1996年から2000年にかけて「週刊少年ジャンプ」で連載された藤崎竜による漫画『封神演義』は、中国の古典文学を大胆にアレンジした作品です。
魅力的なキャラクター造形と予測不能なストーリー展開で、連載終了から20年以上経った今でも多くのファンを惹きつけています。
今回は、そんな『封神演義』の世界を彩る個性豊かな登場人物たちを、それぞれの所属や役割ごとに詳しくご紹介します。
物語の背景にある「封神計画」や、キャラクターたちの知られざる側面にも触れながら、彼らの魅力に迫ります。
『封神演義』とは?物語の根幹にある「封神計画」
漫画『封神演義』は、紀元前11世紀末、殷王朝の時代を舞台に展開されます。
人間と仙人、道士、そして妖怪などが共存する世界で、腐敗した殷王朝と、それを打倒しようとする周王朝の戦いが描かれている作品です。
物語は、仙人界の教主である元始天尊が、主人公の太公望に「封神計画」の実行を命じるところから幕を開けます。
この計画は、人間界で悪行を働く妖怪などを神界に封じ込めることを目的としており、倒された魂魄は「封神台」に吸い込まれ、神界へ送られることになります。
従来の仙人像とは異なり、若々しい姿で描かれたキャラクターたちは、読者にとってより親しみやすく、作品の人気を大きく牽引しました。
崑崙山に属する仙人たち
封神計画を推し進める中心となるのが、仙人界の崑崙山に属する仙人や道士たちです。
人間界の秩序を守るために戦う彼らの多くは、強力な宝貝を操り、時にコミカルな一面も見せるなど、物語に深みを与えています。
主人公・太公望
この漫画の主人公である太公望は、元始天尊の直弟子です。
元々は人間界で姜族の統領の息子として暮らしていましたが、家族を失った後に元始天尊にスカウトされ仙人界へと足を踏み入れました。
仙人としての才能は一見すると平凡に見えるものの、その真価は崑崙山一の頭脳を持つ策士としての側面にあります。
戦いでは、ペテンや心理戦を駆使し、目的のためには手段を選ばないこともありますが、それが彼の魅力の一つとも言えるでしょう。
宝貝は風を操る「打神鞭」を主に使い、物語終盤では「NEW打神鞭」へとパワーアップを遂げます。
さらに「杏黄旗」や太上老君から借り受けた「太極図」も使用し、その知略と合わせて並外れた強さを見せつけました。
かなりのマイペースで甘いものとお酒が好きという一面も持ち合わせており、泥酔した際には「泥酔拳」という肉弾戦の技を繰り出すこともあります。
太公望の相棒・四不象
太公望の傍らには、いつも霊獣の四不象がいます。
カバのような愛らしい外見と、「~っス」という語尾が特徴的な人気キャラクターです。
温厚でお人好しな性格で、太公望のよき理解者であり、突っ込み役でもあります。
外見に反して機敏な動きで敵の攻撃を避けるのが得意ですが、趙公明との戦闘で一度は石にされてしまいます。
しかし、復活の玉で生き返った後は、巨大化し飛行能力が向上する「戦闘形態」へと変貌を遂げ、相手の宝貝の能力を食べるという驚異的な能力を発揮しました。
戦闘形態では粗暴な性格に一変するところも、彼の二面性を表していると言えるでしょう。
ミステリアスな実力者・申公豹
物語の序盤から終盤まで登場し続ける申公豹は、三大仙人の一人である太上老君の弟子でありながら、その実力は三大仙人を凌ぐとも言われています。
道化師のような派手な格好をしていますが、自身の美学に反する「悪趣味」という言葉を極端に嫌います。
太公望に初めて傷を負わされて以来、彼を一方的にライバル視している様子も描かれました。
宝貝「雷公鞭」は、一振りで国を覆うほどの広範囲の雷を発生させる強力な能力を持ちます。
その強さにもかかわらず、物語の中では傍観者的な役割を果たすことが多いですが、彼の存在感は物語に緊張感と面白さをもたらしています。
最強の霊獣「黒点虎」を従えていることも、彼の強大さを物語る要素です。
