽しむことができます。

 

山田浅ェ門(やまだあさえもん)

斬首と試し切りを生業とする一門であり、当主が名乗る名でもあります。

流派は試(ためし)一刀流で、そのモデルは江戸時代の公儀御様御用を務めた山田浅右衛門であるとされています。

彼らは公職ではないため、副業として刀剣鑑定や死体売買、製薬なども行っており、その「業」によって大きな収入を得ています。

位は実力と次代当主としての適性で決まる非世襲制であり、一門内での競争も激しいことがうかがえます。

 

石隠れ衆(いわがくれしゅう)

伊州(伊賀)の忍び里の一つで、画眉丸の故郷です。

里長は不死と噂されており、男は「群体」として里のために命を尽くすよう徹底的に忍術を叩き込まれ、女はひたすら子どもを産まされるという、極めて閉鎖的で非人道的な体制が敷かれています。

画眉丸が里を抜けるきっかけとなったのは、この里の非情なシステムから愛する結を救い出すためでした。

 

御免状(ごめんじょう)

死罪を免除される公文書です。

死罪人が担当の浅ェ門と共に帰還し、仙薬を引き渡すことで、すべての罪が帳消しとなります。

画眉丸たちが命をかけて島に挑む、最大の目的の一つです。

 

氣(タオ)

この世の万物に内在する力であり、生命力そのものを指します。

天仙はこのタオを1000年間鍛練し続け、超常の力を操ることができます。

タオには五つの属性があり、五行相生・相克(木→火→土→金→水、木は土に克つなど)という相性に従って、戦闘における優劣が決まります。

生まれつき盲目の士遠はタオを波動として感知できるなど、その存在は物語の根幹を成す重要な設定です。

 

天仙(てんせん)

植物と徐福の氣を掛け合わせて生み出された人造人間です。

雌雄同体で陰陽のタオを一人で増強できる能力を持ち、驚異的な再生力と不老不死に近い肉体を持っています。

しかし、タオの補給が必要であり、完全に不老不死ではないという矛盾を抱えています。

人型の時の弱点はヘソの下(丹田)で、タオを大量消費する「鬼尸解(きしかい)」という植物と人が混ざったような化物になる形態も存在します。

 

島(こたく)

琉球付近の南海に存在する巨大な島であり、「極楽浄土」に見える神仙郷と、「地獄」のような異形の化物が跋扈する場所が混在しています。

島の形状は、外側から瀛州(えいしゅう)、方丈(ほうじょう)、蓬萊(ほうらい)という同心円状の3エリアからなり、徐福が不死の命を作り出し観察するために作り上げた研究室・実験場でした。

海流や海神(かいしん)に阻まれ、一度上陸すると脱出は極めて困難です。

 

丹(たん)

仙薬と呼ばれるものですが、その正体は木人・人間に外丹花(ワイタンファ)を寄生させ、タオを抽出して作る物質です。

天仙はこの丹を飲んでタオを補給しますが、普通の人間が口にすれば全身が樹化する毒となります。

特に人間の持つタオからは上質な丹が得られるため、天仙たちは人間を犠牲にして丹を製造していました。

 

スピンオフ:最強の抜け忍が「がまん」する日々

『地獄楽』には、本編の連載中にスピンオフ作品も制作されています。

 

じごくらく 〜最強の抜け忍 がまんの画眉丸〜

おおはしさんによる本作のスピンオフ漫画で、『J+』にて連載されました。

本編のシリアスで残酷な内容とは一転し、本編の登場人物たちがスーパーデフォルメされた姿で描かれるギャグ漫画です。

最強の抜け忍・画眉丸が、その常人離れした身体能力や虚無的な性格を持ちながら、日常生活の些細なことで「がまん」を強いられるというコメディタッチの作品であり、本編とのギャップがファンに愛されました。

 

テーマ・作風:残酷さの奥にある人間の業と愛

『地獄楽』は、その「時代劇漫画」というジャンルでありながら、非常に現代的なテーマと作風を持っています。

 

フィクションとリアルの融合

賀来さんは、本作において、読者が気軽に読めるように、鎖国体制下の日本が舞台でありながら、英語などの外来語をセリフに使用するなど、フィクションの中にリアルの要素を「ほんのちょこっと」入れることを意識していました。

