2004年『週刊モーニング』にて連載された「エマージング」は、他の外薗先生の作品に比べればグロテスクな描写ではなく、未知のウイルスによる感染症の脅威に焦点を当てた作品です。
この作品の制作にあたって作者の外薗昌也氏は、医療監修を中原英臣医学博士に依頼。
その結果、あたかも現実で起こりうるようなリアリティ溢れるストーリーが展開されます。
そのため一時期、コロナが流行っていた頃には、2004年とコロナウィルスが流行るより前に書かれていたにも拘わらず「不謹慎だ!」と騒ぐ人が続出してしまった問題作
「エマージング」というタイトルは、「新しく出現した」という意味。本作で描かれるのは、まさに前例のない新型ウイルスによる恐怖です。
作中では、過去に描かれたエボラ出血熱を彷彿とさせる病原菌が登場。グロテスクな描写は控えめながら、感染症の恐ろしさをリアルに伝えます。
グロテスクな表現が好きな人にとっても、本作は満足度の高い作品と言えるでしょう。しかし、そのリアルさは想像を超えるほど。ご飯を食べながら読むのは控えた方が良いかもしれません。
あらすじ
新宿の路上で、突如謎の感染者が現れます。その周りには目に見えないウイルスが漂っており、血を浴びた周囲の人々も次々と感染。エボラ出血熱に似た症状を引き起こすこの新型ウイルスは、人類にとって未知の存在でした。
感染者は、発熱、むくみ、目の痛みなどの症状に加え、死の間際には体液を噴き散らし周囲を感染させるという恐ろしい特徴を持っていた。マウスによる実験でも、わずか4時間半で人間と同じ症状が現れることが判明。新宿で感染した人々への調査では、全員が感染していることが確認されました。
現場に駆けつけた刑事たちは、異様な光景に困惑しながらも、薬物中毒の可能性を視野に入れ捜査を開始します。しかし、原因のため検死を依頼された東済医大病院の医師、小野寺と関口は、目の前に広がる光景に言葉を失います。
数時間前に命を奪われたはずの男の体は、まるで3日も経過したかのように腐敗が進み、不気味な臭いを放っていました。解剖を試みようとする小野寺を制止したのは、防護服を身に纏った関口でした。彼は、原因をウイルス性の感染症、それも出血熱と推測し、事前に防護措置を講じていたのです。
念のために抗ウイルス薬のリバビリンを服用した2人は、検体を携えて日本最高の感染症研究施設である国立伝染病研究所へと向かいます。
しかし、一見設備の整った施設は、実はバイオセーフティーレベル3であり、出血熱のウイルスを扱えるレベル4施設を持ちながら20年以上地元住民の反対で稼働できない、海外での研修もろくに行われていない日本の感染症対策の実態を突きつけられます。
帰路についた2人を待っていたのは、謎の感染症に接触したという噂で病院全体が騒然となり、事実上の村八分状態に陥っていたという現実でした。
一方、ウイルス研究室では、持ち込まれた血液サンプルに球状のウイルスが増殖していることが確認されます。電子顕微鏡での観察、遺伝子解析、エライサ抗体検査などあらゆる手段を駆使しても、既知のどのウイルスとも一致せず、未知のウイルスであることが確信されます。
さらに、ウイルスを注射されたマウスは全て出血熱の症状を示しします。世界で誰も見たことのない未知のウイルスが、日本を震撼させる恐怖の幕開けを告げたのです。
ウイルス研究室のスタッフは、未知のウイルスによる感染症を「エマージング」と名付けました。このウイルスは非常に感染力が強く、感染者は数時間で命を奪われてしまいます。感染者の血液はウイルスの増殖に適しており、感染者の亡くなっているにもかかわらず、ウイルスが活動しているように見えます。
小野寺と関口は、感染者の血液を用いてウイルスの特性を詳しく調査しました。ウイルスはDNAを持たず、RNAウイルスの一種であることが判明しました。しかし、既知のRNAウイルスとは異なる点が多く、ゲノムの解析からも新種であることが確認されました。
一方、感染者を解剖した結果、臓器の一部が消失していることが判明しました。
特に脳と脊髄が影響を受けており、感染者は神経系の障害を起こしていたことが示唆されました。このウイルスが神経系に影響を及ぼすことは、感染者の痙攣や奇妙な行動を説明する鍵となりました。
感染者を解剖した際、小野寺は感染者の脳から奇妙な光を放つものを目撃しました。
これは感染者の脳がウイルスによって制御されている可能性を示しています。さらに、感染者を解剖したスタッフが感染者の脳からウイルスを分離しようとした際、ウイルスは感染者の脳から脱出し、スタッフに感染を広げました。
エマージングの感染拡大を防ぐため、感染者は隔離され、感染者の家族や関係者は厳重な隔離下に置かれました。しかし、ウイルスは感染者から脱出し、新たな感染者を生み出していきます。感染者の数は急速に増加し、都市はパニックに陥りました。
このウイルスの正体、感染経路、治療法は未だ不明です。小野寺と関口は、ウイルスの研究を進めながら、人類の存亡をかけた戦いに挑むことになりました。
まとめ
物語の結末は、希望と絶望が交錯する衝撃的な展開を迎える。果たして、人類はこの未知のウイルスを克服することができるのか?
「エマージング」は、サスペンスとリアリティが融合した、感染症パニックを描いた作品です。グロテスクな描写は控えめながらも、そのリアルさは想像を超えるほど。グロ漫画好きも唸る作品と言えるでしょう。
エマージングは、単なるサスペンス漫画としてだけではなく、未知のウイルスに対する恐怖と、人間の生命の脆弱さを描いた作品です。
また、感染症の脅威に対する社会的な問題提起も含まれており、現代社会における私たちの生き方について考えさせられる作品と言えます。
新型コロナウィルスも流行り海外で流行り始めたころは、「海外は不衛生だからこんなのが流行るんだろうな」なんて対岸の火事という感覚だったボク
しかし、コロナウィルスは僕自身も感染してしまいました。
誰かと接触する以上は、ウィルスの感染の可能性は誰にでもあります。
いつか「エマージング」のような恐ろしいウィルスが現れないことを願うばかりです( ;∀;)
登場人物
岬あかり
高校生。同級生の男子生徒・大島と交際し、友人にも恵まれて充実した日々を過ごしていたが、山田の変死現場に遭遇してしまう。
大島
あかりの高校の同級生でサッカー部員。あかりの彼氏で物静かというかしゃべれないレベル。大柄な体格。
感染症にかかっているあかりにマスク越しとはいえ自分の存在を知らせるため危険を顧みずキスするなどあかりに対する気持ちが本物であることが伺える。
最終的に彼が免疫を持っていたため多くの人が救われた。
関口 薫
病理医で山田氏の遺体の病理解剖を依頼される。
エマージングウィルスに対して嬉々とする室長に対して「不謹慎だろ」と怒りを露したり、危険を顧みず血清を作ろうとするなど、正義感が強い
小野寺 周二
臨床医、山田氏の遺体を見て咄嗟に出血熱の可能性を考慮した優秀な医師。
山田裕一
37歳 建設会社勤務最初の発症者。
発症前にはリゾート開発の調査をしていて感染したと考えられる。
森室長
ウィルス好きという変人
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