崑崙山の誇る美しき仙女・竜吉公主
妲己と並び称されるほどの美しさを持つ竜吉公主は、生粋の仙人であり、清浄な仙人界の空気中でしか生きられないという体質を持っています。
実力はトップクラスながら、体質のため戦闘への参加は限られていました。
仙界大戦では、崑崙山の操縦を担当し、後に元始天尊からスーパー宝貝「盤古幡」を受け継ぎます。
しかし、地上の空気で体調を崩し、盤古幡を燃燈道人に託して戦線を離脱せざるを得ませんでした。
彼女の持つ宝貝「霧露乾坤網」は、水の結界を作り出し、敵を閉じ込めたり、攻撃を防いだりする能力を持ち、高い回復能力も持ち合わせていました。
清楚で凛とした佇まいと、その体質からくる儚さが、彼女の魅力をより一層際立たせています。
崑崙山最強の天才道士・楊戩
端正な顔立ちと長い髪を持つ楊戩は、女性ファンからの人気も非常に高いキャラクターです。
自信家でキザなナルシストな一面もありますが、太公望を信頼できると判断すれば実直に付き従うという義理堅い性格も持ち合わせています。
元々は金鰲島の通天教主の息子である妖怪仙人ですが、崑崙との不可侵条約の証として崑崙山に預けられ、玉鼎真人の弟子として育てられました。
師匠以上の実力を持つ「天才道士」と称され、彼の最大の特徴は「変化の術」です。
生物だけでなく物体にも変化でき、一度戦った相手に変化することで、その宝貝を使用することも可能です。
物語後半では、体の一部だけを変化させることで、全身を変化させなくても様々な宝貝を使用できるようになりました。
半妖態になると、その力はさらに増し、傷の回復力や身体能力が飛躍的に向上します。
武器は「三尖刀」と霊獣「哮天犬」を操り、変化の術と半妖態の力を組み合わせることで、強敵を圧倒する戦闘能力を発揮します。
冷静な判断力と状況分析能力も持ち合わせており、強敵との戦いでも常に最適な戦術を選択する知性も持ち合わせています。
蓮の花の化身・哪吒
崑崙山の道士である哪吒は、太乙真人によって作られた「宝貝人間」です。
「霊珠」を核として生まれ、一度肉体を失いますが、蓮の花の化身として蘇りました。
生まれた時から「乾坤圏」「風火輪」「混天綾」という複数の宝貝を操り、その後に太乙真人による改造や修理でさらに強化されました。
好戦的な戦闘狂で、強敵を見つけると真っ先に飛び込んでいく性格ですが、母親を慕う子供らしい一面も持ち合わせています。
蓮の花の化身であるため精神攻撃が一切効かず、身体も頑丈なため、常に最前線で戦うことができました。
物語終盤では、趙公明のスーパー宝貝「金蛟剪」を体内に内蔵し、黄金の龍を召喚するほどの力を得るなど、作中でもトップクラスの戦闘能力を誇ります。
崑崙十二仙
崑崙山には、太公望以外にも多数の仙人が存在します。中でも重要な存在が「崑崙十二仙」と呼ばれる12人の仙人たちです。
彼らはそれぞれ強力な宝貝と仙術を操り、封神計画において重要な役割を果たしました。
太乙真人
哪吒の生みの親であり師匠である太乙真人は、宝貝の開発研究が得意な自他ともに認める化学オタクです。
戦闘自体は苦手ですが、宝貝の扱いや黄巾力士のようなロボットの操縦に長けていました。
道行天尊
外見は赤ん坊のようですが、崑崙十二仙の一人に数えられる実力者です。
普段は子供のような口調ですが、怒ると口調や性格が変わる二重人格の一面も持ち合わせています。
普賢真人
争いを好まない平和主義者で、どんな相手でも三度までは説得しようとする慈悲深い仙人です。
宝貝「太極符印」は、元素を操り、敵の行動パターンを記憶してシミュレートする能力を持ちます。
聞仲に深手を負わせ、女媧との戦闘時には太公望を正気に戻すなど、太公望のよき理解者でもありました。
玉鼎真人
楊戩の師匠であり、親代わりでもあった玉鼎真人は、序盤で封神されてしまいますが、その高い実力と弟子を思う心で強い印象を残しました。