これは、読者に「気持ち良さ」と「没入感」を与えるための工夫であると考えられます。

 

残酷描写の必然性

読者からは「残酷だ」と言われることもありましたが、賀来さんは『北斗の拳』や『ベルセルク』などの影響を受け、「熱い話を描こうとすると血みどろになっちゃうのは普通」と感じていたようです。

特に、殺陣師から「刀は、一度抜いたからにはどちらかが死なない限り絶対に納めることはない」と学んだことで、「刀を扱うからには残酷な描写は避けられない」という信念を持って描いていたと語られています。

この残酷描写の必然性こそが、本作のリアリティと緊張感を生み出しています。

 

変化せざるを得ない人間ドラマ

賀来さんは、「人間同士が出会うことで変わらざるをえない部分を描きたい」としていました。

画眉丸が佐切との対話を通じて「がらんどう」から「人間」へと変わっていく過程や、死罪人たちが浅ェ門との共闘の中で命の価値を見直す姿は、まさにこのテーマを体現しています。

過酷な「地獄」の中での出会いが、彼らの「生」の在り方を大きく変えていくのです。

 

制作背景:『ファイアパンチ』の系譜と劇画研究

『地獄楽』が誕生するまでには、いくつかの重要な背景が存在します。

 

藤本タツキの元アシスタントという繋がり

初代担当編集の林士平さんによると、賀来さんは『ファイアパンチ』を連載していた藤本タツキさんの元アシスタントであり、両作品のアシスタントは多く重複していました。

このことから、『地獄楽』は、藤本さんの作品、特に「極限状態での人間性」というテーマ設定において、『ファイアパンチ』の影響を強く受けているという見方もあります。

 

劇画タッチへの挑戦

過去作で人気が出なかった経験から、賀来さんは「自分の好きなほうに振ってみたらどうなるだろう」という思いで『地獄楽』を連載したといいます。

また、連載前には編集者から絵に課題があると指摘されたため、『首斬り朝』など小池一夫さんの劇画作品を研究し、連載初期は特に劇画タッチを意識して描いていました。

さらに、海外の漫画であるバンド・デシネを参考にするなど、他の『J+』作品に埋没しない独自の求心力を追求していました。

 

キャラクターの「答え」を反映する作風

登場人物の言動については、賀来さんが彼らに問いかけて「その答えを反映させるイメージ」で描いていると述べていました。

これにより、キャラクターたちが作者の意図を超えて「自律的に生きている」かのようなリアリティと深みが生まれています。

当初は処刑人と死罪人が閉鎖空間にいるという構想でしたが、キャラクターを作ってからストーリーとすり合わせることで、設定説明だけの漫画になることを回避し、キャラクター主導の人間ドラマとして成立させました。

 

社会的評価:アニメ化と舞台化が示す人気

『地獄楽』は、『少年ジャンプ+』を代表する作品として、連載終了後も高い社会的評価を得ています。

 

テレビアニメ

アニメーション制作をMAPPAが担当し、2023年4月より第1期が放送されました。

原作の持つ美麗さと残酷さを見事に映像化し、特にアクションシーンの作画は国内外から高く評価されました。

テレビアニメ第2期も2026年1月より放送予定となっており、その期待値の高さは健在です。

 

舞台

連載終了後には舞台化も発表され、その再現度の高さや、登場人物の持つ「業」の表現が話題となりました。

漫画、アニメ、舞台と、様々なメディアで展開されることは、本作の物語とキャラクターが持つ普遍的な魅力と人気を示す証左と言えるでしょう。

 

書誌情報

『地獄楽』は全13巻で完結しています。

番外編や原画展の開催など、連載終了後も関連情報が展開されており、読者を楽しませ続けています。

 

テレビアニメ

原作:賀来ゆうじ

監督:牧田佳織

シリーズ構成:金田一明

キャラクターデザイン:久木晃嗣

音楽:出羽良彰

アニメーション制作:MAPPA

放送期間:第一期:2023年4月1日 – 7月1日(全13話)、第二期:2026年1月 –

 

舞台

連載終了後、テレビアニメ化と並行して舞台化も発表されました。

舞台ならではの身体表現で、画眉丸たち死罪人と山田浅ェ門の激しい戦いが繰り広げられました。

 

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