金鰲島に潜入した楊戩を救出するため、太公望と共に乗り込み、孫天君を一瞬で撃破するほどの剣技を誇ります。
王天君の紅水陣で瀕死だった楊戩を自らの命と引き換えに救い、後を託して封神されました。
清虚道徳真君
黄天化の師匠で、熱血の体育会系仙人です。
健全なスポーツマンのような性格で、仙界大戦では自分の宝貝を黄天化に託して戦いに身を投じました。
聞仲との戦いにおいても正面から挑んでいく熱血漢でしたが、聞仲に封神されてしまいます。
広成子
殷郊の師匠である広成子は、規律を守ることに厳しいミリタリーマニアです。
彼の持つ宝貝「番天印」は、押印した相手を必ず殺傷する強力な能力を持っていました。
聞仲との死闘で封神されてしまいます。
赤精子
殷洪の師匠である赤精子は、皮肉屋で刃物マニアの一面を持つ仙人です。
同じ崑崙十二仙の広成子とはよく衝突していました。
彼の持つ宝貝「陰陽鏡」は、複数の鏡から光を発射する能力を持っていました。
彼もまた聞仲との死闘で封神されてしまいます。
霊宝大法師と懼留孫
この二人の仙人は、物語の中では活躍する機会がほとんどなく、聞仲との死闘において封神されてしまいました。
懼留孫は土行孫の師匠でもあります。
文殊広法天尊
眼鏡をかけ、無精ヒゲを生やし、黒を基調とした服装という、仙人らしからぬ容姿が特徴的な仙人です。
「瑠璃瓶」というバズーカのような宝貝を持っていましたが、彼も聞仲との死闘で封神されてしまいます。
黄竜真人と慈航道人
二人とも色黒で金髪、上半身裸という、仙人とは思えないようなガラが悪い外見をしていました。
二人で聞仲に攻撃を仕掛けますが、迎撃されて封神されてしまいます。
崑崙十二仙の中で仙界大戦を生き残ったのは、太乙真人と道行天尊の二人だけでした。
崑崙山のその他の登場人物
武吉
元々は木樵をしていた天然道士の少年です。
太公望に憧れて行動を共にするようになり、純粋で真面目な性格が特徴です。
驚異的な身体能力を持ち、視力10.0、驚異的な聴力、水上を走るほどの身体能力を誇ります。
感情が高ぶると戦闘能力も上昇し、趙公明を殴り飛ばしたこともあります。
太公望の参謀として情報収集や伝令、さらには危機には自らの身体能力を活かして戦うなど、様々な任務をこなしました。
数々のアルバイト経験で習得した技能も、彼の戦闘に役立つことがありました。
人間界の登場人物たち
物語の中心となる人間界では、腐敗した殷王朝と、それに反旗を翻す周王朝の人物たちが登場します。
彼らの人間ドラマもまた、『封神演義』の大きな魅力の一つです。
殷王朝の主要人物
紂王
殷王朝第30代皇帝の紂王は、妲己の誘惑に惑わされ、悪政によって国を衰退させていきました。
戦いの中で「殷王家の力」によって化け物じみた強さを得ますが、妲己不在によって誘惑の術が解け、理性を取り戻しました。
最後は殷の民の前で武王の手によって封神されます。
殷郊と殷洪
紂王の子供である殷郊と殷洪は、共に崑崙で修行を積んでいました。
兄の殷郊は広成子の、弟の殷洪は赤精子の弟子として育ちますが、殷郊は殷の王太子として周と敵対してしまいます。
説得しようとした殷洪は太公望を庇い、兄の手で封神されました。
殷郊もその後、太公望に封神されてしまいます。
張奎
聞仲を深く尊敬する殷の武将です。
当初は殷側についていましたが、終盤に太公望に封神台で聞仲と引き合わされ、殷の陣営から離脱し、女媧との決戦に挑むことになります。
漫画『封神演義』の中で唯一、妲己を殴った人物としても知られています。
聞仲の死後、その遺志を継ぎ宝貝「禁鞭」を受け継ぎ、聞仲を超える実力を得ます。
ラスボスとの戦いでは、精神的なダメージを受けながらも、地獄のような特訓を経て成長し、楊戩にその実力を認めさせるほどになります。
周王朝の主要人物
姫昌
西伯侯と呼ばれていた姫昌は、妲己の策略にはまり幽閉されてしまいます。
幽閉中に長男の伯邑考を失い、その後解放されて太公望を西岐へと迎え入れました。
伯邑考の死をきっかけに拒食症に陥り衰弱し、全てを太公望と姫発に託して封神されます。
姫伯邑考
姫昌の長男である姫伯邑考は、妲己の誘惑の術にかからなかったために、妲己によって殺されてしまいます。
死後、妲己によって料理の材料にされ、その料理を姫昌に食べさせられるという残酷な運命を辿りました。
姫昌はその料理を涙ながらに食べ、全てを悟ったと言われています。
姫発と姫旦
姫昌の次男である姫発と三男である姫旦は、激しい戦いの末に太公望と共に周の国を築き上げました。
姫発は武王と、姫旦は周公旦と呼ばれていました。
黄家の人々
国を捨て、戦う道を選んだ強き大家族、黄家の人々も物語の重要なキャラクターです。
黄飛虎
先祖代々殷の国に仕え、紂王に忠誠を誓っていましたが、妲己の策略で妻と妹を失ったことで殷を捨て、周の国に移ります。
聞仲とは親友でしたが、相容れないそれぞれの道を歩み、仙界大戦で戦うことになります。
命を賭して聞仲の心を取り戻させ、封神されました。
五色神牛に跨る豪傑で、卓越した武芸と戦場における指揮能力を持ち、周軍の主力として活躍しました。
賈氏と黄氏
賈氏は黄飛虎の妻でしたが、妲己の策略で紂王に引き合わされ、妾になることを強要されます。
立場的に断れないことを悔やみながら自殺し、その場にいた黄氏は怒りを込めて紂王を殴り、後を追って命を絶ちました。
黄天化
黄飛虎の次男である黄天化は、清虚道徳真君にスカウトされ修行を積んだ崑崙山の道士です。
殷を捨てた父が刺客に発見された時に助けに現れました。
戦闘においては近接戦に自信を持っており、呪いを受けた身体で紂王と戦い戦線を退きますが、虚を突かれて背後から刺され封神されました。
最終的には、莫邪の宝剣IIという、宝貝以外では防御不能なほど鋭い切れ味を持つ両刃剣と、弾数が豊富で命中率の高い投射武器「鑚心釘」を操りました。
人間界のその他の登場人物
土行孫と鄧蝉玉
土行孫は懼留孫の弟子で、師匠から「バカ弟子」と呼ばれることもあります。
鄧蝉玉は聞仲から派遣されたスパイでしたが、土行孫を好きになり、彼に付きまとっていました。
最終的には結婚しますが、土行孫は竜吉公主のような女性が好みだったため、半ば無理矢理に結婚させられたと言われています。
金鰲島の妖怪仙人たち
崑崙山の仙人たちと対立する金鰲島は、個性と魅力あふれる妖怪仙人たちが集まる場所です。
彼らの多くは、崑崙山の仙人たちとは異なる容姿と能力を持ち、物語に刺激を与えています。
金鰲島の教主・通天教主
金鰲島の教主であり、三大仙人の一人です。
妖怪仙人を統率していますが、崑崙山との友好関係に尽力していた穏健派で、封神計画にも関わっていました。
妲己が金鰲島を離れる際、女媧の存在に脅威を感じ、息子の楊戩を妲己から守るため崑崙に預け、王奕を引き取ることで不可侵条約を締結しました。
しかし、後に妲己と王天君となった王奕に心を奪われて抜け殻になってしまいます。
仙界大戦で楊戩との戦いの時、暴走して王天君を巻き添えにしますが、息子を守り、最期は息子に看取られて封神されました。
スーパー宝貝「六魂幡」を操り、包み込んだものを消滅させる能力を持ち、高い仙術の使い手でもありました。
金鰲島のリーダー的存在・王天君
金鰲島十天君のリーダー的存在である王天君は、狡猾で残忍な性格の持ち主です。
その考え方ややり口は妲己に似ています。
元々は元始天尊の直弟子でしたが、楊戩との人質交換によって金鰲島にやってきました。
人間だった王奕は、幽閉されていた時に妲己によって心を壊されてしまいます。
彼は魂魄を分割できる性質を持ち、妲己によって三つに分割され、妖怪をベースにした「王天君」となります。
三体の王天君のうち、一つは金鰲島の崩壊に巻き込まれて封神され、二つ目は聞仲に封神され、三つ目は封神されかけた太公望を救いました。
妲己の義妹たち・胡喜媚と王貴人
妲己に付き従う胡喜媚と王貴人は、妲己のためならどんなことでもしてしまう義理の姉妹です。
胡喜媚は可愛い姿をしており、妖怪たちから人気があります。
彼女の正体は時間を行き来できる雉鶏精で、羽には触れたものの時間を退行させる作用がありました。
宝貝「如意羽衣」を操り、あらゆるものに変身する能力を持ち、女媧の力でパワーアップした後は、楊戩さえも認めるほどの変化の使い手となりました。
王貴人はクールな常識人ですが、人間に対する残虐さは妲己と変わりません。
「紫綬羽衣」を操り、広範囲に毒蛾の粉を撒き散らす攻撃を得意としました。
金鰲三強の一人・聞仲
金鰲島出身の道士で、殷王朝の太師(軍師)を務めました。
鋼の精神力と矜持を持つ硬骨漢で、殷王朝への忠誠心は誰よりも強く、その繁栄と民の豊かな暮らしを心から願っていました。
元々は仙人骨を持たなかったものの、自らを虐げるほどの過酷な修行を重ねた結果、仙人骨を得て通天教主にスカウトされます。
宝貝「禁鞭」を操り、半径数キロ以内に入った対象を打ち据える広範囲攻撃を得意とし、その威力は太公望をも打ち破るほどでした。
霊獣「黒麒麟」に跨り、高い戦闘能力と機動力を誇ります。
知謀においても妲己と比肩するほどであり、四聖や張奎など有能な部下を率い、彼らからの信頼も厚かった人物です。
しかし、殷王朝への強すぎる忠誠心と親友・黄飛虎の死という精神的な弱点を妲己に利用され、最終的には太公望との戦いに敗れ、その生涯を閉じました。
金鰲三強の一人・妲己
金鰲島出身の仙女である妲己は、その正体は1700年生きた狐の妖怪仙人です。
金鰲島三強の一人として、聞仲や趙公明と並ぶ実力者とされています。
スーパー宝貝「傾世元禳」を操り、セクシーポーズをとることで効果を高める完成された誘惑の術を使います。
彼女の誘惑の力は並の仙人なら容易く魅了し、太公望からは「人間宝貝」と称されるほど、全身に複数の宝貝を身につけていました。
自ら戦いに赴くことは稀ですが、恐ろしい策略家として、他人の心理を読み取り、思うがままに利用することを得意とします。
魂魄だけで移動し、他の人間の肉体を乗っ取る「借体形成の術」を習得しており、肉体を失っても活動を続けることができました。
妲己は、その美貌と誘惑の力、そして高い知能と策略によって、殷王朝を混乱に陥れ、物語の重要な役割を担いました。
彼女の強さは、傾世元禳による強力な誘惑の術、全身に装備された複数の宝貝、太公望さえも恐れるほどの知能と策略、そして借体形成の術による不死性に裏打ちされています。
金鰲三強の一人・趙公明
金鰲島出身の妖怪仙人で、通天教主の右腕とも言われた金鰲三強の一人であり、その実力は仙人界でも屈指です。
濃い顔立ちにフランス貴族のような出で立ちで、華やかで美しいものを好む人物として描かれています。
しかし、その内面は戦闘狂であり、戦うこと自体に喜びを感じる愉快犯的な一面を持っています。
二つの強力な宝貝、「縛竜索」と、七色の龍を召喚するスーパー宝貝「金蛟剪」を操ります。
特に金蛟剪から放たれる「七色の虹龍」は、仙人界で二位の攻撃力を誇ると言われています。
趙公明の強さは、その圧倒的な戦闘能力と強力な宝貝にあり、並の仙人では太刀打ちできないほどの力を持っています。
しかし、目的意識が低く、ただ戦うことを楽しむ傾向があるため、戦略的な戦いを苦手とし、敵の策略に嵌ってしまうこともありました。
見た目も強さも異形な十天君
金鰲島の実力者たちである十天君は、仙界大戦において全員が封神されてしまいました。
異形の外見を持ち、崑崙の仙人や道士たちを苦しめましたが、最終的には崑崙側の連携によって敗北しました。
張天君
自分の空間に楊戩を引きずり込みましたが、半妖化した楊戩に空間をパンクさせられ封神されました。
孫天君
太公望と玉鼎真人を自分の空間に閉じ込めますが、太公望の策により本体の位置を見破った玉鼎真人に一瞬で斬られ封神されました。
袁天君
太公望と普賢真人を閉じ込めましたが、普賢真人の宝貝の前に全てを無効化されます。
和解を持ち掛けられますがこれを拒否し、普賢真人に封神されました。
董天君
黄親子を倒そうと自分の空間に引き込みましたが、黄親子の機転により切り刻まれて封神されました。
趙天君
見せ場もなく哪吒に封神されてしまいました。
柏天君と秦天君
二人で雲霄三姉妹と対峙しましたが、空間を破られ、雲霄三姉妹の三女に食べられてしまい封神されました。
姚天君と金光聖母
二人で多重空間を作り出し崑崙の道士たちを迎え撃ちましたが、攻撃をかわした韋護に一気に詰め寄られ、姚天君は切り捨てられて封神されました。
金光聖母も同様に接近され、哪吒の手により封神されました。
金鰲島のその他の登場人物
雲霄三姉妹
長女ビーナス(雲霄)、次女クイーン(瓊霄)、三女マドンナ(碧霄)と本名とは異なる呼び方をされ、本名で呼ばれることを嫌うという、少し異色の登場人物たちです。
仙界大戦時に活躍しますが、女媧との戦いには参戦しませんでした。
スーパー宝貝「金蛟剪」と「混元金斗」という強力な宝貝を操り、高い戦闘能力を発揮しました。
物語の根幹をなす始祖たち
『封神演義』の物語の後半に登場する、作品の根幹をなす重要なキャラクターたちです。
歴史の道標・女媧
歴史の道標と呼ばれる存在であり、最初の人の中心人物である女媧は、最強の力を持つ異星人です。
その力は他の仙人たちを圧倒します。
自身の行動を恐れた4人の仲間によって永久氷壁に封印されますが、魂魄体だけで動き回ることが可能で、その状態でも妖怪仙人を大幅に強化するなど、絶大な力を誇りました。
精神宝貝「山河社稷図」と、最強宝貝「四宝剣」を操り、山河社稷図は敵を闇に閉じ込め精神を攻撃し、四宝剣は何度も世界を滅ぼし作り上げた力を持つ剣です。
女媧は、歴史を裏で操ってきた張本人であり、その存在は物語の核心に迫る重要な役割を果たしました。
封印されていたことで孤独を嫌い、肉体を取り戻した時には歴史を操作することを止め、地球を破壊しようとしますが、伏羲によって阻止されます。
再び封印されることを恐れ、伏羲を巻き込み自爆しますが、最終的には地球と融合した妲己によって救われました。
封神計画の真の立案者・伏羲
封神計画の真の立案者である伏羲は、女媧を封印した後、その復活に備え一人残りました。
人間の身体を借りて王奕となり、元始天尊はその魂魄を二つに分け、一つは死亡した赤ん坊に入れ太公望に、もう一つは王奕として金鰲島に渡り王天君となりました。
太公望と王天君が一つに融合することで、真の記憶と能力を取り戻し、伏羲として復活します。
外見や人格は太公望に近いですが、戦闘能力は太公望を遥かに上回ります。
目的のためなら手段を選ばない狡猾で深慮遠謀な軍師であり、その知略は作中でもトップクラスです。
空間を操る能力に長けており、魂魄を溶かす雪を降らせる空間宝貝「誅仙陣」や、通常の宝貝でも魂魄体にダメージを与えることができる巨大空間宝貝「万仙陣」を操ります。
空間を自由に移動する能力や飛行能力も持ち合わせていました。
宝貝を通して他の仙道から力を吸い取り自分の力とする「太極図・戦闘形態」を操り、この力で女媧を圧倒しました。
玉鼎真人からは「崑崙で最高の頭脳を持つ大イカサマ師」と評されるほど、頭脳派の策略家であり、主人公でありながら戦闘は他人任せにすることが多いですが、人気投票では常に上位にランクインする人気キャラクターです。
まとめ
漫画『封神演義』には、今回ご紹介した以外にも、数多くの魅力的な登場人物が存在します。
彼らの個性豊かなキャラクターと、緻密に練られたストーリー展開が、作品をより一層奥深く、面白いものにしています。
機会があれば、ぜひ漫画だけでなく、小説などの原作にも触れてみてはいかがでしょうか。
きっと、新たな発見があるはずです。

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